29 / 191
真里編:第4章 願望
誰が一番過保護なのか
しおりを挟む
「俺も!」
「ユキは来なくていいよ」
「でも……!」
あたふたするユキを見てルイさんが両頬を膨らましている、多分吹き出すのをこらえているんだろう。
いや少しブフッと漏れている。
「ユキは落ち着いてください、真里 これを」
そういってカズヤさんから渡されたのは、ユキが維持部隊のメンバーと連絡を取り合っていたインカムだった。
「何かあったらこれで連絡して、位置情報も把握できるから」
「ありがとうございます」
「その手があったか!」
ポンとユキが手を打つと、カズヤさんが"しっかりしてください"とたしなめた。
「ウチはお前らみたいに武闘派じゃないからな、そんな物騒なこと起きねぇよ」
伊澄さんは苦笑いである、そりゃそうだ、自部署で何か起こるんじゃないかと疑われているんだから。
「だいたい直血の悪魔に手出ししようなんて奴、ウチには居ないぞ……アイツ以外は」
「そのアイツを案じて渡しているんですよ」
「そうだな、正しい判断だ」
会話が物騒です!
ユキを見ると引きつり笑いである。あぁそうか、言わなくても分かるよ、アイツって言うのは例の人を指しているってわけね、冗談ぽく会話しているのであまり深刻には聞こえないんだけど……。
はぁとユキがため息を吐いてから片手を上げる、その指先に力が集まるのが見えた。ユキのもう片方の空いた手で、フードをパサッと被せられる、なんだろう?
「インカムだけじゃ不安だから、真里に一つ便利な技を伝授しよう」
「えっ! なになに!?」
ちょっとワクワクしてしまう。
「この指先、見えてるんだろう? 同等の魔力量を力の元に流し込んでみて」
「こう?」
同じくらいの質量の魔力をユキの指先に当てると、ポンっと小さく空気がはじけるような音が鳴り、ユキの指先も僕の指先もどちらの魔力も消えて無くなった。
「……なにこれ」
「一発!?」
「……ほぅ、やはり管理課には勿体ないな」
カズヤさんとルイさんが感心してくれてとても嬉しいけど、起こった事象が地味過ぎて感心される所以が分からない。空気弾けただけなんですけど!? これ何かの役に立つ!?
「今のが魔力相殺だ、魔力量が増えても原理は同じだから、単純な魔力の撃ち合いなら大概これでなんとかなる」
「へぇ! 魔力の使い方って結構単純なんだね!」
「まぁ、普通は相手の魔力使用量を正確に把握するのに時間がかかるんだが……真里なら出来ると思ったよ」
フードを剥がして頭をワシワシと撫でられた、大した努力もしてないのに褒められるのはちょっと気恥ずかしい。そしてルイさんがボソッと"わーペアルックかー"と呟いたのがもっと恥ずかしかった。
やっぱりこの耳付きフード恥ずかしいよ!
「少しでも嫌なことがあったら呼んでくれ、飛んでいくからな! あと複数人に囲まれた時は躊躇なく連絡すること!」
「君も人の事言えないくらい過保護だね」
思わず苦笑してしまう。
昨日カズヤさんになんて言ってたっけ? と言おうとしたら、ユキが僕の腰を正面から抱き寄せながら顔を近づけてきた、これ絶対キスする気だ! そう確信して、僕はとっさにユキの口を両手で覆った。
「ふぁに?(なに)」
「こっちのセリフだよ、何してんの!?」
ユキが少し離れたので口元の手を緩めた。
「離れる前にキスしたいと思って」
「僕は人前でそういったことはやらないからね」
しかもこんな周り至近距離で囲まれた中で!? ユキは人目を憚らないにも程がある! しかし、周りの人間はユキのこういった行動を平然として見ている! ユキっていつもこんな事してるの!? これが普通なの!?
「ハハッ、あんまり強引だと嫌われるんじゃないか?」
「お前みたいに手も足も口も出せないような腑抜けの方がどうかと思うけどな」
ええぇ……っ!?
笑い飛ばした伊澄さんに、ユキがケンカをふっかけた。明らかに伊澄さんの表情が曇る、二人は仲が良さそうな印象だったんだけど!? その場が一瞬凍りついたようにシンとした。
「そうだな、俺はヘタレだからな」
「全くだ、そんな顔するくらいなら行動に移せ」
よかった、一瞬喧嘩でも始まるのかとヒヤッとした、何故ユキはわざわざ伊澄さんを怒らせることを言うんだろう……しかも、言われた伊澄さんよりユキの方が不機嫌だ。
千年も悪魔してるのになんとも大人げない、呆れ半分に未だに腰を抱きかかえられたままなので、放して欲しいという意図でユキの腕にポンポンと合図した。
ムスッとした顔のユキが僕の肩口に顔を埋めて、額をグリグリと押し付けてきたので、まぁこのくらいならと今度はその背中をポンポンと叩いた。
そういえばユキは夢の中でも、落ち込んでるとよくこうやってグリグリしてきたんだった。
ふふふっと、ユキが心底嬉しそうに笑いはじめて、周りがびっくりした顔をしてるのに気付いてユキをひっぺがした。
なんでユキがキスしようとしても平然としてるのに、僕がユキをあやしてるだけで引かれなければならないんだ! めちゃくちゃ恥ずかしい!
それでも顔を上げたユキの顔がふにゃふにゃで可愛過ぎたので、恥ずかしさは一瞬で飛んでいった。そんなに喜んでくれるなら僕の羞恥心なんて遥か彼方だ。
「ユキは来なくていいよ」
「でも……!」
あたふたするユキを見てルイさんが両頬を膨らましている、多分吹き出すのをこらえているんだろう。
いや少しブフッと漏れている。
「ユキは落ち着いてください、真里 これを」
そういってカズヤさんから渡されたのは、ユキが維持部隊のメンバーと連絡を取り合っていたインカムだった。
「何かあったらこれで連絡して、位置情報も把握できるから」
「ありがとうございます」
「その手があったか!」
ポンとユキが手を打つと、カズヤさんが"しっかりしてください"とたしなめた。
「ウチはお前らみたいに武闘派じゃないからな、そんな物騒なこと起きねぇよ」
伊澄さんは苦笑いである、そりゃそうだ、自部署で何か起こるんじゃないかと疑われているんだから。
「だいたい直血の悪魔に手出ししようなんて奴、ウチには居ないぞ……アイツ以外は」
「そのアイツを案じて渡しているんですよ」
「そうだな、正しい判断だ」
会話が物騒です!
ユキを見ると引きつり笑いである。あぁそうか、言わなくても分かるよ、アイツって言うのは例の人を指しているってわけね、冗談ぽく会話しているのであまり深刻には聞こえないんだけど……。
はぁとユキがため息を吐いてから片手を上げる、その指先に力が集まるのが見えた。ユキのもう片方の空いた手で、フードをパサッと被せられる、なんだろう?
「インカムだけじゃ不安だから、真里に一つ便利な技を伝授しよう」
「えっ! なになに!?」
ちょっとワクワクしてしまう。
「この指先、見えてるんだろう? 同等の魔力量を力の元に流し込んでみて」
「こう?」
同じくらいの質量の魔力をユキの指先に当てると、ポンっと小さく空気がはじけるような音が鳴り、ユキの指先も僕の指先もどちらの魔力も消えて無くなった。
「……なにこれ」
「一発!?」
「……ほぅ、やはり管理課には勿体ないな」
カズヤさんとルイさんが感心してくれてとても嬉しいけど、起こった事象が地味過ぎて感心される所以が分からない。空気弾けただけなんですけど!? これ何かの役に立つ!?
「今のが魔力相殺だ、魔力量が増えても原理は同じだから、単純な魔力の撃ち合いなら大概これでなんとかなる」
「へぇ! 魔力の使い方って結構単純なんだね!」
「まぁ、普通は相手の魔力使用量を正確に把握するのに時間がかかるんだが……真里なら出来ると思ったよ」
フードを剥がして頭をワシワシと撫でられた、大した努力もしてないのに褒められるのはちょっと気恥ずかしい。そしてルイさんがボソッと"わーペアルックかー"と呟いたのがもっと恥ずかしかった。
やっぱりこの耳付きフード恥ずかしいよ!
「少しでも嫌なことがあったら呼んでくれ、飛んでいくからな! あと複数人に囲まれた時は躊躇なく連絡すること!」
「君も人の事言えないくらい過保護だね」
思わず苦笑してしまう。
昨日カズヤさんになんて言ってたっけ? と言おうとしたら、ユキが僕の腰を正面から抱き寄せながら顔を近づけてきた、これ絶対キスする気だ! そう確信して、僕はとっさにユキの口を両手で覆った。
「ふぁに?(なに)」
「こっちのセリフだよ、何してんの!?」
ユキが少し離れたので口元の手を緩めた。
「離れる前にキスしたいと思って」
「僕は人前でそういったことはやらないからね」
しかもこんな周り至近距離で囲まれた中で!? ユキは人目を憚らないにも程がある! しかし、周りの人間はユキのこういった行動を平然として見ている! ユキっていつもこんな事してるの!? これが普通なの!?
「ハハッ、あんまり強引だと嫌われるんじゃないか?」
「お前みたいに手も足も口も出せないような腑抜けの方がどうかと思うけどな」
ええぇ……っ!?
笑い飛ばした伊澄さんに、ユキがケンカをふっかけた。明らかに伊澄さんの表情が曇る、二人は仲が良さそうな印象だったんだけど!? その場が一瞬凍りついたようにシンとした。
「そうだな、俺はヘタレだからな」
「全くだ、そんな顔するくらいなら行動に移せ」
よかった、一瞬喧嘩でも始まるのかとヒヤッとした、何故ユキはわざわざ伊澄さんを怒らせることを言うんだろう……しかも、言われた伊澄さんよりユキの方が不機嫌だ。
千年も悪魔してるのになんとも大人げない、呆れ半分に未だに腰を抱きかかえられたままなので、放して欲しいという意図でユキの腕にポンポンと合図した。
ムスッとした顔のユキが僕の肩口に顔を埋めて、額をグリグリと押し付けてきたので、まぁこのくらいならと今度はその背中をポンポンと叩いた。
そういえばユキは夢の中でも、落ち込んでるとよくこうやってグリグリしてきたんだった。
ふふふっと、ユキが心底嬉しそうに笑いはじめて、周りがびっくりした顔をしてるのに気付いてユキをひっぺがした。
なんでユキがキスしようとしても平然としてるのに、僕がユキをあやしてるだけで引かれなければならないんだ! めちゃくちゃ恥ずかしい!
それでも顔を上げたユキの顔がふにゃふにゃで可愛過ぎたので、恥ずかしさは一瞬で飛んでいった。そんなに喜んでくれるなら僕の羞恥心なんて遥か彼方だ。
0
お気に入りに追加
102
あなたにおすすめの小説
兄のやり方には思うところがある!
野犬 猫兄
BL
完結しました。お読みくださりありがとうございます!
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
第10回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、そしてお読みくださった皆様、どうもありがとうございました!m(__)m
■■■
特訓と称して理不尽な行いをする兄に翻弄されながらも兄と向き合い仲良くなっていく話。
無関心ロボからの執着溺愛兄×無自覚人たらしな弟
コメディーです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる