死が二人を分かたない世界

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魔界編:第2章 繋がる

勘違い

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 目の前が真っ暗になった気がした、ユキに……アイツが触れたのか!? 僕がのうのうと寝ている間に!

「シたの!? あの人と!?」
「ん? えっ!?」
「なんで? 僕が最後までできないから? やだよ……頑張るから……他の人となんて、しないで」
 もっと早く言えばよかった、恥ずかしいとかそんな事、考えなければよかった。
 感情が昂って涙が溢れてきて、視界が……こんなに近くにいるユキの顔がボヤけて見えない。

「まて! まて! シてない! ってかするか覇戸部なんかと!」
「だってあの人と魔力補給したって」
「魔力補給は人それぞれだって言っただろ! 俺が真里にエロい事して補給するからって、他の奴がそうとは限らないんだぞ!?」

 ……え?

 あれ?

 もしかして、僕はものすごい早とちりをしてしまったんじゃないだろうか。

「うそっ……ごめん、ユキ……忘れて」

 恥ずかしいっ! 穴があったら入りたい!! ユキの顔が見れない!! 両手で顔を隠したけど、そんな事じゃこの勘違いの恥ずかしさは誤魔化せない。

「頭冷やして来る!」
「まぁ、待て待て」
 ユキの膝の上から逃げようとしたら、腰をがっつりホールドされて逃げられない! これ以上恥の上塗りをするのはいやだ!

「なんだ? 俺がアイツとエロい事してると思って迎えに来たのか?」
「うぅっ……」
「俺が真里以外の奴とそんな事する訳ないだろう?」
「じゃあ、手伝いって何したんだよぉ……」
 ユキが意地悪な顔で僕に迫ってくる、もうイヤだ! 本当に恥ずかしい!! ユキの肩に額を当てて顔を隠した……首から上が熱くてたまらない。

「普段は魔王様と話してる席に同席させるくらいなんだけどな」
「それだけで魔力が回復するの……?」
「同じ場所に居るだけで満足するらしいぞ? 俺には理解できないがな」
 それはそれで、ユキへの偏愛っぷりが強い気がして、空恐ろしいんだけど。

「普段はってことは、今回は違ったってことだよね?」
 ユキの肩からようやく頭を持ち上げて、やっと顔を見た。恥ずかしさの照れ隠しと、ちゃんと話を聞きたい気持ちとで、どんな顔をしていいか分からない。

「あぁ……今日はなかなか回復しなかったらしくてな、色々試すとか言ってハルキに遊ばれた感はある」
 はぁ……と深めのため息をつくユキに、これ以上聞いていいものか少し悩んだけど、何があったのかちゃんと聞きたい。
「色々試すって、そんな実験みたいに……一体何したの?」
「真里が心配するような事じゃないぞ? 手に触られたくらいで」
「手……?」
 頭に浮かぶのは、僕がソファーで寝てしまった時に見た光景……あの時確かにあの人は、ユキの手を取っていた。

「それ、二人きりだった?」
「えっ……まぁ」
 ユキが少し言いにくそうにした、そうか……これじゃあ浮気でも言及してるみたいだな。

「ちょっと気になることがあって、事実確認したいだけなんだ……ユキが座ってて、そこにあの人が近づいて来て手を取った、その状況であってる?」
「なんでそんな、見てきたみたいに」
 ユキが目を見開いて驚いた表情をした、正直僕自身も驚いている。

「うん、見えたんだ……僕がこのソファーで寝てしまって、その光景を夢で見た。だから飛び起きて、ユキを探してしまったんだけど」
「俺の視界と、真里の夢が繋がったのか?」
「ユキの後頭部を見下ろすような感じだったから、多分ユキの視界ではない気がする」
 ユキが難しい顔をして考え込んでいる。
 二人きりだったのに、第三者の視点で見てるなんて……僕には千里眼の能力でも備わったんだろうか? もしくはユキが心配すぎて生霊でも飛ばした? 僕自身が霊的な存在のような気もするし、この世界ではなんでも出来そうではあるけど。

「まさか、雪代ゆきしろの視界か……?」
「雪代……って、ありえるの!?」
「分からない……が、真里の中には雪代の魔力も混じっているからな、ない話ではないだろう」
 雪代はユキを守る黒い犬だ、ユキの後ろからいつも見守っているのなら、あの視界も確かに納得がいくものがある。

「力を使うと耳が出てくるだろ? 真里の中に雪代の魔力が混じっている証拠だ」
 そっか……耳のようなアレは、雪代の魔力の発現だったのか。
「なんで僕にあの光景を見せたんだろう……」
「俺が心底嫌がっていたから、真里に助けを求めたのかもな」
 ユキが嬉しそうに笑っている、雪代の話をする時のユキは心なしか楽しそうに見える。ユキの話が本当だとすると、僕は雪代に信用してもらえているという事だろうか?
 なんだか保護者に認めてもらったようで嬉しい。

「そんなにイヤだったの?」
「言っただろ、精神が削られた気がするって……喋らないし、間がもたない奴と二人きりなんて苦痛でしかないぞ」
 仮にも直血仲間である相手への酷評は本心なのか、僕に気を使っているのか……ただユキが好きでやったわけじゃないのはよく分かった。

「ハルキさんはなんで、あの人の魔力を回復をさせたかったんだろう」
「明日仕事があるって言っただろ? アイツ完璧主義だからな、万全を期したかったんだろう」
 ユキの魔力を満タンにしろって言われたのはそういう事か……。

「それ、僕も行くんだよね?」
「あぁ、俺も行く。だから俺たちも魔力回復してないと、ハルキが怒り狂うな」
 ユキがチュと軽く唇に触れるだけのキスをする、僕の腰を抱くユキの手が服の中に入ってきて、僕の背中を撫で上げた。

「ユキっ……あの、覇戸部……さんって結局回復したの?」
「いや、少しだけだったみたいだな……まぁ、本来自分でなんとかしなければいけない事だから、俺の知ったことじゃないが」
 ユキが僕の体を弄りながら、むぅっと少し面白くない顔をしながら言った……その気になってるのに真面目な話をしたからだな。

「それって……今までの関係や接触じゃ、満足出来なくなったってことじゃないの?」
「……いや、ないだろ! 今まで見てるだけで満足してた奴だぞ!? 見た目と違って真里の方が余程……積極的だよな?」
 ユキの手が僕の左の太ももを撫でて、服の上から足の付け根を触ってくる……。
「——っ!」
 ユキの肩に顔を隠して、直接触られないもどかしさと、弱くはないその刺激に耐えた。

「さっき、頑張るって言ってくれたよな?」
 耳に触れるくらい近くで囁かれた、ユキの表情を見るとニヤニヤといたずら心も含めたような顔で僕を見ていた。
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