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1 異世界トリップ
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この異世界に飛ばされてきて、ここで生きていくことになったのはほんの少し前のことだった。
俺は日本に暮らす平凡なしがない公務員であった。毎日仕事に追われて恋人もいない童貞。30過ぎて童貞だと魔法使いになるという話を聞いたことがあるだろうか。俺はその魔法使いになってしまって何年か過ぎた。日本では魔法なんてただのおとぎ話の世界の話なので、「魔法使い」とはただ年のいった童貞の呼称に過ぎなかったのだが。
そんな俺が何故この世界に来たのかと言うと、神様に召喚された。いや、神様かもよくわからないおっさんだったけども。
気づいたら見たこともない、なんだかよくわからない空間にくたびれたおっさんが目の前にいた。
そのおっさんの最初の言葉は「ヘイ、ユー!青春してるかい?」だった。
なにこのくたびれたおっさん、いきなりビビるんですけど。見た目と言葉のギャップがすごい。言動はめっちゃチャラいというか、頭ヤバい人っぽいのに格好はよれよれのパーカーに汚れて穴のあきまくったジーンズ。
圧倒され過ぎて何も言えない俺に、おっさんは気にも止めずに続けて言った。
「ユーは全然青春してなかったよねエ。だったら、こっちの世界で青春しちゃわなイ?」
「せ、青春??」
「だーかーらァァ、青春だよウ。せ、い、しゅ、ン!」
「はぁ…」
何言ってるかさっぱりわかんないし、口調がとても聞きにくい。俺はなんか変な夢でも見てんのかな、なんて思った。
「こっちの世界だったらァア、どんなモノにでもしてあげるよォ」
「……なんでも?」
「うン。なーんでも出来ちゃうからさァア」
どんなものにでも、何でも出来る、すごく惹かれる言葉だった。30歳過ぎても平々凡々、つまらない生き方しかしてこなかった。夢も希望も、そんなものを追ったり描えがいたのだって、現実を知らなかった子ども時代だけだった。
やんちゃしたことも、思いっきりバカやって遊んだこともない。堅実に生きてきた面白みのない人生。
――どうせ夢なんだし、一度くらい馬鹿な夢言ったっていいよな。
俺はおっさん神に軽い気持ちで願ってみた。
「イケメンになって、モテモテ勝ち組の人生が送りたい」
イケメンになりたい、モテたいってみんな一度くらい思ったことあるはず。俺だってモテたい!だけどこんな平凡塩顔はどう頑張ってもイケメンにはなれない。
「あ、待って魔法も使えるようになりたい!強いやつ!」
せっかく30超えて魔・法・使・い・になったんだし、本物の魔法使いになりたい。
「いいよーォ、いいよーオ!ユーの望み、ぜーんぶ叶えちゃうよォオ!」
俺の願いを神様はオッケーイ!と軽く了承してくれた。
その瞬間眩い光に包まれて俺は異世界の街中に飛ばされた。
光に包まれた時におっさんの声で「ユーの身体は青春しやすいように作り替えたかラー!青春するんだよーウ」と聞こえた。
――何なんだよ最後まで、青春、青春ってさ。
気づいたら訳もわからず突然異世界の街中にほっぽり出されていた。頼る相手も行くあてもない。こういうことも考えておっさんに色々頼んどけばよかった。
そんなことを今さら後悔しても遅い。とりあえず何とか生活していかなきゃ。
「おい、お前大丈夫か?」
声をかけてくれたのはレストランのオーナーであった。ちょうど飛ばされた先がレストランの店前で、ちょうど店員募集中だったためすぐに立候補した。
「お願いします、働かせてください!住むところもないんです!お願いします、一生懸命働きますからっ!」
「そうはいってもなぁ」
「住み込みでしたら朝から晩まで働けます!お願いします!」
「んー、まあお前顔がいいし、ウェイターにはもってこいだが、住み込みなぁ……」
「住むところないんです……、金も頼れる人もいないし……」
ぐずぐずと泣きそうになりながら訴えた。するとオーナーは「うっ」と狼狽えた。オーナーは男泣きに弱かったらしい。
「頑張って働きますから、住み込みでお願いできませんか?」
「……そうだなぁ。まぁ、……うん」
濁された返答に、その後も必死に頼み込んで住み込みで働かせてくれることになった。
こんなトントン拍子で仕事も住む場所も確保できるなんて俺ってラッキーだなぁと思った。
「お前名前はなんて言うんだ?」
「え、えーと、名前は、あの、……ラッキー、いやラックです!」
お店のオーナーに名前を聞かれて咄嗟にラックです!と答えてしまった。しまった!もっとカッコいい名前考えとけばよかった。ラッキーだなぁなんて考えていたら、何も浮かばなくてそんなことになってしまった。
俺が働くことになったレストラン「カポネッサ」は、昼はランチ、夜はディナーと時間を分けて営業する。中々人気のあるレストランで客足は昼も夜も絶えなかった。この店も結構上品な作りだし、客もそれに見合った客層であった。
オーナーはいい人で、物を知らない俺に根気よく金勘定やレストランで出されているメニューについて教えてくれた。
「硬貨も紙幣もみたことないってどんな田舎だよ」
