天下無双の遊戯

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条件と真剣

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 大陸の南西。沿岸部。プロポシスを中心にその一帯は果物等の食物が実らない。大陸有数の無食物地帯(旅人から珍奇地帯と揶揄されることも)。関所が設けられており街の出入りの際に料金が発生するのでプロポシスでは他の町村で見られないホームレスが存在する。年中温暖・多湿・強風・多雨。晴れや曇りの日は砂ぼこりが舞う。町民は清潔好き。
 プロポシス内の興行地帯にある催しの1つに戦士と戦士の闘いがある。
 闘技場兼果たし合いの場は周りから1メートルほど低く掘られ円形に作られている。観客席となる地面は闘技場に向かい傾斜しており草木が伸び放題。観客は草木をどかし見物料を払って見る。
 戦士は健闘士と呼ばれ罪人やホームレス等が出場する。見世物という性質から殺人は許され防御性の強い服の着用は禁止されている。
 イーラ・シモス:172センチ。体重69キロ。両利き。16歳。職業は健闘士。9歳で犯罪を犯した後健闘士となる。未だに1人の選手も殺していないことから戦場の天使と呼ばれ調子に乗る。
 イーラは試合が始まると共に棍棒を相手に向かい振り回す。捌かれ反撃を受けて倒れる。
 「参りました!」
 観客の憫笑と怒罵。
 「闘えーーー!」
 「それでも男かーーーー!」
 彼は負けて選手待機室へ戻る。沢山の選手が出番前の練習をしている。出入りの隣に設置されるベンチに座り架空の人物に言い訳を話す。「いや、初めの棍棒振り回すのには相手を牽制する効果があったんや」
 老人がやってきて敗北選手の隣に立つ。「負けちまったな」
 「ドヤ爺、会いたかった。そうなんだ。だからもっと強い武器をくれよ」
 「・・・・・・はぁ。あのな。お前に渡した棍棒の性能はいいんだよ。だから少しは練習をしたらどうなんだ」
 「あ? やってるよ毎日、5分間。今回負けたのは俺のせいじゃない」
 「ワシな、今日はお前に話があってココに来たんだ。ワシな。今日をもってお前に武器を渡すの止めようと思う」
 「は? ナニ言ってんだこのハゲは。それじゃあコレからオレはどうなる。アンタは今じゃ健闘士に武器を与える職人として地位を確立し名声も手に入れただろうがそれはオレ専属の武器職人という肩書きだ。オレが目をつけなけりゃあアンタは今も無名な一介の職人だ」
 「聞いてるんだよ。練習をサボり1年半。朝から晩まで酒を浴び。ケンカ、恐喝し薬物にも手を出してるなんてウワサも聞く。ワシには生徒がいる。子供達だ。彼らを見た後にお前を見ると警戒せざるおえん。お前が闘いに勝利するのは大衆に悪影響を及ぼし迷惑をかけるのでは、と」
 「オレは戦場の天使」
 「・・・・・・闘技場では殺人が許されている。町中での恐喝はどうだ。大衆の話だよ。闘技場内での殺人に見物客は『ルールだから』で例外だと認識。自分はしない。そんな思考が働くのではないか」
 「それは、でも見物客の話で大衆は賛否両論だろう」
 「ワシはそう思っとるんだ。だからお前に武器を作って与えるの止める。ていうことでアディオス!」
 ドヤ爺の腕を掴むイーラ。「待てって。ドヤ爺の考えはよく分かった。要は勝てばいいんだろ!」
 「全然分かっとらんじゃないか! 練習して日常の振る舞いから品行方正にしろと言っとるんだ」
 「周りの批判は勝利で黙らす。だから武器くれ」
 「な訳ねーだろ。ふざけんな。誰がやるか」
 「ドヤ爺がオレに武器を渡すのを止めようとオレがドヤ爺の武器で勝利すればドヤ爺は有名になる。その度にアンタはオレに恩が出来るはずだ。有名になって美味しい飯を食いたかったんだろ? なぁ?」
 「・・・・・・・・・・・・分かった。ではこうしよう。次の試合で相手に勝利したら今後もお前に武器を渡そう」
