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旅に出よう、彼女の元へ、行けるように
いきさき
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「よし、一息ついたところで作戦会議だね。」
鍋とボウルを片付けて、レーシアが皆を集める。
ご飯のあとの会議は旅の最中ずっと行ってきたことだ。いつもはヴィーが私の手を引いて皆を手招きして始まるのに、今は無い。
いつの間にか現れたジャヴィさんが口を開く。
「呪いを知る人間が要る。主が知っておると。」
その端的な言葉に私は首を傾げた。
私が知っていると言われてもピンと来ない。
「えっと、呪いについて詳しい人が必要だということですか?それならエミリーに話をするのがいいと思います。」
「あー違う違う。ほら、前にマリーが言ってた話。ヴィオが呪われてるって占い師に言われたってやつ。」
レーシアが補足をつける。
なるほどその事かと頷くも、私は彼女について名前しか知らない。
「でも私、その人のことは何にも知らないです。」
手帳を取り出して、挟んでいた紙を手に取る。
「彼女と会った日の夜、荷物を整理してたら見つけました。紙にはアルメリアとだけ書いてあって、私は多分これが彼女の名前だと思いました。でも、それだけです。聞きたい事はあったけど、ヴィーが何も言わなかったから、私はそのままこの紙を手帳にしまってそれきり何もありませんでした。」
ジャヴィさんは私の話を聞いてひとつ頷くと、私の手から紙を引き抜く。
「魔法具の類いか。いや呪いか?ふむ、1度限りのもののようだ」
その紙をじっと見つめて、それから私に返してくれた。
「面白いものを貰い受けたのう。混ざりものか変じたか。精霊に近しい者ならば我も会ってみたい気もするが。まぁなんにせよ、これを使わぬ手はない。」
「あの、どうすれば…?」
「望めばよい。アルメリアの名を念じ、姿を思い描け。さすれば示される。」
「ふーん、人探しに便利そうだねぇ。お誂え向きってやつ?」
レーシアが横から紙を覗き込む。
不思議そうにしつつもそこまで興味は無いようだった。
「さてな。それが予知しておったのかは存ぜぬ。ここにそれがあることだけが真実よ。」
「そのアルメリアってやつの事情なんざ知らねえからな。使えるもんは使ってかねぇと。」
「マリーゴールド。」
皆の視線が私に集まる。
なんだか緊張して落ち着かない。
「う、うん。」
ギュッと目を閉じて、アルメリアの姿と名前を頭に思い浮かべる。
最近まで忘れていたというのに、何故かぼやけることなく覚えているのを自覚する。
ボロボロの布を纏い、不思議なほど軽い声を発する女性。すっと持ち上げられヴィーを指さしたその手は白く細く、しかし美しかった。その腕に嵌められた金色のブレスレットが光る。
占い師アルメリア。
口の中でその名を呟いた瞬間、カチリと何かが重なった気がした。
そっと目を開く。
「…これは。」
「あちゃー。よりにもよって王都かぁ。」
紙に目を落とせばアルメリアの名前が消え、代わりに王都の名前が書かれていた。
鍋とボウルを片付けて、レーシアが皆を集める。
ご飯のあとの会議は旅の最中ずっと行ってきたことだ。いつもはヴィーが私の手を引いて皆を手招きして始まるのに、今は無い。
いつの間にか現れたジャヴィさんが口を開く。
「呪いを知る人間が要る。主が知っておると。」
その端的な言葉に私は首を傾げた。
私が知っていると言われてもピンと来ない。
「えっと、呪いについて詳しい人が必要だということですか?それならエミリーに話をするのがいいと思います。」
「あー違う違う。ほら、前にマリーが言ってた話。ヴィオが呪われてるって占い師に言われたってやつ。」
レーシアが補足をつける。
なるほどその事かと頷くも、私は彼女について名前しか知らない。
「でも私、その人のことは何にも知らないです。」
手帳を取り出して、挟んでいた紙を手に取る。
「彼女と会った日の夜、荷物を整理してたら見つけました。紙にはアルメリアとだけ書いてあって、私は多分これが彼女の名前だと思いました。でも、それだけです。聞きたい事はあったけど、ヴィーが何も言わなかったから、私はそのままこの紙を手帳にしまってそれきり何もありませんでした。」
ジャヴィさんは私の話を聞いてひとつ頷くと、私の手から紙を引き抜く。
「魔法具の類いか。いや呪いか?ふむ、1度限りのもののようだ」
その紙をじっと見つめて、それから私に返してくれた。
「面白いものを貰い受けたのう。混ざりものか変じたか。精霊に近しい者ならば我も会ってみたい気もするが。まぁなんにせよ、これを使わぬ手はない。」
「あの、どうすれば…?」
「望めばよい。アルメリアの名を念じ、姿を思い描け。さすれば示される。」
「ふーん、人探しに便利そうだねぇ。お誂え向きってやつ?」
レーシアが横から紙を覗き込む。
不思議そうにしつつもそこまで興味は無いようだった。
「さてな。それが予知しておったのかは存ぜぬ。ここにそれがあることだけが真実よ。」
「そのアルメリアってやつの事情なんざ知らねえからな。使えるもんは使ってかねぇと。」
「マリーゴールド。」
皆の視線が私に集まる。
なんだか緊張して落ち着かない。
「う、うん。」
ギュッと目を閉じて、アルメリアの姿と名前を頭に思い浮かべる。
最近まで忘れていたというのに、何故かぼやけることなく覚えているのを自覚する。
ボロボロの布を纏い、不思議なほど軽い声を発する女性。すっと持ち上げられヴィーを指さしたその手は白く細く、しかし美しかった。その腕に嵌められた金色のブレスレットが光る。
占い師アルメリア。
口の中でその名を呟いた瞬間、カチリと何かが重なった気がした。
そっと目を開く。
「…これは。」
「あちゃー。よりにもよって王都かぁ。」
紙に目を落とせばアルメリアの名前が消え、代わりに王都の名前が書かれていた。
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