そのままの君が

フルーツパフェ

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意地悪な客

これが僕の世界観

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 準備が出来たので、店長に一也を部屋に通してもらった。
「フレイ! フレイ!」
 彼の姿を視野に納めるとすぐに、チアリーダーに扮した僕は両手のボンボンを振り回しながら陽気に叫んだ。一也は高校時代からトレードマークだったクールな目つきでそんな僕を見つめている。
「頑張れ、頑張れ!」
 僕は少し距離を置いてキック(足を上げる基本動作)をする。プリーツスカートがめくれ、アンダースコーツの下で股間のものが揺れているのがわかる。普段から下着だの具だのを晒している僕にしてみれば、まだマシな仕事ではあるけど、相手が知り合いとなると何だかやりにくい。
「何だ、それ?」
 一也はつまらなそうに一言発した。
「先輩! どうして僕の気持ちにこたえてくれないんですか?」
「は?」
――調子合せろよ! こっちがやりにくいだろ!
「僕は、先輩のために何かしたくて、こうやって先輩を応援するために男子でも無理にチアリーダー部に入れてもらったのに、どうして県大会の出場を諦めちゃったんですか?」
「いや、それは――」
「僕は先輩のために、これから何をすればいいんですか?」
「別に、ないよ」
――無視プレイかよ!
「じゃ、じゃあ、こんな格好してまで恥を晒してきた僕が、バカみたいじゃないですか!」
「そうだな」
――そんなあっさり?
 きょとんとしている僕に向かって、一也は耳元で一言囁いた。
「今度はもう少し、マシな格好をして来い」
 僕の目論見は完全に外された。一也という客のニーズを見事につかみ損ねたのだ。一也はそのまま僕に触れることはなく、黙って店を出て行った。
「すいません。どうも僕の考えが外れたみたいで」
「そんなことないわ。よくやっていたわよ。あんなシチュエーション、私でも思いつかないわ」
 店長はそう言ってくれたけど、僕の気持ちは幾分も晴れなかった。僕が欲しかったのは紋切り型の慰めの言葉じゃない。一也の喜ぶ顔だった。
 店の片づけを手伝って営業を終えようとした僕は、ふと気づいた。
「そういえばアイツ、今度はって言わなかったっけ?」
 それは僕にまだチャンスを残してくれている意味に他ならなかった。
「よし、今度こそ!」
 今度こそ僕は、一也を魅了して見せようと決意した。
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