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真里編:第1章 出会い
福引の対価
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「ただいまー……」
言ってはみたものの、誰もいないのは分かっていた。母さんはいつもこの時間、パート帰りに買い物をしている。
もしかしたら、このタイミングで悪魔が出て来るかと思ったけど……まだ居ないみたいだな。
魔界でNo.2とか言ってたから、意外と忙しい奴なのかもしれない。
自分の部屋でスマホでニュースを確認する。もちろん調べているのはあの女がどうなっているかだ。
残念ながら未だに逃走中らしい、本当に迷惑極まりない女だと思う。
「よ、真里! テストはどうだった」
出たな悪魔"ユキ"! いきなり壁をヌゥっと通り抜けてきた、まさに神出鬼没。
「まるで父親のような質問だね」
テストの具合なんて、実は父からも母からも聞かれた事は無いけど。
「父親ではなく、夫としてだよ」
にこやかになんか言ってる。
「残念だけど、僕はまだ16歳なので結婚はできないよ」
「な、俺が生きてた頃は普通だったぞ! 今は20歳だっけ? そんなに待たなきゃいけないのかぁ」
「今は男は18歳だよ! なっても君とは結婚しないけどね」
何が悲しくて男の悪魔に求婚されなくちゃならないのか。
しかも悪魔になるには死ななきゃいけないらしい……僕にメリットは微塵もない。
「なんだよ、俺以外に好きなやつでもいるのか?」
「いるよ」
図々しい質問に食い気味に即答したけど、そもそも夢の中の人を好きという自分は少しおかしいと思う。
「なっ……なんで! なんで俺以外の奴を好きになるんだよ!」
これまた物凄く図々しい言い方だが、眉尻と一緒に下がってる犬耳が可愛い、触りたい。
ハッ! 今また絆された気がする……顔を見ると、どうも流される気がする。この悪魔、絶対魅了属性だ、きっと淫魔かなんかだろう。
「そもそも君のこと、よく知らないしね。さっき生きてた頃って言ってたけど、ユキは何歳なの?」
「この姿は二十一だ、 悪魔になってからは千年くらいは経ってるかな、細かい数字は覚えていないな……魔界に帰れば調べられるぞ」
「えっ…! じゃあ生きてた時は平安時代!?」
平安時代の人が目の前にいる! 少し感動してしまった。僕の感情とは裏腹に、ユキは少しバツの悪そうな顔をして、こめかみをポリポリしている、あまり生きていた時の話はしたくないのかもしれない。
「それより、テストはどうだったんだ? 俺の遠視は完璧だっただろう?」
「遠視って……その老眼みたいなネーミングはいかがなものかと思うけど。完璧だったよ、おかげで100点とれそう」
「だろう! 俺は真里の役に立っただろう!」
鼻高々にふんぞり返る悪魔、耳はピンと立っている、尻尾があったら、きっとブンブン振っているんだろう。
「では、真里お前の本当の願いを……」
とユキが言いかけたところを、ちょっと待ったと遮った。今せっかく顔を作って、本題に迫ろうとした所悪いんだけど、そっちのペースには持ち込ませない。
「今母さんが買い物中だ、そして今日は商店街の福引きの日だ! 母さんはずっとこれの特賞を当てたがっている、一泊二日バス旅行、ペアご招待券だ!」
いきなりなんの話なんだとユキがたじたじしている、そうだ僕のペースに持ち込むんだ。
「この特賞、母さんに当たるように出来る?」
「了解した」
指をパチンと鳴らしたユキが、ズンズンと迫ってきて……気付けば僕はベッドの上に押し倒されていた。
「……え?」
「もう叶えた」
もしかして今の指パッチンで!? 怖い! 魔界の実力者本領発揮しすぎだよ! ってかなんで僕押し倒されてるんだろう、この状況は、非常にまずいと本能が言ってる気がする!
真剣な顔つきのユキが、僕の頬に手を当ててきて、思わず体がビクッとした。
「対価は真里のファーストキスだな」
なんで僕のファーストキスがまだだと知っているのか……ってそんな事よりヤバイ! あ、ニヤッとした顔がカッコいい……じゃなくて! 逃げないと!
「きゃっ、キャンセル! キャンセルで!!」
「キャンセル不可、既に叶えた」
「だって僕、対価聞いてなかった! クーリングオフ期間無しかよ!?」
抵抗として腕で必死に口元を隠したが、両手をベッドにはりつけにされてしまった! なんなのコイツ! 慣れすぎなんじゃないの!?
「キスするから、黙ってて」
——っ! ぎゅっと目を瞑って口をへの字に曲げた。きっとムードも何も無い事だっただろうけど、僕としては被害を最小限にとどめたい!
口元に柔らかい感触が当たる、昨日頬に感じたものと同じだ。あぁ、僕のファーストキスは、今男の悪魔に奪われた。昨日と同じく、ユキの唇は冷たい。
「口、開けて」
へ?? 待って今! 終わったよね!!
まだなの!? まだ終わりじゃ無いの!?
言ってはみたものの、誰もいないのは分かっていた。母さんはいつもこの時間、パート帰りに買い物をしている。
もしかしたら、このタイミングで悪魔が出て来るかと思ったけど……まだ居ないみたいだな。
魔界でNo.2とか言ってたから、意外と忙しい奴なのかもしれない。
自分の部屋でスマホでニュースを確認する。もちろん調べているのはあの女がどうなっているかだ。
残念ながら未だに逃走中らしい、本当に迷惑極まりない女だと思う。
「よ、真里! テストはどうだった」
出たな悪魔"ユキ"! いきなり壁をヌゥっと通り抜けてきた、まさに神出鬼没。
「まるで父親のような質問だね」
テストの具合なんて、実は父からも母からも聞かれた事は無いけど。
「父親ではなく、夫としてだよ」
にこやかになんか言ってる。
「残念だけど、僕はまだ16歳なので結婚はできないよ」
「な、俺が生きてた頃は普通だったぞ! 今は20歳だっけ? そんなに待たなきゃいけないのかぁ」
「今は男は18歳だよ! なっても君とは結婚しないけどね」
何が悲しくて男の悪魔に求婚されなくちゃならないのか。
しかも悪魔になるには死ななきゃいけないらしい……僕にメリットは微塵もない。
「なんだよ、俺以外に好きなやつでもいるのか?」
「いるよ」
図々しい質問に食い気味に即答したけど、そもそも夢の中の人を好きという自分は少しおかしいと思う。
「なっ……なんで! なんで俺以外の奴を好きになるんだよ!」
これまた物凄く図々しい言い方だが、眉尻と一緒に下がってる犬耳が可愛い、触りたい。
ハッ! 今また絆された気がする……顔を見ると、どうも流される気がする。この悪魔、絶対魅了属性だ、きっと淫魔かなんかだろう。
「そもそも君のこと、よく知らないしね。さっき生きてた頃って言ってたけど、ユキは何歳なの?」
「この姿は二十一だ、 悪魔になってからは千年くらいは経ってるかな、細かい数字は覚えていないな……魔界に帰れば調べられるぞ」
「えっ…! じゃあ生きてた時は平安時代!?」
平安時代の人が目の前にいる! 少し感動してしまった。僕の感情とは裏腹に、ユキは少しバツの悪そうな顔をして、こめかみをポリポリしている、あまり生きていた時の話はしたくないのかもしれない。
「それより、テストはどうだったんだ? 俺の遠視は完璧だっただろう?」
「遠視って……その老眼みたいなネーミングはいかがなものかと思うけど。完璧だったよ、おかげで100点とれそう」
「だろう! 俺は真里の役に立っただろう!」
鼻高々にふんぞり返る悪魔、耳はピンと立っている、尻尾があったら、きっとブンブン振っているんだろう。
「では、真里お前の本当の願いを……」
とユキが言いかけたところを、ちょっと待ったと遮った。今せっかく顔を作って、本題に迫ろうとした所悪いんだけど、そっちのペースには持ち込ませない。
「今母さんが買い物中だ、そして今日は商店街の福引きの日だ! 母さんはずっとこれの特賞を当てたがっている、一泊二日バス旅行、ペアご招待券だ!」
いきなりなんの話なんだとユキがたじたじしている、そうだ僕のペースに持ち込むんだ。
「この特賞、母さんに当たるように出来る?」
「了解した」
指をパチンと鳴らしたユキが、ズンズンと迫ってきて……気付けば僕はベッドの上に押し倒されていた。
「……え?」
「もう叶えた」
もしかして今の指パッチンで!? 怖い! 魔界の実力者本領発揮しすぎだよ! ってかなんで僕押し倒されてるんだろう、この状況は、非常にまずいと本能が言ってる気がする!
真剣な顔つきのユキが、僕の頬に手を当ててきて、思わず体がビクッとした。
「対価は真里のファーストキスだな」
なんで僕のファーストキスがまだだと知っているのか……ってそんな事よりヤバイ! あ、ニヤッとした顔がカッコいい……じゃなくて! 逃げないと!
「きゃっ、キャンセル! キャンセルで!!」
「キャンセル不可、既に叶えた」
「だって僕、対価聞いてなかった! クーリングオフ期間無しかよ!?」
抵抗として腕で必死に口元を隠したが、両手をベッドにはりつけにされてしまった! なんなのコイツ! 慣れすぎなんじゃないの!?
「キスするから、黙ってて」
——っ! ぎゅっと目を瞑って口をへの字に曲げた。きっとムードも何も無い事だっただろうけど、僕としては被害を最小限にとどめたい!
口元に柔らかい感触が当たる、昨日頬に感じたものと同じだ。あぁ、僕のファーストキスは、今男の悪魔に奪われた。昨日と同じく、ユキの唇は冷たい。
「口、開けて」
へ?? 待って今! 終わったよね!!
まだなの!? まだ終わりじゃ無いの!?
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