14 / 191
真里編:第2章 別れ
願いの結果
しおりを挟む
僕はユキの隣に寄り添っている、こうして二人で床に座ってはじめることにした。
召喚した時(って言ってもずっと後ろに居たらしいけど)と同じように、指先に少し血をにじませてから、ユキの手のひらに手を合わせる。
「何か言ってやりたいことはあるか?」
「"くたばれ"くらい言いたいけど、それじゃぁ恨み言としてはチープだね」
「あの女、殺された男どもの怨念も絡みついてるからな、一緒に乗せてやっても面白いかもな "よくも騙したな~"とか、"恨んでやる~"とか色々言ってるぞ」
そんなんじゃ僕が何かしなくても、あの女ロクな死に方はしないだろうなぁ……。
「じゃぁ……"愛してたのに"って言っといて、できれば子供の頃の僕の声がいいな」
自分で言っといて、胸に刺さった。既にあの女に対してそんな感情は微塵もないし、出来る事ならそもそも居なかったくらいに存在を消してほしいんだけど……。
僕は確かにあの時は、自分の母親を信じていたし、愛していた、それが全てだったとはいえ、小さかった頃の僕の想いを否定したくはなかった。
「……真里」
ほらまたそうやって耳垂らす! なんだろうこの可愛い生き物は……生き死にで言うと死んでるらしいけど。
「あとで抱きしめてやろう」
「それは僕も同じ気持ちだから嬉しいな」
ユキが目を瞑って集中しているのを、僕は静かに横で見ていた、やっぱりまつ毛長い、綺麗だ。
「近くの警察車両を誘導しておいた、あの女は車を運転中みたいだから事故って死ななきゃいいが……」
そんなことも分かるのか! 悪魔すごいな! 今すぐユキについて行くことは出来ないけど、少し悪魔業に興味が出て来た。
僕が感心していると、ユキは僕の血の滲んだ指先をペロッと舐めた。
「なっ! 何してるの!?」
「悪魔だから……人間の血は美味しいのかと思って」
「お……美味しかった?」
「真里だから、きっと全身美味しいだろうな」
やめてー! むず痒くなる! 嫌ではないんだけどムズムズするー!
「そうだ、さっきの約束!」
僕はユキに向かって両手を広げた、ユキも手を広げて二人でぎゅっと抱き合う。
不思議だなぁ、好きな人と触れ合うのってこんなに幸せなんだな、まぁ相手は悪魔だから体温感じないし、相変わらず冷たいんだけど。
「夢では僕が君を見つけ出すって約束したのにね、僕を見つけてくれたのはユキの方だったね」
「そうか? 真里の方が頑張ったよ、あんなに魂を汚して俺のところに来ようとしてくれていたんだから」
「……? どういうこと?」
「……いや、気にしなくていいこっちの話だ。しかしお前の魂は本当に強いな、あんなにドロドロになってたのに、もう強く光って影がなくなってる」
そう言ったユキは複雑な表情をしていた、眩しい物を見るような……困ったような……。
今の話の流れ、汚れていない魂ではユキのそばに行けないって事なのでは……?
影が無くなってしまったというのなら、もしかしてこのままでは、僕はユキと一緒にいる事は出来ない……?
そう仮説を立てると、色々なピースがハマるような気がした。
サァーッと血の気が引く思いがした、僕がユキに"一緒に行けない"と伝えたあの時、ユキはどうした? あの泣き虫は泣いたんだ! ユキは……僕を諦めようとしているのか!?
何勝手に決めてんの! って気持ちと、選択肢を間違えた! と思った、一体何を選ぶのが正解だった? いやいや早計だ、話も聞かず勝手に思い悩むのは悪い癖だ。
ユキの肩口で考え込んでいるうちに、ユキが僕の顎を持ち上げた……あ、これはキスするのか。
色々聞かなければならない、できれば話し合って二人で歩める道を選びたい、そう考えてはいたのだけど……流された。
目を閉じて唇がそっと触れ合ったので、ユキの顔を見たくて薄く眼を開いた、すると後ろ頭をしっかり掴まれて、口の中に舌が入ってきた、やっぱりユキは冷たい。
口でぐっと押されて後ろに倒された、頭に添えてある手が僕の頭を優しく床に置いた。
舌を絡め取られて、吸われて、上顎を内側から舐められて……頭が真っ白になる、これは気持ちよすぎる……。
「んん~~っ!」
執拗に嬲られたので、さすがに対抗した。
「……はぁ、な、長いよ!」
「真里が可愛くて……離れがたい」
そんな台詞、さっき考えたことの肯定の様じゃないか。
「真里が……嫌じゃないなら、このまま」
「あっ——……それはその……」
僕が否定も肯定も出来ずにいると、ユキは自嘲気味に僕から離れた。
「すまない性急だったな、そろそろ速報が入るんじゃないか? テレビでも確認するか」
「そうだね……」
正直ユキから引いてくれて助かった、あのままじゃ僕は"最後の思い出になるかもしれない"という口実で、更に流されていたかもしれない……。
あの女が捕まったのが確認できたら、ユキにちゃんと言うんだ……ずっと好きでしたって、一緒に居れる道を探したいって。
「俺知ってるぞ! この赤いボタンを押せばいいんだろ!」
さっきまでの余韻はどこへ……ユキがテレビのリモコンを持ってキラキラしてる。スマホで見た方が早いなんて今更言えないな……ギャップがすごい、可愛いからいいけど。
スマホを確認しようとして画面を見たタイミングで、父さんからの着信が入った。
なんだろう、忘れ物でもしたかな?
「もしもし? 父さんどうしたの?」
『バスが事故にあった、母さんが意識不明だ』
召喚した時(って言ってもずっと後ろに居たらしいけど)と同じように、指先に少し血をにじませてから、ユキの手のひらに手を合わせる。
「何か言ってやりたいことはあるか?」
「"くたばれ"くらい言いたいけど、それじゃぁ恨み言としてはチープだね」
「あの女、殺された男どもの怨念も絡みついてるからな、一緒に乗せてやっても面白いかもな "よくも騙したな~"とか、"恨んでやる~"とか色々言ってるぞ」
そんなんじゃ僕が何かしなくても、あの女ロクな死に方はしないだろうなぁ……。
「じゃぁ……"愛してたのに"って言っといて、できれば子供の頃の僕の声がいいな」
自分で言っといて、胸に刺さった。既にあの女に対してそんな感情は微塵もないし、出来る事ならそもそも居なかったくらいに存在を消してほしいんだけど……。
僕は確かにあの時は、自分の母親を信じていたし、愛していた、それが全てだったとはいえ、小さかった頃の僕の想いを否定したくはなかった。
「……真里」
ほらまたそうやって耳垂らす! なんだろうこの可愛い生き物は……生き死にで言うと死んでるらしいけど。
「あとで抱きしめてやろう」
「それは僕も同じ気持ちだから嬉しいな」
ユキが目を瞑って集中しているのを、僕は静かに横で見ていた、やっぱりまつ毛長い、綺麗だ。
「近くの警察車両を誘導しておいた、あの女は車を運転中みたいだから事故って死ななきゃいいが……」
そんなことも分かるのか! 悪魔すごいな! 今すぐユキについて行くことは出来ないけど、少し悪魔業に興味が出て来た。
僕が感心していると、ユキは僕の血の滲んだ指先をペロッと舐めた。
「なっ! 何してるの!?」
「悪魔だから……人間の血は美味しいのかと思って」
「お……美味しかった?」
「真里だから、きっと全身美味しいだろうな」
やめてー! むず痒くなる! 嫌ではないんだけどムズムズするー!
「そうだ、さっきの約束!」
僕はユキに向かって両手を広げた、ユキも手を広げて二人でぎゅっと抱き合う。
不思議だなぁ、好きな人と触れ合うのってこんなに幸せなんだな、まぁ相手は悪魔だから体温感じないし、相変わらず冷たいんだけど。
「夢では僕が君を見つけ出すって約束したのにね、僕を見つけてくれたのはユキの方だったね」
「そうか? 真里の方が頑張ったよ、あんなに魂を汚して俺のところに来ようとしてくれていたんだから」
「……? どういうこと?」
「……いや、気にしなくていいこっちの話だ。しかしお前の魂は本当に強いな、あんなにドロドロになってたのに、もう強く光って影がなくなってる」
そう言ったユキは複雑な表情をしていた、眩しい物を見るような……困ったような……。
今の話の流れ、汚れていない魂ではユキのそばに行けないって事なのでは……?
影が無くなってしまったというのなら、もしかしてこのままでは、僕はユキと一緒にいる事は出来ない……?
そう仮説を立てると、色々なピースがハマるような気がした。
サァーッと血の気が引く思いがした、僕がユキに"一緒に行けない"と伝えたあの時、ユキはどうした? あの泣き虫は泣いたんだ! ユキは……僕を諦めようとしているのか!?
何勝手に決めてんの! って気持ちと、選択肢を間違えた! と思った、一体何を選ぶのが正解だった? いやいや早計だ、話も聞かず勝手に思い悩むのは悪い癖だ。
ユキの肩口で考え込んでいるうちに、ユキが僕の顎を持ち上げた……あ、これはキスするのか。
色々聞かなければならない、できれば話し合って二人で歩める道を選びたい、そう考えてはいたのだけど……流された。
目を閉じて唇がそっと触れ合ったので、ユキの顔を見たくて薄く眼を開いた、すると後ろ頭をしっかり掴まれて、口の中に舌が入ってきた、やっぱりユキは冷たい。
口でぐっと押されて後ろに倒された、頭に添えてある手が僕の頭を優しく床に置いた。
舌を絡め取られて、吸われて、上顎を内側から舐められて……頭が真っ白になる、これは気持ちよすぎる……。
「んん~~っ!」
執拗に嬲られたので、さすがに対抗した。
「……はぁ、な、長いよ!」
「真里が可愛くて……離れがたい」
そんな台詞、さっき考えたことの肯定の様じゃないか。
「真里が……嫌じゃないなら、このまま」
「あっ——……それはその……」
僕が否定も肯定も出来ずにいると、ユキは自嘲気味に僕から離れた。
「すまない性急だったな、そろそろ速報が入るんじゃないか? テレビでも確認するか」
「そうだね……」
正直ユキから引いてくれて助かった、あのままじゃ僕は"最後の思い出になるかもしれない"という口実で、更に流されていたかもしれない……。
あの女が捕まったのが確認できたら、ユキにちゃんと言うんだ……ずっと好きでしたって、一緒に居れる道を探したいって。
「俺知ってるぞ! この赤いボタンを押せばいいんだろ!」
さっきまでの余韻はどこへ……ユキがテレビのリモコンを持ってキラキラしてる。スマホで見た方が早いなんて今更言えないな……ギャップがすごい、可愛いからいいけど。
スマホを確認しようとして画面を見たタイミングで、父さんからの着信が入った。
なんだろう、忘れ物でもしたかな?
「もしもし? 父さんどうしたの?」
『バスが事故にあった、母さんが意識不明だ』
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
【R18】【Bl】R18乙女ゲームの世界に入ってしまいました。全員の好感度をあげて友情エンド目指します。
ペーパーナイフ
BL
僕の世界では異世界に転生、転移することなんてよくあることだった。
でもR18乙女ゲームの世界なんて想定外だ!!しかも登場人物は重いやつばかり…。元の世界に戻るには複数人の好感度を上げて友情エンドを目指さなければならない。え、推しがでてくるなんて聞いてないけど!
監禁、婚約を回避して無事元の世界に戻れるか?!
アホエロストーリーです。攻めは数人でできます。
主人公はクリアのために浮気しまくりクズ。嫌な方は気をつけてください。
ヤンデレ、ワンコ系でてきます。
注意
総受け 総愛され アホエロ ビッチ主人公 妊娠なし リバなし
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる