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 ルートヴィヒ領地に残された二人が可哀想に思えてきた。
 デューラー男爵領地でいったらフランツが長期不在にするようなものだ。
 
 ――考えただけで胃が痛くなるだろうな。特に次期領主の兄上が。
 
 ここにはフランツの代わりになれる者などいないからだ。
 次期領主のエミールは能力はあれど、領主を代行できるほどでは今はない。
 まだまだこれからというところだ。

 それを考えると、ロヴィスはかなり無理を今ここにいるのだろう。

 (僕に求婚するためだけにここに来たってことだよな……)

 そう思ったら、急に熱いものが胸に込み上げてきて、たまらなくロヴィスが愛おしく感じた。

 ――僕、すごく……愛されてる……よね?

 愛されて、必要とされている。
 ロヴィスにとって自分はそんな存在なのだろうか。

 ちらりと横目でロヴィスの横顔を見る。

 アルブレヒトの視線に気づいて流し目でフッと笑う表情がなんとも言えないほど格好いい。

 好き、と気づいてしまうと、苦手だとあんなに思っていた強い眼差しもフィルターがかかったようにキラキラと輝いて見えるのはなぜなんだ。

 切長の眉毛も素敵だし、意地悪な口元だってセクシーに見えてくる。

 アルブレヒトのために髪も短く切って、無精髭も毎日ずっと剃り続けてくれている。
 元も男らしかったが、見た目に少し気を遣うだけでこんなにも男前さが際立つとは思わなかった。
 

 辺境の地で領主の妻としてやっていくのは、当然不安だし自分に務まるとは思えない。
 けれど、それ以上にロヴィスを愛している。
 一緒にいたいのなら、自分も殻を破って努力することも必要だし、するべきだ。

 英雄と名高いロヴィスの元へいくには、それ相応の覚悟と決意と努力をもって望まなければ。

 でも、きっとなんとかなる。だってロヴィスがいてくれるから。
 隣にずっといて、愛してくれるロヴィスがいるだろうから、頑張れる。
 壁にぶち当たったとしても、きっと二人でなら乗り越えられる。
 
 
「領地に戻るまでは男爵領で二人……と一匹でゆっくりと過ごさせてもらうよ。帰ってからしばらくは色々と忙しくなる」
 
「きっとそうでしょうね。ぜひこちらではゆるりと過ごされてください」
 
「ああ、では失礼」

 ロヴィスに腰を抱かれながらフランツの執務室を出た。


 ◇
 

 それからは、また飛竜シュタルクの背に乗って空の散歩に出たり、二人きりでご飯を食べたりティータイムをとったりしてゆったりとした時間を過ごしたりした。

 夜は、毎晩のようにロヴィスに愛されて満たされる毎日だ。

 自分はこんなに快楽に弱いのかと、思い知らされるほどに何度もくずくずにされた。
 恥ずかしいほどに甘い声を出してロヴィスを求めてしまう。

 二人きりのときのロヴィスは今まで以上に優しくもあり、より意地悪でもあった。


 

「アルブレヒト、好きだ」
「っ……!」

 ベッドの上でアルブレヒトを抱きしめて、ロヴィスは真っ直ぐに見つめて熱く語る。
 
「アルブレヒト……」

 アルブレヒトは恥ずかしくて顔を隠した。
 それでも許してくれなくて、手を解かれて赤くなった顔を覗き込まれた。

「アルブレヒト……お前は……?」
 
「僕の気持ちなんて、お見通しでしょう?」

 こんなに馬鹿みたいに真っ赤に顔を染めて、ロヴィスに夢中になっているのだ。
 わかっているに決まってる。

「言ってくれ」
 
「なんで……っ」

 そんなの恥ずかしすぎる。
 ロヴィスがいる前で自分の気持ちを伝えるなんて、そんなの……。

「……俺ばかりがお前のことを好きみたいだ」
 
「そんなわけ……ないです。僕だってロヴィスのことを……」
 
「だったら好きって言ってみろ」
 
「だって……恥ずかしい」
 
「毎晩それ以上に恥ずかしいことをしているのに?」
 
「っ……! もうっ! ロヴィス!」
 
「はは、悪い悪い」

 ロヴィスはいつも意地悪を言っていないと気が済まないらしい。
 
「俺はいつも伝えてるだろ。言葉で、全身で、態度で、行動で」
 
「っ……!そん、そんなの知らないっ……」
 
「お前も示してくれ。俺のことをどれくらい想っているのか」
 
「でも、……ロヴィスは本当に僕なんかのことが……好き、なんですか?」
 
「この俺が……好いてもいない相手のために、何十時間もかけて隣国から飛竜に乗って会いにきたりすると思うのか? お前の好きなものをわざわざ土産に持ってきて。柄でもないのにご機嫌取りに花束なんか用意して。これで惚れてなかったらなんなんだ?」

 ロヴィスのしてきたことを羅列されると、本当にアルブレヒトのことが好きなんだとわかる。

 アルブレヒトは改めてロヴィスの行動を思い出して、胸が熱くドキドキとしてきた。
 幸せで胸がいっぱいになる。こんなに自分は愛されているんだと実感できた。

 自分も、ちゃんと相手に気持ちを伝える努力をしなければ。

「ロヴィス、……僕も……僕は、ロヴィスのことを…………あ、愛してる……っ!」
 
「アルブレヒト、俺も愛してるよ」
 
「あ……ロヴィス……っぁ」

 この後、ロヴィスに耳奥まで囁かれて、優しく体の奥まで愛された。
 

 
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