死が二人を分かたない世界

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真里編:第3章 新天地

治安維持部隊

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 ユキのさも可笑しそうな笑い声が響いた、僕も飛翔さんも一体何が起こったのか分かってなかった。

「真里、これが悪魔なりの上下関係の作り方だ!」
「えっ! えっ!? どう言う事!?」
「悪魔は実力主義だ、力比べで負かした方が上だ。今のをもっと鋭く、速く薙ぎ払えばアイツは真っ二つだった」
「なっ——! なんて物騒な事させるんだよ!」
「軽くやってこれだと、真里は力を出すよりセーブするコントロールをした方が……ん? 真里は力を使うと耳が生えるんだな! お揃いだな!」
 ユキが僕の頭の上を撫でた、ユキが手を離した後自分の頭を触ってみるが何かあるような感触は無い。
「え? 何もないけど」

 そんな事をしているうちに、青ざめた飛翔さんがトボトボ戻ってきた。
「今の……なに!?」
「簡単に吹っ飛びやがって、お前カズヤに鍛え直してもらえよ」
 飛翔さんが吹っ飛んでいくとは思ってなかったのか、ユキは不機嫌そうな顔をしている、そもそも不意打ちだったのだから仕方ないと思うのだけど……ユキは厳しい。

「真里は一体何者なの?」
 カズヤさんの腕から脱出して来たルイさんは、目元だけ笑っているが口元がちっとも笑ってない、怖い。

「真里は俺の"眷属けんぞく"だ」
「「「えっ!?」」」

 全員がハモる、そんな大事なのか! "眷属"って! もしかして僕はとんでもないことを承諾してしまったんだろうか……。

「ユキ! 真里はどう見ても十二歳くらいだ!」
「飛翔さんすみません、これでも十六なんです」
「お……おう!?」
 流石に小学生扱いはツラい……! 飛翔さんは背が高いから、小学生時はこのくらいだったかもしれないけど!
 もうすぐ160届くってところで死んだから、これ以上伸びないのか……ツラい!

「ユキの生きていた時代は十六なら元服は済んでいる頃、別におかしく無いでしょう」
「ゲンプクってなんだ!! 茶釜か!!」
「飛翔うるさい! 真里ごめんねーコイツうるさいし、失礼だしー!」
 ルイさんが飛翔さんの脇腹を数回笑顔で殴りながら、片手でゴメンねのポーズをしている、可愛い仕草で暴力を振るうギャップが凄い。
「全然大丈夫です、むしろなんか申し訳ないぐらいです」
 僕の身長が低いばっかりに、飛翔さんがど突かれてて……。

「真里、ユキの"眷属"である君は、私達に敬語を使う必要はないですよ」
「寧ろ立場的にはオレや飛翔が使った方がいいんじゃないのー?」
「そんな!」
 カズヤさんとルイさんが真面目な顔をして言ってきたので焦った、立場的にって何だろう……ユキの"眷属"ってそういう立場とかあるの!? 飛翔さんの言う通り、下っ端宜しくこき使ってもらった方が気が楽だ。

「じゃあ俺達も使わないから、真里も使うなよ! 俺はショーでも、飛翔でも好きに呼んでくれていいぜ!」
 飛翔さんのニカッと笑った顔が、人好きのする魅力的な人だなぁと思ったと同時に、この人モテそうだなぁと思った。
 若い女性にもだけど、特にご年配の人とかにめっちゃモテそう。

「そのうち真里も慣れるよー! オレは見た目年近いから大丈夫だろー?」
 ルイさんも今度は作った笑顔じゃなく、気さくに話してくれる、仲良くしてくれるのが嬉しい。そんな僕らの会話を年長2人がニコニコ見守ってる感じだ、なるほどユキの所属するところはとてもアットホームな感じなんだなぁ。

「みんな良い人だから、僕もユキの部隊に入りたいな」
「そうだな」
 ユキもなんだか嬉しそうに笑ってる、このメンバーが好きなんだな。
 さっきは魔界怖い、無理って思ってたけど、こうして仲良くしてくれる人が居るなら、やっていけそうな気がしてきた。
 少し安心したらどっと疲れが押し寄せたみたいで、足元がフラッとしてユキの方にもたれかかってしまった。

「ごめん……」
「真里、大丈夫か? もう帰ろう」
 ユキが僕を軽々と二の腕に乗せるように持ち上げた、急に高度が上がったので、バランスを崩してユキの頭にしがみつく、ユキは見た目細いのにすごい力持ちだ……!

「ユキ! 恥ずかしいよ! おろして!」
「ダメだ倒れたら大変だ、このまま連れて帰る」
 そのまま頭にしがみついてる僕の鼻にチュっとした! 人前は恥ずかしいから本当にやめてー! 恥ずかしすぎて3人の顔が見れない!

「そういえばー、逃げた2人は結局どうなったのー?」
「魔王様が連れて行った、ルイとカズヤで報告書提出しといてくれ」
「ハッ!? なんで魔王様が!?」
「前々からサボり悪事が目立っていましたからね、流石の魔王様もお怒りになったんじゃ?」

 なんで今の鼻チューと、抱えられてる僕を見ても普通に話し続けるのだろうか……一応同性だし、現世ではこんなのスルーされるなんて絶対ありえないのに!

「じゃーね真里! 事務所で待ってるよー!」
 ルイさんがヒラヒラと手を振ってくれた、あぁ……本当に気にしてないんだな、魔界がまた一層分からなくなってしまった。
 僕はルイさんに控えめに手を振って、ユキに抱きかかえられたまま帰った……道中は騒ぎを聞きつけてか、集まった人達の注目の的で、やっぱりスルーされる事じゃないんだよ! 三人のスルースキルが高過ぎるだけだったんだ!!

ーーーーー
「なんだろうアレー、めっちゃくちゃ溺愛してるじゃーん」
「あんなデレデレしてるユキはじめて見た! 気持ち悪っ」

「ユキもようやく落ち着いたんだな……」
「「えっ!?」」

 ユキと真里が去ったあとは、こんな会話が繰り広げられていた。
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