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序章: 僕の役目は蘇生魔法ONLY

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 小鬼の振り下ろした銅剣を、金髪少女は棒の端切れで受け止めた。
 凶刃がじわじわとにじり寄ってくる。
「この、負けるものかぁ!!」
 全霊の力で押し返し、刃を跳ねのける。
 弾き返された小鬼は尻もちをついて後ろから続く個体をドミノ倒しにした。
「アンタ達なんかにやられてたまるもん・・・・・・がっ!!」
 勇敢にも豪語する金髪少女の声が突然途切れる。
 背筋を反らし、大きく目を見開いた彼女の背後で、いつの間にか忍び寄った小鬼が後頭部に棍棒を叩きつけたのだ。
「もう、だめぇ・・・・・・」
 さっきまでとは違い、気弱な声を漏らして金髪少女は崩れた。
 

 仰向けに倒れたことで、頽れた太腿がパックリ開き、こちらも年頃の少女として見るに堪えない醜態をさらしている。
 ちなみに肝心の具は、カーディガンよりは少し薄めのピンクの下着だった。
 ついでにサイドは露出度高めのひもがついている。
 清楚なセーラー服少女のそれとは対照的でこれまた眼福。
「嶺子さ~ん!!」
 色を成した復活のセーラー服の少女が驀進し、金髪少女を討ち取った個体に膝蹴りを食らわせる。
 仲間の仇を取ると同時に、先程自分を殺した個体へのリベンジでもあった。
 勢いよく衝撃を喰らった個体は吹き飛び、岩盤に頭から激突。
 脳漿をまき散らして事切れた。
「すげぇ・・・・・・」
 感心しながらも僕は自分の仕事を忘れない。
 セーラー服の少女が一気に前線を押し戻してくれたことで、僕は倒れている金髪少女に近づくことができた。
 ほとんど期待はしていなかったが案の定、死んでいた。
「やれやれ、次はこっちか・・・・・・」
 まさにあっちが立てばこっちが立たずというやつだろう。
 僕は再度蘇生呪文を詠唱した。

 その日の夕刻――
「全く冗談じゃないわよ!」
 夕食の乗ったテーブルが激しく叩かれる。
 その日の稼ぎを終え、妥当な報酬を獲得し、異世界の冒険者としてはまずまずのスタートを切ったのだが、金髪少女の機嫌は芳しくない。
 あれから小鬼の一団と半日近く戦い続け、こちらが倒した個体は54匹、一方で金髪少女とセーラー服の少女は戦いの最中にそれぞれ三回死んでいる。最も僕の蘇生魔法によって現時点での二人は健在なわけで、損失としても勝利と言っていい比率だろうと思う。
 しかし、彼女達には何やら不満があるようだった。
「どうしてアンタは何もしないのよ!」
「いや、最初に言った通り、僕は蘇生魔法しか使えないんだ。僕が死んだら誰も蘇生できないでしょ?」
「だからって、女の子を最前線で戦わせるの?」
「男だからとか、女だからとかじゃなくて、戦闘に特化した人間と、蘇生に特化した人間で役割分担する方が効率的じゃないかな? そもそも君の言う男女の役割だって、男が大概にして腕力が強いからって理由だよね? だったら僕と同じような考え方じゃないのかな?」
「アンタ、マジで最低の屑・・・・・・」
「でも、その屑のお陰で二人は生きているんでしょ? 仮に僕がいなければ、誰が君達を蘇生したの? 今も野原でパンツ見せながら横たわっていると思うけど?」
「う・・・・・・とにかく、こんな役立たずの男とパーティーなんか組めるわけないわ。異世界ものの主人公って、そんなんじゃないでしょ? ね、真由佳。行きましょう」
「え? 私もですか?」
「そうよ。こんな紐男なんか相手にしていたら、一生かかっても元の世界には戻れないわ」
「えっと、ごめんなさい。じゃあ、私達はこれで」
 そう言って彼女達は僕の前から姿を消した。
「またかぁ」
 こうして僕から離れて行った人間は数知れない。
 彼らがその後どうなったかは、今は明かすのは止めよう。
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