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魔界編:第9章 真里
自分の生き方
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僕の中に菖寿丸が居るのか。
僕はその問いにすぐに答えることができなかった。
菖寿丸の人格は、たぶんまだ僕の魂の中に在る。僕は彼の声を聞いているし、魔王様は確信しているようだった……だから、僕の思い込みや、思い違いなんかじゃないと思う。
答えられなかった理由は、"答えたくない"からだ……。
自分のせいで消えてしまった友人が、まだ存在していると知ったら……ユキはきっと会いたいと思っているはず。
でも僕は、ユキと菖寿丸を会わせてあげることはできない……自分の身が危険だってことも、もちろんあるけど、僕は何より二人を会わせたくないと思ってるから……。
そんな自分を知られるのが嫌で、ユキに菖寿丸の存在を明かしたくないんだ。
罪悪感のようなものを感じて、ユキの顔を見ることが出来ない。思わずうつむけば、ユキが僕のこめかみを撫でた。
「真里……? なんで、そんな悲しい匂い……」
「――っ!」
「真里は何も悪くないだろう? なぜ自分を責めるんだ?」
純粋に困った顔をしたユキが、僕の顔を覗き込んできて、その優しい声に泣きたくなる。
隠しておきたくても、ユキは感情を読むのが得意だから隠し通せない……その目に僕の綺麗じゃないところを写したくないのに。
頑なに顔を伏せると、ユキは僕の顔を見るのをやめて、ただ静かに腕の中に抱きしめてくれる。
何も言わずに、何も聞かずに……。
ユキから顔を背けたままなんて嫌だ、後ろめたいままユキと接したくない……僕達はやっと前に進めるんだから。
「……たぶん、菖寿丸は僕の中に居ると思う」
「分かるのか?」
「声を……聞いたことがあるんだ、魔王様に見せられた記憶じゃなくて、温泉街で……」
恐る恐る顔を上げると、言葉を詰まらせたユキと目が合った。
「あの時……?」
「ユキの危険を教えてくれた……だから僕は君を助けられた」
ユキはただただ驚いた表情で、口元に手を当てて、僕から視線を外した。
「そうか……」
「会いたい? 菖寿丸に」
本当は聞きたくないけど、聞かずにはいられなかった。
「会いたい……とは少し違うかもしれない、俺は菖寿に謝りたいんだ」
ユキが僕を抱き寄せて、背中を撫でていく。その触り方は僕を落ち着かせようとするもので、自分自身をなだめているようにも見えた。
「もしかして、俺と菖寿の事を考えて暗くなっていたのか?」
「それは……」
そう言われれば、そうなのかもしれないけど。
「何度でも言うからな、俺が一番に考えることは真里の事だ! 俺が一番大切なのは真里で、俺が一番側にいて欲しいのはお前なんだ……」
回されていた腕に力がこもって、苦しいくらいにぎゅうっと強く抱きしめられて……苦しいのに嬉しい。僕が自分を否定しても、ユキが僕を必要としてくれる。
「菖寿と代ろうなんて絶対に考えるな、いいな」
「わかった」
「……しかし、菖寿がまだ存在するとなると、魔王様に交渉しなければいけないな」
「魔王様からすれば、契約が守られてないんだもんね」
ユキは僕を抱きしめる腕を緩めないまま、僕の頭に頬を寄せる。甘えるような仕草の中で、力強さを感じでドキドキする。
「真里がここに居れないのなら、二人で現世に逃げよう」
「えっ……」
「魔王様が真里を受け入れないと言うなら、現世に行く許可を貰う……そこまでは俺が必ず交渉するから」
「待って、ユキ! 魔王様は僕を追い出したりしないって言ってくれたよ!」
ユキの胸を叩いて、腕を緩めて欲しいアピールをすると、ユキはガバッと僕に覆いかぶさるようにして顔を覗き込んできた。
「本当か!?」
「僕と菖寿丸は別人格だから、そんな理不尽なことはしないって」
「……そっか、そうか!」
はぁっと、ユキが気が抜けるような表情になって、もっと早く伝えればよかったと思った。
なんだかお互い、口に出せば解決したようなことで悩んでたみたいだ。
でも僕のために、現世での生活を覚悟してくれてたなんて……どうしよう、不謹慎かもしれないけどすごく嬉しい!
