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第3話 上達に近道無し!
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部室では今後のスケジュールや大会の概要について響子から説明が行われていた。
「北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、各地区の予選突破校が集まって11月に行われるのが大学女子自動車部競技会・全国大会。私達の目標は8月に行われる地区予選を突破、そして全国大会優勝よ!」
「おぉー……」
新入部員が珍しく熱気を帯びた響子の姿に少し圧倒される。
「部長!全国大会で優勝するとどんな良いことがあるんですかー!?」
仕込みのような質問をしたのはまどかだ。
「ふふ、いい質問ね。上位入賞校には…大会スポンサーから結構な補助金が貰えまーす!おまけに自動車メーカーへの就職内定も貰えちゃったりしまーす!」
「おおぉー!」
「私たちは去年、念願の全国大会に初出場したわ。でも残念ながら結果は散々。それでも補助金は一応貰えたのよ、と言っても上位入賞校と違って雀の涙……結局遠征費とCR-Xの修理代で完全な大赤字!おかげでクリスマスもお正月もバイト三昧……そうして私の二十歳の冬は人知れず終わっていったのよ!」
「はっ!私、何を喋ってるの!?」
部室の微妙な空気に思わず響子が我に返る。
「コホン、えー、今のは建前の話ね。本音はもちろん私たちがNO.1という栄冠を掴むためよ!!」
部室には引き続き微妙な空気が漂っていた。
「あー、ともかく第1目標は夏の中部予選突破だ。9年連続全国大会出場中の聖城女学院はもちろん北陸工業大学もリベンジに燃えてる。他にも出場権を虎視眈々と狙ってる学校がたくさんあるからな」
見かねた睦美がフォローに入る。
―全国大会出場権―
その出場枠は各地区により割り振りが決められている。
最大は関東地区の4枠、次いで近畿地区の3枠、中部地区は2枠で、北海道、東北、中国、四国、九州はそれぞれ1枠だ。
「そこでいよいよ来週は合宿よ!」
響子が気を取り直して仕切り直す。
「今までみんなにはスラロームやターンの練習をしてもらってたけど、来週は泊りがけでみっちりコース練習をしてもらいます」
愛心学院女子自動車部は週末になると大学OBが所有する山奥の舗装地を使わせてもらい練習をしている。ただし2速に入れるのもままならない狭い場所で、基礎練習には良いがコースを作って走ることは難しいのだ。
「合宿には4年生の先輩にも来てもらいます。みなさん就職活動で忙しい中わざわざ来てくださるのでくれぐれも失礼の無いように。みっちりしごいてもらうから覚悟しておいてね!」
大学女子ジムカーナはドライバーとして参加できるのは3年生までと決められている。
4年生は各地区の競技会に所属し、大会の運営側に回るためだ。近年でこそ参加校が増えているが、参加校が少なかった黎明期を乗り切るために決められたルールなのだ。
「4年の先輩も久しぶりに来るのかぁ…」
ひとみの言葉は懐かしむと言ようりぼやきだ。
「4年生の先輩ってそんなに怖いんですか?」
亜里沙が不安そうにまどかに尋ねる。
「そんなこと無いわよ。ひとみは色々無茶してたからその度に怒られてただけ」
まどかがそう説明すると亜里沙も納得したようだ。
「今年の中部予選はキョウエイドライバーランドで開催されるわ。そしてその直前、7月にキョウエイで大学女子ジムカーナの合同テストがあるの。それまでの練習成果と合同テストの結果を総合的に判断して、私たち3年生と4年生の先輩で最終的なチームのドライバーを3人決定します」
「もちろん私たち3年生も含めて横一線に公正な目で判断するわ。1年生にも十分ドライバーになるチャンスはあるから希望者は頑張ってアピールするようにね」
亜里沙はまどかの表情が険しくなったのに気付く。
ドライバー候補は順当に行けば部長の神沢響子、2年の今池ひとみの選出は揺るぎない。現時点、基礎練習で守山亜里沙は箱車への順応段階で、篠原まどかの後塵を拝している。しかしその差は日に日に縮まっており、残り1枠がこの2人の争いになるだろうことは誰の目からから見ても明らかだった。
『当面の目標はまどか先輩に勝ってドライバーに選ばれることね……』
亜里沙は自信で閉ざしていた走りの闘争心を、どんどん抑える事が出来無くなっているのを自覚していた。
「北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、各地区の予選突破校が集まって11月に行われるのが大学女子自動車部競技会・全国大会。私達の目標は8月に行われる地区予選を突破、そして全国大会優勝よ!」
「おぉー……」
新入部員が珍しく熱気を帯びた響子の姿に少し圧倒される。
「部長!全国大会で優勝するとどんな良いことがあるんですかー!?」
仕込みのような質問をしたのはまどかだ。
「ふふ、いい質問ね。上位入賞校には…大会スポンサーから結構な補助金が貰えまーす!おまけに自動車メーカーへの就職内定も貰えちゃったりしまーす!」
「おおぉー!」
「私たちは去年、念願の全国大会に初出場したわ。でも残念ながら結果は散々。それでも補助金は一応貰えたのよ、と言っても上位入賞校と違って雀の涙……結局遠征費とCR-Xの修理代で完全な大赤字!おかげでクリスマスもお正月もバイト三昧……そうして私の二十歳の冬は人知れず終わっていったのよ!」
「はっ!私、何を喋ってるの!?」
部室の微妙な空気に思わず響子が我に返る。
「コホン、えー、今のは建前の話ね。本音はもちろん私たちがNO.1という栄冠を掴むためよ!!」
部室には引き続き微妙な空気が漂っていた。
「あー、ともかく第1目標は夏の中部予選突破だ。9年連続全国大会出場中の聖城女学院はもちろん北陸工業大学もリベンジに燃えてる。他にも出場権を虎視眈々と狙ってる学校がたくさんあるからな」
見かねた睦美がフォローに入る。
―全国大会出場権―
その出場枠は各地区により割り振りが決められている。
最大は関東地区の4枠、次いで近畿地区の3枠、中部地区は2枠で、北海道、東北、中国、四国、九州はそれぞれ1枠だ。
「そこでいよいよ来週は合宿よ!」
響子が気を取り直して仕切り直す。
「今までみんなにはスラロームやターンの練習をしてもらってたけど、来週は泊りがけでみっちりコース練習をしてもらいます」
愛心学院女子自動車部は週末になると大学OBが所有する山奥の舗装地を使わせてもらい練習をしている。ただし2速に入れるのもままならない狭い場所で、基礎練習には良いがコースを作って走ることは難しいのだ。
「合宿には4年生の先輩にも来てもらいます。みなさん就職活動で忙しい中わざわざ来てくださるのでくれぐれも失礼の無いように。みっちりしごいてもらうから覚悟しておいてね!」
大学女子ジムカーナはドライバーとして参加できるのは3年生までと決められている。
4年生は各地区の競技会に所属し、大会の運営側に回るためだ。近年でこそ参加校が増えているが、参加校が少なかった黎明期を乗り切るために決められたルールなのだ。
「4年の先輩も久しぶりに来るのかぁ…」
ひとみの言葉は懐かしむと言ようりぼやきだ。
「4年生の先輩ってそんなに怖いんですか?」
亜里沙が不安そうにまどかに尋ねる。
「そんなこと無いわよ。ひとみは色々無茶してたからその度に怒られてただけ」
まどかがそう説明すると亜里沙も納得したようだ。
「今年の中部予選はキョウエイドライバーランドで開催されるわ。そしてその直前、7月にキョウエイで大学女子ジムカーナの合同テストがあるの。それまでの練習成果と合同テストの結果を総合的に判断して、私たち3年生と4年生の先輩で最終的なチームのドライバーを3人決定します」
「もちろん私たち3年生も含めて横一線に公正な目で判断するわ。1年生にも十分ドライバーになるチャンスはあるから希望者は頑張ってアピールするようにね」
亜里沙はまどかの表情が険しくなったのに気付く。
ドライバー候補は順当に行けば部長の神沢響子、2年の今池ひとみの選出は揺るぎない。現時点、基礎練習で守山亜里沙は箱車への順応段階で、篠原まどかの後塵を拝している。しかしその差は日に日に縮まっており、残り1枠がこの2人の争いになるだろうことは誰の目からから見ても明らかだった。
『当面の目標はまどか先輩に勝ってドライバーに選ばれることね……』
亜里沙は自信で閉ざしていた走りの闘争心を、どんどん抑える事が出来無くなっているのを自覚していた。
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