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転生者たるもの状況整理をするべし!
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なんなんですの?より一層お二人が仲良くなられたのは良かったですけれど、それはそれ、これはこれ、ですわ!
あれから何をしようにもいつの間にかわたくしの役目を何方かが担っていらっしゃるし、ならばと助け舟を出そうとすれば殿下に取られてしまいますし、もう本当に意味が分かりませんわ。
ですが、何度かの経験を経て分かったこともございます。
ひとつ、この世界で重要なのはメリルと殿下であり、辻褄さえ合えば過程がどうであれ配役が違っていてもさほど問題が無いということ。
ふたつ、漫画で描かれた内容の物事は必ず起こるということ。
みっつ、エンディングは公然でメリルに殿下が告白すれば訪れるということですわ。
みっつめに関しましては確定では無いのですけれど、時期が違うのにも関わらず伏線を張れば物語通りの展開となりましたことと、漫画が殿下の告白をメリルが受け取るところで終わることから推察致しました。漫画はその後ちょっとしたエピローグがございますが、数年先のお話ですので今は考えなくても大丈夫かと。
ですが、そうですわね。一度情報を整理致しましょうか。
わたくしは3歳の頃階段を降りようとして足を滑らせ、頭を強く打ちました。その影響か、所謂前世の記憶というものを思い出したのです。同時にこの世界が漫画の世界もしくは漫画の物語を模した世界だということも、理解しました。そう、理解してしまったのです。
そこからは怒涛の日々でございました。己が一度命を落としたのだという事実の飲み込みと、異なる世界で悪役として生きる覚悟が出来上がるまでわたくしは常に怯え泣き喚き、終いには周囲の方々に当たり散らす始末。今にして思えば、きちんと向き合ってくれたお父様やお母様、お爺様や使用人、そしてファウスト様が居てくださったからこそ、わたくしは孤独に苛まれること無く生きてこられたのだと思います。
3歳のわたくしが数十年生きた私を受け入れ、その上でこの世界がわたくしの生きる世界であると、わたくしこそがティアナ・ローズであると認めた後、特に苦労したのは前世の常識とこの世界の常識の擦り合わせに迫り来る横文字の名前の羅列でした。何せ前世のわたくしは普通の家庭に生まれた普通の子でございました。貴族のマナーなど分かるはずもなく、加えて横文字に慣れないわたくしはただただ勉強の毎日を過ごすことになります。あ、これは誰に強制されたということはなく自主的にですわ。早くこの世界に馴染みたい一心でしたの。わたくしはたった3歳であったというのに。時折外へと連れ出してくださったファウスト様がいらっしゃらなかったら、わたくしはどうなっていたことか。…本当は、分かっているのです。ファウスト様が自由奔放に振る舞うのはわたくしの為だと。ファウスト様は幼い時分からわたくしの面倒をみてくださいました。時折郷愁に駆られるわたくしをこの世界に繋ぎ止め、未来を想像させることで、彼はわたくしを守ってくださっておりました。
でも、それももうおしまいでございます。
「ティアナ・ローズ嬢。」
物語は佳境。
「メリル・リリー嬢誘拐事件について話を聞きたい。ご同行願おう。」
悪役への粛清が、始まるのです。
「殿下のお心のままに。」
あれから何をしようにもいつの間にかわたくしの役目を何方かが担っていらっしゃるし、ならばと助け舟を出そうとすれば殿下に取られてしまいますし、もう本当に意味が分かりませんわ。
ですが、何度かの経験を経て分かったこともございます。
ひとつ、この世界で重要なのはメリルと殿下であり、辻褄さえ合えば過程がどうであれ配役が違っていてもさほど問題が無いということ。
ふたつ、漫画で描かれた内容の物事は必ず起こるということ。
みっつ、エンディングは公然でメリルに殿下が告白すれば訪れるということですわ。
みっつめに関しましては確定では無いのですけれど、時期が違うのにも関わらず伏線を張れば物語通りの展開となりましたことと、漫画が殿下の告白をメリルが受け取るところで終わることから推察致しました。漫画はその後ちょっとしたエピローグがございますが、数年先のお話ですので今は考えなくても大丈夫かと。
ですが、そうですわね。一度情報を整理致しましょうか。
わたくしは3歳の頃階段を降りようとして足を滑らせ、頭を強く打ちました。その影響か、所謂前世の記憶というものを思い出したのです。同時にこの世界が漫画の世界もしくは漫画の物語を模した世界だということも、理解しました。そう、理解してしまったのです。
そこからは怒涛の日々でございました。己が一度命を落としたのだという事実の飲み込みと、異なる世界で悪役として生きる覚悟が出来上がるまでわたくしは常に怯え泣き喚き、終いには周囲の方々に当たり散らす始末。今にして思えば、きちんと向き合ってくれたお父様やお母様、お爺様や使用人、そしてファウスト様が居てくださったからこそ、わたくしは孤独に苛まれること無く生きてこられたのだと思います。
3歳のわたくしが数十年生きた私を受け入れ、その上でこの世界がわたくしの生きる世界であると、わたくしこそがティアナ・ローズであると認めた後、特に苦労したのは前世の常識とこの世界の常識の擦り合わせに迫り来る横文字の名前の羅列でした。何せ前世のわたくしは普通の家庭に生まれた普通の子でございました。貴族のマナーなど分かるはずもなく、加えて横文字に慣れないわたくしはただただ勉強の毎日を過ごすことになります。あ、これは誰に強制されたということはなく自主的にですわ。早くこの世界に馴染みたい一心でしたの。わたくしはたった3歳であったというのに。時折外へと連れ出してくださったファウスト様がいらっしゃらなかったら、わたくしはどうなっていたことか。…本当は、分かっているのです。ファウスト様が自由奔放に振る舞うのはわたくしの為だと。ファウスト様は幼い時分からわたくしの面倒をみてくださいました。時折郷愁に駆られるわたくしをこの世界に繋ぎ止め、未来を想像させることで、彼はわたくしを守ってくださっておりました。
でも、それももうおしまいでございます。
「ティアナ・ローズ嬢。」
物語は佳境。
「メリル・リリー嬢誘拐事件について話を聞きたい。ご同行願おう。」
悪役への粛清が、始まるのです。
「殿下のお心のままに。」
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