5 / 191
真里編:第1章 出会い
福引の対価
しおりを挟む
「ただいまー……」
言ってはみたものの、誰もいないのは分かっていた。母さんはいつもこの時間、パート帰りに買い物をしている。
もしかしたら、このタイミングで悪魔が出て来るかと思ったけど……まだ居ないみたいだな。
魔界でNo.2とか言ってたから、意外と忙しい奴なのかもしれない。
自分の部屋でスマホでニュースを確認する。もちろん調べているのはあの女がどうなっているかだ。
残念ながら未だに逃走中らしい、本当に迷惑極まりない女だと思う。
「よ、真里! テストはどうだった」
出たな悪魔"ユキ"! いきなり壁をヌゥっと通り抜けてきた、まさに神出鬼没。
「まるで父親のような質問だね」
テストの具合なんて、実は父からも母からも聞かれた事は無いけど。
「父親ではなく、夫としてだよ」
にこやかになんか言ってる。
「残念だけど、僕はまだ16歳なので結婚はできないよ」
「な、俺が生きてた頃は普通だったぞ! 今は20歳だっけ? そんなに待たなきゃいけないのかぁ」
「今は男は18歳だよ! なっても君とは結婚しないけどね」
何が悲しくて男の悪魔に求婚されなくちゃならないのか。
しかも悪魔になるには死ななきゃいけないらしい……僕にメリットは微塵もない。
「なんだよ、俺以外に好きなやつでもいるのか?」
「いるよ」
図々しい質問に食い気味に即答したけど、そもそも夢の中の人を好きという自分は少しおかしいと思う。
「なっ……なんで! なんで俺以外の奴を好きになるんだよ!」
これまた物凄く図々しい言い方だが、眉尻と一緒に下がってる犬耳が可愛い、触りたい。
ハッ! 今また絆された気がする……顔を見ると、どうも流される気がする。この悪魔、絶対魅了属性だ、きっと淫魔かなんかだろう。
「そもそも君のこと、よく知らないしね。さっき生きてた頃って言ってたけど、ユキは何歳なの?」
「この姿は二十一だ、 悪魔になってからは千年くらいは経ってるかな、細かい数字は覚えていないな……魔界に帰れば調べられるぞ」
「えっ…! じゃあ生きてた時は平安時代!?」
平安時代の人が目の前にいる! 少し感動してしまった。僕の感情とは裏腹に、ユキは少しバツの悪そうな顔をして、こめかみをポリポリしている、あまり生きていた時の話はしたくないのかもしれない。
「それより、テストはどうだったんだ? 俺の遠視は完璧だっただろう?」
「遠視って……その老眼みたいなネーミングはいかがなものかと思うけど。完璧だったよ、おかげで100点とれそう」
「だろう! 俺は真里の役に立っただろう!」
鼻高々にふんぞり返る悪魔、耳はピンと立っている、尻尾があったら、きっとブンブン振っているんだろう。
「では、真里お前の本当の願いを……」
とユキが言いかけたところを、ちょっと待ったと遮った。今せっかく顔を作って、本題に迫ろうとした所悪いんだけど、そっちのペースには持ち込ませない。
「今母さんが買い物中だ、そして今日は商店街の福引きの日だ! 母さんはずっとこれの特賞を当てたがっている、一泊二日バス旅行、ペアご招待券だ!」
いきなりなんの話なんだとユキがたじたじしている、そうだ僕のペースに持ち込むんだ。
「この特賞、母さんに当たるように出来る?」
「了解した」
指をパチンと鳴らしたユキが、ズンズンと迫ってきて……気付けば僕はベッドの上に押し倒されていた。
「……え?」
「もう叶えた」
もしかして今の指パッチンで!? 怖い! 魔界の実力者本領発揮しすぎだよ! ってかなんで僕押し倒されてるんだろう、この状況は、非常にまずいと本能が言ってる気がする!
真剣な顔つきのユキが、僕の頬に手を当ててきて、思わず体がビクッとした。
「対価は真里のファーストキスだな」
なんで僕のファーストキスがまだだと知っているのか……ってそんな事よりヤバイ! あ、ニヤッとした顔がカッコいい……じゃなくて! 逃げないと!
「きゃっ、キャンセル! キャンセルで!!」
「キャンセル不可、既に叶えた」
「だって僕、対価聞いてなかった! クーリングオフ期間無しかよ!?」
抵抗として腕で必死に口元を隠したが、両手をベッドにはりつけにされてしまった! なんなのコイツ! 慣れすぎなんじゃないの!?
「キスするから、黙ってて」
——っ! ぎゅっと目を瞑って口をへの字に曲げた。きっとムードも何も無い事だっただろうけど、僕としては被害を最小限にとどめたい!
口元に柔らかい感触が当たる、昨日頬に感じたものと同じだ。あぁ、僕のファーストキスは、今男の悪魔に奪われた。昨日と同じく、ユキの唇は冷たい。
「口、開けて」
へ?? 待って今! 終わったよね!!
まだなの!? まだ終わりじゃ無いの!?
言ってはみたものの、誰もいないのは分かっていた。母さんはいつもこの時間、パート帰りに買い物をしている。
もしかしたら、このタイミングで悪魔が出て来るかと思ったけど……まだ居ないみたいだな。
魔界でNo.2とか言ってたから、意外と忙しい奴なのかもしれない。
自分の部屋でスマホでニュースを確認する。もちろん調べているのはあの女がどうなっているかだ。
残念ながら未だに逃走中らしい、本当に迷惑極まりない女だと思う。
「よ、真里! テストはどうだった」
出たな悪魔"ユキ"! いきなり壁をヌゥっと通り抜けてきた、まさに神出鬼没。
「まるで父親のような質問だね」
テストの具合なんて、実は父からも母からも聞かれた事は無いけど。
「父親ではなく、夫としてだよ」
にこやかになんか言ってる。
「残念だけど、僕はまだ16歳なので結婚はできないよ」
「な、俺が生きてた頃は普通だったぞ! 今は20歳だっけ? そんなに待たなきゃいけないのかぁ」
「今は男は18歳だよ! なっても君とは結婚しないけどね」
何が悲しくて男の悪魔に求婚されなくちゃならないのか。
しかも悪魔になるには死ななきゃいけないらしい……僕にメリットは微塵もない。
「なんだよ、俺以外に好きなやつでもいるのか?」
「いるよ」
図々しい質問に食い気味に即答したけど、そもそも夢の中の人を好きという自分は少しおかしいと思う。
「なっ……なんで! なんで俺以外の奴を好きになるんだよ!」
これまた物凄く図々しい言い方だが、眉尻と一緒に下がってる犬耳が可愛い、触りたい。
ハッ! 今また絆された気がする……顔を見ると、どうも流される気がする。この悪魔、絶対魅了属性だ、きっと淫魔かなんかだろう。
「そもそも君のこと、よく知らないしね。さっき生きてた頃って言ってたけど、ユキは何歳なの?」
「この姿は二十一だ、 悪魔になってからは千年くらいは経ってるかな、細かい数字は覚えていないな……魔界に帰れば調べられるぞ」
「えっ…! じゃあ生きてた時は平安時代!?」
平安時代の人が目の前にいる! 少し感動してしまった。僕の感情とは裏腹に、ユキは少しバツの悪そうな顔をして、こめかみをポリポリしている、あまり生きていた時の話はしたくないのかもしれない。
「それより、テストはどうだったんだ? 俺の遠視は完璧だっただろう?」
「遠視って……その老眼みたいなネーミングはいかがなものかと思うけど。完璧だったよ、おかげで100点とれそう」
「だろう! 俺は真里の役に立っただろう!」
鼻高々にふんぞり返る悪魔、耳はピンと立っている、尻尾があったら、きっとブンブン振っているんだろう。
「では、真里お前の本当の願いを……」
とユキが言いかけたところを、ちょっと待ったと遮った。今せっかく顔を作って、本題に迫ろうとした所悪いんだけど、そっちのペースには持ち込ませない。
「今母さんが買い物中だ、そして今日は商店街の福引きの日だ! 母さんはずっとこれの特賞を当てたがっている、一泊二日バス旅行、ペアご招待券だ!」
いきなりなんの話なんだとユキがたじたじしている、そうだ僕のペースに持ち込むんだ。
「この特賞、母さんに当たるように出来る?」
「了解した」
指をパチンと鳴らしたユキが、ズンズンと迫ってきて……気付けば僕はベッドの上に押し倒されていた。
「……え?」
「もう叶えた」
もしかして今の指パッチンで!? 怖い! 魔界の実力者本領発揮しすぎだよ! ってかなんで僕押し倒されてるんだろう、この状況は、非常にまずいと本能が言ってる気がする!
真剣な顔つきのユキが、僕の頬に手を当ててきて、思わず体がビクッとした。
「対価は真里のファーストキスだな」
なんで僕のファーストキスがまだだと知っているのか……ってそんな事よりヤバイ! あ、ニヤッとした顔がカッコいい……じゃなくて! 逃げないと!
「きゃっ、キャンセル! キャンセルで!!」
「キャンセル不可、既に叶えた」
「だって僕、対価聞いてなかった! クーリングオフ期間無しかよ!?」
抵抗として腕で必死に口元を隠したが、両手をベッドにはりつけにされてしまった! なんなのコイツ! 慣れすぎなんじゃないの!?
「キスするから、黙ってて」
——っ! ぎゅっと目を瞑って口をへの字に曲げた。きっとムードも何も無い事だっただろうけど、僕としては被害を最小限にとどめたい!
口元に柔らかい感触が当たる、昨日頬に感じたものと同じだ。あぁ、僕のファーストキスは、今男の悪魔に奪われた。昨日と同じく、ユキの唇は冷たい。
「口、開けて」
へ?? 待って今! 終わったよね!!
まだなの!? まだ終わりじゃ無いの!?
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
カランコエの咲く所で
mahiro
BL
先生から大事な一人息子を託されたイブは、何故出来損ないの俺に大切な子供を託したのかと考える。
しかし、考えたところで答えが出るわけがなく、兎に角子供を連れて逃げることにした。
次の瞬間、背中に衝撃を受けそのまま亡くなってしまう。
それから、五年が経過しまたこの地に生まれ変わることができた。
だが、生まれ変わってすぐに森の中に捨てられてしまった。
そんなとき、たまたま通りかかった人物があの時最後まで守ることの出来なかった子供だったのだ。
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる