死が二人を分かたない世界

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魔界編:第10章

ひとりより ふたりで

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 ルイさんの直球な質問に、僕はどう答えるべきなんだろうか。
 男同士の冗談ではなく、真剣な表情で質問されたのだから……適当に返事なんてできるわけがなかった。

「カズヤさんの性格は、多分僕よりルイさんの方がわかってると思うんですけど」
「見てればわかるだろー? 告白してもオレは完全に子ども扱いされてんだー……盆のお祭だって、りんごアメとか、わたあめとか、そんなんばっかり渡してきてさ」
 それは子供扱いなのか、カズヤさんなりの好意の表し方なのか、僕には判断ができないけど……。

「オレ見た目がこんなだからさ……中身はもうおっさんって年なのに、もっと大人になって死んでりゃなー……」
 ルイさんは見た目のコンプレックスから、カズヤさんの好意まで子ども扱いの様に感じているのかもしれない。でも、その気持ちは僕も痛いほどわかる。

「そうですね、もう少し大人になってみたかったですね」
「だよなー……で、真里はどうやってユキを誘うんだ?」
 ハッとしてルイさんの方を見れば、いつものニコニコ笑顔で僕の方を見ていた。
「えっ!? いや、あの……僕は」
 つい最近、『欲しがって』なんて誘い方をしたのをリアルに思い出してしまって、恥ずかしくて気が動転した。

「じょーだんだよ! オレ誘ってみるよ……温泉!」
「はいっ! あの、応援してます」
「うん、二人して休むから負担かけちゃうだろうけどー……」
「安心して行ってください! その代わりというわけではないのですが……僕もユキと連休を取りたいと思ってるので、その時は……」
「その時はオレが協力するよ!」
 二人で悪巧みでもするようにニシシッと笑って、ルイさんは螺旋を書き続けた報告書をゴミ箱に丸めて捨てた。

 仕事を進めていれば時間が経つのはあっという間で、もう定時かなというタイミングで、ユキから今日は少し遅くなりそうだと連絡が入った。

 ユキの帰りが遅いのなら、またルイさんに定食屋さんに連れて行ってもらおうかとも思ったけど……帰る前にカズヤさんに緊張した面持ちで声をかけていたので、素直に自宅に帰ることにした。

 家に帰ればユキがいない……いつも一緒に帰ってきて、それからは一時も離れないようにお互いに触れていたりするから……寂しさなんかを感じてしまう。

 ユキのいないベッドの上に腰掛けて、大して疲れてもいない体を投げ出してみても、眠たくなんてならなかった。
 生前は学校から帰ってこんな事をしていたら、うたた寝くらいはしていたのになぁ……。

 ルイさんとカズヤさんって、どっちがどっち役なんだろうか……。

 そんな下世話な疑問が一瞬頭を過って、そんな事を考えるべきじゃないと頭を振った。
 人のプライベートを想像するようなこと、失礼だ! 聖華とあんな話してたから!

 でも、ユキが言ってくれた事は嬉しかった……。

 家で一人になって、その事を考える余裕も時間もできてしまった。今ならどれだけ赤くなろうと、どれだけ狼狽しようと……どんな風にユキに触れたいか考えたとしても、誰も見ていないんだから。

 瞼を閉じればすぐにだって思い出せる。僕と体を重ねるときに、快感に堪えるユキの声も表情も……僕の中で果てる時の顔も。
 してもらうんじゃなくて、僕があの顔を引き出す。そう思ったら心拍数が速くなって、熱くなるソコに自然と手が伸びた。

 自分でするのなんて、本当に久しぶりな気がする。そんな暇なんてないほど、毎日ユキに抱かれていたから……。

 自分の手で触ってみても、物足りなさを感じた。ユキの手で触られたい、舐めてほしい、吸って、僕の中に……。
 あぁ、ダメだ……どうしたって抱かれる状況を思い浮かべてしまう。

 ユキにキスして、僕が上になるんだ……ベッドに横たわるユキを見下ろして、キスして……ユキの首元の傷痕を舐めたい。
 その白い肌に舌を這わせたい……触れたい……細い腰も、長い足も、きゅっと締まった小さなお尻にも僕の痕を残したい。

 誰も触れたことが無いかもしれない、その中に触れてみたい……僕が見たことのないユキを、僕の手で……。

 自分を慰める手は速くなっていて、頭の中だってユキの事でいっぱいだったのに……足りない、やっぱり足りない。
 左手も下着の中に入れて、自分のお尻の下に敷いた。割れ目に指を這わせて、初めて自分のそこに自慰を目的として触れた。

 ローションは作れるだろうか? 指先に意識を集中させれば、トロッとした液体が溢れた。
 そういえば、自分の中を触ったこともなかった……。

 自分の指を中へと進ませると、ツプンといとも簡単に自分のそこが指を飲み込んでいく。
「んっ……ぁ……!」
 右手では変わらず自分のモノを握ったまま、左手は自分の体内を出入りして擦っていく。

「あっ、あっ……! ユキ……ユキッ」
 ツプツプと出入りする指は、ユキの指よりずっと細くて……自分で指を動かすせいか、快感だけに集中できない。

 確か、この上側に気持ちいいところが……そう思って中で指を曲げれば、快感がゾクっと体に流れた。
「あっ……あっ! ここ……っ、きもち……」
 柔らかくコリコリと触れるそこを、集中して指で刺激すれば、勝手に腰が上下した。
 それでも、ユキと愛し合うことを知ってしまった体は、自分の細い指なんかでは満足できない。

「あぁぅ……うっ、もっと欲しい」
 気付けば前は握るだけになっていて、僕の体は内側の快感を探っていた。
 目を瞑って、自分の気持ちいい場所を探していたら、中が柔らかくなっていくのが自分でもわかる。

 おかしいな、こんなんじゃ童貞卒業なんて無理じゃないか……? 僕の体はユキを受け入れるために変わってしまったんじゃ……?

 わざとらしく水音をたてながら、自分はユキに抱かれる体なんだと思ったら興奮した。
 気持ちいい……早くユキと繋がりたい、早く帰ってきて……。

「あっ……ユキッ……!」
「なんだ?」
「ワーッッ!!!???」
 真横から声がした!! ビックリしすぎて、していたことを全て投げ出して横にすっ飛んだ。

「なっ……! なっ! なっ!!」
「もうやめるのか? もっと見たかったな」
 ユキは僕が寝転がっていたほぼ真横の、ベッドの脇にしゃがんでいた。

「なんで……いるの!? いつから!?」
「ついさっき帰ってきたところだ、家の前まで来たら中から良い匂いがしたからな……気配を消してきた」
「だって遅くなるって……」
「俺が遅くなるから、我慢できなくて一人でしてたのか?」
 泣きたい……こんなところ見られるなんて! 恥ずかしすぎる! いくら恋人同士だって、恥ずかしくないわけじゃない!

「早く真里に会いたくて、頑張ってきたから……ご褒美なんだろ?」
 ユキはニコニコしながらベッドの上に乗ってきて、僕の腕を引っ張って引き寄せる。
「もう……やだ……恥ずかしすぎる」
「なんで? 俺の名前呼んでるの、可愛かったのに」

 ベッドの中央に戻されて、ユキに肩を押されて見上げれば、綺麗な顔が、その目が欲情していた。
 カチャカチャとベルトを外す音が聞こえて、期待で心臓の鼓動が速くなる。
「俺の事欲しがって、健気で、可愛くて、すぐに入れたい……けど、真里の中も触りたいし、ここも舐めてあげたい……困ったな」

 嬉しそうに僕のズボンを足から引き抜かれて、すぐに抱かれるのかと思ったら、開かれたそこにユキは顔を落とした。
「ユキ……!?」
「全部する」
 ユキの熱い舌で裏筋を舐め上げられて、指が僕の中に入ってきて……!
「どっちも……ダメ……イッちゃう!」
 ユキの頭を少し押すように抵抗すると、僕のを舐めるユキと目が合って……!

「俺の中に入っていくとこ、見てて」
「えっ……!」
 ユキが僕に見せつけるように、その口に僕のものを奥深くまで咥えて……!
「あっ、あっ、ユキ……!」
 ユキの口の中に、僕のが……! 温かくて、ぬるぬるとして、咥えたまま舌を動かされて、指で中を掻き回されて……! 気持ち良すぎてイきそう! でも、僕のを咥えて頭を振るユキから目が離せない。

 はぁーっ、はぁーっと興奮して釘づけになっていたら、またユキと目が合った。
 ユキはちゅぽんと僕のを口から抜いて、ニィッと意地悪く笑った。

「イイな、その興奮した顔」
 そう言われて、思わず顔を隠した。
「俺を抱く想像をして、一人でしてた?」
「う……あ……」
 した、したよ……途中でユキに抱かれる方に切り替わっちゃったけど! それでも見透かされてるみたいで恥ずかしい……!

「図星か? でも、今日は俺が抱きたいな……こんな美味しそうになってるんだから、食べさせて」
 ユキが覆いかぶさってきて、首元を舐めながらカプッと噛まれて……。ユキのが僕のお尻に擦り付けられて、期待が恥ずかしさを上回る。

「あっ……た、べて……?」
「いただきます」
 繋がる前に深く熱くキスされると嬉しい。
 ユキをどうしたいかなんて、溶かされて消えてしまったみたいに、与えられる快感に全力で溺れる事にした。
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