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動き出すハグルマ 前編
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桜がいつもより早く咲いたせいで、既に散ってきてしまっていた。
二週間の長期休暇が終わり、新学期になる。
俺は一年前と同じように廊下側の先頭に腰を落ち着かせた。
一年も経てばいい加減知っている顔が多くなる。
孤立するということは少なくなるが、俺は別格だった。
そう、俺は自分の席に"腰を落ち着かせた"のだ。
別に寄ってくる輩もいない。
いわゆる"ボッチ"である。
まぁ、べ、別に寂しいわけじゃ、な、ないけ……ど
頬杖ついて廊下にある窓の外を眺める。
いつも通り俺だけこの時間に置いていかれているようだった。
って考えてる俺、最早やばいんじゃね!?
いや、そんな事ねーでしょ。
そんなこと大アリだから!
いやいやいやいや、そんなご謙遜を。
脳内で再生される一人漫才を堪能しているところ、目の前のことに漫才が止まった。
「あれ、誰だ? 」
一年学校で過ごして、見たことのない顔だった。
友達のいない俺にとって人間観察は、得意中の得意だったが……
脳内検索してもやはり名簿にはヒットしない。
髪の毛は金髪で短かった。
誰が見ても"可愛い" "美しい"と思ってしまう外見だった。
「おい、そこの生徒! 」
多くが見ている中、その女子が教師に止められる。
女子は、足を止め教師の方に顔を向けた。
「……なんですか? 」
「新学期早々髪を染めやがって、なんだその態度は! 」
しっかりと顔を見ていなかったが、あれは生徒指導の"邑楽 玄大"だった。
アイツは、短気ですぐに怒ることで生徒からはよく思われていない教師だ。
たまに理不尽に怒ることすらあるらしい。
「クラスと名前を言いなさい」
「……三組の"伊勢崎 来夢"です」
「よし、明日までに脱色してきなさい」
そっか、あの子は"伊勢崎 来夢"って名前なんだ。
名簿に入れておかないと。
って明日までって急すぎでしょ。
「……それはちょっと」
「どういうことだ? ちょっと生徒指導室へ来なさい」
邑楽は伊勢崎の腕をがっしり掴み無理矢理生徒指導室へと連れ込もうとする。
「可哀想にね」「染めていないのに生徒指導室なんて」
小さい声でそう聞こえた。
俺はいつの間にか動き出していた。手に椅子を持って。
あれぇ、おかしいな。
俺ってこんなにも行動的だったっけ?
ガシャン!!!!
その場の全員が音のした方に顔を向ける。
そう、視線が俺に集中していた。
例外なく邑楽もこちらを向く。
「おい、そこの男子生徒、何をやっている! 」
俺はガラスで傷が付いた椅子を床に置き、邑楽がこちらへ向かってくるのをじっと待った。
二週間の長期休暇が終わり、新学期になる。
俺は一年前と同じように廊下側の先頭に腰を落ち着かせた。
一年も経てばいい加減知っている顔が多くなる。
孤立するということは少なくなるが、俺は別格だった。
そう、俺は自分の席に"腰を落ち着かせた"のだ。
別に寄ってくる輩もいない。
いわゆる"ボッチ"である。
まぁ、べ、別に寂しいわけじゃ、な、ないけ……ど
頬杖ついて廊下にある窓の外を眺める。
いつも通り俺だけこの時間に置いていかれているようだった。
って考えてる俺、最早やばいんじゃね!?
いや、そんな事ねーでしょ。
そんなこと大アリだから!
いやいやいやいや、そんなご謙遜を。
脳内で再生される一人漫才を堪能しているところ、目の前のことに漫才が止まった。
「あれ、誰だ? 」
一年学校で過ごして、見たことのない顔だった。
友達のいない俺にとって人間観察は、得意中の得意だったが……
脳内検索してもやはり名簿にはヒットしない。
髪の毛は金髪で短かった。
誰が見ても"可愛い" "美しい"と思ってしまう外見だった。
「おい、そこの生徒! 」
多くが見ている中、その女子が教師に止められる。
女子は、足を止め教師の方に顔を向けた。
「……なんですか? 」
「新学期早々髪を染めやがって、なんだその態度は! 」
しっかりと顔を見ていなかったが、あれは生徒指導の"邑楽 玄大"だった。
アイツは、短気ですぐに怒ることで生徒からはよく思われていない教師だ。
たまに理不尽に怒ることすらあるらしい。
「クラスと名前を言いなさい」
「……三組の"伊勢崎 来夢"です」
「よし、明日までに脱色してきなさい」
そっか、あの子は"伊勢崎 来夢"って名前なんだ。
名簿に入れておかないと。
って明日までって急すぎでしょ。
「……それはちょっと」
「どういうことだ? ちょっと生徒指導室へ来なさい」
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「可哀想にね」「染めていないのに生徒指導室なんて」
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あれぇ、おかしいな。
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そう、視線が俺に集中していた。
例外なく邑楽もこちらを向く。
「おい、そこの男子生徒、何をやっている! 」
俺はガラスで傷が付いた椅子を床に置き、邑楽がこちらへ向かってくるのをじっと待った。
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