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3章: 新しい聖女

山の魔晶石

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「なぜ君がそこまで頑張る? 君は本来この村とは無関係で」
「・・・・・・私、今まで自分は外の世界と関係のない所に居ました。外の世界で何が起こっているかも知らず、ただ毎日を限られた一部の人と漫然と過ごしていたんです。でも今は、こんなにも皆の辛さが胸にひしひしと伝わってくる。だから私は・・・・・・」
「・・・・・・君、一体どこでどういう暮らしをしていたの?」
「・・・・・・それは、わけあって話せません」
「本当は記憶がないわけじゃなかったってことだな?」
「・・・・・・すいません。でも今の、私の気持ちは本物です。あの、ヤルスさん?」
 ヤルスはまるで苦境に立たされたかのように頭を抱え込んでいた。
「あ~もう、どうすればいいんだ?」
「えっと、何が?」
 セシルが聞いてもヤルスは自問自答するかのように迷っている。散々逡巡を続けた挙句、彼は決断した。
「よし!! しょうがない!でも、もう決めた!!」
「えっ? 急にどうしたんですか?」
「実は君に話がある。村人達を救うための、金貨四百枚を集める件で!!」
「それは・・・・・・本当ですか?」
「ただし、それこそ戦争に行く並みに危険を伴う話だ。第一、俺たち二人だけじゃなくてその道の協力者が必要だ」
「どういう、意味ですか?」
 セシルの問いに、ヤルスは遥か向こうの景色を指した。
「あの山が見えるか? 手前の大きな二つの山に挟まれた、崖がごろごろしているやつだ。王都の酒場で聞いた話なんだが、あの山にはどうやら魔晶石が採れるらしい」
「魔晶石、ですか」
 神殿に置かれた文献曰く、魔晶石とは文字通り魔力を秘めた石のことである。それは魔導士によって魔導器に魔力を吹き込むための欠かせない素材として重宝されており、非常に高値がつくゆえに一般的な市場ルートでは回らない貴重な代物である。単なる宝玉の価値を軽く凌駕するその石が一片でもあれば、金貨四百枚の目標は決して到達不可能ではない。
「だが問題が二つある」
 ヤルスはすかさず付け加えた。
「というと?」
「まず一つ目の問題は、これがまだ噂話の域を出ていないということだ。魔晶石は本当に貴重なもので、そこら中に転がっているものじゃない。それに、世の中には魔晶石を収集して売り捌く連中もごまんといるから、もうほとんど採り尽くされた地域もあるんだ。だからあの山に言っても、無駄足で終わる可能性は否定できない」
「行ってみなければわかりませんよね?」
「だが問題がもう一つ。魔晶石があるとして、周囲には当然、その力で凶暴化した魔物がいる。魔晶石を取りに行く間、魔物を撃退する強力な護衛が必要だ。それに、魔晶石って言うのは見た目がただの石と見分けがつかなくて、魔力を感じ取る魔導士も必要だ。それだけの貴重な人材に危険手当を払うからこそ、魔晶石は高価なものだが、果たして俺達に協力してくれる奴なんかいるだろうか」
「そういうことでしたら、どちらも私が務めさせて頂きます」
「は? 無茶言うなよ! 君みたいに細い腕で魔物と戦えるわけないし、魔法だって使えるのかよ?」
「問題ありません」
 セシルが平然と答えようとも、ヤルスには到底受け入れられなかった。
「危険すぎる! 君自身に何かあれば元も子もないだろ?」
「だからと言って、何もしなければ結局村の人達が危険にさらされます。そもそも私達に、魔導士や傭兵を雇うお金さえもないわけですから」
 冷静な口調で突き付けられた現実に、ヤルスはまたもや頭を抱えた。
「どうすればいいんだよ! くそっ!!」
「ちょっと御兄さん達。ひょっとして腕のいい魔導士をお探しかい?」
 気軽に声をかけてきたのは見覚えのある魔導士の女。以前に下流の村で畑泥棒に雇われていた女魔導士だった。
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