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旅に出よう、彼女の元へ、行けるように
さびしさになれるまえに
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足音に耳をすませて、そっと横道へと逸れる。何食わぬ顔でフードを被り、空き家らしき家へと入る。慌ただしい複数人の足音が遠ざかって行くのを確認した後、ゆっくりと家から出た。
何度こうして逃げただろう。いい加減諦めてくれたらいいのにと思ってしまうのは、私が薄情な人間だからだろうか。
流石にずっと野宿する訳にも行かず、食料調達も兼ねてこうして街に立ち寄っては見つかりそうになるギリギリの生活を送っている。人員は多くないと思っていたのに、鉢合わせしそうになる回数から見てみると、それなりに動員されているらしい。
仲間には頼れない。ジルからの情報では、いの一番に話がいったと聞いている。だから私は1人であの地を目指す。
「…ヴィー。」
1人で旅をして、初めてその大変さを知った。皆で旅をしていた頃も辛かったけれど、1人旅というものはまた違った過酷さがある。
常に警戒しながら歩く事には少しだけ慣れた。不躾な視線の交わし方も、ぼったくりされそうになった時の対処法も覚えた。けれどどうしたって1番苦しいのは、情けない程の寂しさだ。
誰も隣にいない。誰とも話さない。誰も私を気にかけない。それらは気楽で、でもそれ以上に切なかった。
いつかこの気持ちにも慣れる日が来るのだろうか。
その前にヴィーに会いたいな、と思う。
大通りを駆ける笑顔の子供達を羨みながら、私は宿へと向かった。
来客が来たか確認した後、部屋に入る。特に変わったところもない。ベッドへ身体を投げ出して、ホッと息を吐く。疲れが抜けにくくなっているのが分かって、弱気な自分が不意に顔を出した。
あれからいくつかの泉を回ったけれど、ライラにも他の精霊にも会うことはなかった。ヴィーを救う手がかりを、私はずっと探している。見つからないのは、どうしてなのだろう。
ヴィーを助けたい。
ヴィーと話したい。
ヴィーに触れたい。
ヴィーと、生きたい。
それがエゴだと知っていても。
ヴィーがどう思おうと、私はヴィーとアシェルの結婚式が見たいし、ヴィーの笑顔が見たい。ヴィーとご飯を作りたいし、オシャレだってしたい。
やりたい事が沢山あるのに、そこにヴィーがいないだけで色褪せてしまうから。
結局の所、私は私の為にヴィーを連れ戻したいのだ。
最低で、傲慢で、身勝手な願い。
ヴィーは、こんな私を叱ってくれるだろうか。そんな事を思いながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。
何度こうして逃げただろう。いい加減諦めてくれたらいいのにと思ってしまうのは、私が薄情な人間だからだろうか。
流石にずっと野宿する訳にも行かず、食料調達も兼ねてこうして街に立ち寄っては見つかりそうになるギリギリの生活を送っている。人員は多くないと思っていたのに、鉢合わせしそうになる回数から見てみると、それなりに動員されているらしい。
仲間には頼れない。ジルからの情報では、いの一番に話がいったと聞いている。だから私は1人であの地を目指す。
「…ヴィー。」
1人で旅をして、初めてその大変さを知った。皆で旅をしていた頃も辛かったけれど、1人旅というものはまた違った過酷さがある。
常に警戒しながら歩く事には少しだけ慣れた。不躾な視線の交わし方も、ぼったくりされそうになった時の対処法も覚えた。けれどどうしたって1番苦しいのは、情けない程の寂しさだ。
誰も隣にいない。誰とも話さない。誰も私を気にかけない。それらは気楽で、でもそれ以上に切なかった。
いつかこの気持ちにも慣れる日が来るのだろうか。
その前にヴィーに会いたいな、と思う。
大通りを駆ける笑顔の子供達を羨みながら、私は宿へと向かった。
来客が来たか確認した後、部屋に入る。特に変わったところもない。ベッドへ身体を投げ出して、ホッと息を吐く。疲れが抜けにくくなっているのが分かって、弱気な自分が不意に顔を出した。
あれからいくつかの泉を回ったけれど、ライラにも他の精霊にも会うことはなかった。ヴィーを救う手がかりを、私はずっと探している。見つからないのは、どうしてなのだろう。
ヴィーを助けたい。
ヴィーと話したい。
ヴィーに触れたい。
ヴィーと、生きたい。
それがエゴだと知っていても。
ヴィーがどう思おうと、私はヴィーとアシェルの結婚式が見たいし、ヴィーの笑顔が見たい。ヴィーとご飯を作りたいし、オシャレだってしたい。
やりたい事が沢山あるのに、そこにヴィーがいないだけで色褪せてしまうから。
結局の所、私は私の為にヴィーを連れ戻したいのだ。
最低で、傲慢で、身勝手な願い。
ヴィーは、こんな私を叱ってくれるだろうか。そんな事を思いながら、私はゆっくりと瞼を閉じた。
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