「それにしても、魔王様はなんであんなに菖寿丸の事が嫌いなんだろう?」
「俺も真里が生まれてから契約のことを知ったからな……それまで、魔王様が菖寿丸を気にしているなんて思いもしなかった」
だとすれば、魔王様はユキに菖寿丸の事を一切話さなかったって事か。
「菖寿丸は一度もユキと接触しようとしなかったの?」
「あぁ、何度か菖寿の魂を感じたことがあって……一目だけでもと現世に上がる度、菖寿の気配は消えていたんだ……思えば、俺が気付く頃には……菖寿は自分を……」
自分を殺していた……。
ユキは最後まで言わなかったけど、きっとそういう事なんだろう。
「契約のことを知っていれば、俺は止めようとしただろう……でもそうしていれば、真里が生まれてくる事はなかった」
「……僕は、菖寿丸の決意のお陰で、こうしていられるんだね」
自分の胸に手を当てて、自分では分からない魂の奥深くに届くように、気持ちを込めた。
「ありがとう、ユキに会わせてくれて」
ユキが僕の手に手を重ねて、温かい白い手に包まれた。
「ありがとう、真里に会わせてくれて」
ユキと視線を合わせると、チュッと軽いキスが降ってきた。胸の奥があったかくなって、少し揺れ動いたような気がした。
「魔王様には、一度報告に行こう……俺と一緒に来てくれるか?」
「もちろんだよ」
「次は何があっても必ず守るから」
そっか、魔王様には何度も怖い目に遭わされてるから……。
服を着替えて、出勤時間より少し早めに魔王様の直轄領へ向かった。
黒門をくぐると、僕たちが来るのが分かっていたかのようにハルキさんが門の前で待っていた。
僕たちの顔を見て、少しホッとしたみたいに僕には見えた。上半分は狐面で隠れているから見えていないんだけど、たぶんそんな顔をしていると思う。
「昨日は……取り乱して悪かったな」
「いえ、魔王様はこちらです」
バツが悪そうに頭をかいたユキが可愛くて、思わずニコニコしてしまう。
昨日と同様に執務室まで案内されて、扉の前で立ち止まった。緊張するけど、大丈夫! ユキと一緒だから……!
「真里様だけお入りください」
「えっ!」
「待て、魔王様と話をしに来たのは俺だ」
「ユキ様は必要ないそうです」
キッパリと言い返されて、ユキはショックと困惑の様相だ。
「昨日の答えを聞きたい、そうですよ」
「……わかりました、僕だけで入ります」
心配そうなユキの表情に名残惜しさを感じながら、魔王様の執務室の扉を開けた。
部屋の中は、奥の机まで続く赤い絨毯。落ち着いた色調の部屋に、今日は子供の姿の魔王様が居た。
「昨日の答えは見つかった?」
「僕のユキへの想いは誰のものなのかって話ですよね? そんなの、僕のものに決まってます」
警戒するわけじゃないけど、あまり近くに行くのも失礼な気がして、入り口すぐの扉の前で声を張った。
「君がユキを愛するために生まれてきた存在でも? 自分の人生を生きたいとは思わない?」
魔王様の方からこちらに歩み寄ってきて、でもその足は部屋の中程で止まった。
「ユキを好きになったきっかけなんて、なんでもいいんです……今、僕自身がユキを愛しく思っていて、ずっと側に居たいと、それが幸せだと思っているから」
今度は不安で胸を押さえたりしたない。強く拳を握り込んで、それで胸を叩いた。僕の心を示したい。
「前世なんて関係ない、僕はユキと幸せになります……だから、ここに居させてください!」
頭を下げて赤い絨毯を見た、これが答えになっているのか分からないけど、魔王様の聞きたいことなのか分からないけど。
ギュッと目を瞑って、開けた瞬間……目の前には下から覗き込む魔王様の顔があった。
「っ!!!!?」
「いいよ」
びっくりして顔を上げて、思わず後ろに後ずさってしまった。
「いいんですか!?」
そんなあっさり!
「契約不履行なのは変わらない、だから絶対にアレを表に出さないこと、いいね?」
魔王様が僕より低い身長で、僕の頭を撫でた。
「はいっ……!」
相変わらず目は笑っていなかったけど、口元の微笑みがいつもより優しく見えて……認めてもらったみたいで、嬉しくて泣きそうだ。
振り向いて扉を開ければ、そこには少し赤い顔をしたユキが気まずそうに立っていた。
えっ……もしかして、扉の前だったから……! 思わず左にいたハルキさんを見れば、仮面で表情はわからない。
「き……こえてました?」
「いえ、私どもには……でもユキ様は耳がいいので聞こえていたかもしれせんね」
もう一度ユキに目を移せば、コクンと静かに頷いた。うわぁ……聞かれてたのか……! 恥ずかしいけど、でも僕の本心だし……。
むしろ聞いていてくれて嬉しいと思いながら右に視線を移せば、執務室に入る前には居なかった覇戸部さんが、相変わらず僕を三白眼で睨みつけていた。
しれっとユキの横に立っているのが気に食わないけど、僕が本当に気に掛けなければいけないのは菖寿丸の方だ。彼の立つ位置にまで文句をつけている場合じゃない。
気にしていないような素振りで二人に挨拶をして、黒門まで歩き出したユキについて行った。
「俺が言おうと思ってたこと……全部真里に言われた」
恥ずかしそうに口元を隠して、照れ隠しするユキがポツリと呟いた。
「ユキは僕が幸せにするからね」
「俺が幸せにする」
小指を出せば、ユキが小指を絡めてきて、ゆびきりげんまんだ。
こんな事だけでも、僕は十分幸せにしてもらってる。
後ろから感じた、僕への恨めしそうな視線に気付かないふりをして……見せ付けるようにユキと小指を繋いでその場を後にした。
僕はその問いにすぐに答えることができなかった。
菖寿丸の人格は、たぶんまだ僕の魂の中に在る。僕は彼の声を聞いているし、魔王様は確信しているようだった……だから、僕の思い込みや、思い違いなんかじゃないと思う。
答えられなかった理由は、"答えたくない"からだ……。
自分のせいで消えてしまった友人が、まだ存在していると知ったら……ユキはきっと会いたいと思っているはず。
でも僕は、ユキと菖寿丸を会わせてあげることはできない……自分の身が危険だってことも、もちろんあるけど、僕は何より二人を会わせたくないと思ってるから……。
そんな自分を知られるのが嫌で、ユキに菖寿丸の存在を明かしたくないんだ。
罪悪感のようなものを感じて、ユキの顔を見ることが出来ない。思わずうつむけば、ユキが僕のこめかみを撫でた。
「真里……? なんで、そんな悲しい匂い……」
「――っ!」
「真里は何も悪くないだろう? なぜ自分を責めるんだ?」
純粋に困った顔をしたユキが、僕の顔を覗き込んできて、その優しい声に泣きたくなる。
隠しておきたくても、ユキは感情を読むのが得意だから隠し通せない……その目に僕の綺麗じゃないところを写したくないのに。
頑なに顔を伏せると、ユキは僕の顔を見るのをやめて、ただ静かに腕の中に抱きしめてくれる。
何も言わずに、何も聞かずに……。
ユキから顔を背けたままなんて嫌だ、後ろめたいままユキと接したくない……僕達はやっと前に進めるんだから。
「……たぶん、菖寿丸は僕の中に居ると思う」
「分かるのか?」
「声を……聞いたことがあるんだ、魔王様に見せられた記憶じゃなくて、温泉街で……」
恐る恐る顔を上げると、言葉を詰まらせたユキと目が合った。
「あの時……?」
「ユキの危険を教えてくれた……だから僕は君を助けられた」
ユキはただただ驚いた表情で、口元に手を当てて、僕から視線を外した。
「そうか……」
「会いたい? 菖寿丸に」
本当は聞きたくないけど、聞かずにはいられなかった。
「会いたい……とは少し違うかもしれない、俺は菖寿に謝りたいんだ」
