7 / 19
第2話 私、ジムカーナなんてやりません!
2-1
しおりを挟む
愛心学院女子自動車部部員一同が部室に集まっている。部室といってもキャンパスの端に建てられたガレージに作られた一室で、大学のキャンパスに存在するとはにわかには信じられない建物だ。
「はい、じゃあこれで明日からの新入生勧誘イベントの流れ確認は終わりね」
そう締めくくったのは部長の神沢響子。入学式も終わりいよいよ新入生のサークル勧誘が始まる時期だ。
「車の展示とビラ配りがメインかぁ。いっそのことキャンパスのど真ん中でCR-Xのデモンストレーションでもした方がよっぽど目立つのになぁ」
ひとみが不満そうに言うがそんな許可は下りる訳が無い。
「はいはい、馬鹿な事言ってないで明日は頼むわよ。興味ある子には別の日に参加してもらうデモンストレーションイベントを用意してるんだから」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部室はキャンパスの端にあり、校門まで歩いて10分以上かかる場所にある。
「ひとみと茉莉は最初から自動車部志望だったのよね?」
校門に向かう道すがら、間をつなぐためか去年の今頃を思い出したのかまどかが問いかける。
「私は知り合いの影響で最初からジムカーナをやる気で入ってきたからな。ここは家から近いし、自動車部もそこそこ強いの知ってたし」
「わたしは車好きだったけど自動車部じゃなきゃって訳じゃなかったよ。でもCR-Xにスーチャー(※スーパーチャージャー)載ってるのが気になって覗いてたら睦美先輩に声掛けられたの。まだセッティングの最中だったけど『一緒にやらないか?』って言われてめっちゃ楽しそうって思ったの!」
やはり茉莉は少しずれている。ひとみとまどかは思った。
「まどかちゃんは~、部長に憧れて入っちゃったんだよね?」
「な、な、な、なに言ってるの?た、確かに神沢先輩は優しくて素敵な人だけど決してそれだけと言うことでは無くまあ運転技術の向上は長い人生を考慮した場合非常に有用であると考え・・・」
『カラッ!カララッ!グイングイーーーーン!!』
「!!」
ちょうど駐輪場の付近にさしかかった頃だ、バイクのエンジン始動音だろうか、あまり聞いたことの無い音質に3人は一斉に音の鳴った方角へ振り向いた。
『カラカラカラカラカラカラカラカラ・・・』
ゆっくりと一台のバイクが動き出す。
「女?」
ひとみが思わず口に出した。
既にあたりは薄暗く、顔はフルフェイスのヘルメットに覆われ全く分からない。が、夕焼けに映えるライダーのフォルムは非常に華奢であった。
「RGV250Γ(ガンマ)!」
茉莉が若干興奮しながら叫ぶ。
「ガンマ?」
ひとみはバイクには疎いが、そのマシンが持つ独特な雰囲気を感じ取っていた。
「なに、そんな凄いバイクだったの?」
まどかは二人の反応をみて不思議そうな顔をしている。
「うーん、凄いかって聞かれると昔は普通に走ってたバイクだし~。ただ走り全振りみたいなバイクでもう絶版になって20年くらい経ってるよ~。普通に考えると女子大生が乗ってるのが異常と言うか~」
30年前の車を乗り回している人間の言葉とは思えないが、茉莉は少し考えたあとこう続けた。
「でもわたし駐輪場に止まってるバイクは大体把握してるんだけど、今までガンマなんて見たことなかったな~。ひょっとしたら新入生かも」
「新入生?もしそうならちょっと面白そうだ」
「ああ…ひとみ、またなんか良からぬこと考えてる…」
『カーーーーーーーーーーンカーーーーーーーーーーーン!』
2ストローク特有の甲高いエキゾーストノートが遠ざかる中、まどかはどうか巻き込まれませんようにと願うのであった。
【今回の補足】
登場車両紹介
スズキ RGV250Γ
80年代から盛り上がり始めた2ストロークエンジン250ccレーサーレプリカの金字塔。ホンダNSR250R、ヤマハTZR250Rと激しい性能競争を繰り広げ、峠では大排気量車にも劣らぬ速さを見せた。エンジンはイタリアのアプリリアRS250にも採用され未だに高い評価を受けている。
新たな排ガス規制に対応できなくなり1999年に惜しまれつつ生産終了となった。
「はい、じゃあこれで明日からの新入生勧誘イベントの流れ確認は終わりね」
そう締めくくったのは部長の神沢響子。入学式も終わりいよいよ新入生のサークル勧誘が始まる時期だ。
「車の展示とビラ配りがメインかぁ。いっそのことキャンパスのど真ん中でCR-Xのデモンストレーションでもした方がよっぽど目立つのになぁ」
ひとみが不満そうに言うがそんな許可は下りる訳が無い。
「はいはい、馬鹿な事言ってないで明日は頼むわよ。興味ある子には別の日に参加してもらうデモンストレーションイベントを用意してるんだから」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部室はキャンパスの端にあり、校門まで歩いて10分以上かかる場所にある。
「ひとみと茉莉は最初から自動車部志望だったのよね?」
校門に向かう道すがら、間をつなぐためか去年の今頃を思い出したのかまどかが問いかける。
「私は知り合いの影響で最初からジムカーナをやる気で入ってきたからな。ここは家から近いし、自動車部もそこそこ強いの知ってたし」
「わたしは車好きだったけど自動車部じゃなきゃって訳じゃなかったよ。でもCR-Xにスーチャー(※スーパーチャージャー)載ってるのが気になって覗いてたら睦美先輩に声掛けられたの。まだセッティングの最中だったけど『一緒にやらないか?』って言われてめっちゃ楽しそうって思ったの!」
やはり茉莉は少しずれている。ひとみとまどかは思った。
「まどかちゃんは~、部長に憧れて入っちゃったんだよね?」
「な、な、な、なに言ってるの?た、確かに神沢先輩は優しくて素敵な人だけど決してそれだけと言うことでは無くまあ運転技術の向上は長い人生を考慮した場合非常に有用であると考え・・・」
『カラッ!カララッ!グイングイーーーーン!!』
「!!」
ちょうど駐輪場の付近にさしかかった頃だ、バイクのエンジン始動音だろうか、あまり聞いたことの無い音質に3人は一斉に音の鳴った方角へ振り向いた。
『カラカラカラカラカラカラカラカラ・・・』
ゆっくりと一台のバイクが動き出す。
「女?」
ひとみが思わず口に出した。
既にあたりは薄暗く、顔はフルフェイスのヘルメットに覆われ全く分からない。が、夕焼けに映えるライダーのフォルムは非常に華奢であった。
「RGV250Γ(ガンマ)!」
茉莉が若干興奮しながら叫ぶ。
「ガンマ?」
ひとみはバイクには疎いが、そのマシンが持つ独特な雰囲気を感じ取っていた。
「なに、そんな凄いバイクだったの?」
まどかは二人の反応をみて不思議そうな顔をしている。
「うーん、凄いかって聞かれると昔は普通に走ってたバイクだし~。ただ走り全振りみたいなバイクでもう絶版になって20年くらい経ってるよ~。普通に考えると女子大生が乗ってるのが異常と言うか~」
30年前の車を乗り回している人間の言葉とは思えないが、茉莉は少し考えたあとこう続けた。
「でもわたし駐輪場に止まってるバイクは大体把握してるんだけど、今までガンマなんて見たことなかったな~。ひょっとしたら新入生かも」
「新入生?もしそうならちょっと面白そうだ」
「ああ…ひとみ、またなんか良からぬこと考えてる…」
『カーーーーーーーーーーンカーーーーーーーーーーーン!』
2ストローク特有の甲高いエキゾーストノートが遠ざかる中、まどかはどうか巻き込まれませんようにと願うのであった。
【今回の補足】
登場車両紹介
スズキ RGV250Γ
80年代から盛り上がり始めた2ストロークエンジン250ccレーサーレプリカの金字塔。ホンダNSR250R、ヤマハTZR250Rと激しい性能競争を繰り広げ、峠では大排気量車にも劣らぬ速さを見せた。エンジンはイタリアのアプリリアRS250にも採用され未だに高い評価を受けている。
新たな排ガス規制に対応できなくなり1999年に惜しまれつつ生産終了となった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる