31 / 122
私は、独り、流される
あのこをころしたきしさま
しおりを挟む
パレードは当然中止となり、会議室らしい部屋で今後の対策などの話し合いが行われた。そこで聞かされた話に、私は驚きを隠せなかった。
あぁどうして、どうしてそんなことが出来るのだろう。
「…どういう、事ですか。」
やっと絞り出せた声はみっともなく震えていた。
「魔物、魔族は全て倒す。そうするべきだと決められている。切り捨てて何が悪いというのだ。」
「っ貴方は…!」
言葉が続かない。怒り、悲しみ、嫌悪、色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざって吐き気を催した。この人は何を言っているんだろう。貴方が切ったのは、『人間の子供』だというのに。
「むしろ悪い芽を早めに摘めてよかっただろう。感謝して欲しいくらいだ。」
その言葉に、私は感情が抑えられなくなった。視界が赤く染まる。人は振り切れるとどこか冷静になるものなのだと初めて知った。
「…人殺し。」
「なんだと?」
「人殺しだと言ったんです。あの子は人間でした…!魔族に育てられただけの、普通の子供だった!!!」
「ふん、魔族と共にいたのならばもうそれは人間ではない。醜い魔族だ。」
そういう自分の顔が余程醜く、魔族じみていることをこの人は分かっているのだろうか。
「いいえ!彼は普通に笑い、普通に泣き、普通に兄を慕う、何処にでもいる子供でした!ただ一生懸命生きる子供を貴方は殺した!!」
「魔族に育てられてまともに育つはずがない。子供のフリなどお手の物だろう!姫様に危険が及ばぬよう魔は全て倒す。それが姫様の護衛騎士としての誇りだ。」
「騎士としての誇り?子供を殺す事が誇り…?兄である魔族を殺さず戦う術のない弟だけを狙う事が、誇りだと言ってるの?騎士とは臆病で卑怯な人の事を言うのだとは知らなかった。」
「貴様…っ!」
吐き捨てるように言った私に、騎士が立ち上がる。切られるだろうか。殺されるだろうか。あの子のように。
脳が勝手に血濡れで倒れるあの子を想像する。どれだけ痛かっただろう。どれだけ怖かっただろう。騎士になりたいと笑っていたあの子は、どれだけ絶望しただろう。それが許せなかった。
「…今日、貴方のせいで何人の人が死んだでしょうか。貴方があの子を殺さなければ、ソレントは戦いに参加することはなかったでしょう。貴方の行動が、多くの誰かの命を奪った。」
「言わせておけば…、いいか、働くしか脳のない民などどうでもいい。俺は尊きお方を守るためにいるのだ!薄汚い愚昧な下民には分からぬかもしれぬがな、「黙りなさい。」」
「…姫様?」
姫様が立ち上がり、ゆっくりと騎士へ近づく。その目は冷ややかに、しかし呆れとも悲しみともつかない色をもっていた。
「ギリュー。わたくしの言葉を覚えていますね。」
「は…、」
「『次はない』と言ったはずです。」
「姫様、しかしこれが、」
騎士の言葉に被さるようにして、ドアが大きく開かれる。
「世界を救った英雄様をこれ呼ばわりですか。なんともまぁ随分偉くなったものですね、ギリュー。」
「っお、王妃、様…。」
あぁどうして、どうしてそんなことが出来るのだろう。
「…どういう、事ですか。」
やっと絞り出せた声はみっともなく震えていた。
「魔物、魔族は全て倒す。そうするべきだと決められている。切り捨てて何が悪いというのだ。」
「っ貴方は…!」
言葉が続かない。怒り、悲しみ、嫌悪、色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざって吐き気を催した。この人は何を言っているんだろう。貴方が切ったのは、『人間の子供』だというのに。
「むしろ悪い芽を早めに摘めてよかっただろう。感謝して欲しいくらいだ。」
その言葉に、私は感情が抑えられなくなった。視界が赤く染まる。人は振り切れるとどこか冷静になるものなのだと初めて知った。
「…人殺し。」
「なんだと?」
「人殺しだと言ったんです。あの子は人間でした…!魔族に育てられただけの、普通の子供だった!!!」
「ふん、魔族と共にいたのならばもうそれは人間ではない。醜い魔族だ。」
そういう自分の顔が余程醜く、魔族じみていることをこの人は分かっているのだろうか。
「いいえ!彼は普通に笑い、普通に泣き、普通に兄を慕う、何処にでもいる子供でした!ただ一生懸命生きる子供を貴方は殺した!!」
「魔族に育てられてまともに育つはずがない。子供のフリなどお手の物だろう!姫様に危険が及ばぬよう魔は全て倒す。それが姫様の護衛騎士としての誇りだ。」
「騎士としての誇り?子供を殺す事が誇り…?兄である魔族を殺さず戦う術のない弟だけを狙う事が、誇りだと言ってるの?騎士とは臆病で卑怯な人の事を言うのだとは知らなかった。」
「貴様…っ!」
吐き捨てるように言った私に、騎士が立ち上がる。切られるだろうか。殺されるだろうか。あの子のように。
脳が勝手に血濡れで倒れるあの子を想像する。どれだけ痛かっただろう。どれだけ怖かっただろう。騎士になりたいと笑っていたあの子は、どれだけ絶望しただろう。それが許せなかった。
「…今日、貴方のせいで何人の人が死んだでしょうか。貴方があの子を殺さなければ、ソレントは戦いに参加することはなかったでしょう。貴方の行動が、多くの誰かの命を奪った。」
「言わせておけば…、いいか、働くしか脳のない民などどうでもいい。俺は尊きお方を守るためにいるのだ!薄汚い愚昧な下民には分からぬかもしれぬがな、「黙りなさい。」」
「…姫様?」
姫様が立ち上がり、ゆっくりと騎士へ近づく。その目は冷ややかに、しかし呆れとも悲しみともつかない色をもっていた。
「ギリュー。わたくしの言葉を覚えていますね。」
「は…、」
「『次はない』と言ったはずです。」
「姫様、しかしこれが、」
騎士の言葉に被さるようにして、ドアが大きく開かれる。
「世界を救った英雄様をこれ呼ばわりですか。なんともまぁ随分偉くなったものですね、ギリュー。」
「っお、王妃、様…。」
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!
菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる