8 / 9
終章: パーティーすぐに全滅
2
しおりを挟む
それから半年。
僕は荒野の真ん中を歩いている。
道端で、乗り捨てられた馬車を見つけた。
幌は切り裂かれて馬の姿は見当たらない。
盗賊あるいは魔物の仕業か、中にあったはずの荷物は荒らされ、一部が道に散乱していた。
無造作に捨てられた小物の類に加え、馬車の所有者と思しき三人の少女が倒れている。
全員、既に事切れていた。
手前に倒れている武芸者と思しき少女の太腿の辺りをさらりと撫でる。
温もりが感じられれば、まだ死んでからそれほど時間が経過していない証拠。
つまり蘇生可能という話である。
その隣に倒れる鎧を着た少女と、更に奥で倒れている魔導士風の少女もまだ、救えそうだった。
『起きろ、起き~ろ~』
「・・・・・・あれ、ここは」
「君達は全滅してここに倒れていたんだよ」
「え? そうだ、私達。ここでゴブリンの群れに囲まれて」
ゴブリンごときにこのザマか。
などという言葉は胸の内に秘める。
「まあ、通り掛かったところで見つかってよかったよ。手遅れだったら、アンデッドにされていたから」
「ありがとうございました。それでは」
そうして一団は街道を反対に歩いていく。
無論、奪われた荷物だけは元通りに出来ないから、この先彼女達がどうするつもりなのかは僕にもわからない。
こうやって行き倒れの冒険者を助けているうちに、僕もどうにか前衛で戦えるだけの戦力と経験を得た。
魔法も使え、武骨な武器も振るえるようになったのだがそれでも前衛には出ない。
理由は何を隠そう、蘇生役が気に入ったからだ。
彼女達の太腿を撫でた手を、僕は嗅ぐった。
「・・・・・・いい、香りだな」
まだ手にかすかに残る、雌の香り。
極度の緊張に臨んでなお、必死に抗い、実力及ばず斃れた少女達の、生きていた証。
いつの間にか女の子の蘇生を繰り返すうちに戦闘不能に魅入られてしまった僕。
彼女達の死に様を見届け、再び立ち上がらせるのが、この世界に一人残された僕の楽しみであることは否定できない。
(了)
僕は荒野の真ん中を歩いている。
道端で、乗り捨てられた馬車を見つけた。
幌は切り裂かれて馬の姿は見当たらない。
盗賊あるいは魔物の仕業か、中にあったはずの荷物は荒らされ、一部が道に散乱していた。
無造作に捨てられた小物の類に加え、馬車の所有者と思しき三人の少女が倒れている。
全員、既に事切れていた。
手前に倒れている武芸者と思しき少女の太腿の辺りをさらりと撫でる。
温もりが感じられれば、まだ死んでからそれほど時間が経過していない証拠。
つまり蘇生可能という話である。
その隣に倒れる鎧を着た少女と、更に奥で倒れている魔導士風の少女もまだ、救えそうだった。
『起きろ、起き~ろ~』
「・・・・・・あれ、ここは」
「君達は全滅してここに倒れていたんだよ」
「え? そうだ、私達。ここでゴブリンの群れに囲まれて」
ゴブリンごときにこのザマか。
などという言葉は胸の内に秘める。
「まあ、通り掛かったところで見つかってよかったよ。手遅れだったら、アンデッドにされていたから」
「ありがとうございました。それでは」
そうして一団は街道を反対に歩いていく。
無論、奪われた荷物だけは元通りに出来ないから、この先彼女達がどうするつもりなのかは僕にもわからない。
こうやって行き倒れの冒険者を助けているうちに、僕もどうにか前衛で戦えるだけの戦力と経験を得た。
魔法も使え、武骨な武器も振るえるようになったのだがそれでも前衛には出ない。
理由は何を隠そう、蘇生役が気に入ったからだ。
彼女達の太腿を撫でた手を、僕は嗅ぐった。
「・・・・・・いい、香りだな」
まだ手にかすかに残る、雌の香り。
極度の緊張に臨んでなお、必死に抗い、実力及ばず斃れた少女達の、生きていた証。
いつの間にか女の子の蘇生を繰り返すうちに戦闘不能に魅入られてしまった僕。
彼女達の死に様を見届け、再び立ち上がらせるのが、この世界に一人残された僕の楽しみであることは否定できない。
(了)
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる