御曹司な元カレの甘ったるいコマンドなんて受けたくないっ!

ノルジャン

文字の大きさ
上 下
23 / 35
本編

22-反動

しおりを挟む


な、なんで俺こんな、……!

「抜いてやろうか?」

俺の顔を覗き込む蓮の色気はむんむんだ。風呂から上がってしばらくしてるはずなのに、熱ったように艶っぽい。
カリっと爪先で俺の勃ち上がった先端を服の上からいじられた。

「や……っ」

ずっと仕事と蓮とのプレイの往復で、全然抜いてなかったから相当溜まってしまったらしい、
ズキズキと下半身が痛い。

だけど蓮にシモの世話までしてもらう義理はない。

「い、いいっ、いいから……じ、自分で」

自分でやる、なんて言うのもなんかおかしい気がして言葉が途切れた。

「わかった。じゃあ俺は先に寝てる。おやすみ」

そう言ってスタスタと寝室へと行ってしまった。
あっさり引き下がられて、なぜか拍子抜けしてしまった。
寝る時は一緒に寝室へ行っていたのに、置いてかれて疎外感を感じる。

なんだよ、もうちょい、一緒にいてくれてもいいのに。

とも思ったけど、こんな1人でおっ勃ててる変態と一緒にいるのは、蓮も嫌だよな。
でも、もうちょっと話していたかった。

こんなだだっ広いリビングで1人で抜く気にもなれないし、かといって、また風呂に入る気力もわかなかった。

落ち着くまでしばらく横になっていよう。

ぽすっ、とふかふかなソファに体を沈ませた。

蓮は、なんで俺のそばにいてくれるんだろう。
なんでこんなにも、尽くしてくれるのか。
別れた時にあんなに突き放したのに。
もう、復讐するつもりはないことはわかっていた。別れた仕返しをするつもりだったら、もうとっくにしているだろうから。

昔付き合っていたその相手が、こんなに落ちぶれていて、かわいそうに思ってるのか。subのことを、見下してるのかもしれない。

もやもやと嫌な考えに囚われそうになる。
なんだかドロップしそうな時の感覚に似ていた。じわじわと深い闇の中に、体を引き摺り込まれそうな感覚。

(あーもう、やめやめ)

もう今日はここで寝ようかな。
蓮とベッドで寝るのも、なんだか気が乗らない。おさまった下半身が反応してしまったら嫌だし。
蓮にこれ以上、気色悪い奴と思われるのも嫌だった。

俺はソファで本格的に寝る体制に入った。
ぎゅうっと小さくなって、両腕で自分の体を抱きしめ、眠りについた。




次の日の朝、蓮に職場の近くまで車で送ってもらった。
体調は最悪だった。

(あー、むらむらするっ)

抜かずにそのまま寝たのが悪かったのか、ずっと体調がおかしい。

俺はそんなに性欲なんてない方だと思っいたし、実際少なかった。

なのに!

どうしてこんなにも性的な興奮がおさまらないのか。勃つまではいかないが、体がほてっている。
暑い。
これってやっぱ、長年Sub不安症をかかえていた反動なのか……。
そうだったらまずい。
せっかく快調で、仕事もスムーズに処理できるようになってきたっていうのに。

俺の体調が良くなったことで、周りとの接し方も少しだけ変わってきた。
目の前の仕事だけに集中してたけど、話しかけられることが増えた。
そしたら仕事も前よりはやりやすくなってきたし、押し付けられる仕事の量も減った。
まぁ、倒れて救急車で運ばれたっていうのの影響が強いせいもあるかもしれないけど。

もう絶不調のすえ、夜遅くまで残業続きの毎日には正直戻りたくない。

ほんっとにSubってのはもうっ、嫌になる……!
こんな欲求不満な体なんて、欲しくなかった。普通でいたかった。
そうしたら、もっと、上手く生きてこれたのに。
Normalだったら、あのまま高校にも通えて、友達もいっぱいいたのに。
仕事だってもっといいところに就職できていたかもしれない。

あまりにも業務が進まなかったので、俺は早めに仕事を切り上げた。

そして、蓮の待つホテルの部屋へと入っていった。

だめだ、体が熱くて頭がくらくらする。
倒れそう……。

「ヒカル?! どうしたんだ」

ぐらっと体が崩れそうになった時、蓮が俺の体を支えてくれた。

「れん……」
「体調が悪いのか?」
「だ、だいじょうぶ」
「大丈夫じゃないだろう! ふらついていたじゃないか」

近くのソファに運んでくれた。

「水持ってくる」
「まって」

俺から離れようとする蓮の腕を掴んだ。

1人になりたくない。
寂しいから。
離れたくないんだ。

急に不安が押し寄せてきて、どうしようもなくなる。

「どうしたんだ?」
「蓮が急に離れようとするから」

蓮の腕を俺の方に引き寄せた。

「ヒカル、一体どうしたんだ?」

蓮が俺の前に膝をついて、俺の両頬を持って顔を覗き込んできた。

「まさか、反動がきてるのか?」
「ち、ちがう……そんなのきてない」

俺はふるふると首を左右に動かして否定した。
両頬を掴まれていたので動かしづらかった。

「ヒカル、『Say言え』」
「あ……、」

言いたくない。
黙っていると、蓮はさらに強めにコマンドを追加する。

「俺は『Say言え』って言ったんだが?」
「ぅ、あ……ごめ、なさ……っ」
「どこか悪いのか? 『Say言えって』」
「っ、……なんかずっと、体熱くて……それに、急に不安になったりして」

泣きたくないのに、目に涙が溜まっていく。
必死に涙を落とさないように目を瞑るのを我慢した。

「チッ、反動だな……」

舌打ちされて、一気にせき止めていた感情の涙がこぼれ出てきた。
せっかく我慢できてたのに!

「ぅっ、ひ、……く、舌打ちするなよぉ!」
「う! わ、悪い……。お前に怒ったんじゃないんだ」
「そんなのわかってるよ!」

そんなこたわかってる!
でも、俺に対して怒ってるわけじゃなくても、今それをされたら嫌だった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

待っていたのは恋する季節

冴月希衣@商業BL販売中
BL
恋の芽吹きのきっかけは失恋?【癒し系なごみキャラ×強気モテメン】 「別れてほしいの」 「あー、はいはい。了解! 別れよう。じゃあな」  日高雪白。大手クレジットカード会社の営業企画部所属。二十二歳。  相手から告白されて付き合い始めたのに別れ話を切り出してくるのは必ず女性側から。彼なりに大事にしているつもりでも必ずその結末を迎える理不尽ルートだが、相手が罪悪感を抱かないよう、わざと冷たく返事をしている。  そんな雪白が傷心を愚痴る相手はたった一人。親友、小日向蒼海。  癒し系なごみキャラに強気モテメンが弱みを見せる時、親友同士の関係に思いがけない変化が……。 表紙は香月ららさん(@lala_kotubu) ◆本文、画像の無断転載禁止◆ Reproducing all or any part of the contents is prohibited without the author's permission.

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

処理中です...