そのままの君が

フルーツパフェ

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序章: だって僕は

初めてのお仕事

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「・・・・・・お邪魔します」
 奥の部屋で着替えてきた僕は指示された通りのテーブルへ挨拶をしに行く。
「おっ! 今日はかわいい子が来てんじゃん」
 僕を見るなり、ソファに堂々と座っていた中年のサラリーマンが歓喜の声を上げた。普段ならば会社の重役でも務めていそうな立派な身なりの人間だ。そういう人たちも、この種の店に来るのだろうか。
「名前、なんて言うの?」
「ユキ・・・・・・です」
 店主には自分の名前ではなく、思い付きで与えられたニックネームを名乗るよう言われている。
「ユキちゃんはどこの学校?」
「え、学校?」
 僕はその質問に一瞬ためらったが、すぐにマニュアル通りの受け答えを思い出す。
 今、僕が身に着けているのはブレザータイプの女子高生の制服だ。ちなみにその下は水色の女性もの下着の一対。それらが自然になじむよう、栗毛色に染められたボブカットのかつらを被り、すね毛が目立たないように黒のタイツを履いている。
「桃の花、高校です・・・・・・」
「そうか! もしかして、あまり友達は少ないタイプかな?」
「ええ・・・・・・まあ」
「じゃあ、オジサンと仲良くしよう! ほら、こっちに座って」
 僕は遠慮がちにお客さんの隣に座った。丁度店の向こうに置かれていた姿見に僕の姿が映る。街を歩いても絶対にバレないくらいの完璧な女装だ。だとすれば、この人は本当に僕が男だということを知っているのだろうか。こんな店に来なくたって、この人だって本物の女の子の傍に居たいはずなのに。
 そう思っていたら、僕よりも一回り太い腕が背中から回り込んで僕を抱き込む。
「わっ! ちょっと!?」
 僕はソファの上でバランスを崩し、しっかりと閉じていた内股が少し開いた。外の空気がひやりと下腹部まで広がってくる。そこにお客さんの腕がまっしぐらに突っ込んでくる。
「え?」
 僕は下半身の、自分の一物をつかまれる感触に戸惑った。不思議なことに、力強く握りしめる握力に抗うかのように、あの部分が膨らみと硬さを増していく。
 僕は性的に、この人に応えようとしているのだ。
「ああ、もうこんなに興奮しちゃってさ。わかったよ。アキちゃん(店主のニックネーム)、奥の部屋使っていい?」
「どうぞぉ」
 店主はこともなげに店の奥にあった別の部屋のドアを開いた。
「うん、それじゃあ、早く行こうか」
 何をされるのかわからない状況で背筋が凍り付く一方、僕は身体の奥底から火照った熱を確かに感じていた。

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