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第6章

宝石の森へ。

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♢ケニーの店 / 事務所

仕事の前に事務所で直談判。
例のイベント参加のためシフト調整をお願いする。

「そうですね...ウィッドさんのここを動かせば」
「でも二人とも6勤になるので...うーん」

事務のアンナさんが悩んでいるのは連勤の問題。
俺が三日休むとウィッドの休みも動いて
互いに6連勤になってしまうらしい。

「これは話し合いで決めてください」
「わかりました。(やだなぁー)」

ウィッドのことだから何か条件を付けるだろう。
俺は嫌な予感しかしなかった。

ちょうど朝の配達から戻ってきたウィッド。
次の積荷を一緒に運びながら話を切り出す。

「ウィッドさん、相談があるんですけど」
「なんだ?飲みの誘い以外なら断るぜ」

.......手強い。
予測変換を使っているかの如く即答だった。
どう切り出したらよいものか...

「剛腕のウィッディーは6連勤出来るのかって話」

もどかしさからケニーが口を挟む。
当然嫌だと騒ぎ出すウィッド。そりゃそうだ。

「アンタ達が好きなガチャで決めなさいよ」
「勝ったら私が12連勤するからさ」

「おお!そりゃ見ものだぜっ」

好戦的なケニーの挑発に乗る。
大人の喧嘩に巻き込まれた気がするが
ガチャを回すのは俺。
負けたらケニーに申し訳がない。


“Grand Challenge System Assign”

先行は俺から。
文句はなしの一回勝負だ。

シュウィーン...シュタァーン...ゴゴゴ...
“ピッピィ♪”

......俺は頭を抱えた。
最近は来なくて油断していたが、またお前か!

「やったね!仲間が増えたよピッピィ♪」

嬉しそうなカレンを横目に
俺はウィッドが回すのを待たず敗戦を覚悟した。

「まあ、一応オレも回すぜ?」
「早くやりな」

シュゥウン...グワン...ウィシャァァッァ
「おお、音もいいぜ!なかなかだぞこいつは」

シュウォン...“ピッピィ”

まさかのピッピィ祭り状態だ。
コイツらは戦う気が全くない生き物だから
勝敗は重さでつけることにした。

ポムッ... 荷物用の計りへ順番に乗せる。
「よしっ!レオナルドの勝ちだね」
「イカサマじゃねぇのか?まあ仕方ねぇか...」

お土産に地酒を買ってこいとの条件が付いたが
無事に休みが決まった。

しかしイベント手前までは連勤が続くから
それまでに色々持ち物などの準備と
行き先までの交通手段などの下調べをする。

そこそこ近いしバスでも良さそうな距離だったけど
ケニーが配達のついでに送ると言ってくれたから
あとは連勤を乗り越えさえすれば.....


♢一週間後の朝

今日は“宝石の森”へ出発する日。

「レオ、大丈夫?」

しんどいし寝不足。
仕事の疲れだけでなくネットのやり過ぎもあり
自業自得だが疲れが蓄積している。
寝溜めができる精霊がとても羨ましい。

「おはよ!レオナルドとカレンちゃん」
「早くヴィノの背中に乗って」

迎えに来てくれたケニーと
かなり大きくなったライガー。
ギリギリ三人乗れるサイズまで育ったけれど
顔は童顔のままで可愛い。

「乗り心地も抜群なんだからねっ」
(俺...また酔いそうだな....)

ワンワンガオ!
スッタカスッタカ...スッタカスッタカ...

少し不安であったが地面を走っているせいか
気持ち悪くなることもなく快適だった。
森の中を越え、丘の上もひとっ飛び。
川を渡るのだけは嫌がったので少し遠回りをした。

「着いたよ。じゃあ頑張ってね」
「ありがとうケニー」「ありがと~!」

俺達が手を振って見送ると
ライガーは林の中へ颯爽と走り去って行った。

さて、まずは運営事務局へ。
ゼッケンと普通のツルハシ、麻袋を受け取る。
これ以外の魔道具や魔法も使用できるが
宝石が割れる場合があるので注意するよう言われた。

「上位入賞者は“賢者の石”が貰えますから」
「頑張ってくださいねっ」

受付のお姉さんがちょっと可愛かったから
幾分ヤル気が出た気がする。
このクエストは一日限定のイベント。
俺達は急いで“宝石の森 南採掘場”へと向かった。
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