ユキが僕を抱き寄せて、背中を撫でていく。その触り方は僕を落ち着かせようとするもので、自分自身をなだめているようにも見えた。
「もしかして、俺と菖寿の事を考えて暗くなっていたのか?」
「それは……」
そう言われれば、そうなのかもしれないけど。
「何度でも言うからな、俺が一番に考えることは真里の事だ! 俺が一番大切なのは真里で、俺が一番側にいて欲しいのはお前なんだ……」
回されていた腕に力がこもって、苦しいくらいにぎゅうっと強く抱きしめられて……苦しいのに嬉しい。僕が自分を否定しても、ユキが僕を必要としてくれる。
「菖寿と代ろうなんて絶対に考えるな、いいな」
「わかった」
「……しかし、菖寿がまだ存在するとなると、魔王様に交渉しなければいけないな」
「魔王様からすれば、契約が守られてないんだもんね」
ユキは僕を抱きしめる腕を緩めないまま、僕の頭に頬を寄せる。甘えるような仕草の中で、力強さを感じでドキドキする。
「真里がここに居れないのなら、二人で現世に逃げよう」
「えっ……」
「魔王様が真里を受け入れないと言うなら、現世に行く許可を貰う……そこまでは俺が必ず交渉するから」
「待って、ユキ! 魔王様は僕を追い出したりしないって言ってくれたよ!」
ユキの胸を叩いて、腕を緩めて欲しいアピールをすると、ユキはガバッと僕に覆いかぶさるようにして顔を覗き込んできた。
「本当か!?」
「僕と菖寿丸は別人格だから、そんな理不尽なことはしないって」
「……そっか、そうか!」
はぁっと、ユキが気が抜けるような表情になって、もっと早く伝えればよかったと思った。
なんだかお互い、口に出せば解決したようなことで悩んでたみたいだ。
でも僕のために、現世での生活を覚悟してくれてたなんて……どうしよう、不謹慎かもしれないけどすごく嬉しい!
「それにしても、魔王様はなんであんなに菖寿丸の事が嫌いなんだろう?」
「俺も真里が生まれてから契約のことを知ったからな……それまで、魔王様が菖寿丸を気にしているなんて思いもしなかった」
だとすれば、魔王様はユキに菖寿丸の事を一切話さなかったって事か。
「菖寿丸は一度もユキと接触しようとしなかったの?」
「あぁ、何度か菖寿の魂を感じたことがあって……一目だけでもと現世に上がる度、菖寿の気配は消えていたんだ……思えば、俺が気付く頃には……菖寿は自分を……」
自分を殺していた……。
ユキは最後まで言わなかったけど、きっとそういう事なんだろう。
「契約のことを知っていれば、俺は止めようとしただろう……でもそうしていれば、真里が生まれてくる事はなかった」
「……僕は、菖寿丸の決意のお陰で、こうしていられるんだね」
自分の胸に手を当てて、自分では分からない魂の奥深くに届くように、気持ちを込めた。
「ありがとう、ユキに会わせてくれて」
ユキが僕の手に手を重ねて、温かい白い手に包まれた。
「ありがとう、真里に会わせてくれて」
ユキと視線を合わせると、チュッと軽いキスが降ってきた。胸の奥があったかくなって、少し揺れ動いたような気がした。
「魔王様には、一度報告に行こう……俺と一緒に来てくれるか?」
「もちろんだよ」
「次は何があっても必ず守るから」
そっか、魔王様には何度も怖い目に遭わされてるから……。
服を着替えて、出勤時間より少し早めに魔王様の直轄領へ向かった。
黒門をくぐると、僕たちが来るのが分かっていたかのようにハルキさんが門の前で待っていた。
僕たちの顔を見て、少しホッとしたみたいに僕には見えた。上半分は狐面で隠れているから見えていないんだけど、たぶんそんな顔をしていると思う。
「昨日は……取り乱して悪かったな」
「いえ、魔王様はこちらです」
バツが悪そうに頭をかいたユキが可愛くて、思わずニコニコしてしまう。
昨日と同様に執務室まで案内されて、扉の前で立ち止まった。緊張するけど、大丈夫! ユキと一緒だから……!
「真里様だけお入りください」
「えっ!」
「待て、魔王様と話をしに来たのは俺だ」
「ユキ様は必要ないそうです」
キッパリと言い返されて、ユキはショックと困惑の様相だ。
「昨日の答えを聞きたい、そうですよ」
「……わかりました、僕だけで入ります」
心配そうなユキの表情に名残惜しさを感じながら、魔王様の執務室の扉を開けた。
部屋の中は、奥の机まで続く赤い絨毯。落ち着いた色調の部屋に、今日は子供の姿の魔王様が居た。
「昨日の答えは見つかった?」
「僕のユキへの想いは誰のものなのかって話ですよね? そんなの、僕のものに決まってます」
警戒するわけじゃないけど、あまり近くに行くのも失礼な気がして、入り口すぐの扉の前で声を張った。
「君がユキを愛するために生まれてきた存在でも? 自分の人生を生きたいとは思わない?」
魔王様の方からこちらに歩み寄ってきて、でもその足は部屋の中程で止まった。
「ユキを好きになったきっかけなんて、なんでもいいんです……今、僕自身がユキを愛しく思っていて、ずっと側に居たいと、それが幸せだと思っているから」
今度は不安で胸を押さえたりしたない。強く拳を握り込んで、それで胸を叩いた。僕の心を示したい。
「前世なんて関係ない、僕はユキと幸せになります……だから、ここに居させてください!」
頭を下げて赤い絨毯を見た、これが答えになっているのか分からないけど、魔王様の聞きたいことなのか分からないけど。
ギュッと目を瞑って、開けた瞬間……目の前には下から覗き込む魔王様の顔があった。
「っ!!!!?」
「いいよ」
びっくりして顔を上げて、思わず後ろに後ずさってしまった。
「いいんですか!?」
そんなあっさり!
「契約不履行なのは変わらない、だから絶対にアレを表に出さないこと、いいね?」
魔王様が僕より低い身長で、僕の頭を撫でた。
「はいっ……!」
相変わらず目は笑っていなかったけど、口元の微笑みがいつもより優しく見えて……認めてもらったみたいで、嬉しくて泣きそうだ。
振り向いて扉を開ければ、そこには少し赤い顔をしたユキが気まずそうに立っていた。
えっ……もしかして、扉の前だったから……! 思わず左にいたハルキさんを見れば、仮面で表情はわからない。
「き……こえてました?」
「いえ、私どもには……でもユキ様は耳がいいので聞こえていたかもしれせんね」
もう一度ユキに目を移せば、コクンと静かに頷いた。うわぁ……聞かれてたのか……! 恥ずかしいけど、でも僕の本心だし……。
むしろ聞いていてくれて嬉しいと思いながら右に視線を移せば、執務室に入る前には居なかった覇戸部さんが、相変わらず僕を三白眼で睨みつけていた。
しれっとユキの横に立っているのが気に食わないけど、僕が本当に気に掛けなければいけないのは菖寿丸の方だ。彼の立つ位置にまで文句をつけている場合じゃない。
気にしていないような素振りで二人に挨拶をして、黒門まで歩き出したユキについて行った。
「俺が言おうと思ってたこと……全部真里に言われた」
恥ずかしそうに口元を隠して、照れ隠しするユキがポツリと呟いた。
「ユキは僕が幸せにするからね」
「俺が幸せにする」
小指を出せば、ユキが小指を絡めてきて、ゆびきりげんまんだ。
こんな事だけでも、僕は十分幸せにしてもらってる。
後ろから感じた、僕への恨めしそうな視線に気付かないふりをして……見せ付けるようにユキと小指を繋いでその場を後にした。
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