 「言ったな! ちゃんと約束は守れよ!」
 「・・・・・・カス野郎」
 「あ? なんて?」
 「カス野郎!」
 「はははははは」
 屋内。稽古場。健闘士として試合に出る前に教えを請うていた先生の家。エクセレンテ邸内。
 エクセレンテはイーラの武器を手に持ち見せる。「この武器の性質をハッキリさせる。この武器の情報。知ってることすべて言え」
 「名前はアドラシオン。形状は大杖。魔法使いでないオレでも簡易に魔法を発動出来る。発動可能な魔法は5つ。全て火に関するモノ。試合では見世物という性質から1回で相手を倒せる魔法は禁止。かわせない魔法も禁止。オレが試合で発動を許されている魔法はフレイムのみ。当たると即死・気絶にはならない。当てたら2回目のフレイムを当てるか棍棒で倒す。現時点で1度フレイムをヒットさせた試合は100%オレが勝ってる。材料は魔法樹の幹。相手の攻撃をコレで防いでたら直ぐに折れるか魔法が使えなくなるほど壊れる。棍棒も魔法樹から作成されてる。当たると何倍もの衝撃を受ける。大抵相手は吹っ飛ぶ。魔法使いでなくても発動出来る簡易魔法は魔法使いが魔法を発動するときと違い誰が発動してもそれが同名の魔法であれば威力や範囲は全く同じになる。棍棒の方はお金が有れば幾らでも作成可能。大杖はオレの鯉党が職人に魔法樹の1部をもってきてそれを職人が加工したものでその魔法樹の本体が何処にあるか不明。別の魔法樹を材料にすると今と全く同じものは作成されない。ゆえに貴重。使い勝手もいいし。前に話した通り、魔法樹の魔力と作成者の強烈な念のハーモニーから緻密で精巧な武器が作られる。ゆえに重宝してた職人が先日オレの専属武器職人を辞めたいとほざき出した。少し絞ってやらねえと。防具も現在許諾されている魔法を受けて無傷になる位の衣服は禁止。盾はアリ」
 「じゃあお前自身の能を言ってみろ」
 「幼い頃は貧しくてパンを盗んで捕まり先生のところ流れてきてそこで学び練習して13で試合に出場。以降実績を積みスター街道を邁進する」
 「が、ココ1、2年は遊び呆けて去年の戦績は負け越し。今のペースだと今年は専従健闘士の中で最下位になりクビ」
 専従健闘士とはそれ以外の闘技場出場者である罪人や武術経験の無い貧民が出場するか否かを自分で自由に決められそれゆえに一期一会の場合があることに対し定期的に闘う契約をしそのタイミングは運営側の決定に従い健闘士ランキングにのることを承諾した者たちを指す。専従健闘士でなくても不定期で数多く出場し闘いを生業とする野良健闘士もいる。
 「いやいや・・・・・・」若者は首を振る。「それは言い過ぎ。最下位なんてなるわけない。オレ若いし。武器も強い。あと4年は遊べる予定」
 「1、2年遊んで最下位争いしてるのにプラス4年はない。次は実戦だ」
 エクセレンテは自らが健闘士をしていた頃に使用している木刀を握る。戦う。イーラが勝つ。
 「強くなったな」しりもちを着くエクセレンテはイーラが差し伸べる手を握り起き上がる。「オレが教えてる頃より膂力がある。身長も伸びてリーチも長い。それに動きが速い」
 「現役の健闘士からすれば遅い」
 「十分だ大杖と棍棒の組み合わせを考慮すると。なんで負けるんだ」
 「それを先生に尋ねてる訳ですよ」
 「まあいい。もう1度やろう。次はオレも本気出すから」
 エクセレンテ10連敗。
 「なんでだッ。なんで勝てない!」
 「先生は生徒に教えるのみで自己の鍛練を怠っているんですよ」弟子が師匠にアドバイスしてあげる。
 雨が降ってくる。稽古は終わり団子屋で昼食に興じる。皿に乗る山盛りの幾世餅をのんびり食べていく。襤褸らんるを纏う男性が店に入る。髪はボサボサで伸びまくり。雨で髪は肌に張り付き汗と水でベトベト。汚れが水滴となり地面に落ちる。顔にへばりつく髪の間から見えるギョロッとする目が怖い。髭はボーボー。身体も汚れまくりで痩せこけている。現在ホームレス。名はホー。彼は団子を頼むと所持金が有るか確認され無一文であることがバレて店を追い出される。幾世餅を頬張るイーラは追い払う従業員に彼を中に招き入れるよう指示。
