死が二人を分かたない世界

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魔界編:第14章

【幕間】《R-18》触れたり触れなかったりのところ

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「どう、おいしい?」
 ドキドキしながら自宅のリビングでユキにお茶を出した。
「ん……うまい」
 ユキは一口飲んだ後、確かめるように湯呑の中の匂いを楽しんでいた。

「カズヤが淹れる茶より、いい香りだ」
「へへっ、ハルキさんに教えてもらったんだ」
 水族館を作っている最中、新しい資料を取り寄せてくれているハルキさんとはよく顔を合わす。
 ユキにはハルキさんの仕事を手伝っている体で話しているから、何か仕事を教えて欲しいと頼んだら、教えてくれたのがおいしいお茶の淹れ方だった。
「僕としてはこう、もっと仕事を教えて欲しかったんだけど」
「だろうな」
 ユキはそんな僕たちのやり取りを想像したのか、おかしそうにクスクス笑った。

 確かにハルキさんは魔王様の秘書として、おいしいお茶を淹れることに割りと全力を注いでいるところがある。
 大事な仕事と言えばそうなのかもしれないけど、もっとこう……情報収集の仕方とか、存在を隠すようにして行動する方法とか、かっこいい仕事を教えて欲しかった。
 ユキにもっと食に興味を持ってほしいとか、おいしいものを作って喜ばせたいって計画もあるから、そっちの腕が上がるのも悪い事ではないけど。

 自分で淹れたお茶を飲もうと湯呑に顔を近づけると、フワッと香るお茶の香りに少し口元が緩んだ。
 ハルキさん程香り立つものは淹れられなかったけど、だいたい想像していた香りを表現できた気がする。
「ユキは事務所でよくお茶を飲んでるよね」
「あぁ、カズヤが淹れるから」
「あとは、コーヒーも飲むし、僕はまだ見てないけどお酒も飲むんでしょ? 食べるのは好きじゃないけど、飲み物は好きだよね」
「噛まなくていいからな」
 思っていた事とは違う返事がきて、ちょっとびっくりした。もしかして、ユキは噛むという動作を億劫に感じているんだろうか……。

 ユキがもう一口飲んで、今度は艶のあるため息をついてドキッとした。
 こころなしか、顔が赤い気がして、人には見せられないような色気も感じる。
「ど、どうしたの……?」
「……なんだ、俺をその気にさせるためじゃなかったのか?」
 ユキは苦笑するようにして僕を見たかと思うと、隣に座る僕に体をくっつけてきて、甘えるように体重を預けてくる。

 お茶を一緒に飲んでただけなのに、なんでスイッチが入っちゃったんだろうって思って、そういえばと思い出した。
「真里が淹れると、ただの茶で酔えそうだ」
 好きな人の魔力は媚薬のような効果をもたらす。
 はぁ……と熱い吐息を漏らして、ユキが僕の顎の下に手をかける。
 くいっと指が動いたら、ユキの唇が触れそうなほど近くなる……なのに触れない、もどかしい。
 ユキは魔力を使わなくても、僕をすぐにその気にさせてくる。ユキの腰に手を回して引き寄せて、僕からリードしてキスしようとしたら、ソファの背もたれに押し付けるようにキスされた。
 それは激しくて、そんな最中に足の間にユキの太ももが割り込んできて、思わず逃げるように腰が引ける。
「んっ……ふぅ、んん」
「真里、ここに立って……もっと気持ちよくしてやる」
 ユキは僕を脇の下から抱えてソファの上に立たせると、いつもの手際の良さであっという間に下着ごと脱がされてしまう。

「ユキ!? は、恥ずかし……」
 ベッドで寝ている時に脱がされるのはもう慣れたけど、立った状態で脱がされると恥ずかしさがまた違う。
 しかも、ユキの眼前に自分のものが晒されている状態だ……キスだけで興奮してしまった自分のものが!
 いたたまれなくて手で隠そうとすれば、当然のようにそれはユキによって阻まれる。両手を壁に押し付けられたら、ユキの人より少し長い舌が僕のを舐めた。
「――っ!!!」
 上目遣いで、僕に見せつけるように……手も使わずに妖艶に舐め回して、その姿を見て興奮した。
 気持ちいい、でもそれ以上にユキが自分のものを丹念に舐める姿に釘付けになる。ひとしきり舐められたかと思ったら、今度はその形の整った口の中に吸い込まれていく。
「あっ……はぁ……」
 瞬きをするのも忘れる、魅入ってしまう。いつもされている事なのに、見えないのと見えているのでは全然違う。
 すっかり抵抗する気がなくなった僕の手は壁から解放されて、僕は思わずユキのふわふわの犬耳の裏を撫でた。
 ピクッと反応したユキは、今度は僕のお尻の割れ目を潤滑剤で濡らした指で撫でてくる。

