死が二人を分かたない世界

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魔界編:第10章

《R-18》コンプレックス

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 ユキに『いただきます』と言われて、食べられるみたいにキスされて、舌を吸われて甘く噛まれて……その度に、ピリピリと甘い刺激に震える。
 ユキから与えられる刺激は気持ちいい……ユキなら、本当に僕のことを食べちゃっても、きっと気持ち良くしてくれるんだろう。

 ユキになら、食べられてみたいな……。

 ぐっと押しつけられて、ユキが入ってくる瞬間が一番ドキドキする。
「あぁっ……あっ!」
「可愛い」
 ユキの手が頭の下に入ってきて、逃さないって感じで抱きしめられて、熱いユキが僕の中に入ってくる……!
「ああぁぁっ……んっ! ぁっ……!」
 入ってくる時は少し荒々しくて、でも奥まで全部入ったら、嬉しそうに笑いかけてくるから……僕も嬉しくて、思わず口元が緩んでしまう。
 
「さっきはひとりで満足できたか? 俺が欲しくなかった?」
「……欲し、かった」
「そうだろう? 二人の方が気持ちいいからな」
 頭を撫でられながらキスされて、その手も唇もすごく優しいのに、下から突き上げる律動は僕の一番奥を暴こうとしてくる。

 ユキが僕の中で動く度に、気持ち良すぎて下半身が震える……! 僕の中を誰よりも知っている動きで、僕の気持ちいいところを突いてくるから……中にいるユキの形まで感じるくらいに、意識を集中してしまう。

 動いてる、僕の中で……僕の好きなとこばっかり……好き、気持ちいい、好き……! ユキと気持ちいいことするの、好き……!
「あっ、あっ……あっ! ユ……キ、気持ちぃ……んっ!」
 思わず出てしまう甘えた声を我慢せずに、その背中にぎゅうっとしがみついたら、ユキからはぁ……と艶かしい吐息が漏れる。

 その顔が見たくて目を開いたら、僕を下に敷くその顔はさっきの優しい顔から、僕を貪ろうとするものに変わっていて、細い体なのに力強くて、それは大人の男で……!

 「あっ……あっ!!!」
 ゾクゾクっと背筋が震えた。肉がぶつかり合う音がするほど激しく突き上げられて、頭が真っ白になる!
 短くはぁっ、はぁっと息を吐きながら、一番奥に押し込まれて、ぐりぐりと押し付けられて……! 気持ち良過ぎておかしくなりそう。

 僕を捕まえて抱きしめる腕も、僕を求めてるその目も、僕を奥まで開いてくる力強さも……ユキは男なんだと感じさせる。

 カッコいい……もっと、もっとめちゃくちゃにされたい……!

「フフッ、どうした? また一段と気持ちのいい匂いになったな」
「んっ……あっ……好き……ユキ、好きぃ……っ!」
「俺も大好きだ……可愛いな真里」

 ユキの事、カッコいいなんて毎日思ってる。でもこれまでは可愛いとか、愛しい方って感情の方が強くて……。
 抱く、抱かれるなんて話をすれば、嫌でも意識するユキの男の部分に、心臓が耳から出るんじゃないかってほどドキドキする。

 もっとされたい……ユキに乱されたい!

 両足を抱えられて、肩に担ぐようにされたらもっと深くなって……!
「あっ!!! ユキッ……! それだめぇ……」
「ここ、好きだろ?」
 グリグリと奥を刺激されて、ゆっくりと引き抜かれて、また奥まで差し込まれて……!
「あぁっ、クる! すごいのクるっ! イッちゃう……!」
「いいよ、全部見せて」

 優しい声と顔で、僕の弱いところを押し潰してきて……! 担がれた足でユキを引き寄せるようにして、自分の熱を吐き出した。

 僕の震えがおさまる頃に、ユキが自身をゆっくりと抜いて、過敏になった僕の身体はビクビクと跳ねた。全身感じすぎて、今は何されてもイきそう……!

 ぐったりとする僕の服を、ユキは簡単に脱がせて、ベッドの外へ放り投げた。
 ユキもそそくさと服を脱いで、その白い肌が露わになるのを考えられない頭で眺めていると、ユキは僕の横に裸で寝転んで、ギュッと抱きしめてくる。

「あぁ、やっぱり生肌がいいな……真里の体は温かい」
「僕も、こっちの方が好き」
 ユキにすり寄って甘えれば、頭に頬擦りするように甘やかしてくれる。
 それでもまだイッてないユキのは、硬く主張していて……。手に触れたソレを、思わず手のひらで包み込む、

「ユキ、まだイッてないよ……?」
「んー……じゃあ、ゆっくりするから入っててもいいか?」
 チュッとおでこにキスされて、静かに頷いた。
 片足を持たれて、お互い寝転がったままゆっくりとユキが入ってくるのを感じて……ゆっくりするのも繋がってるって感じがして、気持ち良くて、心が満たされていく。

 いっぱいイかされて、ユキのを中で受け止めてたら、脱力感でベッドから動けない。
 最中ずっと僕を突き上げていたユキは、何ともなさそうにケロッとしていて、僕を腕枕したままあちこち触って悪戯してくる。

「ふふふっ、もうくすぐったいよ」
「可愛いなぁ真里……ずっとこうしていたいな」
 チュッチュッとあちこちにキスされて、頭を撫でられて、愛してるよと囁かれて……。

 幸せを感じながら、唐突に思い出した。

 こんな人を……僕が……抱く!? 無理ッ……! 無理だよ……! 僕はこんなスマートに出来ないし、カッコ良くないし、こんなチビで幼い僕がやっても滑稽なだけだ! 何やったって格好がつかない!

「どうした? 急に顔を隠して……俺の事大好きだって匂いさせて……また抱きたくなるだろ?」
「……大好き」
「それは抱いてもいいってことか?」
 ううっ……抱いてください……!

 今日ユキが帰ってきたら、あの事で話をしたいと思ってたけど……! 自信喪失というか、言うに言えないと言うか……なんて切り出せばいいかわからないよ! もう話題に上げる事すら難しい。

「なんだ、何か話したそうだな」
「あ……あの」
「今日、俺が言ったあの話だろ?」
 ユキにはお見通しだよね、恥ずかしいなと思いながらもゆっくりと手を離して、ユキの方を見た。

「俺の事、抱きたい?」
「――ッッ!!!!!!」
 ニッと意地悪く笑いながら、そんなこと言われたら……! ゾクゾクってして、抱かれたいって気持ちになってしまう……!

「はははっ、抱かれたいって匂いになった! なんでた!?」
 ユキは僕の反応を面白おかしそうに見ている。でも少し頬が赤い気がして……ユキもなんだかんだで照れてるんじゃないか? なんて思った。

「真里が俺の事、抱きたいんじゃないかってのは……薄々感じてたんだけどな」
「あっ……いや、あの……それは!」
 そうハッキリ言われたら、否定なんてできるわけがない。だって、自覚があるんだから……!
 僕ので君の中を感じたらどんなだろうか、君を腕の中で可愛がれたら、僕のものにできたら……すごく満たされるんじゃないかって。

「先日の懐古祭の時にな、少し考えたんだ。真里が現世でやれなかった事、全部やらせてやりたいなって」
「ユキ……」
 僕がユキにもっと生きたかったなんて言ったから……? そんな事考えてくれてたなんて、思いもしなかった。

「だから、真里の童貞は俺が貰う……絶対他の奴で捨てたりなんてするな」
「は……はい」
 恥ずかしくなって、ユキの顔が見れない……! 童貞卒業を、こんな風に確約してもらう事なんてあるだろうか!? しかも十年間片思いしていた相手からだ。
 照れながらも、やっぱりそんな風に言ってもらえるのは嬉しくて、思わず気持ちが高揚する。

「……期待させてると良くないから一応言っておくが、俺は処女じゃない」
「――うん」
 高揚していた気持ちが、シュンとなって萎んだ。
 大丈夫、そんな気はしてたから……ショックじゃない、ショックなんかじゃない……。ただ、ユキを抱いた男がいるのだと思ったら、ユキの初めてを貰った男がいるのだと思ったら……それなりの殺意が沸くだけだ。

「――っ! 大丈夫だ、そいつに対して特別な感情なんかないからな……!?」
「ごめん! ユキに怒ってるわけじゃないよ!?」
「分かってる……が、すごい殺気だったぞ!?」
 必死に隠してるつもりだったけど、ユキの事になると僕は我慢ができない。

「ただな……初めてじゃないとはいえ、千年以上経つから……その、ほぼ初めてと変わらないというか……」
「!!!!」
 思わずユキの顔を見上げたら、すごく照れ臭そうに僕から視線を外すユキがいた。

「それって……この世界に来てから、一度もないって事!?」
「あぁ、まぁ……だから、心の準備をさせて欲しいというか……それまで、待っていて欲しいんだが」
「待つよ……! いつまでだって!」
「……本当か? それまでにその辺で捨てるなよ!?」
「そんな事するわけない!!」
 ユキは冗談ぽく言ったのに、僕は信じて欲しくて必死で返事してしまった。

 ユキの初めてじゃないとしても、特別なのは間違いない……千年、ずっと誰にも触れさせなかった場所を許してくれるなんて、嬉しくてたまらない!

 同時に考えてしまう。

 ユキのはじめては誰だったんだろう……僕ははじめてがユキで嬉しかった、すごく愛されたし、幸せだった。

 ユキは……それは、幸せな行為だったんだろうか? ちゃんと好きな人が相手だったんだろうか……?

「……まさか! 菖寿丸じゃないよね!???」

 なんの脈絡もなく、説明もせず、気付けば頭に浮かんだ思考をそのまま口に出していた。
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