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貴族たるもの常に目を張り巡らせるべし

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「ティアナ嬢。ファウスト。」

名前を呼ばれて声のする方へと視線を向けると、そこにはテオドール殿下がいらっしゃいました。

「おはよう、テオドール。」
「殿下。ご機嫌麗しゅう。」
「おはよう。兄上から聞いた。…大変だっただろう。それから、メリルのことも。」
「お心配り感謝致します。」

おそらく婚約の件と王妃様のお話についてでしょう。
現状、わたくしはファウスト様と正式な婚約を結んでいない状態となっております。両家の了承も根回しも済んでいるというのにもかかわらずです。
ファウスト様が提出したはずの婚約届けは行方知れずになり、再度送った婚約届けもまた承認を得られていないということに困惑と憤りを感じるものの、ガブリエル殿下と姫様の件が片付かなければ進めることは不可。
もとより協力することは決めておりましたが、ここに新たな目的が追加されたというわけです。

それから、あの場でメリルがローズ嬢と呼ばれた時、わたくしは否定をしませんでした。それが最善だと思ったからです。実際、そうであったと思いますが、この先どういった結果になるのかは分かりません。

「先方から諾の返事が来た。」
「まぁ!それはようございました。」
「あぁ。おそらく来週になるだろう。」
「そうなのですね。」
「週末?」
「予定ではな。」
「ふーん。なるほど。」

目を細められたファウスト様の機嫌が悪くなったことを感じ、首を傾げればファウスト様は溜息をつかれました。

「これっきりにしてほしいんだけど、でも今回はやる気だから仕方ないか。」
「ファウスト様?」
「ティアはいつも渦中にいるねぇ。」
「そう、でしょうか?」

わたくしの髪に触れ、そう呟いたファウスト様はそれから殿下へと向き直りました。

「ちゃんと働くから、きちんと対応してよね。期待してる。」
「分かっている。私も全力を尽くす。」
「条件は同じだもんね。…ティナ。」
「はい。」
「終わったらデートしようね。」
「デ…!?こほん。は、はい。喜んでお受け致します。」
「うん。」

デートという言葉に高鳴った心臓を抑え込みながら頷けば、ファウスト様が満足気に微笑まれました。
それを珍しそうに見ながら、殿下が手紙をわたくしに差し出します。

「ティアナ嬢。叔母上が話をしたいらしい。招待状を持たされた。」
「かしこまりました。ありがとうございます。」









学園での授業を終え、家に帰り手紙を開くと、そこには美しい文字で会いたいという旨が記載されておりました。
籠の鳥のマークと共に。
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