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真里編:第1章 出会い
あなたの願いを叶える本
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その日の朝は複雑な気分で起きた、またいつもの夢を見ていたみたいだ、あの子の夢を見た日は、いつも幸せな気持ちで起きる日が多いのだけど、今日はあまり気分が良くない……。
テレビから今日のニュースが聞こえてくる、16歳にもなってテレビをつけっぱなしで寝ているとは何事だ。
せめて夜中に目を覚ますくらいしても良さそうなものを……自分に呆れ返りながらテレビを消そうとリモコンに手を掛けた時、画面に既視感のある顔が映った。
『保険金殺人の容疑者とみられる女が、昨夜警察官を振り切り逃走、現在行方を追っています。女は××県在住の——』
幼少期に自分を虐待し続けたあの女だった。
何あの女、確か行方不明のはずだったんだけど……保険金殺人? 自分の身体に流れる血にゾッとした。
このニュースは義両親も気付いているかな、こんな女の息子が家族なんて嫌だろうな。
また捨てられるのかな……。
いやいやそんな筈ない、ここまで育ててくれた両親に対して失礼にもほどがある! 自分は捨てられないと、自信を持って言えるくらい愛情を貰ってきたと思う、僕も本当の両親だと思っているし、本当の息子だと思って貰ってる……と思う。
静かに洗面台に移動しながら、マイナスな思考にハマっては打ち消していた。
冷たい水で顔を洗い、鏡を見上げて映った自分の姿。あまり好きじゃない薄めの髪色と、癖っ毛、そして顔を見ればひどいものだった……。
自分を産んで虐待し続けたあの女が許せない、忘れていたのになぜ今頃思い出させるのか。
こんな憎しみに満ちた顔をする自分が嫌で仕方ない、きっと僕の育ての両親は……こんな顔しない。
「真里ー? 起きてきたのー? 朝ごはんお味噌汁いるー?」
母の声はいつも通りだ。
ホッと安心したものの、母の顔を見るのが怖かった。
「ごめん、今日図書委員なの忘れてた! もう出ないと間に合わないんだ」
極力いつも通りの声色で、平静を装って逃げるように家を出た。
ーーーーー
いつもより、かなり早く学校に着いてしまったので、嘘を本当にするべく図書室の整理をする。
返却本はあっという間に本棚に戻し終わったので、各棚の本の整理をダラダラとやる。教室にすぐに戻っても良かったのだけど、鏡で見た自分の顔を思い出し、人に見せられるものではないと思った。
変なところにある本を発見。
最悪だ、これ一番上の棚の本だ……。
僕は16歳男子高生の平均身長よりかなり低い、一生懸命背伸びをしないと上の本棚まで手が届かない。
情けないなぁと思いつつも、今は自分以外の誰もいないのだから気にする必要無いので、思う存分気兼ねなく背伸びをする。
足も手も全力で伸ばした時、一瞬本棚の向こう側の通路に人影が見えた気がした。おかしい、誰か図書室に入ってきた気配はなかったはずだ。
気持ち悪さを感じて、向こう側の通路を確認しようと歩き出した時、後ろでバサッと何かが落ちる音がした。音からして本だろうと予想はしていた。振り向いて見ると予想通り、ハードカバーの古びた赤い表紙の本が落ちていた。
こんな本あったっけ?
手に取って見ると、表紙や背表紙の端が擦れて白くなっている。かなり古い本に見える、こんな古い本は学校の図書室にあるのは似つかわしくない気がする。
しかもタイトルが"あなたの願いを叶える本"って、小学生女子が大好きそうな題材である。本の見た目とタイトルがアンマッチだ、まるで新しい本をわざと古い本に見せているような雰囲気さえある。
なぜ落ちたのか気になって裏側の通路を確認してみるが、足音も聞こえないし、気配もない、もちろん誰もいなかった。今図書室には自分しかいない筈だ、地震が起きたわけでも、もちろん突風が吹いたわけでもない。しかもここは歴史本コーナーだ、人為的なものを感じるような落ち方だと思った……それが余計に不気味に感じる。
落ちた本を棚に戻そうと思ったところで気付いた、この本には学校名のシールも無ければ、貸出用のバーコードもなかった。
中をパラパラと確認すると、色んな種類の魔法陣のようなものが、かなりの頻度で出現する。
誰かの忘れ物? いつもなら忘れ物ボックスに入れて終わりのところ、僕は何故かその本を自分のカバンにしまい込んでしまった。
テレビから今日のニュースが聞こえてくる、16歳にもなってテレビをつけっぱなしで寝ているとは何事だ。
せめて夜中に目を覚ますくらいしても良さそうなものを……自分に呆れ返りながらテレビを消そうとリモコンに手を掛けた時、画面に既視感のある顔が映った。
『保険金殺人の容疑者とみられる女が、昨夜警察官を振り切り逃走、現在行方を追っています。女は××県在住の——』
幼少期に自分を虐待し続けたあの女だった。
何あの女、確か行方不明のはずだったんだけど……保険金殺人? 自分の身体に流れる血にゾッとした。
このニュースは義両親も気付いているかな、こんな女の息子が家族なんて嫌だろうな。
また捨てられるのかな……。
いやいやそんな筈ない、ここまで育ててくれた両親に対して失礼にもほどがある! 自分は捨てられないと、自信を持って言えるくらい愛情を貰ってきたと思う、僕も本当の両親だと思っているし、本当の息子だと思って貰ってる……と思う。
静かに洗面台に移動しながら、マイナスな思考にハマっては打ち消していた。
冷たい水で顔を洗い、鏡を見上げて映った自分の姿。あまり好きじゃない薄めの髪色と、癖っ毛、そして顔を見ればひどいものだった……。
自分を産んで虐待し続けたあの女が許せない、忘れていたのになぜ今頃思い出させるのか。
こんな憎しみに満ちた顔をする自分が嫌で仕方ない、きっと僕の育ての両親は……こんな顔しない。
「真里ー? 起きてきたのー? 朝ごはんお味噌汁いるー?」
母の声はいつも通りだ。
ホッと安心したものの、母の顔を見るのが怖かった。
「ごめん、今日図書委員なの忘れてた! もう出ないと間に合わないんだ」
極力いつも通りの声色で、平静を装って逃げるように家を出た。
ーーーーー
いつもより、かなり早く学校に着いてしまったので、嘘を本当にするべく図書室の整理をする。
返却本はあっという間に本棚に戻し終わったので、各棚の本の整理をダラダラとやる。教室にすぐに戻っても良かったのだけど、鏡で見た自分の顔を思い出し、人に見せられるものではないと思った。
変なところにある本を発見。
最悪だ、これ一番上の棚の本だ……。
僕は16歳男子高生の平均身長よりかなり低い、一生懸命背伸びをしないと上の本棚まで手が届かない。
情けないなぁと思いつつも、今は自分以外の誰もいないのだから気にする必要無いので、思う存分気兼ねなく背伸びをする。
足も手も全力で伸ばした時、一瞬本棚の向こう側の通路に人影が見えた気がした。おかしい、誰か図書室に入ってきた気配はなかったはずだ。
気持ち悪さを感じて、向こう側の通路を確認しようと歩き出した時、後ろでバサッと何かが落ちる音がした。音からして本だろうと予想はしていた。振り向いて見ると予想通り、ハードカバーの古びた赤い表紙の本が落ちていた。
こんな本あったっけ?
手に取って見ると、表紙や背表紙の端が擦れて白くなっている。かなり古い本に見える、こんな古い本は学校の図書室にあるのは似つかわしくない気がする。
しかもタイトルが"あなたの願いを叶える本"って、小学生女子が大好きそうな題材である。本の見た目とタイトルがアンマッチだ、まるで新しい本をわざと古い本に見せているような雰囲気さえある。
なぜ落ちたのか気になって裏側の通路を確認してみるが、足音も聞こえないし、気配もない、もちろん誰もいなかった。今図書室には自分しかいない筈だ、地震が起きたわけでも、もちろん突風が吹いたわけでもない。しかもここは歴史本コーナーだ、人為的なものを感じるような落ち方だと思った……それが余計に不気味に感じる。
落ちた本を棚に戻そうと思ったところで気付いた、この本には学校名のシールも無ければ、貸出用のバーコードもなかった。
中をパラパラと確認すると、色んな種類の魔法陣のようなものが、かなりの頻度で出現する。
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