 ホーは上客の正面に座り山盛りの幾世餅が乗る皿を差し出される。「こ、これを食っていいんですか」
 「いいよ」
 ホーは返事もせずに幾世餅にがっつく。食べ終わりほうじ茶を飲む。「腹へったなぁ」
 2人は居酒屋へ移動。小上がりでお盆に乗るツマミと酒を口に運びながら雑談に興じる。
 「うへへぇ。ありがてえ。すまねえすまねえ」「ウマイか」「そりゃうめえよ。涙がでそうだ」
 「ホーはどうしてホームレスなんだ」
 「働くのが嫌でよッ。賭博で生計立てようと思ったんだが一瞬で飛んだ」
 「この町出身か」
 「出稼ぎで来てそのまま定住した。プロポシスに来て4年経つ」
 「オレはここで生まれ育ったがこの町で餓死する奴なんて見たことも聞いたこともないから安心しなよ。食いもん欲しい欲しい欲しいよ~んって言ってたら誰か通りの人が食い物を分け与えてくれる。無食物地帯だからこそ皆で協力し合って生存していく精神があるわけよ」
 「餓死の心配はしてない。あ~新しい服が欲しい~。もうこの服洗わずに2ヶ月着てるよ」
 「服を与えてくれる人は見たことないな」
 ホーはぐい呑みに注いだ酒を飲み干す。口がヘの字になる。「オレのよぉオヤジも飲んだくれでお金がなかった。昔から同じようになりたくねえと思ってたが気付けば似たり寄ったり。なんてことだ。何も親子2代で無一文をの道を歩まなくてもいいのに・・・・・・」
 「働け」
 「古着でいいからよぉ服買ってくれよぉ」
 「オヤジの甲斐性のなさを嘆いたと思えば服買ってくれかよ」
 「切り替えは早い方だ。過去の事は置いといて目先の事から片してしまおう」
 「分かった。じゃあオレとどっちが酒を沢山飲めるか勝負して勝ったら服を買ってやる」
 「余裕!」
 互いに同じタイミングで飲んでいき9杯目でホーが「もういいです・・・・・・」と言う。川辺でゲロを吐き捨て服と身体と口内を洗いサッパリ。
 「身体洗って川が汚れる所を初めて見た」
 「だから2ヶ月着てるんだって。それでノラネコのように生きてるとオレのようになれる」
 「ナニ言ってんだコイツ。今更だけど銭湯行くか。温かいぞ」
 「いいね。行こう」
 お風呂に浸かり2階で将棋をした後に各々置いてある娯楽本を読み耽り銭湯から出る。
 ホーはイーラの背中を見る。「あのさ、良ければだけどお前ん家に居候させてくれないか」
 「・・・・・・・・・・・・じゃあな。また遊ぼうぜ」
 2人は別れてイーラは別の場所へ移動する。
 水茶屋の奥座敷で情報屋と交渉するイーラ。「プロポシスかその周辺に眠るお宝を探してる」
 「単刀直入に言うと存在する。でも止めときな。お宝系はお偉いさんが秘密裏に大勢で探す所を盗み見て情報を入手する訳よ。先客がいるってこと。もうお宝は見つかったかもしれんしアンタが先に見つけたとしてそれがバレたら暗殺されお宝を盗まれるか恨みの発散とアンタの自白という観点から拷問されお宝の保管場所を喋らされてから始末される、なんてこともありうる」
 「それでもお宝が欲しい。むしろ大所帯で探索なんて信憑性があって嬉しい」
 「分かった」
 「やったね」
 「情報を話す前にお金が先だ」
 野蛮なお金持ちはくるんだ風呂敷を渡す。
 情報屋が風呂敷を広げると中に小判が積まれている。ニヤリ。「プロポシスから出て15キロ先に在る霊雄山の頂上付近をと或る諸侯が部下を使って調査してる。そこには『金剛力の実』と呼ばれる禍々しい妖気を放つ真っ赤な果実があるそうだ。コレを食えば農民はサムライを素手で10人倒せちまうそうな」
 コソドロはソコへ向かう。空は暗い。松明を用いて霊雄山頂上付近を調べる。「本当にココで大勢が宝探しに従事してるみたいだな」
