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魔界編:第7章 パンドラの箱
霞の中の菖蒲
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深く深く……ずっと底まで沈むように、深い眠りに落ちた。
辺りは一面真っ暗で、白い霞が充満した空間……広いのかも狭いのかもわからない。
あぁ、そうか……これは夢だ。
僕にとっては夢は特別だ、初恋の人と会える唯一の場所。大好きな……大好きな雪景……今日はいないのかな?
あ、違う……彼は今、寝ている僕を抱きしめているんだ。じゃあ、これは誰の夢?
「父母に会いたい?」
後ろから声がした、聞き覚えのある声だった。
振り返れば、そこに男が立っていた……顔も、背格好も……霞が邪魔をしてよく見えない。
ただ、声だけはハッキリと聞こえた……そう、自分とよく似たあの時の声。
ユキが開いた輪廻門に引きずり込まれそうだと……そう、僕に知らせたあの声だ。
「誰……?」
「俺なら会わせてやれるよ」
質問に答えずに、一方的に話しかけて来るのにムッとした。なんだろう、すごく嫌な感じがする。
「警戒してるね、大丈夫、俺は"彼の"味方だよ」
「彼……?」
そうだ……あの時この声が告げた"彼"とは、ユキの事だ。
「……"僕の味方"じゃなくて?」
「あぁ、君は"彼の"味方だと伝えた方が、信用するだろ?」
「信用させるための嘘って事?」
「まさか、本心さ」
「信じられません」
なぜだかこの声に頼ってはいけないと思った……あの時、誰かに何か言われた気がする。この声を頼ってはいけないって……誰に? 夢の中で思考がうまくまとまらない。
「あの時も警告しただろう? 実際君は俺の声に従って"彼"を助けた」
「……ユキなら一人でなんとかしたかも」
いいや、これは僕の本心じゃない。
あの時の声には本当に助かったと思っている……もしユキが輪廻に引き摺り込まれていたらなんて、ユキを失っていたかもしれないなんて、考えたくもないほど恐ろしい。
「そうだね、でも足首くらいは持っていかれてたかも……見たかった? "彼"の足首から下が引きちぎれるところを」
「——っ!! イヤだ、絶対にイヤだ!」
「俺も嫌だ、そんなのは二度と見たくない光景だ」
その声色には感情が乗っていた、ユキを想う気持ちが、胸が痛くなるほどの感情が……。
あぁ、だめだ……僕は今、この人を信頼しようとしている。
ブンブンと頭を振って、自分の体を起こそうと考えた。この人とこれ以上会話を続けたら、僕はきっとこの人を信じてしまう。
「気が変わったら呼んでくれ、いつでも両親の元に連れて行ってやろう」
「……っ! あなたは、誰なんですか!?」
「……」
僕の思考を察したように、自ら離れていこうとしたこの人を、思わず呼び止めてしまった。
『菖寿』
----
「真里っ……!」
ビクッと体が跳ねたのと同時に、バッチリ目が覚めた。目の前には僕を心配そうに覗き込むユキの顔……あぁ、またデジャヴだな。
同じ状況だったのはいつだったか……何の夢を見ていた時だったか。
あれ……? 僕は今まで何の夢を見ていただろうか? おかしい、何かひっかかる。まるでユキ……雪景との夢を見た後みたいに、霞がかって思い出せない。
「どうした? すごく険しい顔をして寝ていたぞ?」
「う、うん……起こしてくれてありがとう……なんだかイヤな夢を見ていた気がする」
体が鉛のように重い……いま何時なんだろう、全然寝足りない感じだ。
ふぅ……と思わずため息をついたら、ユキが腕枕をしてくれた。
「疲れてるな、すまない……無理させすぎたな」
「へ……? いや、大丈夫……だよ?」
確かに、気絶するように、死んだように寝入った自覚はあるけれども。
労うように、ユキが腕枕をしている方の手で僕の耳の辺りを撫でた瞬間、予想外の出来事が体に起こった。
「っ……ンアぁっ!」
背筋にゾクゾクッと快感が……! 一度スイッチが入れば、それは止められない波のように襲ってきた。
あ、ヤバいヤバい……撫でられただけなのに! これでイくッ……!
「ッ……あっ! はっ、はぁっ……」
「大丈夫か?」
「さわ……ないで!」
そう訴えるけど、体が思うように動かなくて……なんだこれ、一体何が!? 困惑していると、ユキがお尻の割れ目を指で撫でて……!
「あぁっ……!?」
「吸収しきれずに中に残ってるな……俺が注いだもので達してるのか? エロいな」
「——っ!!!」
「ごめんな、愛しすぎて……たくさん真里の中に出したからな」
ユキが僕を愛おしそうに撫でるたびに、全身を駆け巡るような快感が走って、止められなかった。
僕の体……まだユキの魔力を吸収しようとしてる!
「はぁっ……とまんな、助けて……!」
ユキに縋り付いて、その背中に腕を回して、爪を立てたくなる衝動を必死で抑えた。
傷付けたくない……!
「掻き出すか?」
「んぅぅっ……ヤダっ……!」
「それは……ごめん真里、ちょっと我慢できなくなってきた」
結局その後もまたユキと愛し合ってしまって……僕は夢を見ることもなく、泥のように眠った。
翌日びっくりするほど動けなくて、初めての一人休暇を体調不良で取得することになってしまった……。
せっかくお休みをもらったけど、僕が一日過ごしたのはベッドの上だ。
いつもより早い時間に帰ってきたユキと、大まじめに支障が出るほどするのはやめよう……って話をした。
いくら悪魔の体の治癒力が高いとはいえ、無茶をすれば精神が疲れて動けないってことを、僕は身をもって知った。
それでも後悔はしていなくて、ユキを安心させたくて、強く求められたのが本当にうれしかった。
次の日が二人一緒にお休みなら、またあんな風に強く求められたいなんて……そんな事を思ってしまう自分の思考が恥ずかしくて、一人もんどりを打ってしまった。
辺りは一面真っ暗で、白い霞が充満した空間……広いのかも狭いのかもわからない。
あぁ、そうか……これは夢だ。
僕にとっては夢は特別だ、初恋の人と会える唯一の場所。大好きな……大好きな雪景……今日はいないのかな?
あ、違う……彼は今、寝ている僕を抱きしめているんだ。じゃあ、これは誰の夢?
「父母に会いたい?」
後ろから声がした、聞き覚えのある声だった。
振り返れば、そこに男が立っていた……顔も、背格好も……霞が邪魔をしてよく見えない。
ただ、声だけはハッキリと聞こえた……そう、自分とよく似たあの時の声。
ユキが開いた輪廻門に引きずり込まれそうだと……そう、僕に知らせたあの声だ。
「誰……?」
「俺なら会わせてやれるよ」
質問に答えずに、一方的に話しかけて来るのにムッとした。なんだろう、すごく嫌な感じがする。
「警戒してるね、大丈夫、俺は"彼の"味方だよ」
「彼……?」
そうだ……あの時この声が告げた"彼"とは、ユキの事だ。
「……"僕の味方"じゃなくて?」
「あぁ、君は"彼の"味方だと伝えた方が、信用するだろ?」
「信用させるための嘘って事?」
「まさか、本心さ」
「信じられません」
なぜだかこの声に頼ってはいけないと思った……あの時、誰かに何か言われた気がする。この声を頼ってはいけないって……誰に? 夢の中で思考がうまくまとまらない。
「あの時も警告しただろう? 実際君は俺の声に従って"彼"を助けた」
「……ユキなら一人でなんとかしたかも」
いいや、これは僕の本心じゃない。
あの時の声には本当に助かったと思っている……もしユキが輪廻に引き摺り込まれていたらなんて、ユキを失っていたかもしれないなんて、考えたくもないほど恐ろしい。
「そうだね、でも足首くらいは持っていかれてたかも……見たかった? "彼"の足首から下が引きちぎれるところを」
「——っ!! イヤだ、絶対にイヤだ!」
「俺も嫌だ、そんなのは二度と見たくない光景だ」
その声色には感情が乗っていた、ユキを想う気持ちが、胸が痛くなるほどの感情が……。
あぁ、だめだ……僕は今、この人を信頼しようとしている。
ブンブンと頭を振って、自分の体を起こそうと考えた。この人とこれ以上会話を続けたら、僕はきっとこの人を信じてしまう。
「気が変わったら呼んでくれ、いつでも両親の元に連れて行ってやろう」
「……っ! あなたは、誰なんですか!?」
「……」
僕の思考を察したように、自ら離れていこうとしたこの人を、思わず呼び止めてしまった。
『菖寿』
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「真里っ……!」
ビクッと体が跳ねたのと同時に、バッチリ目が覚めた。目の前には僕を心配そうに覗き込むユキの顔……あぁ、またデジャヴだな。
同じ状況だったのはいつだったか……何の夢を見ていた時だったか。
あれ……? 僕は今まで何の夢を見ていただろうか? おかしい、何かひっかかる。まるでユキ……雪景との夢を見た後みたいに、霞がかって思い出せない。
「どうした? すごく険しい顔をして寝ていたぞ?」
「う、うん……起こしてくれてありがとう……なんだかイヤな夢を見ていた気がする」
体が鉛のように重い……いま何時なんだろう、全然寝足りない感じだ。
ふぅ……と思わずため息をついたら、ユキが腕枕をしてくれた。
「疲れてるな、すまない……無理させすぎたな」
「へ……? いや、大丈夫……だよ?」
確かに、気絶するように、死んだように寝入った自覚はあるけれども。
労うように、ユキが腕枕をしている方の手で僕の耳の辺りを撫でた瞬間、予想外の出来事が体に起こった。
「っ……ンアぁっ!」
背筋にゾクゾクッと快感が……! 一度スイッチが入れば、それは止められない波のように襲ってきた。
あ、ヤバいヤバい……撫でられただけなのに! これでイくッ……!
「ッ……あっ! はっ、はぁっ……」
「大丈夫か?」
「さわ……ないで!」
そう訴えるけど、体が思うように動かなくて……なんだこれ、一体何が!? 困惑していると、ユキがお尻の割れ目を指で撫でて……!
「あぁっ……!?」
「吸収しきれずに中に残ってるな……俺が注いだもので達してるのか? エロいな」
「——っ!!!」
「ごめんな、愛しすぎて……たくさん真里の中に出したからな」
ユキが僕を愛おしそうに撫でるたびに、全身を駆け巡るような快感が走って、止められなかった。
僕の体……まだユキの魔力を吸収しようとしてる!
「はぁっ……とまんな、助けて……!」
ユキに縋り付いて、その背中に腕を回して、爪を立てたくなる衝動を必死で抑えた。
傷付けたくない……!
「掻き出すか?」
「んぅぅっ……ヤダっ……!」
「それは……ごめん真里、ちょっと我慢できなくなってきた」
結局その後もまたユキと愛し合ってしまって……僕は夢を見ることもなく、泥のように眠った。
翌日びっくりするほど動けなくて、初めての一人休暇を体調不良で取得することになってしまった……。
せっかくお休みをもらったけど、僕が一日過ごしたのはベッドの上だ。
いつもより早い時間に帰ってきたユキと、大まじめに支障が出るほどするのはやめよう……って話をした。
いくら悪魔の体の治癒力が高いとはいえ、無茶をすれば精神が疲れて動けないってことを、僕は身をもって知った。
それでも後悔はしていなくて、ユキを安心させたくて、強く求められたのが本当にうれしかった。
次の日が二人一緒にお休みなら、またあんな風に強く求められたいなんて……そんな事を思ってしまう自分の思考が恥ずかしくて、一人もんどりを打ってしまった。
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