そのままの君が

フルーツパフェ

文字の大きさ
上 下
10 / 11
意地悪な客

次の作戦

しおりを挟む
 案の定、一也は一週間後に店に現れた。僕は用意してきた衣装と脚本をもって彼をもてなす。
 部屋には少しばかり改良をしており、一也の入室に合わせてデジタル音調のポップ音楽が掛かる。そこに音痴な僕の歌声が重なった。
「あ~な~た~を、愛している~~!!」
 曲のエンドに合わせて僕はくるりとターンをする。パニエで膨らんだスカートが遠心力で更に広がり、ファンシーなカボチャパンツがチラ見えする仕組みだ。
「あ?」
 一也はまた、興味の薄そうな顔をした。
「聞いたでしょ。これが、私の気持ちなの!」
 僕はマイクを片手に内股で彼に話し掛けた。
「アイドルデビューしてからもう三年。蛇イチゴの人気は絶頂になった。そこまで来れたのは、あなたがファン一号になってくれたから! だから、次は私があなたのために何かをしてあげたいの!」
「・・・・・・別に、何もねえよ」
 一也は依然として不愛想だった。このぐっとくるシチュエーションでも駄目なのか。これ以上の演出を、まだ業界経験の浅い僕は知らない。
「じゃあ、これから、私はどうすればいいの!」
「知らねえよ」
 一也はもう退室しようとしている。
「待って! 行かないで・・・・・・きゃ!!」
 僕はわざと躓いて見せ、片手を彼の方へ伸ばした。ところが非常なことに、一也は僕に蔑むような視線だけを差し向け、そのまま部屋を出て行ってしまったのだった。
「また駄目だった・・・・・・」
 僕のシナリオを見ていた別の客がその光景を見て何かに目覚めたらしく、僕は続きを別の客相手にすることになった。
 それからも、一也は数日おきに店に来ては僕のもてなしをつまらなそうに見て、何も言わずに帰っていくことを繰り返したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

自称チンタクロースという変態

ミクリ21
BL
チンタク……? サンタクじゃなくて……チンタク……? 変態に注意!

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

目の前に色男が!早速ケツを狙ったら蹴られました。イイ……♡

ミクリ21
BL
色男に迫ったら蹴られた話。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...