 大小や老若はそっちのけに木の幹を赤色の組み紐で縛ってある。調べ終わった証だと思う。組み紐がされていない所まで行きその周辺を調べるも見つからず。身体が湿気と汗でネバネバ納豆ご飯になってきたので帰ろうとして松明を落とす。一瞬の油断。隙。狂い。拾うと土が燃えている。火を消してその部分を掘る。土が固くて掘れない部分を発見。掘れない部分は木の枝の形をしている。握り潰そうとしても細かく崩れない。崩れない所の周りの土を掘っていく。土中に紅い果実を見つける。栗のようにトゲトゲしい。トゲを含めて果実であることを情報屋から言われている。食べる。口に激痛。出血。クチャクチャクチャ。咀嚼により聴こえる血の音。涙が出るが果実にかぶりつく。食べきり松明の火で口内に出来る穴を焼き塞ごうと画策。ワイルド。狂っていることに気付き止める。果実を食して自分の肉体に変化があるか見ていく。変化なし。「寒いし帰るか」
 山を降りる最中にモンスターアラクネに襲撃される。少女の上半身と蜘蛛の下半身のモンスター。少女は苦悶の表情。クモの巣にかかった獲物を噛んで麻痺させ筋肉を溶かしてから食べる。今回は正面でバッタリ会った。稀な現象。興奮状態のアラクネの目が充血。「あがぎぃぃしゃゃぁ\$&*=|■$▽◯&\◇」
 突進してきた。少女が腕を振り木に当たり折れる。松明を少女の顔に押し当てて怯んだ隙に逃走。一歩進むごとに実感する膂力の飛躍的上昇。直ぐに下山。
 「これなら明後日の試合もイケる」
 翌日の朝7時。起きて初めにランニングと稽古をするのが最近の日課。シューズを履き外に出て路地から木戸を開ける。ホーが表通りで待っている。
 「どうした。ていうかどうしてオレの家を知ってる」
 「昨日尾行した」
 「おいッ」
 「金くれ」
 専従健闘士はランニングを開始。10キロを走り家に戻ると途中まで追いかけてきていたネダリ魔が木戸の前で待機している。奥に自宅が在る。
 「ホー。悪いが何処かに行ってくれ。今は遊ぶ時じゃない」
 「分かった。金くれよ」
 「オレがお前と遊ぶ気になったときに奢る。すまないがお前はそれを待っていてくれ。日常生活を送りながら」
 「さびしいこと言うなよ。オレ、お前以外に友達いない」
 「・・・・・・・・・・・・何して遊ぶ」
 「居酒屋行こうぜ」
 「遊びじゃねえだろ。オレの奢りかよ。仕事しろ。次は割り勘だ」
 「フンっ。割り勘って(笑)。オレはホームレスだぞ。お金なんてないし割り勘なんて出来ないよ。金くれっ」
 イーラは家に戻りお金を渡す。ホーは礼を言い帰る。奉仕者は自宅に帰り米を炊き米と肉を食う。主に肉を食いまくる。何度も読み返した娯楽本を再読。家を出て本屋でアクション小説を購入。家でソレの読書。煎餅を食べながら読み眺める。「主人公ファイトー」「ヒロイン可哀想」等と呟く。孤独野郎は読書を中断して外へ出る。
 表通りを箒で掃いているホーがイーラの視界に入る。
 「ありがとう。じゃあな」
 偽ボランティアが引き止める。「よお、また会っちゃったな」
 「なにやってんの」
 「お前ん家の通りを掃除してる。お金貰った感謝の気持ち」
 「そうか。あそこにゴミが残ってるぞ。ちゃんと掃除しろよ。じゃあな」
 「」
 イーラはホーの手を振りほどこうとする。
 相手は必死に掴み続ける。「今、今日は賭博に行かないか。コレは遊びだろ」
 「今はそんなことしてる時じゃないんだ」
 「そんなこと言って。知ってるんだぜ。賭博市場じゃ大張りすることで有名なの」
 「オレは堅実派なの! 健闘士という職を歴代最長でやる予定なの!」
 「ほら、駄々こねてないで行くぞ」
 「なんでじゃい! 行かんわ!」
 「健闘士なんて表舞台に立つ奴の生活なんて直ぐ分かるんだよ。今は頑張ってるってこともな」
 「なら誘うな。次の闘いに向けて調整中なんだよ」
