冒険者をやめて田舎で隠居します

36 アントスのお願い

 朝からフリーデン村にアントスが現れた。

アントスの様子がおかしいと感じたジークは、アントスから話があるまで待った。

そして、

「ジークに頼みがある……。」

アントスは、真剣な顔で俺を見た。


「頼みって何だ？俺が出来ることだったら協力するけど？」

  俺の言葉を聞いたアントスは、深呼吸をしてゆっくりと話始めた。


「実は、ギルマスから新人冒険者の育成指導を頼まれたんだ……。ギルマスは、ジークにも指導に参加して欲しいらしい……。」


「………育成指導か。具体的にどうするんだ？」


「主に、俺らは実戦指導だ。魔物と直接戦ってもらいながら倒し方を教えるんだ。」

アントスがいっている事はわかる。わかるのだが、問題がある。


「アントス………俺が、指導したら………新人冒険者が危なくないか？」


実は、俺がまだ冒険者をしていた頃に、似たような事をギルマスに頼まれた事があった。その時は、アントスもいたがあの時は大変だった。


「俺も、あの事があるからギルマスに言ったんだが、新人冒険者の士気を上げるためにもジークが必要なんだと言われちまって……。」


「そう言えば、何で急に指導とか教育をする事になったんだ？」


「どうやら、討伐依頼や間引の依頼の失敗が増えてきているらしい。」


「えっ？今、そんなに魔物が増えてるのか！？」

  俺の中では、討伐依頼や間引依頼の失敗＝魔物が強くて多いという事だった。


「それなんだが、俺も疑問に思ってるんだよ。」

アントスの疑問に思っていることは、依頼の失敗が増えているのに魔物が増えている気配がないということだった。


「ギルドは、新人冒険者から何で失敗したのか事情を聞いてるんだよな？」

  俺は、少し嫌な予感がしていた。
これが、的中していたらどうしようかを考えてしまう。


「ギルドは、確認しているかはわからない……。今日中に確認をしてみるよ。」


「指導については、協力させてもらうよ。あははは。」


アントスは、急いで街に戻って行った。