死が二人を分かたない世界

ASK.R

文字の大きさ
上 下
173 / 191
魔界編:第13章

障る

しおりを挟む
 気付けば周りの木々はオレンジ色に照らされている様相で、本当に夕方になったみたいだった。

「すごい、綺麗……これも夕方っぽく見せてるだけなの?」
「あぁ、見せてるだけだな」
 縁側に座ったユキの膝を枕にして、横になりながらその景色を眺めていた。
「ここに居ると、魔界に居るってこと忘れちゃいそう」
 頬にあたるユキの素肌の太ももが気持ち良くて、思わず頬擦りした。すべすべで気持ちいい……!

 ユキにたくさん愛されて、僕がバテてしまったので今は少し休憩中だ。
 僕もユキも、軽く浴衣のようなものを羽織っている。素面のまま裸の状態でいるのは恥ずかしくて、僕からユキにお願いした。
 それでもユキは肩から羽織っているだけだから、ほぼ着てないに等しくて……時々目のやり場に困ったりする。

「実は、この休みの間にユキと現世に行きたいなって、そんなことも考えたんだ」
「現世か……」
「でもね、分かったんだ……ユキは現世があまり好きじゃないよね」
 ユキの膝の上で上を向くと、綺麗な顔が少し困ったように微笑んでいた。
「なんで、そう思った?」
「ユキを見てたらなんとなく、現世に居ちゃいけないって感じてるのかなって」

 自分が生まれた世界では異質な能力、それ故に異質だった周囲の環境。二度と戻りたくないと思ってもおかしくない……。
「少し前までは好きだったぞ、真里がいたからな」
 優しく頭を撫でられて、思わず目を瞑った。

 そういえば、生きてる時の僕に会いに来てくれてたんだよね……。
 ユキはどんな顔で、どんな感情で僕のことを見ていたんだろう。近くに居たのに、気付けなかった事が本当に悔しい。

 体を起こしてユキの後ろに回り込んで、その背中を抱きしめた。
 夢の中で会っていた時はそう変わらなかった背中の大きさは、当たり前だけど大人の広さになっていて……。
 いつもは頼れてカッコいいって思うけど、今日みたいに甘やかしたい時は、自分の小ささを痛感させられる。
 それでも立っている時より顔が近い。ユキはスタイルがいいから足が長いし、座っている時の方が身長差を感じない。

「どうせなら前から抱き合わないか?」
「まだダメ、前からだとユキにいたずらされちゃうから」
 ユキはなにかとすぐ膝の上に乗せたがるから、前から抱き合ったらそれだけじゃ済まなくなってしまう。

 まだまだ今日は長いから、あまり早くバテるわけにはいかない。夜もユキと一緒に過ごすために、適度に休憩しないと……でもユキはもっとしたそうだから。
「俺は抱きしめる方が好きなんだが」
「たまには甘えてよ」
 ユキのきれいなうなじにキスすると、小さく笑う声が聞こえた。
 黒髪から見える白い肌は魅惑的だ。ここに赤い印を残したいと思ってしまう……誘惑される。
 うなじにキスして吸い付くと、ユキの声が微かに漏れた。口を離すと僕の独占欲の印が残っていて、嬉しくて思わずそこにもう一度キスした。

「誘ってるよな?」
 ユキが振り返って僕を前に抱き寄せようとしてくるけど、ユキの背中にしがみついてそれを阻止した。
「中はまだ待って欲しいから、僕がする」
「まだお預けかぁ」
 ユキが残念そうに笑ったところで、前に回していた手でユキの感度の高い首筋の傷跡に触れた。
 ピクっと反応したユキは、僕が触れやすいように首を傾けてくれる。

 他の肌と感触の違うその跡に、羽毛で撫でるような感覚で触れると、少しユキの体が震えるのがわかった。
 膝立ちして首元にキスしてその場所を舐めると、明らかに熱くて甘い吐息が漏れる。
 着物の下のそこが反応してるのもわかっていたから、右手でその場所に布の上から触れた。

「直で触って」
 布の上から触っていた手を中に誘導されて、熱く硬くなっているそこを手で包んだ。
 上下に愛撫すれば、ユキの呼吸が次第に早くなっていくのを感じて愛しい。
 下を愛しながら、首の傷跡を舐めたらユキから艶かしい声が漏れる。

「……はっ、ぁ……真里、まだ駄目か?」
「もう少し待って」
 ユキがしたそうにしてるのは分かってるし、もちろん応えたいんだけど……。今は一方的にユキを触っている状況で、僕はそれを楽しみたいと思ってしまっている。
 ユキの気持ちいいところを同時に愛撫しながら、今度は後ろからユキの小さな乳首に触れると、フフッと今度は笑い声が漏れる。

「そこは笑ってしまう」
「そのうち気持ち良くなるよ、本当は舐めたいんだけど」
「じゃあ、前に来ればいいだろ」
 その誘いに乗ると、間違いなく捕まって簡単に組み敷かれてしまうのは目に見えてる。
「俺は真里の顔が見たい」
 こっちを振り向いたユキは少し照れるような顔をしていて、可愛くて思わずその唇にキスした。

「ユキ、ちょっと恥ずかしい?」
「まぁ……」
 気のないような返事をしながら、ユキが僕に体重を預けてきて、好きにしていいって許可を貰った気がした。
「でも、真里に触られるのは好きだ」
 そう言ったユキは前を向いてしまったけど、うなじが真っ赤に染まっていて……可愛くてたまらない!

 そのうなじにキスして、首筋を舐めれば、気持ちよさそうな反応が返ってくる。
 僕が握る手の上に手を重ねてきて、強く握って動きが激しくなる。
 えっ、そんなに強くして大丈夫!? なんてびっくりしてしまう……自分だったら間違いなく強すぎる刺激だ。

「真里、抱きたい」
 荒い息づかいでおねだりされて、グッときてしまう……! でも、今この状況を手放すのは勿体無い!
 ユキに一方的に愛撫できる状況で、ユキがそれを許してくれているのは本当に珍しい。

 だから、この機会に少しでも変化が欲しかった。
 いつでもこうやって僕がユキを可愛がる状況を、ユキが受け入れてくれるようにしたくて……。

「ユキ……お願い、触らせて」
 ユキのを握っていない左手で、その白い内腿を付け根に向かって撫でた。
「――はっ!?」
 ビクンと過剰に反応するのは、気持ちいいからじゃなくて怖いからだって分かってる。
「中は触らないから、触れるだけ……前みたいに『確認する』なんて名目なしに、ユキに触りたい」

「……っ、ぁ……」
 ユキは悩んでいるのか、肯定も拒絶も取れずに言葉に詰まる。
「怖い……よね? ユキが怖がってるのが他の男のせいだと思うと、すごく悔しいし……嫉妬する」
「嫉妬か……終わったら抱かせてくれるか?」
「うん、手加減なしで抱いてほしい」
 ユキの首元に甘えるようにしたら、喉が鳴ったのがわかった。今、何をしようか考えたのかな……。

「触るだけなら……いい」
 今度はユキが甘えるように、僕の肩に頭を乗せてきて、でも恥ずかしいのか目を逸らして言うから……! 可愛くて可愛くて、その頬にキスした。
「ユキ可愛い、大好き」
「ん……」
 照れたように素っ気ない返事をするのも、いつもとは違う反応で可愛さを増幅させている!

「大好き、ユキ……好きだよ」
 握っている右手の動きを再開させつつ、左手で手触りの良い内腿を何度も撫でた。
 ユキもよく僕の太ももを撫でるけど、好きな人の太ももってずっと撫でていられる。撫でられると気持ちいいのも知ってるし、期待しちゃうのも知ってる。ましてやその指が付け根にきた時には……。

 グッと付け根に指を食い込ませると、ユキの体がビクンと跳ねた。
「怖い? 触るだけだよ」
「うっ……真里」
 少し声が震えていて、でもその声には恐怖だけじゃなくて甘えるような声も孕んでて……心臓がビックリするくらいドキドキした。
「ここ、離さないでくれ」
 そう言いながら僕の右手から離れたユキの手は、僕を探すみたいに後ろに回ってきて、その手に頬を当てた。
 するとユキは、安心するみたいにはぁ……と息を吐いて、僕の顔を撫でていく。

「真里……」
「ユキ、愛してる……可愛い、もっと甘えて」
 ユキの手のひらにキスをして、できる限りの優しい声で愛を伝えて、安心させてあげたかった。
 触れ合うことに怖いことなんてない、僕はユキに怖いことなんてしない、身を任せてほしい……そんな気持ちを込めて。

「俺も……真里、ぁ――ッ!」
 付け根に置いていた指を移動させた、ゆっくり濡らしながら……呼吸は出来るだけ整えて、高揚感に任せたら怖がらせてしまう!
「触るね」
「うっ……」
 指先が触れた……ユキのキュッと固く閉ざしたそこに……!
「ユキ、触ってるのは僕だよ……分かる? 怖くない?」
「……っくない、けど……恥ずかし……い」
 ユキは恥ずかしさを誤魔化すように首を前に落として、うなじがまたあらわになった。
 そこにキスして、ずっと好きだよ、愛してるって言いながら、ユキのそこに何度も指を往復させた。

 初めは中心に触れるたびにビクンッと跳ねていたけど、しばらくすると落ち着いてきて、次第に呼吸が短くなっていく。
 そんなユキの様子に、欲が出た。触るだけなんて約束しなければよかったと思った……前よりもっと奥まで、ユキに触れたい……!
 ユキの首や頬にキスして、その気にならないかって期待した。
「まだ恥ずかしい?」
「恥ずかしいだろ、こんなの……!」

 自分はいつも僕にしてるのにって、思わず口元がニヤける。
「もっと触りたい」
「――ッ!!」
 ユキは自分から望んでいないから、僕が触りやすいような体勢をしてくれてはいない。
 地面に出来るだけ近くして、奥まで触られないようにしようとしている節さえあった。

「ユキの奥……ダメ?」
 もっと恥ずかしがるかもしれない……そう分かってはいたけど、右手をユキの膝の裏に差し込んで、グッと引き寄せた。
 こんな格好、絶対恥ずかしいよね……でも、これを受け入れてくれたら……! そんな自分勝手な欲望で、ユキのそこに触れた。
「あっ!? ……っあ」
 その声を聞いた瞬間、僕の血の気は引いた。

 恐怖。
 強い、拒絶と恐怖の感情が流れ込んでくるみたいだった。

 顔を見れば真っ青で、震える体からはさっきまでの熱は消えていた。
「い……やだ!」
「ごめん! ユキごめん!! もうしない!」
 慌てて両腕で抱きしめて、必死で謝った。
 許してくれないんじゃないかと思うほど、強いユキからの拒絶を感じ取ってしまった……!

 ユキの体の震えは治らなくて、謝るくらいじゃ足りないと思った。
 多分ユキのトラウマに触れてしまった……どうしよう、もう許してもらえないかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話

ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。 悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。 本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

捨てられ子供は愛される

やらぎはら響
BL
奴隷のリッカはある日富豪のセルフィルトに出会い買われた。 リッカの愛され生活が始まる。 タイトルを【奴隷の子供は愛される】から改題しました。

【完結】好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした

金色葵
BL
大学一のイケメン神崎大河(攻)に一目惚れした青木遼(受) 王子様のような美貌の持ち主、実はド天然で相当なドジっ子の攻め。 攻めのお世話を甲斐甲斐しく焼く、無自覚世話焼きツンデレ受けの話。 ハイスペックドジっ子イケメン(溺愛)×行き過ぎた世話焼きツンデレ(べた惚れ) 相性シンデレラフィットの二人が繰り広げる激甘ラブストーリー 告白、お付き合い開始、初デートから初エッチまでをお送りする甘々ラブコメストーリーです。 中編(トータルで6万文字程を予定) ハッピーエンド保証 R-18は最後の方になります。

Candle

音和うみ
BL
虐待を受け人に頼って来れなかった子と、それに寄り添おうとする子のお話

処理中です...