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子供たるものたくさん寝るべし!

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「暇ね。」
「ひまだねー。」
「暇だねぇ。」

のんびりとした午後。ヒューゴを膝に乗せ、お菓子を食べさせながら寛いでいると、わたくし達の会話に混ざる声が。
聞き覚えのある声に扉を見遣れば、そこには思った通りのお姿がございました。

「…なんでいらっしゃるんですの、ファウスト様。」
「癒しを求めて?」

首を傾げながらそう告げたファウスト様に、ヒューゴが心配そうな声をあげます。

「お兄さま、お疲れなの?」
「うん。いっぱいお仕事して、体も心もへとへとになっちゃった。」
「わぁ大変!お父さまといっしょだ!ほっぺもちもちする?それともぎゅーってする?」
「ヒューゴは優しいね。ありがとう。」

目を細めたファウスト様は、そのまま流れるようにヒューゴとわたくしをまとめて抱き締めました。

「わたくしもですのファウスト様!?」
「お姉さまもぎゅー!」
「ティア、ぎゅー。」
「もう。…ぎゅー、ですわ。」

思いの外疲れている様子のファウスト様と楽しそうなヒューゴの姿を見て、わたくしはそっと抱き締め返しました。
ハグはストレス解消になるらしいのです。
甘いものもございますし、こちらで少しは疲れがとれるといいのですけれど。

「ファウスト様、どうぞ。」
「ん。」
「お姉さま僕も僕も!」
「はいはい。」

それにしても最近本当にお忙しそうで心配ですわ…。
次期当主であるファウスト様は学園での勉強に加えて様々なことを学んでいらっしゃいます。まぁファウスト様は大変優秀であらせられますので、一度教科書を読めば大抵理解致します。そのため学園をお休みしても問題ないのですけれど、それはそれ、これはこれ、といいますか、なんといいますか…おそらくおじさまにも何か考えがあってのことでしょうけれど、なんでもスマートにこなすファウスト様がこのようになられるのはやはりなんだか落ち着きませんわ。

「お兄さま、僕のほっぺもちもちしていいよ。お母さまもお父さまも凄く疲れがとれるって言ってたんだ。」

わたくしとファウスト様の間ではしゃいでいたヒューゴがもぞもぞと動き、ファウスト様の手を取って自身の頬へと導きます。
促されるまま、ファウスト様はヒューゴの頬をもちもちし始めました。

「ヒューゴの頬は柔らかくてふくふくしてるからね。ありがとう。」
「んむ。どういはひまひへ!」

役に立てたと誇らしげな顔が可愛らしくて、思わず笑みがこぼれ落ちます。

「お姉さまも後でもちもちしていいよ。お姉さま、最近ずっと難しい顔してたもんね。」
「まぁ、ヒューゴ…。ありがとう。」
「えへへ、どういたしまして!お姉さまもお兄さまも、早く元気になってね。病は気からって言うんでしょう?元気じゃないと、元気じゃなくなっちゃう。」
「そうね、気をつけるわ。」
「ありがとう、ヒューゴ。兄様も気をつけるよ。」
「うん!ふぁ…。」

嬉しそうに頷いたヒューゴは、それから小さく欠伸を零しました。

「お姉さま、あのね、僕、ちょっと眠くなってきちゃった。ちょっと、おひるねする。」
「あらあら、お昼寝は卒業したってこの間言ってたのに。」
「だってお姉さまもお兄さまもあったかいから。」
「ふふ、貴方が一番暖かいわよ、ヒューゴ。ほら、眠いならベッドに行きましょう。」
「んん。」

甘えるようにわたくしに抱き着いたヒューゴはそのままファウスト様へと片手を伸ばします。

「お兄さまも、いっしょ。」
「はいはい。ヒューゴ、こっちにおいで。連れてってあげるよ。」

ファウスト様はヒューゴの手を一度握り、それからゆっくりと抱き上げました。

「三人でおひるね?」
「ヒューゴが望むなら。ね、ティア。」

ゆらゆらと揺らしながら、優しく背中を叩くファウスト様に、ヒューゴの瞬きがだんだんとゆっくりになっていきます。

「んー…お姉さまも。」
「もう、今回だけですわよ。」
「んー…。」

とりあえず今は、元気になるために少しだけお昼寝しましょう。
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