4 / 44
悪役令嬢たるもの上から水をかけるべし…!
しおりを挟む
【作戦3 水をかける】
入学から3ヶ月。
この時期に漫画の中でわたくしは彼女に水をかけておりました。流石に冷たいお水をかけるというのはいくら夏だとはいえ風邪を引いてしまう可能性があります。けれど漫画では大事な場面ですもの、やらなくては。
せめてお湯、いえぬるま湯にしましょう。こう、お洋服の裾が濡れるくらいを目標にします。でもあんまり量が少なくても駄目ですわよね。漫画で描かれた水の半分くらい…このくらいかしら?
「う、重いですわ…!」
バケツを持てることには持てましたけれど、これ、普通に窓から捨てるなんて無理でしてよ。もう少し量を減らした方が良かったかしら。漫画の中のわたくしはどうやってあの大量の水を窓の高さまで持ち上げたのでしょう…?やっぱりフィクションはフィクションってことなのかもしれませんわ。
「ティア?」
「あらファウスト様、ごきげんよう。」
腕が震え出したところでファウスト様がやってきました。今このバケツを置いてしまえばもう持ち上げられないので、視線でのご挨拶で精一杯ですわ。ご容赦くださいまし。
「何してるの。」
「あちらの窓から水を捨てなければならないのです。」
「なんでティアがそんなことしなきゃいけないの?先生に頼まれたとか?」
「いいえ、わたくしの使命ですわ!」
「使命?あれ、あそこにいるのは…。なるほど。ティア、貸して。」
「ファウスト様?」
窓の外を見てひとつ頷いたファウスト様が軽々バケツを手に取り水を投げ捨てました。あの細腕であんなに軽々と…。あ、いえ、見惚れてる場合ではありませんわ!
「ちょ、ちょっとお待ちになってファウスト様!少しでいいのです。少しかかる程度で…!」
「ティア、それなんの意味があるの。あともう遅いよ。」
窓の外を見ればずぶ濡れのメリルさんが。ど、どうしましょう。早く殿下が来てくださらないかしら。
「ティアがやりたかったんでしょ?」
「でも、だって急に水が降ってきたら危ないし怖いでしょう?」
「…ティアは怖がらせるためにやるつもりだったんじゃないの。」
「それはそうなんですけれど…。」
「ティア、でも上手くいったみたいだよ。」
改めて窓の外を見ると、そこには仲睦まじいメリルさんと殿下の姿が。
「あら本当。なら、良かったのかしら?」
「僕のおかげだね。ご褒美ちょうだい。」
「後でオススメのお菓子を届けさせますわ。」
「んー、じゃあそれティアが持ってきてね。」
「?分かりました。」
絶対もう二度とファウスト様にお菓子を分けてあげません!!!あんな、あんな……!!
もう、今回の作戦は成功しましたのに!!!
入学から3ヶ月。
この時期に漫画の中でわたくしは彼女に水をかけておりました。流石に冷たいお水をかけるというのはいくら夏だとはいえ風邪を引いてしまう可能性があります。けれど漫画では大事な場面ですもの、やらなくては。
せめてお湯、いえぬるま湯にしましょう。こう、お洋服の裾が濡れるくらいを目標にします。でもあんまり量が少なくても駄目ですわよね。漫画で描かれた水の半分くらい…このくらいかしら?
「う、重いですわ…!」
バケツを持てることには持てましたけれど、これ、普通に窓から捨てるなんて無理でしてよ。もう少し量を減らした方が良かったかしら。漫画の中のわたくしはどうやってあの大量の水を窓の高さまで持ち上げたのでしょう…?やっぱりフィクションはフィクションってことなのかもしれませんわ。
「ティア?」
「あらファウスト様、ごきげんよう。」
腕が震え出したところでファウスト様がやってきました。今このバケツを置いてしまえばもう持ち上げられないので、視線でのご挨拶で精一杯ですわ。ご容赦くださいまし。
「何してるの。」
「あちらの窓から水を捨てなければならないのです。」
「なんでティアがそんなことしなきゃいけないの?先生に頼まれたとか?」
「いいえ、わたくしの使命ですわ!」
「使命?あれ、あそこにいるのは…。なるほど。ティア、貸して。」
「ファウスト様?」
窓の外を見てひとつ頷いたファウスト様が軽々バケツを手に取り水を投げ捨てました。あの細腕であんなに軽々と…。あ、いえ、見惚れてる場合ではありませんわ!