「いやぁ、俺の故郷はほんと田舎で……」
物々交換で成り立っている集落の出ということにした。いきなり異世界から来ましたなんて言われても誰も信じないだろ。俺も信じない、そんな胡散臭い話。
読み書きは普通に出来るのは幸いだが、レストランで出す料理の名前が全く見覚えがなく、数も多いので苦戦した。お酒も種類が多くて目が回る。しかもワインの種類が半端じゃない。
この世界、もしくは街では昼からみんな水の代わりにお酒を飲む。ほぼほぼ飲むのはワインだ。飲ませてもらったが、元の世界より薄いので水の代わりになるのだろうか。
「昼に出るのは薄い酒だな。みんなまだ午後も仕事があるからな」
「へー」
「実際水で薄めて出す店もあるが、ここカポネッサではそんなことはしない」
オーナーはなにやら酒のサーブに関しては並々ならぬ信念を持っているらしい。
過去に何かあったのだろうか。
「まぁ、昼から飲んだとしても潰れるようなヤワな人間はこの街にはいねぇよ」
どんだけ肝臓が強いんだここの人間たちは。薄いと言っても酒は酒だろう。俺はおっさん神に身体を作り替えて貰ったから、酒に強くなってはいる。飲ませてもらった薄いワインでも大丈夫だ。意識を保てている。
元の俺の身体は下戸だった。全く飲めない。ノンアルコールでほろ酔いになるくらい。だから作り変えられたとしても、元のキャパを考えたら、この世界の人間と比べて多分酒には弱いんじゃないかと思う。
レストランもそうだが、街並み自体も品があるというか、向こうの世界で例えるならばヨーロッパ風の街並みだ。ヨーロッパ俺行ったことないけど。写真とかテレビとかで見たことのあるような風景が目の前に現実にある。
レストランのウェイターとして働き出したが、これが結構忙しくて。金もない異世界の常識も知らない俺はただひたすらに働いた。こちらに来る前にイケメンになってモテまくって童貞捨てて遊びまくる!なんて思っていたはずなのになぁ。それに魔法も使えるようにしてもらったはずなのに、使えるかかどうか試してもいない。俺つえー!してバトルする気満々でいたのに。
でも実際戦うとなると、それ相応の覚悟、死ぬかもしれないという覚悟を持たなくちゃやれないだろう。だって戦闘だろ?命の取り合いするんだろ?日本という安全安心な世界でゆるっと生きてきた俺にはそんな死ぬ覚悟なんてできやしない。でもカッコいいだろうなぁ。憧れるな魔法使い…。
「おいラック!料理と酒サーブしてくれ!」
厨房からシェフの大きな声が聞こえた。
「はい!」
お昼どきは慌ただしくウェイターとして給仕をする。お客から注文を取ってサーブして、を繰り返す。一向に厨房カウンターの料理が減っていかない。13時頃を過ぎると一気に落ち着く。それまでが勝負だ。
お昼の時間が終わり、くたくたになった身体を椅子に投げ打ってまかないを食べる。ここカポネッサのシェフの料理は絶品だ。
夢の中ならお馬鹿な願い事を言ったって構わないだろうと「イケメンでモテて勝ち組の人生」と願ったのに、その願いはこの世界で叶えられているのか微妙なところだ。
「イケメン」というところは、日本で言うところのアイドルのような綺麗めな美形にしてもらったようだった。俺は綺麗系で手足も長く、すらっとした背格好をしているのだが、こちらでは精悍な体つきの洗練されたワイルド系の男がモテるっぽいのだ。レストランでも女の子から声がかかるのはいつも男臭い野郎ばかりだった。
なので「モテて」の部分は叶えられていないと思う。……いや、思っていた。レストランのウェイターという女性からも声がかかりやすい職場なのに、まだ声をかけられたことはないから。
だが、……だがしかし、男からは何故か声がかかる。男からしか声がかからないと言った方が正しいか……。ウェイターとして給仕している時に尻を撫でられたこともある。このレストランはランク的にそこそこ上の方なのであまり粗暴な振る舞いをする輩やあからさまに誘ってくる奴はいないけど。それでも食事に誘われたり、デートに誘われたり、夜にも誘われた。だから、男に「モテて」はいるんだろう。
「勝ち組の人生」これはまだこちらに来たばかりなので判別は難しいと思う。てか、よく考えたら勝ち組ってなんだろう?もっと具体的に願いを言えばよかった。お金持ちとか愛し愛されて幸せな人生とか……。
せっかく美形に転生させてもらったのに、まだ童貞だし、全然冒険出来ていない。異世界に来てまで安定思考の自分に嫌気がさした。けれど、長年これでやってきたため、いきなり性格を変えろと言うのは難しい話だ。
それでもあと一歩踏み出す勇気があれば。
今日もレストランでウェイターとして働く慌ただしい日が終わってしまう。常連の独り身の男どもに声をかけられたが誘いをいつものようにお断りする。どれだけ断ってもみんな誘ってくるのだが、逆上する者はいないし皆紳士で余裕がある。俺とは大違い。
今日も童貞。明日も明後日も童貞の予定だ。異世界に来たのに。こんなつもりじゃなかった。イケメンにしてもらってモテモテになって女の子からナンパされて童貞卒業して、その後はなし崩しに色んな女性たちとベッドを共にするなんて夢を抱いていたのに。
この夢は本当にただの妄想で終わってしまう。
これじゃいかん!
今日こそ一歩踏み出す。レストランの仕事が終わった後、一人バーに入る。
いつもはこない区画まで足を運び、入り口が分かりづらい隠れ家となっているバーのドアを誘われるように開けて中へと入った。
そこは思った以上に異様な空気感がただよっていた。かなりの場違い感。チリチリと、顔に、着ている服や靴にまで視線が刺さっている気がする。
店内はそんなに広くなくこじんまりとした印象だ。照明も暗い。だが、テーブルや椅子などの作りは上品で質の良いものを使っているようだ。そんなに詳しくはわからないけどうちのレストランより良いものっぽい。
バーの中には男しかおらず、皆こちらをジロジロと見定めているような視線だ。バーテンダーも男だけのようだった。俺は金もそんなにないが、あまり見劣りしないように中古だが良いものを買って着てきたつもりだった。が、このバーにいる者たちに比べたらそんな子ども騙しが通用しないことがよくわかった。
ああ、恥ずかしい。こんな上流階級者ご用達みたいなところに入ってきてしまって。せっかく隠れていたのになんで俺は見つけ出してしまったのか。このバーのドア。
顔が真っ赤になっているのがわかる。しかしバーに入ってきてしまった手前、何も飲まずに帰ってしまうのは店にも悪いし、そして何より俺のなけなしのプライドが許さない。
ここまで勇気を出してきたんだ。一杯くらい飲んで帰らないと格好がつかない。怖気付いて固まった足に鞭打ってカウンターに向かった。
バーテンダーに飲み物を注文したいが、何が良いのかよくわからない。注文は受けても全く飲んだことはないのだ。近くにいる人が飲んでいるグラスを指す。
「あれと同じもので」
「承知しました」
「お願いします」
「ストレートでよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
ストレートはたしか氷なしでそのまま飲むやつだったよな。
よくんかんないけどそれ飲んでさっさと帰ろう。
グラスに注がれたお酒を目の前のカウンターテーブルに差し出される。それを受け取ってゴクゴクと飲み干した。急いで飲み込んだ途端、喉がいきなりカッと熱くなったのに仰天した。
「ぐっ、……ゲホッゴホッ…」
喉が焼けるように熱い。思った以上に度数の高いお酒だったようだ。さっきの人は水みたいに飲んでるのに……。喉も肝臓も強いんだな異世界人たち。
「大丈夫ですかお客様」
バーテンダーに心配されてしまった。大丈夫だと返したいけどまだ喉がやられている。ゴホゴホとむせ返りながら大丈夫だと手を上げた。
うわー!めちゃくちゃ恥ずかしい……!こんな場違いなところで飲み慣れない酒を一気に呷って盛大にむせるなんて。
クスクスと周りで笑っている様子を感じてさらに羞恥心を持った顔が赤く染まる。
すると隣に大きな男がスッと寄ってきた。
「おい、水を」
「はい、ただいま」
バーテンダーに水を頼んでくれたらしい。背中をさすってくれている。大きな手が水の入ったグラスを受け取ると、俺に差し出した。
「飲めるか?」
コクコクと頷いて水を受け取る。ゆっくりと少しずつ飲んで喉を鎮めた。
ふうと息を吐いて礼を男に言った。
「ありがとうございます」
ふと目に入った男の胸板が厚い。そして男が着ている黒いスーツはかなり上等そうで、今までレストランにきていた上客よりも軽く上をいくだろう。俺はぐっと首を上げて男を見上げた。俺よりも上背がある長身の男。鋭い目つき、そしてその中にある強い眼差し。高い鼻筋に自信に満ち溢れた口元。その全てが妙に色気を感じさせる。そしてなにより、威圧感というのだろうか、とても危険な香りのする男であることは確かだ。
彼の存在感に圧倒されてじっと見つめて動けなくなった。
「おい、大丈夫か」
その男の言葉に我に帰って思わず視線を外した。
「はい!大丈夫です、すみません。ご迷惑をおかけして……」
口調も力強くて圧力がある。
「酒は飲み慣れていないのか」
「あまり…。これ初めて飲みました。こんなに強いんですね」
こちらに向けられるこの男の視線が強すぎて、目を合わせられない。合わせたらまた惹きつけられてしまうような予感がした。
男の喉元に目をやると、首が太くて喉仏も大きく出ていてセクシーだ。目は合わせられないが、男の口角がニヤリと悪い上がり方をしたのが見えた。
ぐいっと腰に腕を回されて絡めとられた。顎を引かれ無理矢理に目を合わせられる。
またその強い眼差しに、しかも今度は近距離に見つめられた。危ない雰囲気しかしないこの男にこんなに近づいてしまった。
男になんか興味はないのに、この男からはそんなことは関係ないとばかりに色気を感じる。腰に回った腕と顎の手の力強さも絶妙で、振り解こうと思えば振り解けそうなのにそれが出来ない。なんだかドキドキと胸が高鳴ってきた。
「だったら、俺が酒の良さを教えてやろうか?」
いつもレストランで誘われる時は上手くあしらえているのに。この男の雰囲気に呑まれてしまって、あうあうと言葉にならない。
「近くに俺の家がある。そこに色々と秘蔵の酒があるんだ」
腕にさらに力が入る。身体が密着して相手の男の熱を感じた。固まるばかりで何も言葉を発することができない。
「お、おれ……っ」
「さあ、行こうか」
断る間もなく男に腰を強く引かれたままに歩き出す。有無を言わせない男に戸惑っている自分がいるのに、なぜかこの腕を振り解けない。振り解こうとしたところで俺の力じゃ敵わないかもしれないが。このままついていってしまったらどうなるかはわかっている。いや、実際のところ詳細はわからないのだが、でもやる事はわかる。……たぶんそういうことだよな。
「お、お金払ってない……から」
先ほど飲んだ酒の代金を払っていないのだ。悪あがきにそんなことを言ってみる。すると男はスッと札束を取り出してぽんとカウンターに投げた。
「残りはチップだ。とっとけ」
「頂戴いたします」
札束の分厚さにぎょっとした。酒と水代を合わせてたとしてもこんな札束の代金にはならないだろう。この人が先に飲んでいたとしてもだ。
この男はとんでもなく金持ちなんじゃないのか。どんな仕事をしているのか全く予想がつかない。危険な感じがするワイルド系な男であるので、きっと何度も修羅場を潜り抜けてきているのかもしれない。どんな修羅場かはわからないが。知りたいような、知りたくないような。知ってしまったらもう戻ってこれない気がした。
そのまま店を出て腰をがっちりと掴まれて二人並んで街を歩く。足の長さも比べるまでもなく段違いだが、歩幅をちゃんと合わせてくれている。
横目で男を見ると、ものすごい存在感だ。すれ違う人たちも俺たちを、というかこの男に注目して、そして避けているような気がする。
「あの、あなたは何やってる人なんです?」
「まあ、色々だな」
全然答えになってないじゃないか。
「お前はどうなんだ?」
「俺はレストランのウェイターです」
「どこのなんて店だ?」
「カポネッサって名前の店です。この中央からは大分外れてますね」
「ああ、郊外にあるあの店か」
こちらの区画は中央とよばれていて一度も足を運んだことがなく、暗いのもあって一体自分がどこを歩いているのかわからなくなってしまった。
そんな自分とは正反対に、男の歩みに迷いは見られなかった。
しばらく歩いていると、先ほど歩いていた街並みとは全く別次元にきてしまったかのような錯覚さえ覚えるほどの豪邸が現れた。
隣を歩く男はズンズンと歩みを止めずにその豪邸の方へと歩いていく。
え、ここ?まじで?くっそ金持ちのセレブじゃん。俺、こんなとこ入りたくない。入れないよ!隠れ家バーより場違いだから!門番にとめられたりしないかな。いや、むしろとめて!
大きな門の前にいかつい門番のような大男が立っていた。めっちゃ怖い顔してるけど、今はそんなこと怖がってる場合じゃない。切実な思いで門番に視線を送るも、こちらには目もくれず呆気なく門を通されてしまった。
そうだよね、だって隣にこんなオーラのあるやつがついてるもんね。顔パスだよね。もちろんね。
俺は日本に暮らす平凡なしがない公務員であった。毎日仕事に追われて恋人もいない童貞。30過ぎて童貞だと魔法使いになるという話を聞いたことがあるだろうか。俺はその魔法使いになってしまって何年か過ぎた。日本では魔法なんてただのおとぎ話の世界の話なので、「魔法使い」とはただ年のいった童貞の呼称に過ぎなかったのだが。
そんな俺が何故この世界に来たのかと言うと、神様に召喚された。いや、神様かもよくわからないおっさんだったけども。
気づいたら見たこともない、なんだかよくわからない空間にくたびれたおっさんが目の前にいた。
そのおっさんの最初の言葉は「ヘイ、ユー!青春してるかい?」だった。
なにこのくたびれたおっさん、いきなりビビるんですけど。見た目と言葉のギャップがすごい。言動はめっちゃチャラいというか、頭ヤバい人っぽいのに格好はよれよれのパーカーに汚れて穴のあきまくったジーンズ。
圧倒され過ぎて何も言えない俺に、おっさんは気にも止めずに続けて言った。
「ユーは全然青春してなかったよねエ。だったら、こっちの世界で青春しちゃわなイ?」
「せ、青春??」
「だーかーらァァ、青春だよウ。せ、い、しゅ、ン!」
「はぁ…」
何言ってるかさっぱりわかんないし、口調がとても聞きにくい。俺はなんか変な夢でも見てんのかな、なんて思った。
「こっちの世界だったらァア、どんなモノにでもしてあげるよォ」
「……なんでも?」
「うン。なーんでも出来ちゃうからさァア」
どんなものにでも、何でも出来る、すごく惹かれる言葉だった。30歳過ぎても平々凡々、つまらない生き方しかしてこなかった。夢も希望も、そんなものを追ったり描えがいたのだって、現実を知らなかった子ども時代だけだった。
やんちゃしたことも、思いっきりバカやって遊んだこともない。堅実に生きてきた面白みのない人生。
――どうせ夢なんだし、一度くらい馬鹿な夢言ったっていいよな。
俺はおっさん神に軽い気持ちで願ってみた。
「イケメンになって、モテモテ勝ち組の人生が送りたい」
イケメンになりたい、モテたいってみんな一度くらい思ったことあるはず。俺だってモテたい!だけどこんな平凡塩顔はどう頑張ってもイケメンにはなれない。
「あ、待って魔法も使えるようになりたい!強いやつ!」
せっかく30超えて魔・法・使・い・になったんだし、本物の魔法使いになりたい。
「いいよーォ、いいよーオ!ユーの望み、ぜーんぶ叶えちゃうよォオ!」
俺の願いを神様はオッケーイ!と軽く了承してくれた。
その瞬間眩い光に包まれて俺は異世界の街中に飛ばされた。
光に包まれた時におっさんの声で「ユーの身体は青春しやすいように作り替えたかラー!青春するんだよーウ」と聞こえた。
――何なんだよ最後まで、青春、青春ってさ。
気づいたら訳もわからず突然異世界の街中にほっぽり出されていた。頼る相手も行くあてもない。こういうことも考えておっさんに色々頼んどけばよかった。
そんなことを今さら後悔しても遅い。とりあえず何とか生活していかなきゃ。
「おい、お前大丈夫か?」
声をかけてくれたのはレストランのオーナーであった。ちょうど飛ばされた先がレストランの店前で、ちょうど店員募集中だったためすぐに立候補した。
「お願いします、働かせてください!住むところもないんです!お願いします、一生懸命働きますからっ!」
「そうはいってもなぁ」
「住み込みでしたら朝から晩まで働けます!お願いします!」
「んー、まあお前顔がいいし、ウェイターにはもってこいだが、住み込みなぁ……」
「住むところないんです……、金も頼れる人もいないし……」
ぐずぐずと泣きそうになりながら訴えた。するとオーナーは「うっ」と狼狽えた。オーナーは男泣きに弱かったらしい。
「頑張って働きますから、住み込みでお願いできませんか?」
「……そうだなぁ。まぁ、……うん」
濁された返答に、その後も必死に頼み込んで住み込みで働かせてくれることになった。
こんなトントン拍子で仕事も住む場所も確保できるなんて俺ってラッキーだなぁと思った。
「お前名前はなんて言うんだ?」
「え、えーと、名前は、あの、……ラッキー、いやラックです!」
お店のオーナーに名前を聞かれて咄嗟にラックです!と答えてしまった。しまった!もっとカッコいい名前考えとけばよかった。ラッキーだなぁなんて考えていたら、何も浮かばなくてそんなことになってしまった。
俺が働くことになったレストラン「カポネッサ」は、昼はランチ、夜はディナーと時間を分けて営業する。中々人気のあるレストランで客足は昼も夜も絶えなかった。この店も結構上品な作りだし、客もそれに見合った客層であった。
オーナーはいい人で、物を知らない俺に根気よく金勘定やレストランで出されているメニューについて教えてくれた。
「硬貨も紙幣もみたことないってどんな田舎だよ」
「いやぁ、俺の故郷はほんと田舎で……」
物々交換で成り立っている集落の出ということにした。いきなり異世界から来ましたなんて言われても誰も信じないだろ。俺も信じない、そんな胡散臭い話。
読み書きは普通に出来るのは幸いだが、レストランで出す料理の名前が全く見覚えがなく、数も多いので苦戦した。お酒も種類が多くて目が回る。しかもワインの種類が半端じゃない。
この世界、もしくは街では昼からみんな水の代わりにお酒を飲む。ほぼほぼ飲むのはワインだ。飲ませてもらったが、元の世界より薄いので水の代わりになるのだろうか。
「昼に出るのは薄い酒だな。みんなまだ午後も仕事があるからな」
「へー」
「実際水で薄めて出す店もあるが、ここカポネッサではそんなことはしない」
オーナーはなにやら酒のサーブに関しては並々ならぬ信念を持っているらしい。
過去に何かあったのだろうか。
「まぁ、昼から飲んだとしても潰れるようなヤワな人間はこの街にはいねぇよ」
どんだけ肝臓が強いんだここの人間たちは。薄いと言っても酒は酒だろう。俺はおっさん神に身体を作り替えて貰ったから、酒に強くなってはいる。飲ませてもらった薄いワインでも大丈夫だ。意識を保てている。
元の俺の身体は下戸だった。全く飲めない。ノンアルコールでほろ酔いになるくらい。だから作り変えられたとしても、元のキャパを考えたら、この世界の人間と比べて多分酒には弱いんじゃないかと思う。
レストランもそうだが、街並み自体も品があるというか、向こうの世界で例えるならばヨーロッパ風の街並みだ。ヨーロッパ俺行ったことないけど。写真とかテレビとかで見たことのあるような風景が目の前に現実にある。
レストランのウェイターとして働き出したが、これが結構忙しくて。金もない異世界の常識も知らない俺はただひたすらに働いた。こちらに来る前にイケメンになってモテまくって童貞捨てて遊びまくる!なんて思っていたはずなのになぁ。それに魔法も使えるようにしてもらったはずなのに、使えるかかどうか試してもいない。俺つえー!してバトルする気満々でいたのに。
でも実際戦うとなると、それ相応の覚悟、死ぬかもしれないという覚悟を持たなくちゃやれないだろう。だって戦闘だろ?命の取り合いするんだろ?日本という安全安心な世界でゆるっと生きてきた俺にはそんな死ぬ覚悟なんてできやしない。でもカッコいいだろうなぁ。憧れるな魔法使い…。
「おいラック!料理と酒サーブしてくれ!」
厨房からシェフの大きな声が聞こえた。
「はい!」
お昼どきは慌ただしくウェイターとして給仕をする。お客から注文を取ってサーブして、を繰り返す。一向に厨房カウンターの料理が減っていかない。13時頃を過ぎると一気に落ち着く。それまでが勝負だ。
お昼の時間が終わり、くたくたになった身体を椅子に投げ打ってまかないを食べる。ここカポネッサのシェフの料理は絶品だ。
夢の中ならお馬鹿な願い事を言ったって構わないだろうと「イケメンでモテて勝ち組の人生」と願ったのに、その願いはこの世界で叶えられているのか微妙なところだ。
「イケメン」というところは、日本で言うところのアイドルのような綺麗めな美形にしてもらったようだった。俺は綺麗系で手足も長く、すらっとした背格好をしているのだが、こちらでは精悍な体つきの洗練されたワイルド系の男がモテるっぽいのだ。レストランでも女の子から声がかかるのはいつも男臭い野郎ばかりだった。
なので「モテて」の部分は叶えられていないと思う。……いや、思っていた。レストランのウェイターという女性からも声がかかりやすい職場なのに、まだ声をかけられたことはないから。
だが、……だがしかし、男からは何故か声がかかる。男からしか声がかからないと言った方が正しいか……。ウェイターとして給仕している時に尻を撫でられたこともある。このレストランはランク的にそこそこ上の方なのであまり粗暴な振る舞いをする輩やあからさまに誘ってくる奴はいないけど。それでも食事に誘われたり、デートに誘われたり、夜にも誘われた。だから、男に「モテて」はいるんだろう。
「勝ち組の人生」これはまだこちらに来たばかりなので判別は難しいと思う。てか、よく考えたら勝ち組ってなんだろう?もっと具体的に願いを言えばよかった。お金持ちとか愛し愛されて幸せな人生とか……。
せっかく美形に転生させてもらったのに、まだ童貞だし、全然冒険出来ていない。異世界に来てまで安定思考の自分に嫌気がさした。けれど、長年これでやってきたため、いきなり性格を変えろと言うのは難しい話だ。
それでもあと一歩踏み出す勇気があれば。
今日もレストランでウェイターとして働く慌ただしい日が終わってしまう。常連の独り身の男どもに声をかけられたが誘いをいつものようにお断りする。どれだけ断ってもみんな誘ってくるのだが、逆上する者はいないし皆紳士で余裕がある。俺とは大違い。
今日も童貞。明日も明後日も童貞の予定だ。異世界に来たのに。こんなつもりじゃなかった。イケメンにしてもらってモテモテになって女の子からナンパされて童貞卒業して、その後はなし崩しに色んな女性たちとベッドを共にするなんて夢を抱いていたのに。
この夢は本当にただの妄想で終わってしまう。
これじゃいかん!
