そのままの君が

フルーツパフェ

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意地悪な客

そのままの君が

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 次々と思いついては没になっていくシナリオがいよいよ払底したその夜、僕は遂に叫んだ。
「君は一体何をしてほしいんだよ!!」
 店長が止めようとするほど失礼な行為であったが、一也が片手でそれを制した。
「だから、別にないって言っているだろ?」
「わかんないよ・・・・・・僕が一人こんな恥ずかしい格好して騒いでいるのを、汚物みたいに見下すのが楽しいの? 一也は優等生だから」
「違う、言っておくが、俺はお前をそんな風に扱いとは思っちゃいない」
「じゃあ、何で、笑顔の一つも見せてくれないのさ! 僕は君を満足させたいためにこんなに必死なのに」
「ああ! 面倒くせえな!」
 さっきまで冷静だった一也が急にいら立ったように立ち上がった。
「さっきから言っているだろ。俺は別にお前に何も望んじゃいない。ただ、まっさらなお前に会いたかっただけなんだよ」
「それって・・・・・・」
 僕は勘違いしていたのだ。今まで、僕は客が望むものか、それがなければ好みそうなものを考えて客の前でそれを演じていたのだ。けれど、一也だけは違った。彼だけは、普段通りの僕に会いたくて、こうして何度も足しげく通ってくれたのだ。何度も出入りしては僕を辱める彼の行動が、急に情愛深い色に染まった。派手なコスチュームも演出も、最初から必要なかったのだ。
「会社から帰る時、偶然店に入るお前を見かけたんだよ。あんなに明るい顔したお前の顔、すげえ可愛かった。だから、もう少しその笑顔を近くで見たくてさ」
「ごめん・・・・・・僕はとんでもない勘違いを」
「誤った顔を見せるんじゃねえ・・・・・・俺を満足させるって言葉、嘘だったのか?」
「そんな」
 僕は涙をぬぐった。
「着替えてくる」
 店長に断って、一度衣装替えをする。ひいて言えば、僕は私服姿に戻っていた。
「本当に、それでいいの?」
「いいんです。アイツは今の僕を、ずっと待っていてくれたんですから」
 僕は清々しく笑うと、一也の待つ部屋へと向かっていった。

(了)
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