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魔界編:第11章
真里と菖寿丸
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殴りつけられた後に胸に広がる液体が、経験の浅い僕でもわかるほどおぞましく、触れてはならないものだとわかった。
こいつのせいで全身の魔力が閉ざされる……! どうしよう、どうしたら!? 胸元を中心に、次第に体が動かなくなっていく!!
「あっ……うっ……!」
「そこで見てろ」
「――っ!!!」
覇戸部がユキに向かっていく、何をするつもりで……! まさか、僕の目の前でユキに乱暴するつもりなんじゃ……!
ユキがピクっと動いたような気がした、起きて……起きてユキ!
今すぐ助けに行きたいのに、体がどんどん動かなくなっていく! もう声を出すことも出来ない……ッ! ユキ……イヤだ、これ以上ユキを傷つけるな……! 動け、僕の体……動けよ!!!
『……け、聞け真里……、俺の声を!』
思考がおぼろげになるにつれて、胸の奥底から声が聞こえた……自分の声とあまりにも似た、これは菖寿丸の声?
『俺の存在を意識しろ、動かないことも、魔王も、ゆきまるのことも気にするな』
気にするなって……今一番僕が気にしてるのはユキだよ! それになんで魔王様……!?
『俺の存在を、形を意識して、手を伸ばせ……力を貸す!』
硬くて真っ暗で動きそうもない闇の中に、くっきりとその存在が浮かんでいた。
助けを求めるようにその存在に手を伸ばせば、向こうからも手が伸びてきて、触れ合った瞬間、重くのしかかっていたような魔力から解放された。
「ユキに……触るなああああっ!」
僕の声に驚いた様子の覇戸部は、こっちを振り返った。伸ばした手の中で何かが構築されていく感覚がするけど、僕は造形をイメージしていない。体が勝手に動いてる……!
周囲から熱い炎が集まってきて、細長く形を形成していく。
あっという間に手の中に出来上がったものは弓で、構えれば自然と矢が現れた。
弓道の経験もないのに、覇戸部目掛けて弓を引けば、スパンと音を立てて奴の帽子を拐って壁に突き刺さる。
帽子は燃え上がり、真っ黒になってボロッと崩れ落ちた。
これは僕の実力じゃない……全て菖寿丸のものだ。でも不思議と怖さは感じなかった。
「なぜ……動けるんだ?」
「――っ、それ以上ユキに近づいたら頭を射る」
自分の意思で話すことはできる、自分が菖寿丸に乗っ取られたという感覚はない……僕は僕のままだ。
覇戸部が手のひらに魔力を集めるのが見えて、僕を失神させようと準備していた。
あの手は危ない、あれに掴まれたら死んだように意識を失ってしまう……!
その手を射ようと構えた時、既に至近距離まで詰められていた。
っ……とに大きいくせに無駄に速い!
手の中の弓が太刀に変わって、鞘に入ったままの刀を両手で掴んで、その腹を殴打しようとした。
しかしそれは簡単に掴まれて、僕の首元に奴の大きな手が迫る。
掴まれた刀に一本筋を通すように魔力を注ぐと、鞘が激しく燃え上がり、そのあまりの勢いに覇戸部は怯んでその手を離した。
その瞬間に、鞘から抜いた刀で水平に切り付けようと一歩踏み込めば、覇戸部は後ろに大きく飛び退って距離を取る。
僕が手を振れば目の前にお札が五枚形成されて、それが燃え上がり覇戸部目がけて飛んでいくと、驚いた顔をしたアイツは三枚を弾いて、一枚を避けた。
避け損ねた一枚が肩に当たってその場所を燃やしたが、魔力相殺ですぐに鎮火される。
その隙を突くように、一足飛びに上から刀を振り下ろしたが、刀身に当たったのは床だった。
ちょこまかと避けるわりに、ユキの周りから離れようとしない。
当然だ、僕もあいつも隙さえあれば、ユキを連れて転移陣で逃げるつもりなんだから。
「クソッ……」
さっきまで無表情か、薄く笑って余裕そうだった覇戸部の顔は、余裕がなくなってきている。
チラチラと僕の頭の上を気にしていて、眉間を寄せる。
初めは現れる耳を見て、防御のタイミングを測ろうとしているんだろうと思っていたけど、離れた位置にある小さな鏡に、自分が映っているのが見えた。
こんなにも全力で魔力を使っているのに、ユキの魔力を受け継いだ犬耳が発現していない……?
『今は、ゆきまるから与えられた魔力を封印している状態だ、耳が現れることはないよ』
それは、覇戸部との戦闘を優位にするため?
『いいや、あの液体は特定の魔力の活動を停止させるものだ……おそらく魔王の力だろう』
つまり、ユキを動けるようにするには、魔王様から授かった力を使わせなければいいんだね?
『その通りだけど、今動けないのは魔力の枯渇が主な原因だな』
それなら、早く魔力を供給してあげないと……!
菖寿丸の声と問答をしているのに、自問自答を頭の中で繰り広げている感覚だ。
自分の中にもう一人いるっていうのに、まるで違和感がない。
覇戸部に向かって指を振るえば、一直線に炎のレールが走った。
二本目、三本目と燃える攻撃を行えば、僕がそういった攻撃をするものだと思い込むだろう。
実際煩わしい事に、ユキから遠ざからない方向に意識して避けてくる。
これでユキから離れてくれれば、それが一番よかったんだけど……!
覇戸部が交わした瞬間に回避先へ一本打ち込み、同時に二本目をユキの元へと走らせた。
「何をっ!」
覇戸部がギョッとした顔をして、自分に炎が燃え移るのも厭わずユキの元へ駆け寄るような動きを見せた。
さっきはユキを乱暴に扱っていたっていうのに、今度は身を挺して庇う気なのだろうか。
「残念、そっちは気付け薬だ」
その台詞は僕が意図したものではなく、菖寿丸に喋らされたと気付いて、思わず口を塞いだ。
ユキに触れた瞬間、淡く光る陣が展開されて、僕の足元と繋がったユキに魔力を供給する。
「ユキ! 起きて!」
直接触れていない供給は多く与えられない……でも、意識を取り戻すくらいは……!
覇戸部は燃え移った炎を消しながら、目的を魔力供給の阻止に切り替えるようにユキへと近づいていく。
でも触れようとした瞬間、その手は陣に強く反発されて弾かれた。
「うっ……」
微かだけど、ユキの声が聞こえてホッとした。あと少しで目を覚ますはず。
ユキに繋がる魔力の導線に、グッと多めに魔力を注いで、今度は僕を仕留めるのに向かってきた覇戸部を迎え撃つ。
刀を振る暇はなく、上からくる覇戸部に刃を構えると、刀身を折るためか真上から素手で拳を振り下ろしてきた!
刀に素手でゲンコツするって……! どういう神経してんだ……!
僕が意識を失わない限り、ユキの周りにある陣は解除されない、このままじゃユキに触れることさえできない。焦った覇戸部は、僕の獲物の破壊に来たらしい……素手の勝負だったら、僕に勝てると思っているんだろう。
「誰だ……お前」
刀を破壊される前に、燃やしたプレッシャーをぶつけようとすると、また防がれて後ろへと逃げられる。
耳は発現しなくなったはずなのに、勘がいいのかなかなか通じない。
「別人みたいで、同じだな……なんだ」
しかもさっきから菖寿丸に気付いているみたいだ。
「……さと、……――じゅ」
愛しい人が呼ぶ声が聞こえて、見ればユキが上半身を起こそうとしているところだった。
胸の奥底が震えた……これは菖寿丸……? 名前を呼ばれて嬉しいって気持ちが伝わってきて、その感情は僕の気持ちも奮い立たせた。
「ユキ……!」
僕がユキに気を取られている間に、覇戸部が距離を詰めてきていて、とっさに刀を振るった。
ゲンコツの次は、素手でそれを受け止められて、片手で簡単に折られてしまった。
さっきのでヒビが入ってたんだ……!
まずいと後ろに逃げようとしても壁で、また僕は胸元の服を掴まれてしまった。
また叩きつけられる? それとも気絶させられる!?
その手を切り落としてやろうと、また刀の生成を試みたところで、ズンッと重く暗いプレッシャーが周囲を包んだ。
覇戸部の肩の向こう側で、黒く渦巻く犬神のモヤに包まれたユキが立っていた。
その姿はユキ自身というより……まるで雪代が動かしているみたいで、ゾクっと鳥肌がたった。
目の前に居る覇戸部も真っ青な顔をして、僕を片手で掴み上げたままユキの方へ振り向いた。
その瞬間、ユキが威嚇の動作をとって、覇戸部の全身から真っ黒な棘が……!
「がっ……!」
僕をきれいに避けるように、地面から生えた無数の棘が覇戸部の体を貫いていた。
少し浮いていた体は地面に足をつけて、その足元に完全に白目を剥いた覇戸部が崩れ落ちてきた。さすがにもう起きそうにない。
それでもあれだけしぶとかった相手だから、警戒して跨ぎつつユキへと駆け寄った。
「ユキ!」
両手を広げてユキを抱きしめようと走った、ユキは膝をついて今にも倒れそうになりながら、僕に手を伸ばしていて……やっと触れられると思ったら涙が出てきた。
しゃがんで、ユキを支えるように抱きしめると、ユキは弱々しい力で僕を抱き返してきた。
ユキを安心させたくて、僕から目一杯ギュッと強く抱きしめた。
「ユキッ……!」
「っ……さと!」
声が掠れてる……魔力もカツカツだ……! さっき回復させた分を、あいつを仕留めるのに使ったから……!
ユキが顔を近づけてきて、求められるまま唇を重ねた。触れた唇も、僕を抱きしめる腕も、いつも温かい胸元も全部が冷たい。
ユキに少しでも魔力を注げるように、口からたくさん分け与えられるように深く口付けて、魔力を送り込んだ。
「足りない……真里」
ユキに意図的に体重をかけられて、僕はそのまま後ろに押し倒された。
ユキの冷たい手が服の中に入ってきて、背中を撫でていく。かと思えば、もう片方の手は僕のズボンの中に……!?
「んんっ~!!」
口は離してくれなくて、飢えた獣のように僕を貪る。そんなキスをされただけでも、体が熱くなってしまうのに……!
お尻の割れ目を指で撫でられて、体がビクッと反応してしまう。
まさかこんな状況で、これ以上の事を求められてるんじゃ……!?
こいつのせいで全身の魔力が閉ざされる……! どうしよう、どうしたら!? 胸元を中心に、次第に体が動かなくなっていく!!
「あっ……うっ……!」
「そこで見てろ」
「――っ!!!」
覇戸部がユキに向かっていく、何をするつもりで……! まさか、僕の目の前でユキに乱暴するつもりなんじゃ……!
ユキがピクっと動いたような気がした、起きて……起きてユキ!
今すぐ助けに行きたいのに、体がどんどん動かなくなっていく! もう声を出すことも出来ない……ッ! ユキ……イヤだ、これ以上ユキを傷つけるな……! 動け、僕の体……動けよ!!!
『……け、聞け真里……、俺の声を!』
思考がおぼろげになるにつれて、胸の奥底から声が聞こえた……自分の声とあまりにも似た、これは菖寿丸の声?
『俺の存在を意識しろ、動かないことも、魔王も、ゆきまるのことも気にするな』
気にするなって……今一番僕が気にしてるのはユキだよ! それになんで魔王様……!?
『俺の存在を、形を意識して、手を伸ばせ……力を貸す!』
硬くて真っ暗で動きそうもない闇の中に、くっきりとその存在が浮かんでいた。
助けを求めるようにその存在に手を伸ばせば、向こうからも手が伸びてきて、触れ合った瞬間、重くのしかかっていたような魔力から解放された。
「ユキに……触るなああああっ!」
僕の声に驚いた様子の覇戸部は、こっちを振り返った。伸ばした手の中で何かが構築されていく感覚がするけど、僕は造形をイメージしていない。体が勝手に動いてる……!
周囲から熱い炎が集まってきて、細長く形を形成していく。
あっという間に手の中に出来上がったものは弓で、構えれば自然と矢が現れた。
弓道の経験もないのに、覇戸部目掛けて弓を引けば、スパンと音を立てて奴の帽子を拐って壁に突き刺さる。
帽子は燃え上がり、真っ黒になってボロッと崩れ落ちた。
これは僕の実力じゃない……全て菖寿丸のものだ。でも不思議と怖さは感じなかった。
「なぜ……動けるんだ?」
「――っ、それ以上ユキに近づいたら頭を射る」
自分の意思で話すことはできる、自分が菖寿丸に乗っ取られたという感覚はない……僕は僕のままだ。
覇戸部が手のひらに魔力を集めるのが見えて、僕を失神させようと準備していた。
あの手は危ない、あれに掴まれたら死んだように意識を失ってしまう……!
その手を射ようと構えた時、既に至近距離まで詰められていた。
っ……とに大きいくせに無駄に速い!
手の中の弓が太刀に変わって、鞘に入ったままの刀を両手で掴んで、その腹を殴打しようとした。
しかしそれは簡単に掴まれて、僕の首元に奴の大きな手が迫る。
掴まれた刀に一本筋を通すように魔力を注ぐと、鞘が激しく燃え上がり、そのあまりの勢いに覇戸部は怯んでその手を離した。
その瞬間に、鞘から抜いた刀で水平に切り付けようと一歩踏み込めば、覇戸部は後ろに大きく飛び退って距離を取る。
僕が手を振れば目の前にお札が五枚形成されて、それが燃え上がり覇戸部目がけて飛んでいくと、驚いた顔をしたアイツは三枚を弾いて、一枚を避けた。
避け損ねた一枚が肩に当たってその場所を燃やしたが、魔力相殺ですぐに鎮火される。
その隙を突くように、一足飛びに上から刀を振り下ろしたが、刀身に当たったのは床だった。
ちょこまかと避けるわりに、ユキの周りから離れようとしない。
当然だ、僕もあいつも隙さえあれば、ユキを連れて転移陣で逃げるつもりなんだから。
「クソッ……」
さっきまで無表情か、薄く笑って余裕そうだった覇戸部の顔は、余裕がなくなってきている。
チラチラと僕の頭の上を気にしていて、眉間を寄せる。
初めは現れる耳を見て、防御のタイミングを測ろうとしているんだろうと思っていたけど、離れた位置にある小さな鏡に、自分が映っているのが見えた。
こんなにも全力で魔力を使っているのに、ユキの魔力を受け継いだ犬耳が発現していない……?
『今は、ゆきまるから与えられた魔力を封印している状態だ、耳が現れることはないよ』
それは、覇戸部との戦闘を優位にするため?
『いいや、あの液体は特定の魔力の活動を停止させるものだ……おそらく魔王の力だろう』
つまり、ユキを動けるようにするには、魔王様から授かった力を使わせなければいいんだね?
『その通りだけど、今動けないのは魔力の枯渇が主な原因だな』
それなら、早く魔力を供給してあげないと……!
菖寿丸の声と問答をしているのに、自問自答を頭の中で繰り広げている感覚だ。
自分の中にもう一人いるっていうのに、まるで違和感がない。
覇戸部に向かって指を振るえば、一直線に炎のレールが走った。
二本目、三本目と燃える攻撃を行えば、僕がそういった攻撃をするものだと思い込むだろう。
実際煩わしい事に、ユキから遠ざからない方向に意識して避けてくる。
これでユキから離れてくれれば、それが一番よかったんだけど……!
覇戸部が交わした瞬間に回避先へ一本打ち込み、同時に二本目をユキの元へと走らせた。
「何をっ!」
覇戸部がギョッとした顔をして、自分に炎が燃え移るのも厭わずユキの元へ駆け寄るような動きを見せた。
さっきはユキを乱暴に扱っていたっていうのに、今度は身を挺して庇う気なのだろうか。
「残念、そっちは気付け薬だ」
その台詞は僕が意図したものではなく、菖寿丸に喋らされたと気付いて、思わず口を塞いだ。
ユキに触れた瞬間、淡く光る陣が展開されて、僕の足元と繋がったユキに魔力を供給する。
「ユキ! 起きて!」
直接触れていない供給は多く与えられない……でも、意識を取り戻すくらいは……!
覇戸部は燃え移った炎を消しながら、目的を魔力供給の阻止に切り替えるようにユキへと近づいていく。
でも触れようとした瞬間、その手は陣に強く反発されて弾かれた。
「うっ……」
微かだけど、ユキの声が聞こえてホッとした。あと少しで目を覚ますはず。
ユキに繋がる魔力の導線に、グッと多めに魔力を注いで、今度は僕を仕留めるのに向かってきた覇戸部を迎え撃つ。
刀を振る暇はなく、上からくる覇戸部に刃を構えると、刀身を折るためか真上から素手で拳を振り下ろしてきた!
刀に素手でゲンコツするって……! どういう神経してんだ……!
僕が意識を失わない限り、ユキの周りにある陣は解除されない、このままじゃユキに触れることさえできない。焦った覇戸部は、僕の獲物の破壊に来たらしい……素手の勝負だったら、僕に勝てると思っているんだろう。
「誰だ……お前」
刀を破壊される前に、燃やしたプレッシャーをぶつけようとすると、また防がれて後ろへと逃げられる。
耳は発現しなくなったはずなのに、勘がいいのかなかなか通じない。
「別人みたいで、同じだな……なんだ」
しかもさっきから菖寿丸に気付いているみたいだ。
「……さと、……――じゅ」
愛しい人が呼ぶ声が聞こえて、見ればユキが上半身を起こそうとしているところだった。
胸の奥底が震えた……これは菖寿丸……? 名前を呼ばれて嬉しいって気持ちが伝わってきて、その感情は僕の気持ちも奮い立たせた。
「ユキ……!」
僕がユキに気を取られている間に、覇戸部が距離を詰めてきていて、とっさに刀を振るった。
ゲンコツの次は、素手でそれを受け止められて、片手で簡単に折られてしまった。
さっきのでヒビが入ってたんだ……!
まずいと後ろに逃げようとしても壁で、また僕は胸元の服を掴まれてしまった。
また叩きつけられる? それとも気絶させられる!?
その手を切り落としてやろうと、また刀の生成を試みたところで、ズンッと重く暗いプレッシャーが周囲を包んだ。
覇戸部の肩の向こう側で、黒く渦巻く犬神のモヤに包まれたユキが立っていた。
その姿はユキ自身というより……まるで雪代が動かしているみたいで、ゾクっと鳥肌がたった。
目の前に居る覇戸部も真っ青な顔をして、僕を片手で掴み上げたままユキの方へ振り向いた。
その瞬間、ユキが威嚇の動作をとって、覇戸部の全身から真っ黒な棘が……!
「がっ……!」
僕をきれいに避けるように、地面から生えた無数の棘が覇戸部の体を貫いていた。
少し浮いていた体は地面に足をつけて、その足元に完全に白目を剥いた覇戸部が崩れ落ちてきた。さすがにもう起きそうにない。
それでもあれだけしぶとかった相手だから、警戒して跨ぎつつユキへと駆け寄った。
「ユキ!」
両手を広げてユキを抱きしめようと走った、ユキは膝をついて今にも倒れそうになりながら、僕に手を伸ばしていて……やっと触れられると思ったら涙が出てきた。
しゃがんで、ユキを支えるように抱きしめると、ユキは弱々しい力で僕を抱き返してきた。
ユキを安心させたくて、僕から目一杯ギュッと強く抱きしめた。
「ユキッ……!」
「っ……さと!」
声が掠れてる……魔力もカツカツだ……! さっき回復させた分を、あいつを仕留めるのに使ったから……!
ユキが顔を近づけてきて、求められるまま唇を重ねた。触れた唇も、僕を抱きしめる腕も、いつも温かい胸元も全部が冷たい。
ユキに少しでも魔力を注げるように、口からたくさん分け与えられるように深く口付けて、魔力を送り込んだ。
「足りない……真里」
ユキに意図的に体重をかけられて、僕はそのまま後ろに押し倒された。
ユキの冷たい手が服の中に入ってきて、背中を撫でていく。かと思えば、もう片方の手は僕のズボンの中に……!?
「んんっ~!!」
口は離してくれなくて、飢えた獣のように僕を貪る。そんなキスをされただけでも、体が熱くなってしまうのに……!
お尻の割れ目を指で撫でられて、体がビクッと反応してしまう。
まさかこんな状況で、これ以上の事を求められてるんじゃ……!?
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