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本編
33-パートナー ※
しおりを挟む俺たちは蓮の自宅に向かった。
蓮のマンションは、いつも利用していたホテルの部屋の内装と同じ雰囲気だった。
「ホテルの部屋と同じインテリアにしてもらったんだ。ホテルでも家でも落ち着けるように」
俺が驚いていたのに気がついた蓮が教えてくれた。
同じようだけどホテルとは違っていた。
それは匂いだ。
部屋中が蓮の匂いで溢れていて、俺はそれだけで興奮した。
寝室のベッドに2人で入る。
もっと匂いが強くなる。
俺はドキドキと胸が高鳴って止まらなくなった。
「本当に、いいんだな」
蓮の目が心配そうに俺を見る。
「何度も確認するなよ」
「まだ実感がわかないんだ」
なんだか照れ臭くなって、ベッドの上にある枕を抱き寄せたら、蓮の爽やかな香りがした。
ぎゅうっと抱きしめて、すんすんと鼻で吸い込む。頭がくらくらしてきた。
蓮のにおい、すきだ。
「おい、そんなの嗅ぐな」
蓮が俺が抱いている枕を取ろうとして手を伸ばしてくる。
「だめ」
蓮から枕を遠ざけて、取られないようにした。
「あ……」
蓮が枕を取ろうとした拍子に顔が近づいた。自然に唇が触れ合う。だんだん激しくなっていって、舌を入れてキスを繰り返した。
きもちいい。
だけど、俺たちはする前にちゃんと話をしなきゃ、と思い出して俺はゆっくりと蓮から顔を離した。
「蓮、前にした時……なんで先に帰ったんだよ」
セックスした後すぐに蓮はホテルの部屋を出ていってしまった。
1人取り残されてすごくショックだった。しかも、その後の蓮は俺としたことを後悔しているみたいだ。
「それは……」
言いにくそうに蓮は目を伏せた。
「俺、1人ベッドに残されて、ショックだったんだけど」
「わ、悪い……」
「しかも、その後もずっと忙しいって話してもくれないし」
「ごめん……だけど、俺……怖くなって」
「怖くなるって何にだよ」
意味がわからない。
俺は蓮に聞き返す。
「やっぱり、こんなのだめだ」
蓮が俺の肩を引き剥がした。立ち上がり、ベッドサイドに背を向けて座ったら、両手で顔を覆って項垂れた。
「そばにいるだけでいいなんて言っておいて、俺はヒカルを抱いてしまったから……」
「だから、それは俺がいいって言ったんじゃんか」
「それでも、俺は我慢すべきだったし、最中も嫌がるヒカルをむりやり……」
俯いて目線が俺と合わない。
こっちを向けよ。
「蓮」
名前を読んでもこちらを向かない。
「蓮、こっち向けって」
蓮はますます縮こまった。
「蓮、Look」
俺はsubだからdomの蓮にコマンドなんて言っても効力を発揮なんてしない。
それでも、蓮は俺の方を見てくれた。
背を向けたまま、顔を少しこちらによこしてちらりと気まずそうに目を合わせてくる。
「嫌じゃない。蓮になら」
「でも、俺はもう……間違えたくない。いらないなんて、言われたら、立ち直れない」
蓮は精神的に不安定になっているのかも知れなかった。俺と触れ合うプレイをしていなかったから、domの欲求不満の症状の一種かもしれない。
うつむいてまた俺から目を逸らす蓮の横顔を覗き込むと、目の下は大きな窪みがあって、よく見たらうっすらと黒くなっていた。
目も赤くなっているから、あまり眠れていなかったのかもしれない。
唇だってカサついている。
「大丈夫だよ、蓮。俺のそばに、ずっといて欲しい」
蓮の大きな背中に抱きついて、耳元で囁いた。
「ヒカル、でも……」
俺の手に触れる蓮の指が細かく震えて怖がっている。
Domの蓮でも、怖いんだ。
俺と一緒。
「蓮、俺にコマンドしろよ」
「……っ」
「蓮が俺にしてほしいこと、俺が全部してあげたい」
本心からそう思った。
「ヒカル、好きなんだ」
俺の腕をぎゅっと握る蓮。
カサついて震える唇に俺は顔を近づけた。
「俺も……」
すき、という言葉はお互いの口づけによってかき消えてしまった。
「全部『Present』ヒカルが俺のだって感じたい」
「うん……っ」
蓮の前で裸になって、足を開いた。
勃ちあがってひくひくと期待している陰茎が現れる。
窄まりからはとろりと愛液が溢れてきてしまっていた。
「こんなに期待して震えて、かわいいな」
「ふぁ、ぁ……ぁッ」
蓮に口淫され、指で広げられていく。
準備ができるまでに俺の陰茎からは何度も精液が飛び出した。
「いいか?」
「ん……」
確認されるたびに恥ずかしくなってくるからやめて欲しい。
でも今日の蓮は、全部確認しないと気が済まないらしい。
俺の嫌がることはしたくないんだろう。
別に、俺は嫌じゃないのに。
「全部確認しなくてもいいから」
「けど、前した時、ヒカルやだっていってた」
最中に、確かにやだやだ言ったけど、それは本当に「いや」の意味じゃないっていうか。なんて言ったらいいんだ?
「いやそれは、……俺初めてだったし、恥ずかしかったからで。嫌ならもっとちゃんというし。俺、蓮のこと信用してる」
「……本当か?」
「うん、俺、蓮になら何されても良い」
「……その言葉、後で後悔するなよ」
「ちょ、お前どんな激しいプレイする気だよ……俺、痛いのとかは苦手なんだけど」
「痛いのは俺も苦手だ。俺は、ヒカルを甘やかすのが好きだから……今日、俺の愛撫を体で『覚えて』?」
ずぷり、と奥までコンドーム越しに蓮のものが中に押し込まれる。
「ぁ……んん! いきなり……ッ」
抗議しようと思ったのに、全て嬌声に変わっていく。
「ん、ぁッ……~ッ、ぁ、あぁ……ゃ」
「ここやだ? 気持ちよくない? じゃあここは?」
「ひ、ぁあ、ぁぁ、ぁ、ぁッ」
だめ、とか、いや、とか小さい声で言うたびにいちいち挿入角度や速度を変えたりしてくる。
しかも的確にいいところを突いてくるから、こっちとしてはたまったものじゃない。
「ヒカル? どこがいいんだ? 教えてくれよ」
「ふ、ぅ……~~ッ、ん、ん、んんっ」
パンっ、パンっ、と蓮は優しいのに容赦なく腰を動かしてピストンする。
「こんなにとろけた顔されたら、たまんないな……っ」
耳元で甘くて低い声が注がれて、腰にずくんと響いた。
「ァァ……ぁ、ッ」
「ヒカルかわいい、すき……大好き」
ずっと、かわいい、とか、好き、なんて言われながら、奥まで甘やかされて、苦しいくらい。
気持ち良すぎて何も答えられない。
「どこが気持ちいい?『say』」
ここでコマンド使ってくるの卑怯……!
「ぜん、ぶ……きもちいい……ぁッ」
きゅ、と乳首を指で押し上げられた。
「全部?」
「れんに触られたとこ……ぜんぶぅ……っ」
とちゅとちゅと奥を突きあげられながら、ふるふると揺れ動く陰茎を握られた。
「かわいい、俺だけのヒカル……」
くちゅくちゅとと舌が口の中に這い回る。
頭がふわふわして、痺れてくる。
「ンッ……はぅ」
にゅち、にち、と精液をまとわりつけながらしごかれる。
「あぁ、ッ、ぁあ……ぁ、……ッ」
快感が押しあがってきて、びゅく、っと先っぽから透明な液体が飛び出る。
もうほとんど中に精液は残っていないのかも知れない。
それでもまだこの行為は終わらなくて、ずっと気持ちいいままだ。
(あたま、とけそう……っ)
「ヒカル、もう俺……いきそ……」
「ぁ、あ、……おれもイく……はぁ、ん……い、く……ぁ、あっあっ……ーーッッ゛!!」
頭が弾けて真っ白になった。
膜越しに、蓮も中でイったのがわかった。
「は、ん……れ、れん……なんか、あたま……すごい、ふわふわする……」
「ヒカル、それ……サブスペース入ったのか?」
「サブ、……スペース……?」
すごく幸せで、ずっとこのままでいたい。今までになくらいの心地よさに、ぎゅっと蓮に抱きついた。
すりすりと蓮の体に頬を擦り寄せ、キスをねだる。
「れん……キスして」
「いくらでもしてやる」
熱いキス。
舌を絡めた深い口づけは、ものすごく甘くて舌が痺れてくる感覚があった。
口に入り込む唾液をこくりと飲み込むと、甘ったるくて溺れてしまいそう。
(すき、大好き)
「れんっ……もっとぉ……れんがほしい」
「ヒカル……っ」
再び勃ち上がった蓮のものがずっと俺のものに擦り付けられていた。
「はっ……んんンッ……あぁッ!」
再度挿入され、奥に押し込まれた瞬間に甘イキした。
中はぐずぐずで、最初よりもすんなり入ってしまった。
「あ、れん……ぁっ? あっ、イ……ぁあッ? ~ッ……~~ッッ゛!」
蓮のものを出し入れされるたびにイキまくってしまう。
「れ、れんっ……あっ、おれぇ……いくの、ッ……とまんな……ひっ、~~ぁあッッ!!!」
蓮がぢゅうううっと俺の無防備な乳首を吸い上げると、俺はいきなり大きな絶頂を迎えされられた。
「ヒカル、ヒカル……ッ」
パンパンと激しいピストンが始まって、俺はもう体がおかしくなりそうなくらいの快感に押しやられた。
俺の名前を切なそうに呼ぶ、蓮の必死な顔。汗が滴り落ちて、眉間に皺を作りながら、興奮して熱くなった雄で俺を突き上げる。
時折うめく低い声に、俺も興奮した。
ドグドクと俺の中で精を放つ脈動を感じる。
ずっと心地よくて、ふわふわしていた。
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