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本編
22-反動
しおりを挟むな、なんで俺こんな、……!
「抜いてやろうか?」
俺の顔を覗き込む蓮の色気はむんむんだ。風呂から上がってしばらくしてるはずなのに、熱ったように艶っぽい。
カリっと爪先で俺の勃ち上がった先端を服の上からいじられた。
「や……っ」
ずっと仕事と蓮とのプレイの往復で、全然抜いてなかったから相当溜まってしまったらしい、
ズキズキと下半身が痛い。
だけど蓮にシモの世話までしてもらう義理はない。
「い、いいっ、いいから……じ、自分で」
自分でやる、なんて言うのもなんかおかしい気がして言葉が途切れた。
「わかった。じゃあ俺は先に寝てる。おやすみ」
そう言ってスタスタと寝室へと行ってしまった。
あっさり引き下がられて、なぜか拍子抜けしてしまった。
寝る時は一緒に寝室へ行っていたのに、置いてかれて疎外感を感じる。
なんだよ、もうちょい、一緒にいてくれてもいいのに。
とも思ったけど、こんな1人でおっ勃ててる変態と一緒にいるのは、蓮も嫌だよな。
でも、もうちょっと話していたかった。
こんなだだっ広いリビングで1人で抜く気にもなれないし、かといって、また風呂に入る気力もわかなかった。
落ち着くまでしばらく横になっていよう。
ぽすっ、とふかふかなソファに体を沈ませた。
蓮は、なんで俺のそばにいてくれるんだろう。
なんでこんなにも、尽くしてくれるのか。
別れた時にあんなに突き放したのに。
もう、復讐するつもりはないことはわかっていた。別れた仕返しをするつもりだったら、もうとっくにしているだろうから。
昔付き合っていたその相手が、こんなに落ちぶれていて、かわいそうに思ってるのか。subのことを、見下してるのかもしれない。
もやもやと嫌な考えに囚われそうになる。
なんだかドロップしそうな時の感覚に似ていた。じわじわと深い闇の中に、体を引き摺り込まれそうな感覚。
(あーもう、やめやめ)
もう今日はここで寝ようかな。
蓮とベッドで寝るのも、なんだか気が乗らない。おさまった下半身が反応してしまったら嫌だし。
蓮にこれ以上、気色悪い奴と思われるのも嫌だった。
俺はソファで本格的に寝る体制に入った。
ぎゅうっと小さくなって、両腕で自分の体を抱きしめ、眠りについた。
次の日の朝、蓮に職場の近くまで車で送ってもらった。
体調は最悪だった。
(あー、むらむらするっ)
抜かずにそのまま寝たのが悪かったのか、ずっと体調がおかしい。
俺はそんなに性欲なんてない方だと思っいたし、実際少なかった。
なのに!
どうしてこんなにも性的な興奮がおさまらないのか。勃つまではいかないが、体がほてっている。
暑い。
これってやっぱ、長年Sub不安症をかかえていた反動なのか……。
そうだったらまずい。
せっかく快調で、仕事もスムーズに処理できるようになってきたっていうのに。
俺の体調が良くなったことで、周りとの接し方も少しだけ変わってきた。
目の前の仕事だけに集中してたけど、話しかけられることが増えた。
そしたら仕事も前よりはやりやすくなってきたし、押し付けられる仕事の量も減った。
まぁ、倒れて救急車で運ばれたっていうのの影響が強いせいもあるかもしれないけど。
もう絶不調のすえ、夜遅くまで残業続きの毎日には正直戻りたくない。
ほんっとにSubってのはもうっ、嫌になる……!
こんな欲求不満な体なんて、欲しくなかった。普通でいたかった。
そうしたら、もっと、上手く生きてこれたのに。
Normalだったら、あのまま高校にも通えて、友達もいっぱいいたのに。
仕事だってもっといいところに就職できていたかもしれない。
あまりにも業務が進まなかったので、俺は早めに仕事を切り上げた。
そして、蓮の待つホテルの部屋へと入っていった。
だめだ、体が熱くて頭がくらくらする。
倒れそう……。
「ヒカル?! どうしたんだ」
ぐらっと体が崩れそうになった時、蓮が俺の体を支えてくれた。
「れん……」
「体調が悪いのか?」
「だ、だいじょうぶ」
「大丈夫じゃないだろう! ふらついていたじゃないか」
近くのソファに運んでくれた。
「水持ってくる」
「まって」
俺から離れようとする蓮の腕を掴んだ。
1人になりたくない。
寂しいから。
離れたくないんだ。
急に不安が押し寄せてきて、どうしようもなくなる。
「どうしたんだ?」
「蓮が急に離れようとするから」
蓮の腕を俺の方に引き寄せた。
「ヒカル、一体どうしたんだ?」
蓮が俺の前に膝をついて、俺の両頬を持って顔を覗き込んできた。
「まさか、反動がきてるのか?」
「ち、ちがう……そんなのきてない」
俺はふるふると首を左右に動かして否定した。
両頬を掴まれていたので動かしづらかった。
「ヒカル、『Say』」
「あ……、」
言いたくない。
黙っていると、蓮はさらに強めにコマンドを追加する。
「俺は『Say』って言ったんだが?」
「ぅ、あ……ごめ、なさ……っ」
「どこか悪いのか? 『Say』」
「っ、……なんかずっと、体熱くて……それに、急に不安になったりして」
泣きたくないのに、目に涙が溜まっていく。
必死に涙を落とさないように目を瞑るのを我慢した。
「チッ、反動だな……」
舌打ちされて、一気にせき止めていた感情の涙がこぼれ出てきた。
せっかく我慢できてたのに!
「ぅっ、ひ、……く、舌打ちするなよぉ!」
「う! わ、悪い……。お前に怒ったんじゃないんだ」
「そんなのわかってるよ!」
そんなこたわかってる!
でも、俺に対して怒ってるわけじゃなくても、今それをされたら嫌だった。
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