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真里編:第1章 出会い
獣耳の悪魔
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明日は小テストらしい、先生が授業中に言っていたので間違いない。
両親と晩御飯を食べた後、"あの件"に触れてほしくなくて、小テストの勉強があるからとリビングから逃げ出した。
嘘にしない為に、僕はしなくてもいい小テストの勉強をしている。
全て自分の罪悪感を和らげる為だ。
しなくてもいい勉強をしているからか、机の上に置いて目に入るからか、さっきから僕は持ち帰ってしまった本が気になって仕方ない。机に突っ伏したまま、本の表紙をペラっとめくる。
"あなたの願いを叶える本"
"この本はあなたの願いを叶える為に、悪魔を召喚する禁書である。叶えたい願いによって召喚陣は異なる。"
小学生向けではなく、中二向けだったようだ。
次のページの目次に書かれた"復讐したい相手がいる場合"の項目を目にした時、頭を過ぎったのは朝のニュースで映ったあの女の顔だ。
"相手に金銭的損傷を与える場合"
"相手に精神的損傷を与える場合"
"相手に肉体的損傷を与える場合"
物騒な言葉の羅列だ
"相手を殺したい場合"
ドキッとした、いやいやそこまでは……でも自分は殺されかけてるし、あの女はどうやら殺人犯らしい。そう考えると、自分に一瞬過ぎった思考は正統性のあるもののように思えた。
思わずそのページの内容を注視してしまう、そもそも復讐だの、悪魔の召喚だの書いている時点で、この本は胡散臭いことこの上ない。こんな本の内容を読んだからといって、何かが起きるわけがないのだ。
"右図の召喚陣に左手を置き、右手には血が滲む程度に傷をつけること"
気付けば指示に従っている自分がいた、何故だかわからない、何故か"そうしなければいけない"ような気がした。大丈夫、こんなのお遊びだ、何か起こるはずがない。
"続けて下記の文言を発声せよ"
カタカナで書かれた文言を、声に出して口ずさむ、最後の一文を言葉にした瞬間……!
ドキドキ
ドキドキドキドキ
うーん、やっぱり何も起きないね、馬鹿らしい。
苦笑しながら机から立ち上がって、後ろの棚の絆創膏を取ろうとしたその時……。
「思ったより早かったな」
心臓が飛び出るかと思った!
自分の真後ろに、上から下まで黒い様相の知らない男が立っていたのだ。
「誰っ!?」
「自分で呼び出しておいて、誰だとは失礼な」
机に後ろ手をついて男をよくよく見ると、長くて黒い髪から獣の耳が生えている……猫? いや、どちらかというと犬……っぽい? あ、動いた!本物!? 結構ゴツめの首輪までしてて、より犬っぽい!
いやいや犬か猫かはどうでもいい、今はそれよりも確かめないといけないことがある。
「……悪魔なの?」
「今は悪魔だな、人間を誑かしてるから。地獄の獄卒の時もあれば、死者の魂を迎えに行く死神の時もある、呼び方なんてどうでもいいだろ?」
悪魔と獄卒と死神ってみんな一緒なの!? 初耳だよ!
「なんで後ろから現れるの? 陣に手をかざしてそれっぽい事したのに、普通陣の中から光が出てーとかが定石なんじゃないの?」
「なんでって……ずっと後ろに居たからだ!」
「はぁっ!?」
悪魔は腕を組んで偉そうにとんでもないことを言ってくれた、ずっと、後ろに"居た"!?
言葉を理解するのに時間がかかり、口を金魚みたいにパクパクさせていると、可笑しそうにくつくつ笑いながら悪魔は顔を押さえた。
「陣から光って、マンガ?とかいうのの読みすぎだろ! あの召喚の儀式だがな、あれは"悪魔は居るかもしれない"と、信じさせるための儀式だよ」
意味がわからない、どういう事? 眉をしかめながら悪魔を見ていると、ますます楽しそうに笑いだした。
「しかめっ面も相当かわいいな! スッゲェ好みだ!」
は?
「俺がお前を見初めて本を落とし、ずっと背後に付いていたのさ、ちなみにどの召喚陣を使おうと、俺が出てくるって寸法だ!」
「ストーカーか!! 返品交換お願いします」
「おいおい、俺は魔界では魔王様に次ぐNo.2の実力者だぞ! 魔王様でもご所望なのか!?」
明らかにビックリした顔で悪魔を見てしまった、目が合った瞬間、悪魔はニヤッと笑った。
「自己紹介がまだだったな、俺は"ユキ"だ、魔界でスカウト業とかやっている」
手を差し伸べられた、握手を求められてる?
「これ握り返したら契約成立とかならないよね?」
「ははは、ないない」
手を握り返しながら、真里ですとだけ名乗った、悪魔の手はとても冷たかった。
「悪魔なのになんか人間臭いね」
あとやたら好印象というか……顔は美形だし背も高い、身長は余裕で180は超えてる感じ、謎の既視感もある、はじめましてじゃない気がして親しみを覚える……悪魔の能力なのかな?
あ、耳は獣だけど尻尾は無いんだな、あったら可愛いのにな……ダメだ! 悪魔の手口にハマってる気がする!!
「まぁ、俺も元は人間だしな!」
また凄いことをサラッとぶっ込んで来た、じゃあなんなんだよその犬耳は!!
こうして犬耳の悪魔"ユキ"と僕は出会った。
両親と晩御飯を食べた後、"あの件"に触れてほしくなくて、小テストの勉強があるからとリビングから逃げ出した。
嘘にしない為に、僕はしなくてもいい小テストの勉強をしている。
全て自分の罪悪感を和らげる為だ。
しなくてもいい勉強をしているからか、机の上に置いて目に入るからか、さっきから僕は持ち帰ってしまった本が気になって仕方ない。机に突っ伏したまま、本の表紙をペラっとめくる。
"あなたの願いを叶える本"
"この本はあなたの願いを叶える為に、悪魔を召喚する禁書である。叶えたい願いによって召喚陣は異なる。"
小学生向けではなく、中二向けだったようだ。
次のページの目次に書かれた"復讐したい相手がいる場合"の項目を目にした時、頭を過ぎったのは朝のニュースで映ったあの女の顔だ。
"相手に金銭的損傷を与える場合"
"相手に精神的損傷を与える場合"
"相手に肉体的損傷を与える場合"
物騒な言葉の羅列だ
"相手を殺したい場合"
ドキッとした、いやいやそこまでは……でも自分は殺されかけてるし、あの女はどうやら殺人犯らしい。そう考えると、自分に一瞬過ぎった思考は正統性のあるもののように思えた。
思わずそのページの内容を注視してしまう、そもそも復讐だの、悪魔の召喚だの書いている時点で、この本は胡散臭いことこの上ない。こんな本の内容を読んだからといって、何かが起きるわけがないのだ。
"右図の召喚陣に左手を置き、右手には血が滲む程度に傷をつけること"
気付けば指示に従っている自分がいた、何故だかわからない、何故か"そうしなければいけない"ような気がした。大丈夫、こんなのお遊びだ、何か起こるはずがない。
"続けて下記の文言を発声せよ"
カタカナで書かれた文言を、声に出して口ずさむ、最後の一文を言葉にした瞬間……!
ドキドキ
ドキドキドキドキ
うーん、やっぱり何も起きないね、馬鹿らしい。
苦笑しながら机から立ち上がって、後ろの棚の絆創膏を取ろうとしたその時……。
「思ったより早かったな」
心臓が飛び出るかと思った!
自分の真後ろに、上から下まで黒い様相の知らない男が立っていたのだ。
「誰っ!?」
「自分で呼び出しておいて、誰だとは失礼な」
机に後ろ手をついて男をよくよく見ると、長くて黒い髪から獣の耳が生えている……猫? いや、どちらかというと犬……っぽい? あ、動いた!本物!? 結構ゴツめの首輪までしてて、より犬っぽい!
いやいや犬か猫かはどうでもいい、今はそれよりも確かめないといけないことがある。
「……悪魔なの?」
「今は悪魔だな、人間を誑かしてるから。地獄の獄卒の時もあれば、死者の魂を迎えに行く死神の時もある、呼び方なんてどうでもいいだろ?」
悪魔と獄卒と死神ってみんな一緒なの!? 初耳だよ!
「なんで後ろから現れるの? 陣に手をかざしてそれっぽい事したのに、普通陣の中から光が出てーとかが定石なんじゃないの?」
「なんでって……ずっと後ろに居たからだ!」
「はぁっ!?」
悪魔は腕を組んで偉そうにとんでもないことを言ってくれた、ずっと、後ろに"居た"!?
言葉を理解するのに時間がかかり、口を金魚みたいにパクパクさせていると、可笑しそうにくつくつ笑いながら悪魔は顔を押さえた。
「陣から光って、マンガ?とかいうのの読みすぎだろ! あの召喚の儀式だがな、あれは"悪魔は居るかもしれない"と、信じさせるための儀式だよ」
意味がわからない、どういう事? 眉をしかめながら悪魔を見ていると、ますます楽しそうに笑いだした。
「しかめっ面も相当かわいいな! スッゲェ好みだ!」
は?
「俺がお前を見初めて本を落とし、ずっと背後に付いていたのさ、ちなみにどの召喚陣を使おうと、俺が出てくるって寸法だ!」
「ストーカーか!! 返品交換お願いします」
「おいおい、俺は魔界では魔王様に次ぐNo.2の実力者だぞ! 魔王様でもご所望なのか!?」
明らかにビックリした顔で悪魔を見てしまった、目が合った瞬間、悪魔はニヤッと笑った。
「自己紹介がまだだったな、俺は"ユキ"だ、魔界でスカウト業とかやっている」
手を差し伸べられた、握手を求められてる?
「これ握り返したら契約成立とかならないよね?」
「ははは、ないない」
手を握り返しながら、真里ですとだけ名乗った、悪魔の手はとても冷たかった。
「悪魔なのになんか人間臭いね」
あとやたら好印象というか……顔は美形だし背も高い、身長は余裕で180は超えてる感じ、謎の既視感もある、はじめましてじゃない気がして親しみを覚える……悪魔の能力なのかな?
あ、耳は獣だけど尻尾は無いんだな、あったら可愛いのにな……ダメだ! 悪魔の手口にハマってる気がする!!
「まぁ、俺も元は人間だしな!」
また凄いことをサラッとぶっ込んで来た、じゃあなんなんだよその犬耳は!!
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