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意地悪な客
次の作戦
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案の定、一也は一週間後に店に現れた。僕は用意してきた衣装と脚本をもって彼をもてなす。
部屋には少しばかり改良をしており、一也の入室に合わせてデジタル音調のポップ音楽が掛かる。そこに音痴な僕の歌声が重なった。
「あ~な~た~を、愛している~~!!」
曲のエンドに合わせて僕はくるりとターンをする。パニエで膨らんだスカートが遠心力で更に広がり、ファンシーなカボチャパンツがチラ見えする仕組みだ。
「あ?」
一也はまた、興味の薄そうな顔をした。
「聞いたでしょ。これが、私の気持ちなの!」
僕はマイクを片手に内股で彼に話し掛けた。
「アイドルデビューしてからもう三年。蛇イチゴの人気は絶頂になった。そこまで来れたのは、あなたがファン一号になってくれたから! だから、次は私があなたのために何かをしてあげたいの!」
「・・・・・・別に、何もねえよ」
一也は依然として不愛想だった。このぐっとくるシチュエーションでも駄目なのか。これ以上の演出を、まだ業界経験の浅い僕は知らない。
「じゃあ、これから、私はどうすればいいの!」
「知らねえよ」
一也はもう退室しようとしている。
「待って! 行かないで・・・・・・きゃ!!」
僕はわざと躓いて見せ、片手を彼の方へ伸ばした。ところが非常なことに、一也は僕に蔑むような視線だけを差し向け、そのまま部屋を出て行ってしまったのだった。
「また駄目だった・・・・・・」
僕のシナリオを見ていた別の客がその光景を見て何かに目覚めたらしく、僕は続きを別の客相手にすることになった。
それからも、一也は数日おきに店に来ては僕のもてなしをつまらなそうに見て、何も言わずに帰っていくことを繰り返したのだった。
部屋には少しばかり改良をしており、一也の入室に合わせてデジタル音調のポップ音楽が掛かる。そこに音痴な僕の歌声が重なった。
「あ~な~た~を、愛している~~!!」
曲のエンドに合わせて僕はくるりとターンをする。パニエで膨らんだスカートが遠心力で更に広がり、ファンシーなカボチャパンツがチラ見えする仕組みだ。
「あ?」
一也はまた、興味の薄そうな顔をした。
「聞いたでしょ。これが、私の気持ちなの!」
僕はマイクを片手に内股で彼に話し掛けた。
「アイドルデビューしてからもう三年。蛇イチゴの人気は絶頂になった。そこまで来れたのは、あなたがファン一号になってくれたから! だから、次は私があなたのために何かをしてあげたいの!」
「・・・・・・別に、何もねえよ」
一也は依然として不愛想だった。このぐっとくるシチュエーションでも駄目なのか。これ以上の演出を、まだ業界経験の浅い僕は知らない。
「じゃあ、これから、私はどうすればいいの!」
「知らねえよ」
一也はもう退室しようとしている。
「待って! 行かないで・・・・・・きゃ!!」
僕はわざと躓いて見せ、片手を彼の方へ伸ばした。ところが非常なことに、一也は僕に蔑むような視線だけを差し向け、そのまま部屋を出て行ってしまったのだった。
「また駄目だった・・・・・・」
僕のシナリオを見ていた別の客がその光景を見て何かに目覚めたらしく、僕は続きを別の客相手にすることになった。
それからも、一也は数日おきに店に来ては僕のもてなしをつまらなそうに見て、何も言わずに帰っていくことを繰り返したのだった。
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