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本編
27-体調
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体調はいつにも増してすごくいい、だけど最悪な気分だった。
俺は昨日の自らの痴態を思い出した。
俺は何を言ってしまったんだろう。
欲にまみれて我慢できなくなって、入れて欲しいなんて浅ましくもねだったりして。
蓮にも止められて、それでも与えられる快感に身をゆだねた。
月曜から出勤してパソコンに向かいながらも、悶々と悩んで頭から離れない。
はぁー、と深いため息を吐き出しながら、仕事の手を止めた。
「おい、七瀬、体調悪いのか?」
「……っ! ……いや、そんなんじゃない」
同期に突然声をかけられて、ビクッと肩が跳ねた。
同期が俺の顔を確認する。
「なんだ……顔色めちゃくちゃいいじゃんか。心配して損した」
「別に普通だろ」
顔色がいいといわれて、昨日のことをまた思い出す。
回数を増すごとに蓮のコマンドを受け入れていっている。
もっと欲しいって、思うくらいに貪欲に。
そんな自分に気づかされて、またため息を吐きたくなる。けど、もうこれ以上心配されたくないから、ため息を飲み込んだ。
「なぁ、ちょっと聞いても良いか?」
「なんだよ?」
「DomとSubのカップルってさ、やっぱ普通の恋人同士と違うもんなのか?」
こそこそと周りに聞かれないように、同期は俺に耳打ちしてきた。
どういうわけか、この同期は俺と蓮のことを付き合っていると思い込んでいるらしい。
俺は蓮の彼氏じゃないし、そもそもパートナーでもない。
「いや、……俺と蓮はべつに付き合ってるわけじゃないし」
「え? うそだろ?」
「ほんとだよ」
「ただのパートナーなのに、あんなに心配して職場まで来るのかよ」
「はっ? なんのことだよ」
職場まで蓮が来た?
俺が眉根を寄せて同期を睨みつけると、その同期はしまった、という顔をしていた。
「あー、実は一条さんが一度だけ職場まで挨拶にきてさ」
言いにくそうに同期が口を開いた。
蓮は、目立たないようにこの同期を呼び出したらしい。
「謝礼金とか渡されそうになったのをなんとか断ったんだけど」
「はぁ?!」
なんにしてんだよ蓮!
俺は一気に腹が立ってきた。
「七瀬が倒れた時の対応について改めて感謝されて、七瀬がまた倒れそうになったら連絡くれって」
「あいつ……っ!」
俺の知らないところで余計なことを。
ぽりぽりと、頭をかきながら説明する同期を、俺は睨みつけながら聞いていた。
「その時の一条さん、本当に何度も頭下げてきて、あーこの人本当にヒカルのことが心配なんだなーって思ってさ」
「……そんなんじゃない」
勝手に会社まできて同期に俺の様子を監視するように頼むなんて、信じらない。
「そんなに怒るなよ、七瀬。付き合ってるってのは俺の勘違いだったけど、それでもお前のことを大事に思ってるのには代わりないだろ」
「……」
俺は話を聞いていて、胸が苦しくなってきた。
きっと、蓮は俺のことをあわれんで、かわいそうに思ってるんだ。
誰にも心を開かず、パートナーも作れないみじめなやつだと思ってるに違いない。
俺のそばにいたいとか言ってるくせに、俺のことを決して受け入れようとはしない。
いつもホテルの部屋でプレイするだけで、蓮の家に呼ばれたこともない。
それになにより、他にもあのホテルの部屋に連れ込んでいるSubの女性がいる。
それが何よりの証拠だ。
「それで、このことは蓮にも周りにも内緒にしてくれって言われて。七瀬はこれ以上目立ちたくないだろうからってさ」
俺って一体、蓮のなんなんだろう。
「倒れてしばらくはちょくちょく迎えにきてたよな? 一条さん」
「ああ」
同期が外回りで会社に戻ってきた時に、車で待ってる蓮を見かけたらしい。
「俺が、七瀬上がるの多分2、3時間かかりますよー、って言っても、大丈夫です。それくらい待てますから、って言って実際待ってるしさ」
その後も、俺の仕事が終わるのを待ってる蓮を何度か見たということだった。
「一条さんすげーよなーって思って。イケメンで、性格もいい上に、尽くしてくれるってもうすごい組み合わせじゃん?」
「そ、うだな……」
俺は、これ以上同期の話を聞きたくなかった。
「あの人が付き合ったら、相手のことめちゃくちゃ溺愛するんだろうなー。絶対幸せになれそう」
蓮に恋人ができたら。