「ダ……メ! 両方したら」
 口ではそういっても、僕の体はその刺激を欲しがっていた。ユキの指が行き来するたびに、そこに触れるたびに、入ってきて欲しいと疼く。
「あっ、アッ! あぁぁ――ッ!!」
 ぬぐーっと指が奥まで入ってきて、下半身が痙攣する。水音を立てながら前と後ろを同時に責められて、僕は思わずユキの背中にすがりついた。
 イかされる、一方的に気持ちよくさせられてしまう! 僕だって、ユキを気持ちよくしたいのに……!
「僕も、したい」
 ユキの頭を掴んで言うと、ニヤリと口元に意地悪な笑みを浮かべてユキは僕のから口を離した。
「俺もしたいから、顔の上に乗ってくれるか?」
「――ッ!」
 ユキはいつも、僕が恥ずかしがると分かっていて、こういうことを言う。

 準備万端いつでも来いとばかりにユキがソファに寝転がって、両手を広げて待っている。さすがに顔の上にまたがるのは恥ずかしすぎるので、胸の上に跨る。
「もっと上に……」
 そう言いかけたのを遮るように、目の前にあるユキのズボンのベルトに手をかけた。
「真里に脱がされると、求められてるって気がしていいな」
 ユキは上機嫌で、僕の尻を撫でたり拡げたりしてくる。そんな熱い指先の動きひとつを意識しながら、ユキのズボンを膝までずり下ろしたら、ユキは器用に自分の足を使って脱ぎ切ってしまう。
 僕としても脱がせる行為は興奮するものだから、今度はユキにされる前に、自分が一方的に脱がしてしまおうかなんて内心画策した。

 ユキのものも十分興奮していて、口の奥まで含むと気持ちよさそうな吐息が漏れる。
 そんな声を聞いていると僕も興奮してしまって、もっと、もっとって気持ちになってきた。
 もっと翻弄したい、もっと気持ちよくしたい、ユキが僕にしてくれることをもっと……。

 ユキの太ももをグっと引き寄せて、その足の付け根を舐めた。直接男根を舐めるよりビクッと反応する。
 それに気分がすっかり良くなってしまって、舌をさらにその下へ……奥へと進ませた。
「まっ、待て! 真里ッ!」
 最初はすごく恥ずかしかったけど、されると堪らなくて、声が抑えられなくなって、気持ちいいところ。
「それ以上はッ……――ッッ!!!!」
 舌先がそこに触れた瞬間、ユキの体が過剰なほどにビクビクと震えた。僕の太ももを掴む手に力が入って、緊張しているのが手に取るようにわかる。
「やっ……め」
 そこのシワを伸ばすように、可愛がるように、舌先を動かすと必死で抑えるような声にならない声が耳に届く。

 抱えていたユキの太ももを持ち上げて、自分の頭をさらに下に潜り込ませて、もっと気持ちよくしたい……!
「あッ……ぅ……ッ」
 可愛い声が聞こえた、堪らない、もっと聞きたい、もっとしたい……中まで!
「わっ!?」
 ユキのお尻の谷の部分に両手の指をかけて拡げようとしたところで、ユキに思いっきり自分の尻を押されて強制的に口を離すことになった。
「それ以上は……ダメだ」
 声が震えていて、一瞬泣いているのかと思って、焦って後ろを振り返る。

 振り返った先にあったユキの表情は、顔を真っ赤にして少し涙目で、短く息を荒げて、でもその表情は恐怖ではなく快感の余韻が残っていて……。
 ゾクリとした、ユキに対して甘やかしたい、気持ちよくしたいって気持ちだけじゃなくて、このまましたらどうなるんだろうって気持ちが出てきた。
 嫌がってでも無理やり押さえつけて、ユキの体の中までもっと暴いてしまいたい……と。
 でもその思考は、部屋によく響いたパァンという音で霧散した。
「いったぁ!」
「いきなり……舐める奴やつがあるか!」
 思いっきりお尻を叩かれた!!

「指、入れるより怖くないかなって」
 へへっ、と誤魔化すように笑うと、恥ずかしくてたまらない、悔しい、してやられたって表情が浮かんでいた。
「最初から計画してたのか!? あんな、濃い真里の魔力を体に入れた後で……!」
「わっ! あぶなっ!」
 ユキが体を起こしてきて少し乱暴に背中を押されると、ソファから落っこちそうになって焦った。
 うつぶせになった腰を引き寄せられて、完全に形勢逆転させられてしまった。
 計画なんて全くなかったけど、ユキが僕と2回目にエッチな事をした時、気持ちよくなる薬を仕込んだ気持ちがちょっとわかった気がした。

 そのあとは案の定、ユキは照れからなのか誤魔化したいのか、顔を見せずに後ろから執拗に責め立ててきた。
 ちょっと舐めただけでこの反応なんだから、本当に僕が抱いてしまったらどれだけ照れるんだろう……と、楽しみ半分、不安半分だ。
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