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本編
30-電話 ※
しおりを挟むぐるぐると思考が回った。
もしかして、俺とのセックスが全然良くなかったのかとか。
俺がコマンドに上手く従えなかったからなのかとか。
もう、俺のことは、どうでもいいのか、とか。
悪い方向に考えが偏っていくけど、いつもみたいに下に引っ張られるような感覚はない。
たぶん、蓮が最後に「ありがとう」と俺に言ったからだ。
ちゃんとコマンドに従えていたと、認めて褒められたのだと、俺の中のSubの性が認めていた。
だから不安症もサブドロップにもならない。
けど、胸のざわつきがおさまらない。
不安で不安で仕方なかった。
(蓮に嫌われたくない)
俺の頭の中は蓮のことでいっぱいになった。
◇
次の日の日曜、俺は昨日のことについて蓮と話し合いたくて、蓮にスマホにメッセージを送った。
俺の何がいけなかったのか、知りたかった。
『蓮、今日会えないか? いつものホテルで』
アパートの質素な自分の部屋。
俺はソファに座り込んで返信を待った。
しばらく経って、蓮から返信が来た。
『近々、新しくオープンするホテルの準備でしばらく忙しくて会えない』
どんなに忙しくても、俺とのプレイ時間を確保してくれていた蓮。
俺は蓮に避けられていると思った。
続けて蓮にメッセージを送った。
『少しでもいいから時間を作れないか?』
『しばらくは電話でプレイをしよう』
『電話でプレイなんかできるのかよ』
『対面より効果は少ないのは事実だが、ちゃんとプレイの一種だ』
『でも、そんな時間あるなら直接あった方が早いだろ』
そうメッセージを打った後、蓮からの返信が数分、途絶えた。
『プレイできるようになったら連絡をくれ。電話するから』
『俺は、会って話したいことがあるんだけど』
そう送ったら、蓮からは返信が完全になくなった。
「はぁ~、……なんなんだよ」
俺はスマホをソファに投げ、ベッドの上にうつ伏せになって倒れた。
俺と会う気はもうないってことなのかよ?
しばらく時間が経って、落ち着いたら、前みたいに会えるようになるのか?
顔を少し上げてちらっとソファの上のスマホを見ても、メッセージがきている様子はない。
ぼふん! と枕に顔を埋めて叫んだ。
「あぁ゛~~! もうっ!」
そのまま考え込んでしまった俺は、その日、蓮に返信ができなかった。
1日、また1日と過ぎても、蓮から連絡は来ない。
仕事中も、じっとスマホを見つめても、新着メッセージはなかった。
「はぁ……」
ため息しかでない。
うんともすんとも言わないスマホを、しきりに見つめてるなんて、なんて馬鹿らしいんだろう。
蓮からの返信を待たず、俺は仕事が終わった昼休みにメッセージを送った。
『今日の夜プレイできる?』
実際に会ってプレイしてくれるかもしれない。そんな期待を込めてメッセージを送付した。
すると、10分くらいで返信が来た。
『夜9時ごろに電話する』
やっぱり電話かよ。
けど、会えないのならせめて声が聞きたい。
仕方なく、俺は返信した。
『わかった。電話待ってる』
帰宅して風呂上がり、髪をバスタオルで拭きながら、ソファでじっと電話がくるのを待っていた。
プルルル。
スマホが鳴った。
蓮だ!
嬉しくなって、急いで電話をとった。
「もしもし、蓮?」
『ヒカル、体調はどうだ?』
「……ちょっとキツくなってきてるかも」
体調が悪いとなれば、蓮が会おうと言ってくれるかもしれない。
『そうか。だったら、今日は電話でのプレイ時間を増やした方がいいな』
「え……なんで……会って、くれないのかよ?」
思わず思ったことを口にした。
優しい蓮なら、会ってくれると思ったのに。
『……悪い、本当にいま仕事が忙しい時期なんだ。わかってくれないか』
「あ、……うん……ごめん、俺の方こそ蓮に迷惑かけて」
仕事が忙しいのにわがまま言って、蓮を困らせたいわけじゃない。
会いたいなんて何度もしつこく言って、蓮にうっとおしく思われたのかと急に怖くなった。
『迷惑なんて思ってない。俺はずっとお前のそばにいたいから』
「……」
だったら、なんで会ってくれないんだよ。
そう言いそうになってぐっと下唇を噛み締めた。
これ以上めんどくさいやつになりたくなかったから。
『……それじゃあ早速、プレイを始めようか』
「あ、待って……その前に話を……」
『Kneel』
蓮の重低音に、体が勝手に答えた。
ずん、と重力がかかったように体が重くなる。
「ぁっ……!」
へたり、と俺はソファから崩れ落ちるように床に座り込んだ。
『目をつぶって、俺の声だけ聞いて』
甘い蓮の声が耳元で囁く。
「んぅ……っ」
ぞくぞくと歓喜に震えた。
俺は目を瞑って蓮の声に集中した。
『いい子だな』
「……っ」
褒められて嬉しい。
しかも、目を瞑ってるからか、蓮の声が直接頭に響く。
まるで、本物が目の前にいるみたいに。
『今、何着てる?』
「えっと、スウェットの上下……」
『じゃあ、上から自分の乳首に触って』
「え……」
『できない?』
「で、できる」
右手でスマホを耳に当てたまま、空いた左手でそっと胸に手を当てた。
突起を探るように手を動かした。探り当てて、ゆっくりと撫でる。
「ん、……っ……く」
『乳首固くなってきたか?』
「っ……ん、んぅ」
『ちゃんとSay』
「固くなっ、……てるっ」
恥ずかしいのを我慢して、一生懸命答えた。
『服の下から直に触って。その固くなった乳首を指で挟んで、コリコリして。俺がいつもしてるみたいに』
さらなるコマンドに、俺は身を捩った。
だけど、『ヒカル』と蓮に促されると、蓮の言う通りに、下から手を入れ込んで、固くなった乳首を指でいじった。
「ふ……ぅう、……ぁ、あっ……」
『気持ちいい? Tell me』
「きもち、いぃ……っ」
『素直でかわいいな』
恥ずかしくてかぁぁ、と顔が熱くなる。
蓮の前では、俺は恥ずかしいところも全部、晒してる。
『ヒカル、下……どうなってる?』
「んん……、ゃ、わかんない……」
そんなの言えない。
『わかんなくないだろ?』
「っ……恥ずかしいから……」
『どうなってるかSay』
コマンドで命じられれば、言わないわけにはいかない。
顔だけじゃなく、体中が茹ってるみたいに熱い。
「勃って、る……」
恥ずかしい、のに……蓮のコマンドに従ってしまう。
『服の上から確かめてみて』
「ん、んぁ……ふ、ぅ」
『どうなってる?』
「あつくて、……固い……」
『下、ずらして取り出してみて。……ああ、すごいな……こんなにして』
「ンンッ……は、ぅ……」
本当に蓮が見てるみたいに言うから、ビクビクと俺の陰茎も震えた。
『ゆっくり、扱いて。そう、上手だな』
「あ、ぁ、……アッ、ん……」
『親指で先っぽこすこすして、いじってみて、これ好きだろ?』
「すきぃ……ッ」
気持ち良すぎて、恥ずかしいのを通り越してしまった。
頭がぽわぽわしてる。
「おれ、も……イキそ……ぁ、あっ、ッ」
『いきたいか?』
「イきたい……っ」
『いいよ、Cum』
「っ、……~~ッッ!!」
意識が真っ白に弾け飛んだ。
自分の手のひらの中で白濁とした液が、ねっとりと付いているのがわかった。
ぐったりと後ろのソファに背中を倒し、天井を見上げた。
『すごくよかった。いい子だったな、ヒカル。じゃあまた、気分が悪くなる前に連絡くれ』
「え、蓮……ちょっと、ま」
まだ話したいことがあるのに。
プッ、ツーツー……。
ただ機械音だけが、寂しく耳元に響いている。
あっさりと電話を切られてしまった。
話す隙さえ与えてくれなかった。
俺の話なんて、聞く気がないんだ。
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