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貴族たるもの王家を敬うべし!
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ノックをし数秒。
「何方かね。」
「ティアナ・ローズでございます。」
「入りなさい。」
「はい。失礼致します。」
中へと入れば、学園長と、それから王太子が上座に座っておられました。
目が合い、頭を下げれば、お声がかかります。
精悍な顔付きの殿下は、完成された彫刻の様。彼は剣を振るう事を好み、昔からよくわたくしのお爺様に指南を望んでおりました。こんなに大きくなられたんですわね。少し感慨深いですわ。
「顔を上げよ。久しいな、ティアナ。」
「お久しぶりにございます、王太子殿下。ごきげんよう、学園長。本日はお日柄もよく、」
「口上は省略してよい。今日は其方に話があって来た。」
促されるままに顔を上げれば、殿下は微笑みを浮かべておられました。しかし、その柔らかな笑みの中に見える憔悴の気配に、わたくしは内心首を傾げます。
無表情の幼馴染をもつわたくしを舐めないでくださいまし。何年ファウスト様を見てきたと思っておりますの。あの方、バリエーション豊富すぎなんですのよ。目を細めるだけで何パターンの感情を表現するのか…っと失礼致しました、今は殿下のことですわね。
「…なんでございましょう。」
「学園長。」
「はぁ、仕方の無い奴よ。10分だけ席を外すが、ティアナ嬢には指一本触れぬように。」
「分かっている。」
学園長はよっこらしょという掛け声とともに椅子から立ち上がり、部屋を退出されました。
殿下はそれを見届けた後、ゆっくりと口を開かれます。
「ティアナ・ローズ。私の婚約者になってほしい。」
「お断りします。あ!いえ、その………理由をお伺いしても?」
「まぁ其方ならばそう言うと思っていた。受け入れるとは微塵も考えておらんから気にせずとも良い。」
「…はい。」
「私の婚約者が、隣国の末姫であることは知っておるだろう。」
「もちろんでございます。まるで妖精のように華やかで可愛らしく、そして聡明であらせられる方、と。絵姿を拝見しましたときはこれ程可愛らしい方がいらっしゃるのかととてもときめきましたわ。」
「そうだな。姫はとても可愛らしい。」
口元を緩めた殿下は、しかし次の瞬間目を伏せられました。
「殿下?」
「姫が、恋をしたのだという。」
「…………それは、」
「あぁ。分かっている。私達の婚約は政略的なものだ。分かって、いるのだが、私は…。」
「それでわたくしに求婚を?」
「浅はかな男だと笑ってくれていい。姫との婚姻がなくとも、私達の国は健やかに脈々と続いていくことだろう。皆優秀であるからな。」
そう言って、殿下は深く溜息をつかれました。
「殿下。」
「すまない。其方は師匠によく似ている故、こんなことを口走ってしまった。」
「いえ、それは良いのですけれど…。」
お爺様に似てるとはどういう意味ですの?????
「あの、殿下、」
「御前失礼します。これはどういうことか、説明くださいますか、ガブリエル殿下。」
「ファウスト様!?」
「…意外に早かったな。」
「殿下!?」
もう、どういうことですの?????
「何方かね。」
「ティアナ・ローズでございます。」
「入りなさい。」
「はい。失礼致します。」
中へと入れば、学園長と、それから王太子が上座に座っておられました。
目が合い、頭を下げれば、お声がかかります。
精悍な顔付きの殿下は、完成された彫刻の様。彼は剣を振るう事を好み、昔からよくわたくしのお爺様に指南を望んでおりました。こんなに大きくなられたんですわね。少し感慨深いですわ。
「顔を上げよ。久しいな、ティアナ。」
「お久しぶりにございます、王太子殿下。ごきげんよう、学園長。本日はお日柄もよく、」
「口上は省略してよい。今日は其方に話があって来た。」
促されるままに顔を上げれば、殿下は微笑みを浮かべておられました。しかし、その柔らかな笑みの中に見える憔悴の気配に、わたくしは内心首を傾げます。
無表情の幼馴染をもつわたくしを舐めないでくださいまし。何年ファウスト様を見てきたと思っておりますの。あの方、バリエーション豊富すぎなんですのよ。目を細めるだけで何パターンの感情を表現するのか…っと失礼致しました、今は殿下のことですわね。
「…なんでございましょう。」
「学園長。」
「はぁ、仕方の無い奴よ。10分だけ席を外すが、ティアナ嬢には指一本触れぬように。」
「分かっている。」
学園長はよっこらしょという掛け声とともに椅子から立ち上がり、部屋を退出されました。
殿下はそれを見届けた後、ゆっくりと口を開かれます。
「ティアナ・ローズ。私の婚約者になってほしい。」
「お断りします。あ!いえ、その………理由をお伺いしても?」
「まぁ其方ならばそう言うと思っていた。受け入れるとは微塵も考えておらんから気にせずとも良い。」
「…はい。」
「私の婚約者が、隣国の末姫であることは知っておるだろう。」
「もちろんでございます。まるで妖精のように華やかで可愛らしく、そして聡明であらせられる方、と。絵姿を拝見しましたときはこれ程可愛らしい方がいらっしゃるのかととてもときめきましたわ。」
「そうだな。姫はとても可愛らしい。」
口元を緩めた殿下は、しかし次の瞬間目を伏せられました。
「殿下?」
「姫が、恋をしたのだという。」
「…………それは、」
「あぁ。分かっている。私達の婚約は政略的なものだ。分かって、いるのだが、私は…。」
「それでわたくしに求婚を?」
「浅はかな男だと笑ってくれていい。姫との婚姻がなくとも、私達の国は健やかに脈々と続いていくことだろう。皆優秀であるからな。」
そう言って、殿下は深く溜息をつかれました。
「殿下。」
「すまない。其方は師匠によく似ている故、こんなことを口走ってしまった。」
「いえ、それは良いのですけれど…。」
お爺様に似てるとはどういう意味ですの?????
「あの、殿下、」
「御前失礼します。これはどういうことか、説明くださいますか、ガブリエル殿下。」
「ファウスト様!?」
「…意外に早かったな。」
「殿下!?」
もう、どういうことですの?????
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