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真里編:第4章 願望
ユキがくれたもの
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僕が魔王様を恐れるように、伊澄さんがユキに怯えたように……今、僕は管理課のみんなにプレッシャーを与えてしまったらしい。
恐らくこういった状況を生む事自体、聖華の言っていた"眷属の価値"というものだろう。そんな事も知らないままだから、彼は僕に苛立っているのだ。
僕はフードも脱いで聖華に座って貰うよう促した、聖華も素直に椅子に座ってくれるので、基本悪い子じゃないんだよなぁと改めて思う。
「そもそも真里は眷属をなんだと思ってるの?」
お、少しぶりっ子モードが復活してきた。
「ユキからは悪魔のなり方だと聞いてる、ユキは魔王様の眷属で、僕がユキの眷属で、魔王様からすると孫? みたいな……」
「説明としては正しいけど、その地位や一般悪魔からの認識について何も触れられてない」
地位? ただの悪魔の成り立ちの違いだと思ってたよ! ユキも普通にしてるし、別に威張ってないけどな……。
「大事な事を説明不足なの、ユキさんらしいけどね」
「……そうだね」
「まず、眷属を作る事を魔王様から許可されてるのは魔界でただ一人、ユキさんだけなのよ……その顔、初耳って感じね」
初耳です。
「"魔力補給"は分かるのよね!? まぁ分かるわよね! どうせ昨日ユキさんとヤったんでしょ!」
「えぇっ、雑っ!」
「魔力補給で回復するような消費魔力で、魔王様が力を与えてなれるのがアタシ達一般人! 総魔力量を削って分け与えられるのが眷属で、直に血を注いで悪魔にするから"直血"って呼ばれてるのよ! 眷属を作ると本人の総魔力量は減ったまま回復しないの、だから直血悪魔は魔力の質も、量も桁違いなんだから」
魔力の概念を主軸にして説明されてるからだろうか? なんかユキに教えてもらったのと、微妙にニュアンスが違うような……。
「じゃあ、僕を眷属にした事によって、ユキは魔力量が減っちゃったって事?」
「そうよ! そこまでして貰ってるのも知らずにのうのうとしてるから腹立つの! 魔力の総量は悪魔のステータスなのに!」
「そうか……うん、教えてくれてありがとう」
そうだね、僕は知らなくちゃいけない、学ばなくてはいけない。自分の置かれてる現状や、自分の立ち位置を、僕のためにユキがどれだけの事をしてくれたのかを……。
「すごい魔力量を持つ直血悪魔は、皆んなの羨望の的なの! 憧れなの! 凄い人なの! 高嶺の花なの!」
「おまけにユキは美人だしね」
「そうよ! しかも誰にでも優しくて、話しやすくて、強くて、エッチが上手なのよ!」
「……最後の関係ある?」
「関係ある! 魔力量が多い人とのエッチはめちゃくちゃ気持ちいいんだから♡」
へ、へぇ~……そうなんだ、改めてユキと聖華がそういう関係だったと思い知らされて複雑だ。
「だからユキさんの眷属になりたい人は大勢いたのよ、直血悪魔になれるチャンスでもあるし……ユキさんが唯一選ぶ眷属は伴侶扱い、正妻って言われるのはそういう事よ!」
「ユキが唯一選んだ眷属……」
本当にユキは何も言わない……聞けば聞くほど僕はユキからたくさんの物を貰っていたようだ、僕は彼にどう返せるのだろうか。
「だから! 真里が独り占めしていい人じゃないのよ」
親切に教えてくれていた聖華の態度が一変したかに見えた、いや変わってないのだ、おそらく聖華は最初からそう言いたかったんだ。
「なるほどね、よく分かったよ……でも僕はユキから離れたりしないよ」
「なっ……! まだ分からないの? その力が自分には過ぎたものだって!」