「ちょ、ちょっとお待ちになってファウスト様!少しでいいのです。少しかかる程度で…!」
「ティア、それなんの意味があるの。あともう遅いよ。」
窓の外を見ればずぶ濡れのメリルさんが。ど、どうしましょう。早く殿下が来てくださらないかしら。
「ティアがやりたかったんでしょ?」
「でも、だって急に水が降ってきたら危ないし怖いでしょう?」
「…ティアは怖がらせるためにやるつもりだったんじゃないの。」
「それはそうなんですけれど…。」
「ティア、でも上手くいったみたいだよ。」
改めて窓の外を見ると、そこには仲睦まじいメリルさんと殿下の姿が。
「あら本当。なら、良かったのかしら?」
「僕のおかげだね。ご褒美ちょうだい。」
「後でオススメのお菓子を届けさせますわ。」
「んー、じゃあそれティアが持ってきてね。」
「?分かりました。」
絶対もう二度とファウスト様にお菓子を分けてあげません!!!あんな、あんな……!!
もう、今回の作戦は成功しましたのに!!!
5
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
悪役令嬢予定でしたが、無言でいたら、ヒロインがいつの間にか居なくなっていました
toyjoy11
恋愛
題名通りの内容。
一応、TSですが、主人公は元から性的思考がありませんので、問題無いと思います。
主人公、リース・マグノイア公爵令嬢は前世から寡黙な人物だった。その為、初っぱなの王子との喧嘩イベントをスルー。たった、それだけしか彼女はしていないのだが、自他共に関連する乙女ゲームや18禁ゲームのフラグがボキボキ折れまくった話。
完結済。ハッピーエンドです。
8/2からは閑話を書けたときに追加します。
ランクインさせて頂き、本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
お読み頂き本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
応援、アドバイス、感想、お気に入り、しおり登録等とても有り難いです。
12/9の9時の投稿で一応完結と致します。
更新、お待たせして申し訳ありません。後は、落ち着いたら投稿します。
ありがとうございました!
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない
おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。
どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに!
あれ、でも意外と悪くないかも!
断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。
※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。
見ず知らずの(たぶん)乙女ゲーに(おそらく)悪役令嬢として転生したので(とりあえず)破滅回避をめざします!
すな子
恋愛
ステラフィッサ王国公爵家令嬢ルクレツィア・ガラッシアが、前世の記憶を思い出したのは5歳のとき。
現代ニホンの枯れ果てたアラサーOLから、異世界の高位貴族の令嬢として天使の容貌を持って生まれ変わった自分は、昨今流行りの(?)「乙女ゲーム」の「悪役令嬢」に「転生」したのだと確信したものの、前世であれほどプレイした乙女ゲームのどんな設定にも、今の自分もその環境も、思い当たるものがなにひとつない!
それでもいつか訪れるはずの「破滅」を「回避」するために、前世の記憶を総動員、乙女ゲームや転生悪役令嬢がざまぁする物語からあらゆる事態を想定し、今世は幸せに生きようと奮闘するお話。
───エンディミオン様、あなたいったい、どこのどなたなんですの?
********
できるだけストレスフリーに読めるようご都合展開を陽気に突き進んでおりますので予めご了承くださいませ。
また、【閑話】には死ネタが含まれますので、苦手な方はご注意ください。
☆「小説家になろう」様にも常羽名義で投稿しております。
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる