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19.原因は俺でしたか?
しおりを挟むカレーライスを十分に堪能していると、フェンリースがもじもじしながら話してきた。
「ご主人様、あの、わ、わ、私に料理を教えて下さい!」
「料理?フェンリースだって料理できるよね?フェンリースの料理好きだよ!」
「好き~♪」
ブンブン。フェンリースの尻尾が勢いよく振っている。
フェンリースの頭の中はお花畑になっているようだった。
フェンリースが俺を慕ってくれているみたいだからよかった。
「フェンリースに料理を教えるのはいいんだけど……。」
「ご主人様の料理は、見たことも食べたこともなくてものすごく美味しいので教えて頂きたいのです!!」
「わかったよ!俺が、料理するときは手伝ってもらいながら教えるね!」
「ありがとうございます!!」
俺達は、暫く穏やかな時間を過ごした。
街へ戻って冒険者ギルドの扉を開けると、ざわざわ。ヒソヒソとしていた。
「あいつが噂の~」
「オーク殺しの~」
「あいつの後ろの女と××××してぇ」
どうやら、オークの集落を潰したという噂が広がっていたらしい。
「冒険者って暇なのか?」
「ご主人様の噂などするなんて殺ってもよろしいですか?」
「フェンリースは、すぐに殺るとか言わないの!怖いよ~。」
「申し訳ございません…。」
フェンリースの耳も尻尾もしゅーんと下がり落ち込んでしまった。
クソ~可愛いじゃんかーー。
俺は、思わずフェンリースの頭をなでなでしてしまった。
フェンリースの耳と尻尾が復活し、尻尾がブンブン振っている。
「フェンリースは、可愛いな~。」
「ご主人様~」
俺達が掲示板を見に行くと、声を掛けられた。
「お前は、たしかハルトだっけか?随分と立派になったな!」
「あ、あ、貴方は、トガーさんじゃないですか!お久しぶりです!」
トガーさんは、初めて冒険者ギルドに来たときにいろいろと教えてくれた冒険者だった。
「ハルトは、Cランクになったんだってな!頑張ってるじゃねぇかよ!」
「痛いですよ~!」
トガーさんに、背中をバンバンと叩かれながら苦笑いをする。
「貴様ーー!ご主人様に何をする!!」
「おぉ~。あっはっは。悪い悪い!」
「トガーさんは、どうしたんですか?」
「実は、依頼を受けていたんだが厄介な事が起きて困ってるんだ。」
トガーさんの話では、依頼主はこの国の王子様だという。
依頼内容は、王子様を護衛と王子の魔物討伐の訓練をするというものだった。
「なるほど。それの何処が厄介事なんですか?」
俺の質問に答えたのは、トガーさんのパーティーメンバーで狼の獣人のシャルムさんだった。
「実は、高原の近くの森で訓練をしていたんだけど、その最中に何処からともなくいい匂いがしたんだ。胃袋を刺激する香りでな……。王子様がその匂いの正体を探し出せといいだしてな。」
「なるほど。なるほど。どんな匂いだったんだろう?くそー。俺もさっきまで高原に居たのに気付かなかったー!」
俺が、騒いでいるとフェンリースが耳元で囁いた。
「私は、高原にいてそのような刺激のある匂いはご主人様の作ってくださった料理以外は嗅いでいません。もしかすると……匂いの正体は……。」
「えっ?もしかして……カレーライスでした?」
フェンリースは、気まずそうな顔でコクコクと頷いた。
そんな俺たちのやり取りを見ていたトガーさんが話に入ってきた。
「おい!何か知っているのか!?」
「……知っているのかって聞かれるとたぶん知っているかもです。取り敢えず、高原に行きましょう。」
高原に着くと、まず誰もいないかを確認する。
「では、トガーさん達は目を閉じて下さい。」
「目を閉じるのか?わかった。」
俺は、収納してあるカレーライスをだした。
トガーさん達の鼻がピクピク動く。
「これだ!この匂いだ!間違いない!!」
ガバッとトガーさんが俺の持っていたカレーライスを奪った。
「貴様ーー!ご主人様の物を奪ったなー!」
「フェンリース!!大丈夫だから!殺らないで!剣をしまってよ!トガーさんごめんなさい!」
「俺こそすまなかった……。だが、これは料理なのか?」
「これは、カレーライスっていう料理ですよ。俺が作ったんです。」
「ハルト。お前も大変だな。」
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