俺は今まで考えないようにしていた。
きっと、蓮に恋人ができたら、俺は捨てられるんだろう。
俺は昨日の自らの痴態を思い出した。
俺は何を言ってしまったんだろう。
欲にまみれて我慢できなくなって、入れて欲しいなんて浅ましくもねだったりして。
蓮にも止められて、それでも与えられる快感に身をゆだねた。
月曜から出勤してパソコンに向かいながらも、悶々と悩んで頭から離れない。
はぁー、と深いため息を吐き出しながら、仕事の手を止めた。
「おい、七瀬、体調悪いのか?」
「……っ! ……いや、そんなんじゃない」
同期に突然声をかけられて、ビクッと肩が跳ねた。
同期が俺の顔を確認する。
「なんだ……顔色めちゃくちゃいいじゃんか。心配して損した」
「別に普通だろ」
顔色がいいといわれて、昨日のことをまた思い出す。
回数を増すごとに蓮のコマンドを受け入れていっている。
もっと欲しいって、思うくらいに貪欲に。
そんな自分に気づかされて、またため息を吐きたくなる。けど、もうこれ以上心配されたくないから、ため息を飲み込んだ。
「なぁ、ちょっと聞いても良いか?」
「なんだよ?」
「DomとSubのカップルってさ、やっぱ普通の恋人同士と違うもんなのか?」
こそこそと周りに聞かれないように、同期は俺に耳打ちしてきた。
どういうわけか、この同期は俺と蓮のことを付き合っていると思い込んでいるらしい。
俺は蓮の彼氏じゃないし、そもそもパートナーでもない。
「いや、……俺と蓮はべつに付き合ってるわけじゃないし」
「え? うそだろ?」
「ほんとだよ」
「ただのパートナーなのに、あんなに心配して職場まで来るのかよ」
「はっ? なんのことだよ」
職場まで蓮が来た?
俺が眉根を寄せて同期を睨みつけると、その同期はしまった、という顔をしていた。
「あー、実は一条さんが一度だけ職場まで挨拶にきてさ」
言いにくそうに同期が口を開いた。
蓮は、目立たないようにこの同期を呼び出したらしい。
「謝礼金とか渡されそうになったのをなんとか断ったんだけど」
「はぁ?!」
なんにしてんだよ蓮!
俺は一気に腹が立ってきた。
「七瀬が倒れた時の対応について改めて感謝されて、七瀬がまた倒れそうになったら連絡くれって」
「あいつ……っ!」
俺の知らないところで余計なことを。
ぽりぽりと、頭をかきながら説明する同期を、俺は睨みつけながら聞いていた。
「その時の一条さん、本当に何度も頭下げてきて、あーこの人本当にヒカルのことが心配なんだなーって思ってさ」
「……そんなんじゃない」
勝手に会社まできて同期に俺の様子を監視するように頼むなんて、信じらない。
「そんなに怒るなよ、七瀬。付き合ってるってのは俺の勘違いだったけど、それでもお前のことを大事に思ってるのには代わりないだろ」
「……」
俺は話を聞いていて、胸が苦しくなってきた。
きっと、蓮は俺のことをあわれんで、かわいそうに思ってるんだ。
誰にも心を開かず、パートナーも作れないみじめなやつだと思ってるに違いない。
俺のそばにいたいとか言ってるくせに、俺のことを決して受け入れようとはしない。
いつもホテルの部屋でプレイするだけで、蓮の家に呼ばれたこともない。
それになにより、他にもあのホテルの部屋に連れ込んでいるSubの女性がいる。
それが何よりの証拠だ。
「それで、このことは蓮にも周りにも内緒にしてくれって言われて。七瀬はこれ以上目立ちたくないだろうからってさ」
俺って一体、蓮のなんなんだろう。
「倒れてしばらくはちょくちょく迎えにきてたよな? 一条さん」
「ああ」
同期が外回りで会社に戻ってきた時に、車で待ってる蓮を見かけたらしい。
「俺が、七瀬上がるの多分2、3時間かかりますよー、って言っても、大丈夫です。それくらい待てますから、って言って実際待ってるしさ」
その後も、俺の仕事が終わるのを待ってる蓮を何度か見たということだった。
「一条さんすげーよなーって思って。イケメンで、性格もいい上に、尽くしてくれるってもうすごい組み合わせじゃん?」
「そ、うだな……」
俺は、これ以上同期の話を聞きたくなかった。
「あの人が付き合ったら、相手のことめちゃくちゃ溺愛するんだろうなー。絶対幸せになれそう」
蓮に恋人ができたら。
俺は今まで考えないようにしていた。
きっと、蓮に恋人ができたら、俺は捨てられるんだろう。
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