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真里編:第4章 願望
波乱の予感
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仰々しい真っ黒の門を通り過ぎて、魔王様の直轄地から出る、今は一番大きい通りを歩きながら、自宅がある方へ戻っている。噴水の広場を通り過ぎて向こう側に、職場があるらしい、家から見て魔王様の直轄地と職場は、反対方向にあるというワケだ。
今は割と人が動いている時間なのか、大通りにはそこそこすれ違う人達が見える、男女比でいうと圧倒的に男が多い印象だ。
ざっと見ただけで30人くらいはいると思うんだけど、その内女性は1人だけだ。しかもその1人が男連れにも関わらず、ユキを見て隣の男の袖を掴みながらキャーキャー言っている……他にも周囲の目はかなり自分達に注がれていて、僕についても色々と言われているのが聞こえてきた。
悪口というより『見たことない人物』と、『何者なのか』という内容だ。昨日は抱えられていたせいだと思っていたけど、ユキと一緒にいるだけでも十分目立つのだと悟った。
ユキは魔界で魔王様に次ぐ実力者らしいので、まずその条件だけで人目を引く、人の関心を引く、人を惹きつける。
加えて美人である、本来男性に使う表現では無いはずだけど、濡烏という表現が一番最適だと思うほど綺麗で長い黒髪、長い睫毛、切れ長で真っ黒な瞳、整った顔立ちに真っ白な肌、可愛い犬耳まで付いてる。
先程感じた焦燥感で確信した、彼に言い寄ってくる人は多いに違いない……。
「どうした? さっきから見つめて」
「ユキってさ……」
モテるでしょ? と聞こうとして止めた、それじゃあまるで僻んでいるようだ、僻んでいるんじゃない不安なんだ。ただ不安なのを悟らせるのも嫌だった、それなら冗談っぽく言うのが一番だろう。
「恋人は何人いるの?」
「……えっ」
「……えっ!? まって! 何その反応!」
ユキの顔を見据えて詰め寄ると……逸らした! 今! 目を逸らした!!
「今は真里だけだぞ? 今までのは……恋人じゃないから!」
「それってなかなか最低発言じゃない?」
そりゃね千年以上悪魔やってれば、元恋人の100人や200人は居るだろうとは思っていたけども、今までの誰も恋人じゃないなんて、不誠実にも程があるんじゃないだろか。
「僕も"恋人じゃない"なんて、言われないように頑張る」
「まてまて! 真里なにか勘違いしてないか!?」
僕はなかなか大変な人を好きになってしまったようだ、まぁ何が起きても僕から離れる気は無いけど。ユキから要らないって言われたらどうしよう、それこそトラウマが塗り変わりそうだ……魂が消えて無くなりそうなくらいのダメージを受ける自信がある。
「こんな所で話すのもあれだし、一度部屋に帰らないか?」
苦笑いしたユキが指差した先には自宅が……もう目の前まで戻って来ていた。
「僕の職場、行くんじゃないの?」
「い、行くけど……そんな顔されたまま行かせるのも、離れるのも嫌だなぁと思って」
そんな顔ってどんな顔だよ、眉間にシワが寄ってるだけだよ。
往来でユキとこんなやりとりをしていたせいか、周りが痴話喧嘩だと嬉しそうにざわつきはじめた。なんで男同士なのに痴話喧嘩という言葉が、当然のように飛び交うのか! だんだん外で話してるのが恥ずかしくなって来た。
「わかった、一回帰ろう」
承諾を告げると、僕の肩を抱きながらユキが歩き出した、昨日も平気で僕を抱えたまま連れ帰られたけど、ユキは同性だとか、人目とか全く気にしない。
僕は流石に全く気にしないわけではないから、少しソワソワしてしまう。
「もしかして、俺の気持ち伝わってない?」
玄関入るなり壁ドンだ、まぁドンではなくスッと壁を背に迫られただけだけど。
ユキは怒ってるような感じではなく、どちらかというと悲しそうに言った、ユキの白い手が僕の頬を撫でたので、その手の上に自分の手を重ねた。
「ユキはこの世界で特別な存在なんだって、少し周りを見ただけでも分かった、僕には特別なものなんて何も無いから……君を繋ぎとめておく自信がないよ」
「なんで……! 真里にとっては俺と過ごした時間は十年かもしれない、けど俺が待った時間は千年だ…… 気まぐれや偶然で連れてきたわけじゃない!」
「理解してても不安だよ! だって僕は君を独り占めしたいんだ! 他の人になんて絶対触らせたくない!」
ユキの襟元を掴んで引き寄せてキスした、自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。
「面倒くさいだろ、嫌にならない?」
「まさか」
顔を真っ赤にして耳を垂らしたユキが、おでこをコツンと合わせてきた、こんな可愛い顔、他の誰にも見せないでほしい。
「俺は真里の事忘れたことなんて一度もなかった、それでも16年前まで……真里とこうして再会できるなんて思ってなかったんだ」
僕にとってはついこの間まで夢で会っていた相手だけど、ユキからすれば千年も経っているんだ。それは僕にとっては途方も無い時間だ、想像できる長さじゃ無い……その間ずっと覚えていてくれた、見つけ出してくれた、僕は自惚れてもいいんだろうか、ユキにとって特別な存在なんだと。
「だからその……今までちょっと遊び過ぎてたところがあったんだが……」
ん? なんだか話の流れが変わったような? 遊び過ぎたってどういう意味で?
「真里を迎えるにあたりだな……色々と清算をしたんだが」
「うん……?」
「一人関係を切りたくないとゴネてる奴が居て」
「まって! 遊び過ぎたって、その……恋人関係としてって事!?」
「いや、肉体関係としてだ」
どストレートに言われた、複雑な心境なんだけど!
「そいつが、実は真里の配属先に居るんだ」
「は……!?」
なんてこった、職場で修羅場確定じゃないか!
今は割と人が動いている時間なのか、大通りにはそこそこすれ違う人達が見える、男女比でいうと圧倒的に男が多い印象だ。
ざっと見ただけで30人くらいはいると思うんだけど、その内女性は1人だけだ。しかもその1人が男連れにも関わらず、ユキを見て隣の男の袖を掴みながらキャーキャー言っている……他にも周囲の目はかなり自分達に注がれていて、僕についても色々と言われているのが聞こえてきた。
悪口というより『見たことない人物』と、『何者なのか』という内容だ。昨日は抱えられていたせいだと思っていたけど、ユキと一緒にいるだけでも十分目立つのだと悟った。
ユキは魔界で魔王様に次ぐ実力者らしいので、まずその条件だけで人目を引く、人の関心を引く、人を惹きつける。
加えて美人である、本来男性に使う表現では無いはずだけど、濡烏という表現が一番最適だと思うほど綺麗で長い黒髪、長い睫毛、切れ長で真っ黒な瞳、整った顔立ちに真っ白な肌、可愛い犬耳まで付いてる。
先程感じた焦燥感で確信した、彼に言い寄ってくる人は多いに違いない……。
「どうした? さっきから見つめて」
「ユキってさ……」
モテるでしょ? と聞こうとして止めた、それじゃあまるで僻んでいるようだ、僻んでいるんじゃない不安なんだ。ただ不安なのを悟らせるのも嫌だった、それなら冗談っぽく言うのが一番だろう。
「恋人は何人いるの?」
「……えっ」
「……えっ!? まって! 何その反応!」
ユキの顔を見据えて詰め寄ると……逸らした! 今! 目を逸らした!!
「今は真里だけだぞ? 今までのは……恋人じゃないから!」
「それってなかなか最低発言じゃない?」
そりゃね千年以上悪魔やってれば、元恋人の100人や200人は居るだろうとは思っていたけども、今までの誰も恋人じゃないなんて、不誠実にも程があるんじゃないだろか。
「僕も"恋人じゃない"なんて、言われないように頑張る」
「まてまて! 真里なにか勘違いしてないか!?」
僕はなかなか大変な人を好きになってしまったようだ、まぁ何が起きても僕から離れる気は無いけど。ユキから要らないって言われたらどうしよう、それこそトラウマが塗り変わりそうだ……魂が消えて無くなりそうなくらいのダメージを受ける自信がある。
「こんな所で話すのもあれだし、一度部屋に帰らないか?」
苦笑いしたユキが指差した先には自宅が……もう目の前まで戻って来ていた。
「僕の職場、行くんじゃないの?」
「い、行くけど……そんな顔されたまま行かせるのも、離れるのも嫌だなぁと思って」
そんな顔ってどんな顔だよ、眉間にシワが寄ってるだけだよ。
往来でユキとこんなやりとりをしていたせいか、周りが痴話喧嘩だと嬉しそうにざわつきはじめた。なんで男同士なのに痴話喧嘩という言葉が、当然のように飛び交うのか! だんだん外で話してるのが恥ずかしくなって来た。
「わかった、一回帰ろう」
承諾を告げると、僕の肩を抱きながらユキが歩き出した、昨日も平気で僕を抱えたまま連れ帰られたけど、ユキは同性だとか、人目とか全く気にしない。
僕は流石に全く気にしないわけではないから、少しソワソワしてしまう。
「もしかして、俺の気持ち伝わってない?」
玄関入るなり壁ドンだ、まぁドンではなくスッと壁を背に迫られただけだけど。
ユキは怒ってるような感じではなく、どちらかというと悲しそうに言った、ユキの白い手が僕の頬を撫でたので、その手の上に自分の手を重ねた。
「ユキはこの世界で特別な存在なんだって、少し周りを見ただけでも分かった、僕には特別なものなんて何も無いから……君を繋ぎとめておく自信がないよ」
「なんで……! 真里にとっては俺と過ごした時間は十年かもしれない、けど俺が待った時間は千年だ…… 気まぐれや偶然で連れてきたわけじゃない!」
「理解してても不安だよ! だって僕は君を独り占めしたいんだ! 他の人になんて絶対触らせたくない!」
ユキの襟元を掴んで引き寄せてキスした、自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。
「面倒くさいだろ、嫌にならない?」
「まさか」
顔を真っ赤にして耳を垂らしたユキが、おでこをコツンと合わせてきた、こんな可愛い顔、他の誰にも見せないでほしい。
「俺は真里の事忘れたことなんて一度もなかった、それでも16年前まで……真里とこうして再会できるなんて思ってなかったんだ」
僕にとってはついこの間まで夢で会っていた相手だけど、ユキからすれば千年も経っているんだ。それは僕にとっては途方も無い時間だ、想像できる長さじゃ無い……その間ずっと覚えていてくれた、見つけ出してくれた、僕は自惚れてもいいんだろうか、ユキにとって特別な存在なんだと。
「だからその……今までちょっと遊び過ぎてたところがあったんだが……」
ん? なんだか話の流れが変わったような? 遊び過ぎたってどういう意味で?
「真里を迎えるにあたりだな……色々と清算をしたんだが」
「うん……?」
「一人関係を切りたくないとゴネてる奴が居て」
「まって! 遊び過ぎたって、その……恋人関係としてって事!?」
「いや、肉体関係としてだ」
どストレートに言われた、複雑な心境なんだけど!
「そいつが、実は真里の配属先に居るんだ」
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