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第一章 Projective identification
動揺
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落ち込み、悔しがる三船を横目に見ながら、僕はベンチで焼きそばパンを食べていた。
有栖が遠くから歩いてくる。僕はぼんやりしていたが、有栖は三船に話しかけた。
耳元でこそこそ話しかける姿にいやらしさを感じたが、彼ははっとして、すぐに走り出していた。
有栖は僕へ向きなおしていった。
「三咲朱音に会える可能性があるよ。三船先輩は先に行って待ってる」
「どうやったら会えるんだ?」
今更会う必要なんてなかった。僕が心を閉ざしていることは、誰よりも僕がよくわかっていたからだ。
「世界に興味はある?」
「世界? 唐突になんだ」
「それが、三咲朱音に会える可能性。三咲朱音は世界であり、そして桐生君の中にもいる。きみに見つけられる? あはははは」
唐突に笑い出した有栖は、気が狂ったかのようだった。
「何を言っているんだ? なぞかけのつもりか?」
「いいえ。でも、私にもそれしかわからない。ある日三咲朱音が現れてそういったの」
「三咲が世界って意味が分からないけど、でもそれが本当なら三船先輩はどこへ行ったんだ? ああそうか、三船先輩の行き先を隠してるのか」
「違うよ」
断定された。その言葉に偽りは感じられなかった。
「見つけたんだと思うよ」
「見つけた?」
「そう、世界を」
意志の疎通はできている。だが何も話がかみ合わない。
「嫌いだったんでしょ? 好きにさせてあげなよ」
僕は有栖に腹が立った。だがそれ以上に三船の行き先が気になった。
「三船先輩はどこに行ったんだ」
「追いかけてみれば?」
僕は手当たり次第に人に声をかけ、先輩を追った。
とても嫌な予感がしていた。僕はあの人のことが好きではない。だがその予感が的中することはことはもっと気に食わなかった。
校門を抜け出し、校外へ出た。行き先が分かったのはそこまでで、そこから先は行方知れずとなった。
ふと頭に浮かんだのはあの踏切だった。あの因縁の場所を、きっと三咲朱音は利用するはず。
ほとんど根拠なんてない。だが、あの少女が僕を恨んでいるならもしかしたらあの踏切を利用するかもしれない。
踏切まで走った。かなり息が切れていた。
それは嫌なことに図星だった。警告音が鳴り響いている。遮断機が下りた踏切の中に、三船恭一は立っていた。もう今からでは間に合わない。
そう思った時、列車が猛スピードで彼を消し去った。
有栖が遠くから歩いてくる。僕はぼんやりしていたが、有栖は三船に話しかけた。
耳元でこそこそ話しかける姿にいやらしさを感じたが、彼ははっとして、すぐに走り出していた。
有栖は僕へ向きなおしていった。
「三咲朱音に会える可能性があるよ。三船先輩は先に行って待ってる」
「どうやったら会えるんだ?」
今更会う必要なんてなかった。僕が心を閉ざしていることは、誰よりも僕がよくわかっていたからだ。
「世界に興味はある?」
「世界? 唐突になんだ」
「それが、三咲朱音に会える可能性。三咲朱音は世界であり、そして桐生君の中にもいる。きみに見つけられる? あはははは」
唐突に笑い出した有栖は、気が狂ったかのようだった。
「何を言っているんだ? なぞかけのつもりか?」
「いいえ。でも、私にもそれしかわからない。ある日三咲朱音が現れてそういったの」
「三咲が世界って意味が分からないけど、でもそれが本当なら三船先輩はどこへ行ったんだ? ああそうか、三船先輩の行き先を隠してるのか」
「違うよ」
断定された。その言葉に偽りは感じられなかった。
「見つけたんだと思うよ」
「見つけた?」
「そう、世界を」
意志の疎通はできている。だが何も話がかみ合わない。
「嫌いだったんでしょ? 好きにさせてあげなよ」
僕は有栖に腹が立った。だがそれ以上に三船の行き先が気になった。
「三船先輩はどこに行ったんだ」
「追いかけてみれば?」
僕は手当たり次第に人に声をかけ、先輩を追った。
とても嫌な予感がしていた。僕はあの人のことが好きではない。だがその予感が的中することはことはもっと気に食わなかった。
校門を抜け出し、校外へ出た。行き先が分かったのはそこまでで、そこから先は行方知れずとなった。
ふと頭に浮かんだのはあの踏切だった。あの因縁の場所を、きっと三咲朱音は利用するはず。
ほとんど根拠なんてない。だが、あの少女が僕を恨んでいるならもしかしたらあの踏切を利用するかもしれない。
踏切まで走った。かなり息が切れていた。
それは嫌なことに図星だった。警告音が鳴り響いている。遮断機が下りた踏切の中に、三船恭一は立っていた。もう今からでは間に合わない。
そう思った時、列車が猛スピードで彼を消し去った。
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