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魔界編:第4章 与太話
≪小話≫図書室のユキ(※更新ペースのお知らせ)
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※小説のストックがなくなってしまい、現在推敲・校正が難しくなっております
少しの間週1土曜更新とさせて頂きたく、ご報告となりました。
余力が出てきましたら週2更新に戻したいと思っておりますので
引き続きよろしくお願いいたします。
下記、他サイトに掲載しておりましたユキの小話となります
第2部 あなたの願いを叶える本 のユキSideのお話となります。
感情が揺さぶられる。長い間閉じ込めていた強い感情が、近くにいるだけで揺さぶられて溢れ出す。
その瞳に映れば、会話をすれば、平静を装える自信など微塵もない。柄にもなく緊張していて、心臓の音が酷くうるさい。
----
初夏の暖かい気候の中、衣替えの季節なのか校内には冬服と夏服の生徒が混在していた。
悪魔ユキは学校にいた。
堂々と正門から入り、土足でズケズケと校内を歩き回るが、咎める者は誰もいない、そもそも誰にも見えていないからだ。
図書室まで迷わず向かう、何度も来たことがあるこの建屋は、勝手知ったるものだった。なんなら壁や階段をすり抜けて、目的地まで最短距離でショートカットできるくらいだ。
図書室の壁をすり抜けて、本棚から頭が出る。念のため左右を確認して、近くに居ないことが分かると、全身全てを図書室の中へと入れた。
複数の本棚に体を通しながら、一直線に真里の元に向かう。その魂の輝きは眩しいほどで、凄まじい存在感だったのだが……今日は深く、暗く、黒く、闇に覆われて渦巻いている。
これはこれでなかなかの存在感で、どこにいるかはすぐに分かった。
昨日まで笑って過ごしていたこの場所で、荒んだ顔で学校での仕事をこなす姿が痛々しい。本棚の隙間から、向こう側にいる真里を見ながら、"抱きしめてあげたい……"などと考えていた。
そんなことができる筈もないのだが、思わずにはいられなかったのだ。昔自分が拠り所にしていた……底なしに優しかった彼を、目の前にいるのに支えてあげることもできない、それはとても胸が苦しかった。
真里のために準備した本を向こう側の通路へ落とす、無事手に取ってくれたのを確認して、ふぅーと深いため息を吐き出した。本当にガラにもなく緊張している……と、思わず自嘲してしまう。
いつ本を開くか、いつ自分を認識するか判断しかねたユキは、その日真里の後ろをずっとウロウロしていた。時々急に後ろを振り返ったりする度、緊張と期待で胸が高鳴った。
そして真里はユキの考えより早く、その本の指示に従った。
真里が自分を認識する瞬間だ、あの瞳に自分が映るのだと思うだけで、嬉しくてたまらなかった。
緊張で震える声と手を落ち着かせて、声をかける。
「思ったより早かったな」
「誰っ!?」
(ああ、やはり覚えていないか)
しかしそれでいい、全てを思い出していない事が真里を連れて行ける条件だ。
お陰で舞い上がった感情がストンと落ち着いた。大丈夫だ、また一から関係を築けばいい……一緒に行きたいと言わせてみせる、絶対に。
(……しかし、触りたくて辛抱たまらんのだが、どうしたらいいんだ)
結局ユキは我慢ができずに、信頼関係を築く前から手を出してしまうのだった。
次回更新は10/17(土)の予定です。
少しの間週1土曜更新とさせて頂きたく、ご報告となりました。
余力が出てきましたら週2更新に戻したいと思っておりますので
引き続きよろしくお願いいたします。
下記、他サイトに掲載しておりましたユキの小話となります
第2部 あなたの願いを叶える本 のユキSideのお話となります。
感情が揺さぶられる。長い間閉じ込めていた強い感情が、近くにいるだけで揺さぶられて溢れ出す。
その瞳に映れば、会話をすれば、平静を装える自信など微塵もない。柄にもなく緊張していて、心臓の音が酷くうるさい。
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初夏の暖かい気候の中、衣替えの季節なのか校内には冬服と夏服の生徒が混在していた。
悪魔ユキは学校にいた。
堂々と正門から入り、土足でズケズケと校内を歩き回るが、咎める者は誰もいない、そもそも誰にも見えていないからだ。
図書室まで迷わず向かう、何度も来たことがあるこの建屋は、勝手知ったるものだった。なんなら壁や階段をすり抜けて、目的地まで最短距離でショートカットできるくらいだ。
図書室の壁をすり抜けて、本棚から頭が出る。念のため左右を確認して、近くに居ないことが分かると、全身全てを図書室の中へと入れた。
複数の本棚に体を通しながら、一直線に真里の元に向かう。その魂の輝きは眩しいほどで、凄まじい存在感だったのだが……今日は深く、暗く、黒く、闇に覆われて渦巻いている。
これはこれでなかなかの存在感で、どこにいるかはすぐに分かった。
昨日まで笑って過ごしていたこの場所で、荒んだ顔で学校での仕事をこなす姿が痛々しい。本棚の隙間から、向こう側にいる真里を見ながら、"抱きしめてあげたい……"などと考えていた。
そんなことができる筈もないのだが、思わずにはいられなかったのだ。昔自分が拠り所にしていた……底なしに優しかった彼を、目の前にいるのに支えてあげることもできない、それはとても胸が苦しかった。
真里のために準備した本を向こう側の通路へ落とす、無事手に取ってくれたのを確認して、ふぅーと深いため息を吐き出した。本当にガラにもなく緊張している……と、思わず自嘲してしまう。
いつ本を開くか、いつ自分を認識するか判断しかねたユキは、その日真里の後ろをずっとウロウロしていた。時々急に後ろを振り返ったりする度、緊張と期待で胸が高鳴った。
そして真里はユキの考えより早く、その本の指示に従った。
真里が自分を認識する瞬間だ、あの瞳に自分が映るのだと思うだけで、嬉しくてたまらなかった。
緊張で震える声と手を落ち着かせて、声をかける。
「思ったより早かったな」
「誰っ!?」
(ああ、やはり覚えていないか)
しかしそれでいい、全てを思い出していない事が真里を連れて行ける条件だ。
お陰で舞い上がった感情がストンと落ち着いた。大丈夫だ、また一から関係を築けばいい……一緒に行きたいと言わせてみせる、絶対に。
(……しかし、触りたくて辛抱たまらんのだが、どうしたらいいんだ)
結局ユキは我慢ができずに、信頼関係を築く前から手を出してしまうのだった。
次回更新は10/17(土)の予定です。
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