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真里編:第1章 出会い
魂の光
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くち? 口開けるって何!?
僕はただただ混乱していた、キスって唇と唇が触れ合うだけじゃ無いの!?
嫌な予感がして、僕は元々への字に結んでいた口を、更に内側に巻き込むようにブス顔になった、相変わらず目はぎゅっと瞑ったままだ。
「——フフっ、ひでぇ顔」
ユキが笑いを堪えるような声がした、そんな酷い顔にもお構いなく、更に僕の口元にキスしてくる……かと思ったら、今度は冷たくてぬるっとした感触が口元を! なっ、舐められてる!?
僕の頭の中はパンク寸前だ! なんで舐めっ!? んんんんんんん——っ!! 舌が口の中に、無理やり入ってきたかと思ったら、あっという間に口を暴かれていた。
あとはもうされるがままだった、うっかり開いた口の中を好きなだけ蹂躙された、おそらくユキは既に僕自身より、僕の口内に詳しくなったに違いない。
息はあがってしまって、脈も速い、実はものすごく気持ちよかった……はじめてだったのに、こんなにされるなんて酷い。
「気持ちよかっただろ?」
「っ! 全然!」
思わずプイッと横を向いた、すると目元からツゥーと涙が流れてきた、口元もべちゃべちゃだ、顔は酷いことになっているだろう。
「身体は嘘をつかないぞ」
そう言ってユキは僕の胸から下にツーと指を這わせて、止まったところは僕の男たる部分で、そこはしっかりと反応してしまっていた。
「うそっ!?」
「ヌいてやろうか?」
ニヤリと意地悪な笑顔が視界に入る、これ以上はダメだ! 絶対にダメだ! 戻れなくなる。
ブンブンと首を横に振り、拒否を示したけれども……やっぱり止まってくれる気は無いらしい。
ズボンのホックが手際よく外され、下着の中に冷たい指先が入って、僕がぎゅっと目を瞑ったその時に。
「真里——っ! 大変なの! 見てよこれ!」
と、母さんの随分楽しそうな声と共に、階段を上がってくる足音が聞こえた。
「ちょ! ちょっと待って! あとで下に見に行くから!」
母さん……ありがとう、僕の大事なものを守ってくれて。
チッと舌打ちが聞こえた、あのまま流されてたら、どうなってたんだろう……。
ーーーーー
「ジャジャーン、見て見てこれ! 母さんついに当てちゃったのよ!」
母さんの嬉しそうなこの笑顔、息子のファーストキスとの引き換えなんだよなぁ……と思うととても複雑な気持ちになった。
「あら? どうしたの? 顔が赤いわよ」
「あー……、大丈夫ちょっと風邪っぽいだけ」
最近母さんに嘘ばかりついてる気がするけど、さすがに今日の出来事は話せない。
「そうなの、じゃあこのバス旅行は次の機会にしましょうか」
「それってペア招待券でしょ? 母さんと父さんで行って来なよ」
「さっき旅行会社に電話したら、1人分の料金払えば3人で行けるらしいのよ、真里と一緒に行きたいの」
あ、だめだこれ、嬉しくて泣く……!
涙腺にきてるのをグッと堪えた、父さんは忙しい人だから、土日両方休みが取れるのは今週末が半年ぶりだ、次を待ってたらいつになるか分からない。
僕は正直、色々な問題を抱えたまま旅行はちょっと気分が乗らなかった、ユキも絶対ついてくるだろうし……正直旅行は不安要素しかない。
「父さんの次の機会がいつになるか分からないし、旅行券は期限付きだよね、2人で楽しんできてよ! 3人で旅行ならいつでもいけるし」
「……じゃあ明日までに風邪治してね、そしたら3人で行けるでしょう! 今日は温かくして、早く寝なくちゃね」
母さんごめん……僕の風邪は治らない。
色々片付いたらバイトしよう、そして二人を旅行に誘おう! 両親はバイトするのをOKしてくれるだろうか? 何かと過保護に育ててもらった自覚があるので、今から両親を説得する材料を探さなければいけないなぁ……。
母に豚肉の生姜焼きと葛湯を供給され、お風呂であったまってすぐ寝るように二階に追いやられた、そして今、自室の扉を開けるのに躊躇している。
ユキはまだ居るかな……居るよね多分。あんなことされた後ってどういう顔してたらいいんだろう、さっぱり分からない。かつてこれ程までに自分の部屋に入りにくい事があっただろうか……。
ふぅー……よし! 普通に! 普通に!
僕は気合をいれて、ガチャリと部屋の扉を開けるとそこには……そこには僕のベッドでゴロゴロしている、犬耳野郎が居た。
「人のベッドで何してるの?」
「ここ真里の匂いがしていいなぁ、匂いだけで2回はヌけたぞ」
「最低だ! ベッドクリーニングに出したい!」
「ははは! 冗談だよ」
本当に冗談!? 本当に!? この最低淫魔!
もう完全に相手のペースだ、僕が主導権を握って動かすなんて出来るんだろうか? いやいや、やらないと! やらないとこのまま色々なものを失いそうだ!
「なんで僕を選んだの?」
「なんだ、また口説いて欲しいのか?」
ユキはまたニヤニヤしながら軽口を叩いていたけど、僕の真剣な顔を見て、その顔が引き締まった。
「おいで真里」
すごく優しい声だった、懐かしいような、切ないような……吸い寄せられるように差し出されたその手を取って、ユキの横に座った。
「この薄い髪色、ふわふわの癖っ毛、お前は嫌いかもしれないが、俺は可愛いと思う」
すごく真面目な顔したから近くに来たのに……本当に口説きたかっただけかと少し呆れた、それでもユキは気にせず続ける。
「柔らかい見た目とは裏腹に、芯が強いところと頑固なところも好きだな、一度決めたことはなかなか曲げないしな」
ユキは思い出すように、遠くを見ながら喋っていた……思い出すように、目の前にいる僕の事を語る。
「それにここだ」
そう言ってユキは僕の胸に、手の甲をトンと当てた。
「憎悪に包まれながらも、中心がキラキラ光ってる、この強い魂が好きだ」
「魂が……見えるの?」
「見えるよ、この光がずっと好きだった」
なんでそんな泣きそうな顔して僕を見るんだ、なんだかこっちまで泣きたくなってくる。
「実はさっき緊急会議の連絡が入ってしまった、残念だが今夜は熱い夜を過ごせそうにない」
「君は口を開けば下ネタしか言わないのか」
僕の感動を返せ馬鹿野郎。
呆れ顔の僕に大喜びしながら、今日の夜もユキは魔界へと帰っていった。
僕の中に熱だけを残して。
僕はただただ混乱していた、キスって唇と唇が触れ合うだけじゃ無いの!?
嫌な予感がして、僕は元々への字に結んでいた口を、更に内側に巻き込むようにブス顔になった、相変わらず目はぎゅっと瞑ったままだ。
「——フフっ、ひでぇ顔」
ユキが笑いを堪えるような声がした、そんな酷い顔にもお構いなく、更に僕の口元にキスしてくる……かと思ったら、今度は冷たくてぬるっとした感触が口元を! なっ、舐められてる!?
僕の頭の中はパンク寸前だ! なんで舐めっ!? んんんんんんん——っ!! 舌が口の中に、無理やり入ってきたかと思ったら、あっという間に口を暴かれていた。
あとはもうされるがままだった、うっかり開いた口の中を好きなだけ蹂躙された、おそらくユキは既に僕自身より、僕の口内に詳しくなったに違いない。
息はあがってしまって、脈も速い、実はものすごく気持ちよかった……はじめてだったのに、こんなにされるなんて酷い。
「気持ちよかっただろ?」
「っ! 全然!」
思わずプイッと横を向いた、すると目元からツゥーと涙が流れてきた、口元もべちゃべちゃだ、顔は酷いことになっているだろう。
「身体は嘘をつかないぞ」
そう言ってユキは僕の胸から下にツーと指を這わせて、止まったところは僕の男たる部分で、そこはしっかりと反応してしまっていた。
「うそっ!?」
「ヌいてやろうか?」
ニヤリと意地悪な笑顔が視界に入る、これ以上はダメだ! 絶対にダメだ! 戻れなくなる。
ブンブンと首を横に振り、拒否を示したけれども……やっぱり止まってくれる気は無いらしい。
ズボンのホックが手際よく外され、下着の中に冷たい指先が入って、僕がぎゅっと目を瞑ったその時に。
「真里——っ! 大変なの! 見てよこれ!」
と、母さんの随分楽しそうな声と共に、階段を上がってくる足音が聞こえた。
「ちょ! ちょっと待って! あとで下に見に行くから!」
母さん……ありがとう、僕の大事なものを守ってくれて。
チッと舌打ちが聞こえた、あのまま流されてたら、どうなってたんだろう……。
ーーーーー
「ジャジャーン、見て見てこれ! 母さんついに当てちゃったのよ!」
母さんの嬉しそうなこの笑顔、息子のファーストキスとの引き換えなんだよなぁ……と思うととても複雑な気持ちになった。
「あら? どうしたの? 顔が赤いわよ」
「あー……、大丈夫ちょっと風邪っぽいだけ」
最近母さんに嘘ばかりついてる気がするけど、さすがに今日の出来事は話せない。
「そうなの、じゃあこのバス旅行は次の機会にしましょうか」
「それってペア招待券でしょ? 母さんと父さんで行って来なよ」
「さっき旅行会社に電話したら、1人分の料金払えば3人で行けるらしいのよ、真里と一緒に行きたいの」
あ、だめだこれ、嬉しくて泣く……!
涙腺にきてるのをグッと堪えた、父さんは忙しい人だから、土日両方休みが取れるのは今週末が半年ぶりだ、次を待ってたらいつになるか分からない。
僕は正直、色々な問題を抱えたまま旅行はちょっと気分が乗らなかった、ユキも絶対ついてくるだろうし……正直旅行は不安要素しかない。
「父さんの次の機会がいつになるか分からないし、旅行券は期限付きだよね、2人で楽しんできてよ! 3人で旅行ならいつでもいけるし」
「……じゃあ明日までに風邪治してね、そしたら3人で行けるでしょう! 今日は温かくして、早く寝なくちゃね」
母さんごめん……僕の風邪は治らない。
色々片付いたらバイトしよう、そして二人を旅行に誘おう! 両親はバイトするのをOKしてくれるだろうか? 何かと過保護に育ててもらった自覚があるので、今から両親を説得する材料を探さなければいけないなぁ……。
母に豚肉の生姜焼きと葛湯を供給され、お風呂であったまってすぐ寝るように二階に追いやられた、そして今、自室の扉を開けるのに躊躇している。
ユキはまだ居るかな……居るよね多分。あんなことされた後ってどういう顔してたらいいんだろう、さっぱり分からない。かつてこれ程までに自分の部屋に入りにくい事があっただろうか……。
ふぅー……よし! 普通に! 普通に!
僕は気合をいれて、ガチャリと部屋の扉を開けるとそこには……そこには僕のベッドでゴロゴロしている、犬耳野郎が居た。
「人のベッドで何してるの?」
「ここ真里の匂いがしていいなぁ、匂いだけで2回はヌけたぞ」
「最低だ! ベッドクリーニングに出したい!」
「ははは! 冗談だよ」
本当に冗談!? 本当に!? この最低淫魔!
もう完全に相手のペースだ、僕が主導権を握って動かすなんて出来るんだろうか? いやいや、やらないと! やらないとこのまま色々なものを失いそうだ!
「なんで僕を選んだの?」
「なんだ、また口説いて欲しいのか?」
ユキはまたニヤニヤしながら軽口を叩いていたけど、僕の真剣な顔を見て、その顔が引き締まった。
「おいで真里」
すごく優しい声だった、懐かしいような、切ないような……吸い寄せられるように差し出されたその手を取って、ユキの横に座った。
「この薄い髪色、ふわふわの癖っ毛、お前は嫌いかもしれないが、俺は可愛いと思う」
すごく真面目な顔したから近くに来たのに……本当に口説きたかっただけかと少し呆れた、それでもユキは気にせず続ける。
「柔らかい見た目とは裏腹に、芯が強いところと頑固なところも好きだな、一度決めたことはなかなか曲げないしな」
ユキは思い出すように、遠くを見ながら喋っていた……思い出すように、目の前にいる僕の事を語る。
「それにここだ」
そう言ってユキは僕の胸に、手の甲をトンと当てた。
「憎悪に包まれながらも、中心がキラキラ光ってる、この強い魂が好きだ」
「魂が……見えるの?」
「見えるよ、この光がずっと好きだった」
なんでそんな泣きそうな顔して僕を見るんだ、なんだかこっちまで泣きたくなってくる。
「実はさっき緊急会議の連絡が入ってしまった、残念だが今夜は熱い夜を過ごせそうにない」
「君は口を開けば下ネタしか言わないのか」
僕の感動を返せ馬鹿野郎。
呆れ顔の僕に大喜びしながら、今日の夜もユキは魔界へと帰っていった。
僕の中に熱だけを残して。
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