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侯爵令嬢たるもの鷹揚に構えているべし!
しおりを挟むそういえば皆様、わたくしが誘拐事件の関係者として殿下に連行されましたことを覚えていらっしゃるでしょうか?
その後わたくしはファウスト様に教室までお送りいただき普通に授業を受け、普通に帰りましたのよ。シシリーさん達には誘拐犯がわたくしの名前を口にしたらしいとだけ告げさせていただきました。嘘は言っておりませんわ。流石に誘拐犯を捕まえる為に何日も路地裏に通ったなんて言えませんし、何故と問われても答えられませんから。
ちなみに誰が指示をされたのかといいますと、あの三人娘の内のお一人とだけお伝えしておきますわ。今回の事は命の危険すらあったことですから、家にも重い処罰を下されることになるでしょう。当の本人も既に学園を辞められていらっしゃるようでしたわ。
あまり楽しい話題ではなくてごめんなさいね。とりあえず、事件発生から早数週間。真犯人が判明し、処罰を下されるということで一段落ついた、といったところでございますわ。ですのでお伝えせねば、と。あとはメリルが学園に復帰してくださいましたら、元通り…あら?
「なんだかいつもより廊下が賑やかですわね?」
「えぇ。どうしたのかしら?」
「そうですね、気になりますし私見てきます。」
「でしたらわたくしも、」
「ティアはここで僕とシシリーさんとお留守番。よろしくね、エリンさん。」
「はい!」
立ち上がりかけたわたくしの手を引き、ファウスト様はそのまま椅子に座っているようにと促します。手を取られてしまったわたくしは、仕方なくエリンさんの帰りを待つことにしました。
あの、本当に今更だとは重々承知なのですけれど、ファウスト様はわたくしのクラスに普通に馴染みすぎではありませんこと?もうすぐ始業の鐘がなる頃ですのに…。
「なぁに、ティア。」
「いえ、なんでもございませんわ。」
「んー教室に帰るのはもう少し後かな。今廊下大変なことになってるだろうし。」
「何も言っておりませんわよ。」
「目がそう言ってた。」
咄嗟に目を瞑れば、両サイドから笑い声が。
「ティアナさん、それでは言ったも同然ですわ。」
「ティアは本当に面白いねぇ。」
頬をつつかれ目を開ければ、目を細めたファウスト様と軽やかに微笑むシシリーさんがこちらを見ておりました。
ファウスト様、シシリーさんはわたくしのお友達でしてよ!
「あら、私の居ない間に何やら楽しそうなことがあったみたいですね?」
「いいえ!それよりも廊下は如何でしたの?」
「えぇ、気になりますわ?後で教えてくださいませ!」
「もちろん。お話ししましょう。」
「ありがとうございます、シシリー様。えっと、それで廊下のことなんですけれど。」
そう告げて言葉を切ったエリンさんは、困惑した様子で、口を開きました。
「メリルさんが登校なされたようですわ。」
「まぁ!では怪我は治りましたのね。良かったですわ。」
「はい、恐らくは。遠目でしたから確実とは言えませんが。ただ、」
「ただ?」
先を促すようなシシリーさんの声に、エリンさんはわたくしとファウスト様を順番に見遣り、頬に手を添えて小さな声でわたくし達に教えてくださいました。
「その、殿下とご一緒に、登校されたようで…。」
「あら、まぁ!」
「メリルと殿下が。」
「へぇ、なるほどね。だからこの騒ぎか。」
「そのようですわ。」
納得した様子で廊下へと視線を向けるファウスト様は、そのまま立ち上がりわたくしの髪を撫でると扉の方へと歩き出されました。
「ティア、じゃあまたお昼休みに。」
「はい。」
…こんな展開、あったかしら?
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