 「だからこそさ。イーラの調整は日々ストイックに修練を積む者のすることだよ。今まで遊びまくってきた君が突然そんな追いこんじゃストレスでコンディションの悪化を招く。いきなりはダメ。慣れるまで徐々に徐々にだよ」
 「徐々に慣らす。・・・・・・確かにそうだ。脳は遊びを求めている」
 2人は賭博場で遊ぶ。賭博市場では各賭博場が大小無作為に軒を連ねる。乱民蔓延る場の1つ。2人はチンチロをしている最中に(ホーの持ち金はイーラの所持金の一部)ホーが捕縛され錯乱しながら或る屋敷に連行される。
 「オヤビンこいつです。オヤビンの小判を千両箱ごと盗んだのは」
 オヤビンは上座から板敷に正座するホーを眺める。「何に使ったぁ・・・・・・。オレのお金」
 「借金してたからその返済に当てました(ドヤ顔)」
 オヤビンは机に置かれる酒を飲みぐい呑みをホーに投げる。「久々に美味しい酒が飲めるぜ」
 イーラがホーの前に立つ。「ちょっと待てぇ! コイツはオレの知り合いだ。生かして帰してもらう!」
 オヤビンと子分達は彼を睨む。
 「・・・・・・いいぞ」
 「え? いいの?」
 オヤビンの指示で子分達は床と垂直の板(円盤型で数字が描かれている)が付く台を担いで持ってくる。保証人の隣に数字がグループ分けされて描かれている机が運ばれる。
 「ひと呼んでルーレットダーツ。板の端4方向に固定具が設置されている。そこに両手首と足首をはめて固定。板を回転させその間に人間を挟んで見える数字をダーツで射る遊びだ。数字は1から100。お前は自分の隣の机にグループ分けされる数字に所持金を賭け選択する数字単体又は数字群にダーツの矢を当てれば賭けた額の何倍何十倍が返ってくる。オレから盗んだ1億5000万イェン分勝ったらこの男ホーを返してやる。先にお前イーラのお金がなくなったらホーは死にお前は一生タコ部屋生活だ」
 「ふん」
 子分2名がホーを板に張り付け円盤型の板を回す。ダーツの矢が飛びホーの右太ももに刺さる。
 「ぎゃあああ」
 「お? わりぃわりぃ」
 「ひぃぃぃ。しぬ! しぬたすけて」
 ルーレットが回され第2矢が放たれ盗人の左腕に直撃。
 「いてぇぇぇえ。いひぃぃぃぃ」
 「どんまい。オレじゃなくて助かったよ。次行くぜ」
 賭け人は持ち金の0.5割をグループ分けされて描かれる数字群の上に置き第3矢を投げる。生け贄の腹に刺さる。
 「あーーーーーっ!」
 「ハハハ」
 矢を8つ投げ終わると子分達が生け贄と板から矢を引き抜いて投手の隣の机に置く。矢の1つを握り子分に刺すイーラ。刺した相手から短刀を奪い斬り伏せる。屋敷内が慌ただしくなり怒声が響く。子分達が短刀を抜いて反抗因子に向かってくる。『金剛力の実』を食べる前なら何人か倒した後は数にやられているだろうがイーラはソレを食べた後。子分の短刀を腹に刺されるも表皮で防ぎ刃先で首を叩かれるも刃は通らず。子分の顔面に張り手。数メートル吹き飛ばして倒す。ダーツの矢が補填される机に短刀を置いて徒手で闘う意思を見せる。刺しに来る子分の腕を掴んで板敷に投げる。槍を持ってきた子分に胸を刺されるも刃が欠ける。ダーツの矢を投げて倒す。子分を全滅させて残るオヤビンを見る。
 「待て! 待ってくれ! おれだって被害者なんだ! 悪いのはどう考えてもこのホームレスだ。お前イーラ、おれの用心棒にならんか? 腕は確かなんだ。お前が居ればおれも鼻が高い」
 イーラはホーの拘束を解いて担ぎ賭博場へ帰る。怪我人に5000イェンをあげて一緒に遊ぶ。イーラは5000イェンが30000イェンになりホーは0になる。賭博帰りに鰻屋に寄り勝ったお金で鰻丼を負け人と一緒に食べる。残金で米や大根等を買いホーに与える。翌日。
 「お金くれよ」木戸の前でホーがお金を無心してくる。
 「昨日渡した米やら大根はどうした」
 「米貰ってどうしろっつーの! そのまま食えってか!」
 「竹の中に米を詰めて焚き火で炊くんだよ」
 「まあその話は置いといて。お金くれ」
 道徳系男子は考える。「コレで最後だ。次はない」
 「チッ。分かったよ」1000イェンを渡されホーは絶句する。プラス3000イェンを渡されイーラをメシに誘い2人は饂飩うどんを食べる。もちろん支払いはイーラが出す。
 カスと別れた後に自宅にプロポシスで評判の町医者を呼ぶ。
 「これがザントマンの血液です」小瓶を満たす白い液体を医者は見せる。「・・・・・・これを飲むとその直後から10分間頭は冴え渡り肉体は無尽蔵のスタミナを与えられ心は湖面に浮かぶ花のように静けさを保ちます」
 「おお・・・・・・!」
 「ですが、その効果は一時的なものです。効果が切れると強烈な眠気に襲われ立つことも出来んでしょう」
 「分かった」
 「では料金を」
 小判1枚を渡す。
 そのあと練習しまくり汗水垂らし自宅に帰り黙考。いつもなら遊びに出掛ける。明日の試合のシミュレーションをする。試合が始まる前にクスリを飲むので闘いが始まってからの効果時間は5分くらいと予想。次に瞑想。リラックス。試合当日。トイレに行ってザントマンの血液を飲む。トイレから出ると係員に呼ばれ闘技場へ。移動中から身体に効果が現れている。すべてのものの色がハッキリ綺麗に映る。身体が動き軋む感覚がある。闘技場に立つ。
 イーラ・シモスVSユウシオン・アセレラ。
 審判が開始の宣言。ユウシは鬼切丸を布で巻きまくり分厚い棒にしている。ユウシが突進。大杖の簡易魔法『フレイム』を横に避けながら距離を詰める。3連続『フレイム』の1つを受けて後ろに飛ばされ転がる。簡易魔法は精神を集中させないと発動不可で今までは1度発動すると次の発動にインターバルを要しフレイムは単発でのみ発動出来たが薬の効果により単発ならインターバルなし。3連続で発動することも出来る。
 ユウシは立ち上がる。「オレがプロポシスに来て野良の健闘士をやり始めた頃から今までお前魔法攻撃は単発で放ってなかったっけ。オレとの勝負に取っておいた?」
 「進化だよ。人間は常に進化するんだ。だから文明は発展し人は成長するんだ」
 「耐熱性の布だよ。布は燃えるからな。事前に気を付けてた。すげえだろ」
 「流石、今勢いのある男だよ。フレイムを受けて平然と立ち上がるんだからな。恐ろしい奴」棍棒と大杖のイーラは歩いて距離を詰める。
 ユウシも距離を詰め相手が3連続『フレイム』を発動する前に手に持つ土を相手の目に投げる。薬によるパフォーマンスの向上と精神集中によりイーラは散らばりながら飛んでくる土の塊の1つ1つが見えている。交わして『フレイム』を放つと相手は横っ飛びで倒れるように避ける。起き上がり棍棒と鬼切丸が交差し先に棍棒が当たりユウシはぶっ飛んで見物席にぶつかり闘技場に落ちる。
 起き上がる。「お前イーラ武芸者か。俺ほど動きが速いことにも驚いたがそれで負けちまうなんて。コレが技か」
 「棍棒が直撃して立つか」イーラは長期戦で自分が勝利すると予測。
 「ま、余興はこんなもんだろ」ユウシは襤褸らんるに付着する砂を払う。
 「アンタ、何者だ。闘技場に突然現れて連戦連勝。武芸を嗜んでる動きでもない。故郷を追われる荒くれ者か」
 「いや、ちょっとお金がなくなったもんで・・・・・・」
 ユウシが全速で相手に向かう。中距離。『フレイム』4連続を跳んで交わし上から鬼切丸で相手を攻撃。それを棍棒で受け止められ着地。振り下ろさせれる棍棒を手で受け止めながら立ち上がる。金剛力の実を食べた男は棍棒を掴まれたので振り回そうとするが動かない。鬼切丸布の棒で殴られ倒される。負けた。
 イーラは早朝に目を覚まして1通りの練習をして長屋の住居に帰ろうとするとホーが木戸の前で待機している。
 イーラは立ち止まる。「お前の服を買いに行くか」
 イーラが試合に負けた時を思い出してホーは泣いた。
 ホーも何かを決意して2人は一緒にどこかへ行く。
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