今日こそ一歩踏み出す。レストランの仕事が終わった後、一人バーに入る。
いつもはこない区画まで足を運び、入り口が分かりづらい隠れ家となっているバーのドアを誘われるように開けて中へと入った。
そこは思った以上に異様な空気感がただよっていた。かなりの場違い感。チリチリと、顔に、着ている服や靴にまで視線が刺さっている気がする。
店内はそんなに広くなくこじんまりとした印象だ。照明も暗い。だが、テーブルや椅子などの作りは上品で質の良いものを使っているようだ。そんなに詳しくはわからないけどうちのレストランより良いものっぽい。
バーの中には男しかおらず、皆こちらをジロジロと見定めているような視線だ。バーテンダーも男だけのようだった。俺は金もそんなにないが、あまり見劣りしないように中古だが良いものを買って着てきたつもりだった。が、このバーにいる者たちに比べたらそんな子ども騙しが通用しないことがよくわかった。
ああ、恥ずかしい。こんな上流階級者ご用達みたいなところに入ってきてしまって。せっかく隠れていたのになんで俺は見つけ出してしまったのか。このバーのドア。
顔が真っ赤になっているのがわかる。しかしバーに入ってきてしまった手前、何も飲まずに帰ってしまうのは店にも悪いし、そして何より俺のなけなしのプライドが許さない。
ここまで勇気を出してきたんだ。一杯くらい飲んで帰らないと格好がつかない。怖気付いて固まった足に鞭打ってカウンターに向かった。
バーテンダーに飲み物を注文したいが、何が良いのかよくわからない。注文は受けても全く飲んだことはないのだ。近くにいる人が飲んでいるグラスを指す。
「あれと同じもので」
「承知しました」
「お願いします」
「ストレートでよろしいでしょうか?」
「あ、はい」
ストレートはたしか氷なしでそのまま飲むやつだったよな。
よくんかんないけどそれ飲んでさっさと帰ろう。
グラスに注がれたお酒を目の前のカウンターテーブルに差し出される。それを受け取ってゴクゴクと飲み干した。急いで飲み込んだ途端、喉がいきなりカッと熱くなったのに仰天した。
「ぐっ、……ゲホッゴホッ…」
喉が焼けるように熱い。思った以上に度数の高いお酒だったようだ。さっきの人は水みたいに飲んでるのに……。喉も肝臓も強いんだな異世界人たち。
「大丈夫ですかお客様」
バーテンダーに心配されてしまった。大丈夫だと返したいけどまだ喉がやられている。ゴホゴホとむせ返りながら大丈夫だと手を上げた。
うわー!めちゃくちゃ恥ずかしい……!こんな場違いなところで飲み慣れない酒を一気に呷って盛大にむせるなんて。
クスクスと周りで笑っている様子を感じてさらに羞恥心を持った顔が赤く染まる。
すると隣に大きな男がスッと寄ってきた。
「おい、水を」
「はい、ただいま」
バーテンダーに水を頼んでくれたらしい。背中をさすってくれている。大きな手が水の入ったグラスを受け取ると、俺に差し出した。
「飲めるか?」
コクコクと頷いて水を受け取る。ゆっくりと少しずつ飲んで喉を鎮めた。
ふうと息を吐いて礼を男に言った。
「ありがとうございます」
ふと目に入った男の胸板が厚い。そして男が着ている黒いスーツはかなり上等そうで、今までレストランにきていた上客よりも軽く上をいくだろう。俺はぐっと首を上げて男を見上げた。俺よりも上背がある長身の男。鋭い目つき、そしてその中にある強い眼差し。高い鼻筋に自信に満ち溢れた口元。その全てが妙に色気を感じさせる。そしてなにより、威圧感というのだろうか、とても危険な香りのする男であることは確かだ。
彼の存在感に圧倒されてじっと見つめて動けなくなった。
「おい、大丈夫か」
その男の言葉に我に帰って思わず視線を外した。
「はい!大丈夫です、すみません。ご迷惑をおかけして……」
口調も力強くて圧力がある。
「酒は飲み慣れていないのか」
「あまり…。これ初めて飲みました。こんなに強いんですね」
こちらに向けられるこの男の視線が強すぎて、目を合わせられない。合わせたらまた惹きつけられてしまうような予感がした。
男の喉元に目をやると、首が太くて喉仏も大きく出ていてセクシーだ。目は合わせられないが、男の口角がニヤリと悪い上がり方をしたのが見えた。
ぐいっと腰に腕を回されて絡めとられた。顎を引かれ無理矢理に目を合わせられる。
またその強い眼差しに、しかも今度は近距離に見つめられた。危ない雰囲気しかしないこの男にこんなに近づいてしまった。
男になんか興味はないのに、この男からはそんなことは関係ないとばかりに色気を感じる。腰に回った腕と顎の手の力強さも絶妙で、振り解こうと思えば振り解けそうなのにそれが出来ない。なんだかドキドキと胸が高鳴ってきた。
「だったら、俺が酒の良さを教えてやろうか?」
いつもレストランで誘われる時は上手くあしらえているのに。この男の雰囲気に呑まれてしまって、あうあうと言葉にならない。
「近くに俺の家がある。そこに色々と秘蔵の酒があるんだ」
腕にさらに力が入る。身体が密着して相手の男の熱を感じた。固まるばかりで何も言葉を発することができない。
「お、おれ……っ」
「さあ、行こうか」
断る間もなく男に腰を強く引かれたままに歩き出す。有無を言わせない男に戸惑っている自分がいるのに、なぜかこの腕を振り解けない。振り解こうとしたところで俺の力じゃ敵わないかもしれないが。このままついていってしまったらどうなるかはわかっている。いや、実際のところ詳細はわからないのだが、でもやる事はわかる。……たぶんそういうことだよな。
「お、お金払ってない……から」
先ほど飲んだ酒の代金を払っていないのだ。悪あがきにそんなことを言ってみる。すると男はスッと札束を取り出してぽんとカウンターに投げた。
「残りはチップだ。とっとけ」
「頂戴いたします」
札束の分厚さにぎょっとした。酒と水代を合わせてたとしてもこんな札束の代金にはならないだろう。この人が先に飲んでいたとしてもだ。
この男はとんでもなく金持ちなんじゃないのか。どんな仕事をしているのか全く予想がつかない。危険な感じがするワイルド系な男であるので、きっと何度も修羅場を潜り抜けてきているのかもしれない。どんな修羅場かはわからないが。知りたいような、知りたくないような。知ってしまったらもう戻ってこれない気がした。
そのまま店を出て腰をがっちりと掴まれて二人並んで街を歩く。足の長さも比べるまでもなく段違いだが、歩幅をちゃんと合わせてくれている。
横目で男を見ると、ものすごい存在感だ。すれ違う人たちも俺たちを、というかこの男に注目して、そして避けているような気がする。
「あの、あなたは何やってる人なんです?」
「まあ、色々だな」
全然答えになってないじゃないか。
「お前はどうなんだ?」
「俺はレストランのウェイターです」
「どこのなんて店だ?」
「カポネッサって名前の店です。この中央からは大分外れてますね」
「ああ、郊外にあるあの店か」
こちらの区画は中央とよばれていて一度も足を運んだことがなく、暗いのもあって一体自分がどこを歩いているのかわからなくなってしまった。
そんな自分とは正反対に、男の歩みに迷いは見られなかった。
しばらく歩いていると、先ほど歩いていた街並みとは全く別次元にきてしまったかのような錯覚さえ覚えるほどの豪邸が現れた。
隣を歩く男はズンズンと歩みを止めずにその豪邸の方へと歩いていく。
え、ここ?まじで?くっそ金持ちのセレブじゃん。俺、こんなとこ入りたくない。入れないよ!隠れ家バーより場違いだから!門番にとめられたりしないかな。いや、むしろとめて!
大きな門の前にいかつい門番のような大男が立っていた。めっちゃ怖い顔してるけど、今はそんなこと怖がってる場合じゃない。切実な思いで門番に視線を送るも、こちらには目もくれず呆気なく門を通されてしまった。
そうだよね、だって隣にこんなオーラのあるやつがついてるもんね。顔パスだよね。もちろんね。
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