「たしかに僕は貰いすぎてると思う、だから等価になるまで彼に対価を返したいと考えてるよ、そう思えたのは聖華のおかげだ」
「そうじゃないっ! アタシはそんな事、理解して欲しいんじゃない!」
だろうね、でも僕もそこは譲れることなんかじゃないんだよ。僕にとってユキは、直血悪魔だとか、魔界でNo.2だとか関係ないんだ……池のほとりの梅の木の下で出会った、運動音痴で、すぐ泣いて、でも心優しいあの子で、あの子を幸せにすることが僕が一番やりたい事なんだから。
「悪いけど僕はユキを諦めたり、誰かと共有するなんて絶対無理だから」
「みんなが憧れるその地位に、出会ったばかりの自分が居るのは図々しいと思わないの!?」
「地位なんてどうでもいいよ、地位とか羨望とか、魔力量とか高嶺の花だとか……それってユキと寄り添うのに関係ある? そんな事言う人は、ユキの地位が好きなだけなんじゃない」
聖華が椅子が後ろに飛ぶほど激しく立ち上がって、フーッと鼻息も荒く顔を真っ赤にしている。その瞳からぽろっと涙が溢れてきて、それを袖で拭いながら事務所から出て行くのを、僕はただポカンと見送ってしまった。
「あーあ、今のは可哀想」
「聖華は200年ずっとユキに憧れてるからなぁ」
「……もしかして聖華に向かって言ってるように聞こえました?」
「聖華に向かって言ってるようにしか聞こえなかった」
——っ! そんな気は無かっ……たとは言えないな、あまりにもユキ自身の事を見てないような言い分だったから、思わず口をついて出てしまった言葉ではあるのだけど……。
「アイツ、自分が一番ユキと親しいって自慢してたからな」
「まぁ、言われた事が胸に刺さったから出て行ったんだろう」
「やけ酒ならぬ、やけSEXして明日には元どおりだよ」
周りは"ほっとけほっとけ"と言って誰も追いかけようとはしなかったが、僕は放って置けなかった。聖華が教えてくれた事で、僕はいろんな事に気づけたから……傷つけたままでいたくなかった。
「僕、ちょっと行ってきます! 迎えが来たら自分で帰れますって伝えて下さい!」
事務所を出る時、"お人好しだ"と言われたのが聞こえた。
恐らくこういった状況を生む事自体、聖華の言っていた"眷属の価値"というものだろう。そんな事も知らないままだから、彼は僕に苛立っているのだ。
僕はフードも脱いで聖華に座って貰うよう促した、聖華も素直に椅子に座ってくれるので、基本悪い子じゃないんだよなぁと改めて思う。
「そもそも真里は眷属をなんだと思ってるの?」
お、少しぶりっ子モードが復活してきた。
「ユキからは悪魔のなり方だと聞いてる、ユキは魔王様の眷属で、僕がユキの眷属で、魔王様からすると孫? みたいな……」
「説明としては正しいけど、その地位や一般悪魔からの認識について何も触れられてない」
地位? ただの悪魔の成り立ちの違いだと思ってたよ! ユキも普通にしてるし、別に威張ってないけどな……。
「大事な事を説明不足なの、ユキさんらしいけどね」
「……そうだね」
「まず、眷属を作る事を魔王様から許可されてるのは魔界でただ一人、ユキさんだけなのよ……その顔、初耳って感じね」
初耳です。
「"魔力補給"は分かるのよね!? まぁ分かるわよね! どうせ昨日ユキさんとヤったんでしょ!」
「えぇっ、雑っ!」
「魔力補給で回復するような消費魔力で、魔王様が力を与えてなれるのがアタシ達一般人! 総魔力量を削って分け与えられるのが眷属で、直に血を注いで悪魔にするから"直血"って呼ばれてるのよ! 眷属を作ると本人の総魔力量は減ったまま回復しないの、だから直血悪魔は魔力の質も、量も桁違いなんだから」
魔力の概念を主軸にして説明されてるからだろうか? なんかユキに教えてもらったのと、微妙にニュアンスが違うような……。
「じゃあ、僕を眷属にした事によって、ユキは魔力量が減っちゃったって事?」
「そうよ! そこまでして貰ってるのも知らずにのうのうとしてるから腹立つの! 魔力の総量は悪魔のステータスなのに!」
「そうか……うん、教えてくれてありがとう」
そうだね、僕は知らなくちゃいけない、学ばなくてはいけない。自分の置かれてる現状や、自分の立ち位置を、僕のためにユキがどれだけの事をしてくれたのかを……。
「すごい魔力量を持つ直血悪魔は、皆んなの羨望の的なの! 憧れなの! 凄い人なの! 高嶺の花なの!」
「おまけにユキは美人だしね」
「そうよ! しかも誰にでも優しくて、話しやすくて、強くて、エッチが上手なのよ!」
「……最後の関係ある?」
「関係ある! 魔力量が多い人とのエッチはめちゃくちゃ気持ちいいんだから♡」
へ、へぇ~……そうなんだ、改めてユキと聖華がそういう関係だったと思い知らされて複雑だ。
「だからユキさんの眷属になりたい人は大勢いたのよ、直血悪魔になれるチャンスでもあるし……ユキさんが唯一選ぶ眷属は伴侶扱い、正妻って言われるのはそういう事よ!」
「ユキが唯一選んだ眷属……」
本当にユキは何も言わない……聞けば聞くほど僕はユキからたくさんの物を貰っていたようだ、僕は彼にどう返せるのだろうか。
「だから! 真里が独り占めしていい人じゃないのよ」
親切に教えてくれていた聖華の態度が一変したかに見えた、いや変わってないのだ、おそらく聖華は最初からそう言いたかったんだ。
「なるほどね、よく分かったよ……でも僕はユキから離れたりしないよ」
「なっ……! まだ分からないの? その力が自分には過ぎたものだって!」
「たしかに僕は貰いすぎてると思う、だから等価になるまで彼に対価を返したいと考えてるよ、そう思えたのは聖華のおかげだ」
「そうじゃないっ! アタシはそんな事、理解して欲しいんじゃない!」
だろうね、でも僕もそこは譲れることなんかじゃないんだよ。僕にとってユキは、直血悪魔だとか、魔界でNo.2だとか関係ないんだ……池のほとりの梅の木の下で出会った、運動音痴で、すぐ泣いて、でも心優しいあの子で、あの子を幸せにすることが僕が一番やりたい事なんだから。
「悪いけど僕はユキを諦めたり、誰かと共有するなんて絶対無理だから」
「みんなが憧れるその地位に、出会ったばかりの自分が居るのは図々しいと思わないの!?」
「地位なんてどうでもいいよ、地位とか羨望とか、魔力量とか高嶺の花だとか……それってユキと寄り添うのに関係ある? そんな事言う人は、ユキの地位が好きなだけなんじゃない」
聖華が椅子が後ろに飛ぶほど激しく立ち上がって、フーッと鼻息も荒く顔を真っ赤にしている。その瞳からぽろっと涙が溢れてきて、それを袖で拭いながら事務所から出て行くのを、僕はただポカンと見送ってしまった。
「あーあ、今のは可哀想」
「聖華は200年ずっとユキに憧れてるからなぁ」
「……もしかして聖華に向かって言ってるように聞こえました?」
「聖華に向かって言ってるようにしか聞こえなかった」
——っ! そんな気は無かっ……たとは言えないな、あまりにもユキ自身の事を見てないような言い分だったから、思わず口をついて出てしまった言葉ではあるのだけど……。
「アイツ、自分が一番ユキと親しいって自慢してたからな」
「まぁ、言われた事が胸に刺さったから出て行ったんだろう」
「やけ酒ならぬ、やけSEXして明日には元どおりだよ」
周りは"ほっとけほっとけ"と言って誰も追いかけようとはしなかったが、僕は放って置けなかった。聖華が教えてくれた事で、僕はいろんな事に気づけたから……傷つけたままでいたくなかった。
「僕、ちょっと行ってきます! 迎えが来たら自分で帰れますって伝えて下さい!」
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