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真里編:第2章 別れ
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僕はユキの隣に寄り添っている、こうして二人で床に座ってはじめることにした。
召喚した時(って言ってもずっと後ろに居たらしいけど)と同じように、指先に少し血をにじませてから、ユキの手のひらに手を合わせる。
「何か言ってやりたいことはあるか?」
「"くたばれ"くらい言いたいけど、それじゃぁ恨み言としてはチープだね」
「あの女、殺された男どもの怨念も絡みついてるからな、一緒に乗せてやっても面白いかもな "よくも騙したな~"とか、"恨んでやる~"とか色々言ってるぞ」
そんなんじゃ僕が何かしなくても、あの女ロクな死に方はしないだろうなぁ……。
「じゃぁ……"愛してたのに"って言っといて、できれば子供の頃の僕の声がいいな」
自分で言っといて、胸に刺さった。既にあの女に対してそんな感情は微塵もないし、出来る事ならそもそも居なかったくらいに存在を消してほしいんだけど……。
僕は確かにあの時は、自分の母親を信じていたし、愛していた、それが全てだったとはいえ、小さかった頃の僕の想いを否定したくはなかった。
「……真里」
ほらまたそうやって耳垂らす! なんだろうこの可愛い生き物は……生き死にで言うと死んでるらしいけど。
「あとで抱きしめてやろう」
「それは僕も同じ気持ちだから嬉しいな」
ユキが目を瞑って集中しているのを、僕は静かに横で見ていた、やっぱりまつ毛長い、綺麗だ。
「近くの警察車両を誘導しておいた、あの女は車を運転中みたいだから事故って死ななきゃいいが……」
そんなことも分かるのか! 悪魔すごいな! 今すぐユキについて行くことは出来ないけど、少し悪魔業に興味が出て来た。
僕が感心していると、ユキは僕の血の滲んだ指先をペロッと舐めた。
「なっ! 何してるの!?」
「悪魔だから……人間の血は美味しいのかと思って」
「お……美味しかった?」
「真里だから、きっと全身美味しいだろうな」
やめてー! むず痒くなる! 嫌ではないんだけどムズムズするー!
「そうだ、さっきの約束!」
僕はユキに向かって両手を広げた、ユキも手を広げて二人でぎゅっと抱き合う。
不思議だなぁ、好きな人と触れ合うのってこんなに幸せなんだな、まぁ相手は悪魔だから体温感じないし、相変わらず冷たいんだけど。
「夢では僕が君を見つけ出すって約束したのにね、僕を見つけてくれたのはユキの方だったね」
「そうか? 真里の方が頑張ったよ、あんなに魂を汚して俺のところに来ようとしてくれていたんだから」
「……? どういうこと?」
「……いや、気にしなくていいこっちの話だ。しかしお前の魂は本当に強いな、あんなにドロドロになってたのに、もう強く光って影がなくなってる」
そう言ったユキは複雑な表情をしていた、眩しい物を見るような……困ったような……。
今の話の流れ、汚れていない魂ではユキのそばに行けないって事なのでは……?
影が無くなってしまったというのなら、もしかしてこのままでは、僕はユキと一緒にいる事は出来ない……?
そう仮説を立てると、色々なピースがハマるような気がした。
サァーッと血の気が引く思いがした、僕がユキに"一緒に行けない"と伝えたあの時、ユキはどうした? あの泣き虫は泣いたんだ! ユキは……僕を諦めようとしているのか!?
何勝手に決めてんの! って気持ちと、選択肢を間違えた! と思った、一体何を選ぶのが正解だった? いやいや早計だ、話も聞かず勝手に思い悩むのは悪い癖だ。
ユキの肩口で考え込んでいるうちに、ユキが僕の顎を持ち上げた……あ、これはキスするのか。
色々聞かなければならない、できれば話し合って二人で歩める道を選びたい、そう考えてはいたのだけど……流された。
目を閉じて唇がそっと触れ合ったので、ユキの顔を見たくて薄く眼を開いた、すると後ろ頭をしっかり掴まれて、口の中に舌が入ってきた、やっぱりユキは冷たい。
口でぐっと押されて後ろに倒された、頭に添えてある手が僕の頭を優しく床に置いた。
舌を絡め取られて、吸われて、上顎を内側から舐められて……頭が真っ白になる、これは気持ちよすぎる……。
「んん~~っ!」
執拗に嬲られたので、さすがに対抗した。
「……はぁ、な、長いよ!」
「真里が可愛くて……離れがたい」
そんな台詞、さっき考えたことの肯定の様じゃないか。
「真里が……嫌じゃないなら、このまま」
「あっ——……それはその……」
僕が否定も肯定も出来ずにいると、ユキは自嘲気味に僕から離れた。
「すまない性急だったな、そろそろ速報が入るんじゃないか? テレビでも確認するか」
「そうだね……」
正直ユキから引いてくれて助かった、あのままじゃ僕は"最後の思い出になるかもしれない"という口実で、更に流されていたかもしれない……。
あの女が捕まったのが確認できたら、ユキにちゃんと言うんだ……ずっと好きでしたって、一緒に居れる道を探したいって。
「俺知ってるぞ! この赤いボタンを押せばいいんだろ!」
さっきまでの余韻はどこへ……ユキがテレビのリモコンを持ってキラキラしてる。スマホで見た方が早いなんて今更言えないな……ギャップがすごい、可愛いからいいけど。
スマホを確認しようとして画面を見たタイミングで、父さんからの着信が入った。
なんだろう、忘れ物でもしたかな?
「もしもし? 父さんどうしたの?」
『バスが事故にあった、母さんが意識不明だ』
召喚した時(って言ってもずっと後ろに居たらしいけど)と同じように、指先に少し血をにじませてから、ユキの手のひらに手を合わせる。
「何か言ってやりたいことはあるか?」
「"くたばれ"くらい言いたいけど、それじゃぁ恨み言としてはチープだね」
「あの女、殺された男どもの怨念も絡みついてるからな、一緒に乗せてやっても面白いかもな "よくも騙したな~"とか、"恨んでやる~"とか色々言ってるぞ」
そんなんじゃ僕が何かしなくても、あの女ロクな死に方はしないだろうなぁ……。
「じゃぁ……"愛してたのに"って言っといて、できれば子供の頃の僕の声がいいな」
自分で言っといて、胸に刺さった。既にあの女に対してそんな感情は微塵もないし、出来る事ならそもそも居なかったくらいに存在を消してほしいんだけど……。
僕は確かにあの時は、自分の母親を信じていたし、愛していた、それが全てだったとはいえ、小さかった頃の僕の想いを否定したくはなかった。
「……真里」
ほらまたそうやって耳垂らす! なんだろうこの可愛い生き物は……生き死にで言うと死んでるらしいけど。
「あとで抱きしめてやろう」
「それは僕も同じ気持ちだから嬉しいな」
ユキが目を瞑って集中しているのを、僕は静かに横で見ていた、やっぱりまつ毛長い、綺麗だ。
「近くの警察車両を誘導しておいた、あの女は車を運転中みたいだから事故って死ななきゃいいが……」
そんなことも分かるのか! 悪魔すごいな! 今すぐユキについて行くことは出来ないけど、少し悪魔業に興味が出て来た。
僕が感心していると、ユキは僕の血の滲んだ指先をペロッと舐めた。
「なっ! 何してるの!?」
「悪魔だから……人間の血は美味しいのかと思って」
「お……美味しかった?」
「真里だから、きっと全身美味しいだろうな」
やめてー! むず痒くなる! 嫌ではないんだけどムズムズするー!
「そうだ、さっきの約束!」
僕はユキに向かって両手を広げた、ユキも手を広げて二人でぎゅっと抱き合う。
不思議だなぁ、好きな人と触れ合うのってこんなに幸せなんだな、まぁ相手は悪魔だから体温感じないし、相変わらず冷たいんだけど。
「夢では僕が君を見つけ出すって約束したのにね、僕を見つけてくれたのはユキの方だったね」
「そうか? 真里の方が頑張ったよ、あんなに魂を汚して俺のところに来ようとしてくれていたんだから」
「……? どういうこと?」
「……いや、気にしなくていいこっちの話だ。しかしお前の魂は本当に強いな、あんなにドロドロになってたのに、もう強く光って影がなくなってる」
そう言ったユキは複雑な表情をしていた、眩しい物を見るような……困ったような……。
今の話の流れ、汚れていない魂ではユキのそばに行けないって事なのでは……?
影が無くなってしまったというのなら、もしかしてこのままでは、僕はユキと一緒にいる事は出来ない……?
そう仮説を立てると、色々なピースがハマるような気がした。
サァーッと血の気が引く思いがした、僕がユキに"一緒に行けない"と伝えたあの時、ユキはどうした? あの泣き虫は泣いたんだ! ユキは……僕を諦めようとしているのか!?
何勝手に決めてんの! って気持ちと、選択肢を間違えた! と思った、一体何を選ぶのが正解だった? いやいや早計だ、話も聞かず勝手に思い悩むのは悪い癖だ。
ユキの肩口で考え込んでいるうちに、ユキが僕の顎を持ち上げた……あ、これはキスするのか。
色々聞かなければならない、できれば話し合って二人で歩める道を選びたい、そう考えてはいたのだけど……流された。
目を閉じて唇がそっと触れ合ったので、ユキの顔を見たくて薄く眼を開いた、すると後ろ頭をしっかり掴まれて、口の中に舌が入ってきた、やっぱりユキは冷たい。
口でぐっと押されて後ろに倒された、頭に添えてある手が僕の頭を優しく床に置いた。
舌を絡め取られて、吸われて、上顎を内側から舐められて……頭が真っ白になる、これは気持ちよすぎる……。
「んん~~っ!」
執拗に嬲られたので、さすがに対抗した。
「……はぁ、な、長いよ!」
「真里が可愛くて……離れがたい」
そんな台詞、さっき考えたことの肯定の様じゃないか。
「真里が……嫌じゃないなら、このまま」
「あっ——……それはその……」
僕が否定も肯定も出来ずにいると、ユキは自嘲気味に僕から離れた。
「すまない性急だったな、そろそろ速報が入るんじゃないか? テレビでも確認するか」
「そうだね……」
正直ユキから引いてくれて助かった、あのままじゃ僕は"最後の思い出になるかもしれない"という口実で、更に流されていたかもしれない……。
あの女が捕まったのが確認できたら、ユキにちゃんと言うんだ……ずっと好きでしたって、一緒に居れる道を探したいって。
「俺知ってるぞ! この赤いボタンを押せばいいんだろ!」
さっきまでの余韻はどこへ……ユキがテレビのリモコンを持ってキラキラしてる。スマホで見た方が早いなんて今更言えないな……ギャップがすごい、可愛いからいいけど。
スマホを確認しようとして画面を見たタイミングで、父さんからの着信が入った。
なんだろう、忘れ物でもしたかな?
「もしもし? 父さんどうしたの?」
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