上 下
21 / 61

20 ドラゴン サイド

しおりを挟む
  
  我には名はない。

  森の中を徘徊し、獲物を狩る日々を繰り返すだけの生き物だ。

そうして生きてきたし、これからも生きると思っていた。

しかし、衝撃の出会いがあった。

何時ものように、獲物を探しに森の上を飛んでいると、何かが我に向かって襲ってきた。

ワケがわからないまま反撃するが、手も足も出ない。

  それなりに戦闘力に自信があった我だったが、敵わなかった。

  我は死を覚悟したが、我に向かってくるフェンリルとその上に乗っている一人の男がみえた。

〈我が何をしたというのだ……。〉

これでも、今まで平和に過ごしてきた。
  我を見かけた人族は、我を倒そうとやってきた。

だが、我は平和に過ごしたいだけなのに。

  その男も我を見ただけで、倒しに来たのだなと思っていると、男は言った。

「お前は、俺が育てた作物を吹き飛ばすつもりか!やっと、村らしくなってきたのに!」

〈我は、ただ空を飛んでいただけだ…。作物を飛ばすつもりなどなかった。それに、このような場所に村があるなどしらなかった。〉

  そんなことを言っても無駄であろう。
人族は、我を殺すだろう。

「そうだったのか、飛んでるだけだったのに攻撃して悪かった。怪我を治すからじっとしていてくれ。」

『パーフェクトヒール』

〈我を殺さないのか……?我は、ドラゴンだぞ?〉

「殺さないよ?だって、何もしないだろ?」

〈お主は変わったやつだな。お主が良ければ、村に住まわせてくれないか。〉

「えっ!?」

〈やはり、ダメか。〉

「いや……ダメじゃないが……デカイから……。」

〈小さくなればよいのか……?〉

「えーと。小さくなれるならいいよ。あと、村に住んでる仲間と仲良く出来るならね!」

〈もちろんだ!〉

ピカッと光ると。

〈久しぶりに人化した。〉

「おお!ドラゴンって変身出来るんだな!それに……くっ!カッコイイ……。」

〈全てのドラゴンが人化出来るわけではない。古代竜と一部のドラゴンだけだ。〉

「そうなのか……。それじゃあ、俺達の村に行こう。」

〈よろしく頼む。あと、そこにいるのはフェンリルであっているか……?〉

〈妾はフェンリルじゃ。〉

〈フェンリルが人族と一緒にいるとは驚きだ。〉

〈妾は、村で大切な存在なのだ。〉

〈やはり、さすがフェンリルだな。〉

「ただの番犬だけどな。」

〈〈……………〉〉

〈ドラゴンよ、そのうちお主もそう言われるようになるからな!〉

「ドラゴンは、人化出来るからとても助かるよ!そういえば、名前ってないのか?」

〈我に名はない。〉

「名がないと、不便だから名を付けていいか?」

〈!!付けてくれるのか!頼む!〉

「そうだな~。ドラコスでどうだ?」

〈我は、今からドラコスとなのろう!〉

そこで、一匹の犬がもじもじしていた。

どうした?」

〈…妾…にも……つけ…て…いいぞ…。〉

「フェンリルも名前が欲しいのか?」

〈…うん。〉

 「シルバーでどうだ?」

〈シルバー!妾は、シルバーだ!〉


こうして我は、村に住むようになった。

初めて、やすらぎの場所を得る事が出来た。

  そして、何より得たものは美味しい料理だった。

  〈トンカツおかわり!ソースはたっぷりでお願いする!!えっ?キャベツは、マヨネーズをつけると美味しい?じゃあ、お願いします!ウマーイ!〉
しおりを挟む
感想 60

あなたにおすすめの小説

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下
ファンタジー
 貴族五男ライルは魔道具作りが好きな少年だったが、無理解な義理の家族に「攻撃魔法もろくに使えない無能者め!」と辺境に追放されてしまう。ライルは自分の力不足を嘆きつつ、魔物だらけの辺境の開拓に一人で着手する。  しかし家族の誰も知らなかった。実はライルが世界で一人だけの《チート魔道具師》の才能を持ち、規格外な魔道具で今まで領地を密かに繁栄させていたことを。彼の有能さを知る家臣領民は、ライルの領地に移住開始。人の良いライルは「やれやれ、仕方がないですね」と言いながらも内政無双で受け入れ、口コミで領民はどんどん増えて栄えていく。  これは魔道具作りが好きな少年が、亡国の王女やエルフ族長の娘、親を失った子どもたち、多くの困っている人を受け入れ助け、規格外の魔道具で大活躍。一方で追放した無能な本家は衰退していく物語である。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

処理中です...