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貴族令嬢たるもの噂も大切にすべし!
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穏やかな昼下がりに、食堂にてエリンさんとシシリーさんと食事を取っているとテオドール殿下とメリルが同じく昼食の為に食堂へとまいられました。
目が合うとメリルはこちらの方へと足を進めましたが、殿下から何かを告げられ残念そうに小さく手を振り、そのまま別の席へと向かいます。
それを見ていたシシリーさんが、そういえば、と声をあげられました。
「最近、なんだか慌ただしいようですわね。殿下のお姿を久しぶりに拝見しましたわ。本日ファウスト様も公休でしょう?」
「えぇ。」
「なんか色々大変そうですよね。商人達も動いてるみたいですよ。父が難しい顔をしてました。」
「あら、そうなの。彼等は耳が早いものね。そうなると、やはり近々何かあるのかしら?」
不安そうに溜息をついたシシリーさんに、エリンさんが頷きます。
「あまり良い事ではなさそうです。隣国の噂もありますし。」
「噂?どんなものですの?」
なんともタイムリーな話に目を瞬かせると、エリンさんは囁くように小さな声で話し始めました。
「眉唾物ではあるんですけど、商人の話では、なんでも末姫様がご病気だとか。でも先日の訪問ではとても健康そうでしたでしょう?ですからご病気はフェイクで何かあったのでは、と。本国に戻られてからという可能性はございますけど、それはそれで噂程度に収まっているのが気になりますし。」
「まぁ!それは心配ですわね。お父様が忙しいのはその事が関係するのかしら…。」
頬に手を当ててそう呟いたシシリーさんが、わたくしへと視線を向けます。
「ティアナさん、今後どのようなことになるにしても、わたくしはお二人を応援しますわ。」
「私もです!正式に発表があるまで表立って何かすることは出来ないですけど、でも友達には幸せになって欲しいので。」
シシリーさんとエリンさんにはファウスト様との婚約について話しておりました。婚約届けが受理されていないということも。
「シシリーさん、エリンさん…。ありがとうございます。わたくしも、お二人の幸せを心から願っておりますわ。何か困ったことなどございましたら是非頼ってくださいまし。」
「あら、それはとても心強いですわね。ふふ、出来ることは少ないですけれど、わたくしも頼ってくださると嬉しいですわ。」
「ありがとうございます。私も頼ってくれたら精一杯頑張りますから!」
それぞれの手をとり、強く頷いたお二人の姿を見て、わたくしも頷きます。
そこでちょうどデザートが運ばれて来ましたので、仲良く分け合いながらお喋りしていると時間はあっという間に過ぎていきました。
「そろそろ教室に向かいましょうか。」
「そうですわね。」
「いつも思うんですけど、お昼ご飯の後に歴史の授業を行うのはお昼寝して欲しいということなんですかね。」
「あら、ふふふ、それはとても親切ねぇ。」
「忍耐力を鍛えるためかもしれませんわよ。」
「あの学園長なら有り得そうで嫌です…。」
お二人とお話しながら廊下を歩いていると、何やら鋭い視線を感じました。
…?
あれは、キャロルさん…?
「あら、ティアナさん?」
「ティアナ様?遅れちゃいますよ。」
「…えぇ。今行きますわ。」
目が合うとメリルはこちらの方へと足を進めましたが、殿下から何かを告げられ残念そうに小さく手を振り、そのまま別の席へと向かいます。
それを見ていたシシリーさんが、そういえば、と声をあげられました。
「最近、なんだか慌ただしいようですわね。殿下のお姿を久しぶりに拝見しましたわ。本日ファウスト様も公休でしょう?」
「えぇ。」
「なんか色々大変そうですよね。商人達も動いてるみたいですよ。父が難しい顔をしてました。」
「あら、そうなの。彼等は耳が早いものね。そうなると、やはり近々何かあるのかしら?」
不安そうに溜息をついたシシリーさんに、エリンさんが頷きます。
「あまり良い事ではなさそうです。隣国の噂もありますし。」
「噂?どんなものですの?」
なんともタイムリーな話に目を瞬かせると、エリンさんは囁くように小さな声で話し始めました。
「眉唾物ではあるんですけど、商人の話では、なんでも末姫様がご病気だとか。でも先日の訪問ではとても健康そうでしたでしょう?ですからご病気はフェイクで何かあったのでは、と。本国に戻られてからという可能性はございますけど、それはそれで噂程度に収まっているのが気になりますし。」
「まぁ!それは心配ですわね。お父様が忙しいのはその事が関係するのかしら…。」
頬に手を当ててそう呟いたシシリーさんが、わたくしへと視線を向けます。
「ティアナさん、今後どのようなことになるにしても、わたくしはお二人を応援しますわ。」
「私もです!正式に発表があるまで表立って何かすることは出来ないですけど、でも友達には幸せになって欲しいので。」
シシリーさんとエリンさんにはファウスト様との婚約について話しておりました。婚約届けが受理されていないということも。
「シシリーさん、エリンさん…。ありがとうございます。わたくしも、お二人の幸せを心から願っておりますわ。何か困ったことなどございましたら是非頼ってくださいまし。」
「あら、それはとても心強いですわね。ふふ、出来ることは少ないですけれど、わたくしも頼ってくださると嬉しいですわ。」
「ありがとうございます。私も頼ってくれたら精一杯頑張りますから!」
それぞれの手をとり、強く頷いたお二人の姿を見て、わたくしも頷きます。
そこでちょうどデザートが運ばれて来ましたので、仲良く分け合いながらお喋りしていると時間はあっという間に過ぎていきました。
「そろそろ教室に向かいましょうか。」
「そうですわね。」
「いつも思うんですけど、お昼ご飯の後に歴史の授業を行うのはお昼寝して欲しいということなんですかね。」
「あら、ふふふ、それはとても親切ねぇ。」
「忍耐力を鍛えるためかもしれませんわよ。」
「あの学園長なら有り得そうで嫌です…。」
お二人とお話しながら廊下を歩いていると、何やら鋭い視線を感じました。
…?
あれは、キャロルさん…?
「あら、ティアナさん?」
「ティアナ様?遅れちゃいますよ。」
「…えぇ。今行きますわ。」
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